ロックマンゼロ~救世主達~
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第33話 穏やかな一時
前書き
少しの休憩。
メンテナンスルームでメンテナンスとエネルギー補給を受けた二人はトレーニングルームでゼロの軽めのトレーニング兼新技開発をしていた。
「でやあっ!!」
「はあっ!!」
ルインのZXセイバーとゼロのZセイバーがぶつかり合う。
互いのセイバーが火花を散らしながら何度も激突し、ルインが仲間になってからこれがゼロの日課になっていた。
レジスタンスにルインが加わるまでは自分と対等の実力者がレジスタンスにはいなかったために、ゼロは一人でトレーニングをしていたのだが、ルインが仲間になってからは密度が増している。
ゼロはラーニングシステムによる学習能力でルインの動きを解析して自身の性能を高めていき、ルインもラーニングシステムは搭載されてはいないが、元人間であるために、エックスと同じく凄まじい速度で“成長”する能力を持っている。
互いに互いの実力を高めていくことがレジスタンスを、仲間を守れることに繋がると信じて。
「今日のトレーニングはこれくらいにしておくか…次は新しく編み出した技を放つ。ルイン、頼んだぞ」
「OK。」
「出力は最小限にしておくが、お前はセイバーの出力を最大にしておけ」
「分かった。」
ルインがセイバーの出力を最大にして構えると、ゼロがルインに向けてチャージを終えたバスターショットを向けた。
まずはゼロが倒したブレイジン・フリザードのDNAデータを解析して編み出した新技だ。
「バーストショット!!」
ルインに向けてバスターから炎属性のチャージショットが放たれた。
「えっ!?キャアッ!?」
セイバーで受け止めた瞬間に爆発が発生し、ルインは勢い良く吹き飛ばされて壁に背中を打ち付けた。
「いったあ……」
強くぶつけたのか背中をさすりながら立ち上がろうとする。
ゼロもバーストショットの予想外の威力にルインの元に駆け寄る。
「すまん、大丈夫か?」
バスターとマガジンの予備セイバーを背部とホルスターに戻して、ルインに手を差し出し、差し出しされたゼロの手をルインはしっかりと握る。
「うん…ありがとうゼロ。大丈夫だよ、少し休めば……それよりも、バーストショットだっけ?凄い威力だったね」
「ああ、まさか奴から得た技がこれほどの威力とは俺も思わなかった。」
「バスターの出力を最小限にして、防御していたのにも関わらず、ここまで吹き飛ばされるなんて…使えそうだね…ゼロ」
「あのエリマキトカゲとの戦いも、決して無駄ではなかったということだな」
「ふふ…、まだあるんでしょうゼロ?ヘルバット・シルトのDNAデータを解析して得た新技が?」
「そうだ。落烈斬をベースにした技だ。これも一応、セイバーの出力を最大にして構えていろ」
「了解。いつでもいいよ?」
「よし…落砕牙!!」
一気に跳躍してセイバーを下に構え、一気に下降しながら電撃を纏わせた下突きを繰り出した。
「ぐっ!!」
セイバーで受け止めるが、激突の瞬間にゼロのセイバーから電撃弾が出たので、ルインは咄嗟に体を捻って回避する。
「危なかった…。でも使えそうだねこの技も」
「そうか…」
「私は少し夜風に当たってくる。ゼロは?」
「俺はもう少し技の練度を上げる。」
ゼロは技の練度を上げるために、トレーニングルームにもう少しだけ残るようだ。
ルインはトレーニングルームを出ると、エレベーターに乗り込んで屋上に向かった。
そして屋上に出ると、不思議なことに雪が降っていた。
「わあ…雪…どうして降ってるんだろ?まだ冬じゃないのに」
冬でもないのにかなりの勢いで降っているので、しばらくすれば積もるだろう。
「ネオ・アルカディアの天候装置に少し異常が発生したようなんだ。しばらくすれば止むよ」
「え?」
背後を見遣ると見慣れた蒼いサイバーエルフがおり、サイバーエルフはすぐさま人型となる。
「エックス…どうしたの?何かあったの?」
「君に会いたくなった…じゃ、駄目かな?」
「……っ」
何で目の前にいるレプリロイド…今はサイバーエルフはこうも人を赤面させるようなことをサラリと言えるのか。
二百年という長すぎる年月がエックスをこんな天然タラシに変化させたのか?
