| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

美容健康

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

5部分:第五章


第五章

「何かあったの?」
「お姉さんのメイクだけれどね」
 彼女が問うのはこのことだった。
「どういうのしてるの?あれ」
「お姉ちゃんのメイクなの」
「そう、それよ」
 遼子に対して頷く。
「いつも凄く奇麗じゃない。あれはどうしてるの?」
「さあ」
 しかしその問いに首を傾げる遼子だった。
「私にもわからないけれど」
「わからないの」
「そうよ」
 こう答える遼子だった。
「特にしてないみたいよ」
「それは嘘でしょ」
「ねえ」
 皆今の遼子の言葉にははいそうですかとはいかなかった。
「妹のあんたが知らないなんて」
「それはないわよ」
「本当にあまりしていないのよ」
 自分の知っていることを包み隠さず話す遼子だった。
「お姉ちゃんは。軽くって位じゃないかしら」
「軽くなの」
「そう、軽く」
 こう皆に述べる。
「してる位よ」
「それであそこまでって」
「嘘でしょ」
「あんたは随分努力してるわよね」
 皆は遼子に対しても問うてきた。
「そういうのって」
「否定したら駄目かしら」
「否定してもわかることはわかるわよ」
「そういうこと」
 これが皆の返答だった。
「だってねえ。どう見ても研究してるし」
「しかも細かいところまで」
 昨日のそのアイドルのメイクをすぐに使ったことからもこれはわかることだった。
「それで努力していないっていうのはね。嘘になるわよ」
「しかも。結果出してるしね」
 努力の結果も出しているというのだ。
「そういうのもね。わかるし」
「そうそう」
「けれどね。お姉ちゃんは違うのよ」
 あくまでこう言う遼子だった。
「何でかしら。それでも」
「おっ、妹のあんたからも美人ってわけね」
「よっ、このシスコン」
「美人姉妹はうらやましいわね」
「別にそんなのじゃないわよ」
 困った顔で皆のからかいに返す。よくシスコンとか言われてからかわれるのは事実だ。そして妹の彼女から見ても姉が美人なのも事実だった。
「それでも。何でかしらね」
「お姉さんが美人ってこと?」
「そうよ、それよ」
 やはりこのことを言うのだった。
「何でかしら、それがわからないのよ」
「あんたも身体動かしてるわよね」
「雨でも雪でも毎日走ってるわよ」 
 このことも皆に言う遼子だった。
「それも真剣にね」
「しかもトレーニングウェア着て柔軟や筋トレも欠かさないと」
「モデルみたいじゃない」
「けれどお姉さんは陸上部だからそれはね」
「それでもなのよ」
 それだけが遼子の努力ではないから言うのである。
「お姉ちゃんのあれは。わからないのよ」
「何か企業秘密があるのかしらね」
「成功の裏に努力ありってね」
「!?それって」
 今の友達の一人の言葉にふと気付く遼子だった。
「お姉ちゃんもこっそりと何かやってるってこと!?」
「だってそうじゃない」
「そうよね」
 皆はここでそれぞれの顔を見合わせて言う。遼子一人が慌てたような顔になっているのが滑稽な風景になっている。遼子自身は気付いていないが。
「美人になるのってある程度は素質だけれど」
「後は努力次第だからね」
「そうよね。お姉ちゃんはどう見ても」
 姉の顔とスタイルをあらためて脳裏に浮かべて考え抜く。
「努力した奇麗さよね、絶対に」
「ほら、謎が一つ解けたわ」
「何かっていうのを探してみたら?その謎をね」
「そうね」
 そして彼女達のそのアドバイスに頷いた。
「やってみるわ。ただ」
「ただ?」
「どうしたの?」
「明日少し勝負があるのよ」
 こう皆に言うのであった。
「明日の朝ね」
「決闘でもあるの?」
「あんた何かしたの?」
「そういうのじゃなくてね。大体何で決闘なのよ」
 変な話だと聞いていて思う遼子だった。考えが変わったのだ。
「まあ決闘って言えば決闘かしら」
「話読めないんだけれど」
「矛盾してるわよ、矛盾」
「それが矛盾していないのよ」
「?どういうこと?」
「こっちの話よ」
 駅のプラットホームでの話はしないのだった。
「こっちのね。気にしないでね」
「何かわからないけれど気になるし」
「何が何なのか」
「だから。気にしなくていいから」
 随分と強引に押し切る遼子だった。
「聞かなかったことにして。いいわね」
「普通に凄い気になるし」
「何なのよ、本当に」
「本当に何でもないわよ」
 無理矢理そういうことにしようとしてきた。
「だから。この話はこれで終わり」
「まあそこまで言うのならいいけれどね」
「あんた喧嘩とかはしないし」
 そういうふうな方面には興味のない遼子だった。興味があるのはやはりスタイルとメイクとファッションについてだ。そういうところが実に今時の女の子である。
「そんなに言いたくないのならいいわよ」
「気にはなるけれどね」
「それよりもよ」
「ええ」
 話が元に戻った。しかも最初にだ。
「それでこの娘のメイクだけれどね」
「要点は赤なのね」
「そうよ、赤よ」
 写真の目と唇を指差しつつ皆に話す遼子だった。こうしてとりあえずはいつもの学校生活を送った。しかし次の日。彼女は明らかに違っていた。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