ロックマンゼロ~救世主達~
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第6話 ルインとシエル
前書き
ウロボックルとフラクロスを撃破したルインとゼロ。
デュシスの森のヒューロッグ・ウロボックルと輸送列車のパンター・フラクロスを撃破し、もう一体のベビーエルフと大量の物資を手に入れることが出来たエルピスは笑みを浮かべていた。
これでシエルの研究も更に捗るだろうし、作戦のための大部隊に使う物資も充分なほどだ。
大戦果にレジスタンスの士気も上がっており、ゼロとルインが戻ってきたら労いの言葉でもかけてやろうと、転送の光に包まれた二人が司令室に現れたのを見て歩み寄ったのだが…。
「…ルインさん、どうかしましたか?」
転送されたルインは赤面しながら体を小刻みに震わせ、額を押さえていたのだ。
「ナ、何デモナイデス…」
明らかに何でもなくないような気がするが、取り敢えず労いの言葉をかけてみた。
「はあ…とにかくご苦労様ですお二人共。お二人のおかげで、ネオ・アルカディアが保管していたベビーエルフと大部隊に使うのに充分すぎる物資が手に入りました。これでシエルさんの研究も捗り、大部隊の準備も進むことでしょう。」
「…………」
「ア、アリガトウゴザイマス……」
エルピスの労いの言葉にゼロは無言で無表情で返し、ルインは赤面しながら、片言のような礼を言う。
「……本当にどうしましたルインさん?一度メンテナンスルームに行った方が…」
「ダ、大丈夫デス…チョ、チョット色々アリ過ギタカラデス」
「はあ…とにかく、ご苦労様です。次のミッションに備えて休んで下さい」
「シ、失礼シマス…」
フラフラしながら、司令室を後にしてルインは自身に与えられた自室に向かう。
「…本当に何があったんでしょうかね……」
「さあな……」
ルインのおかしな様子に普段は険悪(と言ってもエルピスが一方的に敵視しているだけだが)なエルピスとゼロも今回ばかりは思っていることは一緒だった。
そして自室に戻ったルインはベッドに倒れ伏した。
「うう……っ、エックスったら…いつからあんな口が上手になっちゃったのさ…お、おまけに…キ、キスまで……っっっ~~~~!!」
額に感じたあの時の感触が蘇り、再びルインは赤面し、声にならない叫びを上げた。
「えっと…ルイン、大丈夫…?」
「うえっ!?」
声に気付いて振り返ると、戸惑ったような表情のシエルがいた。
「あ、あの…シエル…い、いつから…」
「あ、その…だ、大丈夫よ!エックスの名前が出て来た辺りからだから……」
「殆ど最初からじゃない!!」
殆ど最初からいたことにルインは思わず恥ずかしさのあまり、叫んでしまった。
「落ち着いた?」
「うう…、お恥ずかしいところをお見せしました。」
しばらくしてようやく落ち着いたルインに、ミッションから帰ってからまだエネルギー補給もしていないこともあって補給用のエネルゲン水晶を出してやった。
因みにシエルは紅茶とクッキーである。
「アルエットがルインと話したがってたんだけど、あなた顔を真っ赤にして具合が悪そうだって私に伝えに来てくれたのよ」
「そ、そうだったんだ…後でアルエットちゃんに謝らないと…」
心配をかけてしまったようなので、後でアルエットに謝りに行こうと思ったルインであった。
「…ところで…ルイン、エックスに会ったのよね?」
「う、うん…サイバーエルフの状態でだけど……」
「サイバーエルフの状態で……大丈夫かしら…いくら特別なレプリロイドであるエックスでもサイバーエルフの状態でいるのは危険だわ…」
「やっぱり…止めてって言っても聞いてくれないんだろうな…エックス、頑固なとこあるから」
レプリロイドがサイバーエルフの状態で行動するのはリスクが伴うようだが、止めて欲しいと言ったところでエックスは止めないだろうことくらいは理解している。
一度決めたことは絶対に曲げようとしない頑固な人だから。
「…ところで、前から気になっていたんだけど…」
「え?何?」
自分のことでシエルが気になることとは何だろうか?
アーマーチェンジシステムのことだろうか?