いちいちエックスの発言に赤面してしまう自分が悔しくて、上目遣いで睨むが、エックスには通用しないうえに寧ろ笑みを深めているだけだ。
「(………あれ?)」
気のせいかもしれないが、一瞬だけエックスの姿がぼやけたように見えた。
しかしエックスは何でもなさそうにしているために見間違いだろうと思うことにした。
「それにしても思い出すねルイン。こうして君と一緒に雪を見ていると、最初のイレギュラー戦争で南極に行った時も君は雪を見てハシャいでいたな…」
「も、もう!エックスはどうしてそんな昔のことを思い出すの!?恥ずかしい!!」
二百年前の最初のイレギュラー戦争でペンギーゴと戦うために南極に訪れたのだが、シティ・アーベルを離れたことがないルインが初めて見る白銀の世界に目を輝かせていたのだ。
あの時の自分はハッキリ言って子供だった。
「(絶対ゼロに知られるわけにはいかない。もし知られたら何て言われるか…)」
ゼロの性格から考えて、恐らく心底呆れたような表情を自分に向けてくるに違いないと判断する。
「あの時は本当に大変だったな…」
イレギュラー戦争で死んでいった仲間達。
そしてシグマを倒してから隊長となり、死んでいった部下達。
スペースコロニー・ユーラシア落下事件行方不明になり、ナイトメアウィルス事件で一度は戻ってきたがまた行方不明になったゼロ。
そして妖精戦争が起こるまでの百年という長い年月でいなくなった仲間。
そして妖精戦争…自分にとって辛い過去ばかりだが、しかしこれらがあったから今の自分があるのだとエックスは思える。
「エックス、どうしたの?急に黙っちゃって」
「いや、何でもないよ。」
「…もしかして…昔のことを考えてた?」
「え?」
ルインの言葉にエックスの目が見開かれた。
何故気付かれてしまったのか?
「ふふん、エックスの考えていることくらい完全にお見通し…という訳じゃないけど…何となくかな?」
「何となく?」
「エックスは悩んだりするとぼおっとする癖があるの。後、目が遠くなる。」
「え?そうなのかい?」
「うん、やっぱり気付いてなかったんだ。まあ…ゼロもエックスも変わったところはあるけど変わらないところもあるからねえ」
「うーん、知らなかったな…。そんな癖…」
「まあ、癖って指摘されるまで気付けないし…もしかして寂しいのエックス?」
「…うん、少しね……でも…君が傍にいるだけで寂しさなんか吹き飛ぶよ」
サラリと言い切るエックスにまた顔が熱くなるのを感じたルイン。
「あ…う…エ、エックスの天然タラシ!!」
「え?ルイン、顔が真っ赤だよ?」
「誰のせいだと思ってるの…?」
「ふふ…ごめん…」
「え?ひゃっ」
不意に優しく包まれる感覚。
エックスの細い両腕がルインの背に回されていて、優しく抱き締められている。
「昔のように一緒には戦うことは出来ないけれど、僕は自分に出来る精一杯のサポートをするよ」
「うん…でもあまり無茶しちゃ駄目だよ?」
「うん…」
エックスとルインは互いの顔を近付け、目を閉じようとした瞬間。
「ルイン、ここにいる…キャアッ!?」
「エックス?」
「あ~、エックスだ。」
タイミング悪く、シエルとゼロ、アルエットが屋上に現れたために、二人は即座に離れた。
「え…えっと…あの…その…ごめんなさい!二人共!お邪魔しちゃって!!」
シエルは顔を真っ赤にしながらゼロとアルエットの手を引いて、この場を退散しようとする。
「ちょっ!ちょっと待ってシエル!だ、大丈夫大丈夫!何でもないから!!」
「あれは、何でもないとは言えないわ!!」
顔を真っ赤にしながらシエルを止めるルインだが、シエルは二人がしようとしていたことを察していたのでシエルも叫ぶ。
「ねえ、ゼロ…シエルお姉ちゃんとルインお姉ちゃんどうしたのかな?」
まだ幼いアルエットにはルインとシエルが何故互いに顔を真っ赤にしながら叫んでいるのかが理解出来ないようだ。
「さあな…時々あいつらの会話は分からん」
色恋沙汰に関してはアルエット並みに鈍いゼロにもさっぱりと分からないようだ。
「ゼロ…君はそういうところは変わらないね本当に…」
「何だエックス?俺が何かしたのか?」
自覚がないゼロにエックスは久しぶりに親友に対して怒りを覚えた。
前のように敵地のド真ん中に放り込んでやろうかという衝動にエックスは辛うじて勝利したのであった。
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