「エックスとルインって……恋人同士なの?」
「…………へ?」
予想外の質問ということもあり、レプリロイドの高度な情報処理能力を以てしても、その単語を理解するのにはかなりの時間を要した。
「え…あ…こ、こ、い…恋、人…っ!?」
「ええ」
あわあわと赤面しながら慌てるルインに対して、シエルは頷く。
「ち、違うよ。恋人じゃなくてエックスは私の先輩…で」
「少なくても、エックスはあなたに好意を抱いているように思えるわ。好きでもない女の子を抱き締めたりキスしたりするかしら?エックスはそんな人なの?」
「そんなわけないじゃない!!」
エックスをそんな風に言われて、かじりつく勢いで叫ぶ。
「でしょう?私もエックスと何度か話したことがあるから、エックスの性格はある程度は分かっているつもり。エックスはあなたのことが好きなのよ。あなたを一人の女性として……」
「う…っ、でも…久しぶりに会ったからってだけじゃ……」
戦闘では勇ましい彼女が恋愛方面では駄目なことにシエルは微笑ましいと感じるのと同時に呆れた。
「あなたって人は…エックスはね。今まで自分に好意を抱いてくれた女性レプリロイドを断っていたのよ。好きな人がいるって…もし、あなたのことなら二百年もあなたを想っていたのよエックスは。気が遠くなるような時間を…。それすら信じられない?」
「…………」
「ミッションをこなしていたらいずれエックスと会う機会があるわよ……その時に聞いてみたら?」
「う、うん……」
「ところで、ルイン…あなたに一つ聞きたいことがあるの…」
「え?何?」
いきなりのことに目を見開くが、シエルは少し頬を染めて、少しの間を置いて口を開いた。
「………人間がレプリロイドを好きになるのって、いけないことかしら?」
その問いに目を見開きながら、ルインは首を横に振った。
「そんなことないよ…シグマが…ううん、イレギュラー大戦が起きる前までは人間とレプリロイドが恋をするなんて珍しくなかったよ。結婚した例もあるくらいだからね…もしかしたらあの時が…一番人間とレプリロイドが分かり合えていたのかもね…」
「本当に?」
「うん…今では人間とレプリロイドの恋愛なんて考えられないことかもしれないけれど…でも、どうしてそんなことを?」
「え?あ、その…そ、そう…科学者としての好奇心と言うか…」
「嘘だね。シエル…もしかして好きな人がいるの?それもレプリロイド?」
自分のことにはてんで鈍い癖に他人のことには勘がいいルインにシエルは少し焦る。
「そ、それは…」
「もしかして…エルピス司令官?それとも…ゼロ?」
「っ!!」
ゼロの名前が出た瞬間、シエルの顔が真っ赤になった。
そのあまりにも分かりやすい反応に、色恋沙汰に疎いルインでさえ分かる。
「まさか、シエルの好きなレプリロイドがゼロだったなんて…」
「…いけない?」
「ううん、寧ろ嬉しいかな?シエルみたいな子が私の大切な人を好きになってくれるのはね…まあ、ゼロはそういうの興味なさそうだけど」
ゼロは純粋な戦闘用レプリロイドで思考が戦闘寄りになっているので仕方ない部分はあるのだが。
「そうね…でも、ゼロと一緒にいると、どんなに辛い状況でも頑張ろうって気持ちになれたの。だから、私達は絶望的な状況の中でも、希望を見失わずに生きてこられた。ゼロは…凄く強くて、大雑把でガサツだけど優しくて……素敵なレプリロイドなの…私からすれば……ね」
「…………」
「ルインもそうなんじゃない?」
「え?」
「あなた、私達と一緒に行動するようになってからも、少し寂しそうだったもの……エックスのことを話す時のあなたは優しい顔で楽しそうだったわ…多分、無意識のうちにエックスのことを想っていたんじゃない?」
「う……」
シエルにそう言われると、無意識にしていた自分の行動に恥ずかしくなって俯いてしまう。
「私、エックスとルインはお似合いだと思うもの。頑張って、応援しているから」
「…………うん、ありがとう…シエル」
シエルを見ると、自分をからかっているような感じではないので本心からの言葉なのだと分かり、ルインは少しの間を置いて頷いた。
「ところで…シエル」
「ん?何かしら?」
「救助したレジスタンスが持ち帰ったベビーエルフなんだけど…」
シエルがこの部屋に来たのは予想外だったけれど、エックスから伝えられたことを教えるのには好都合だと判断したルインはベビーエルフの危険性を話すことにした。
「ええ、おかげで研究も更に捗りそうだわ」
笑みを浮かべるシエルにルインはベビーエルフのことを言うべきかと少し悩んだが、言わなければシエルやレジスタンスの仲間達が危ないと判断し、ルインは口を開いた。
「あのね、エックスから聞いたんだけど、ベビーエルフって危険なサイバーエルフらしいの。エックス曰わく運命を狂わせるとか、母親に会うためなら何でもするとか…」
「そう、なの…?」
レプリロイドの、平和への希望となるかもしれないと思っていたベビーエルフが危険な存在であることにシエルは目を見開いた。
「うん、だから…研究があるから今は無理だけど…早いうちに破壊した方がいいよ。可哀想だけれど」
「……ええ…アルエットが悲しむかもしれないけれど…」
「アルエットちゃん?あの子がどうかしたの?」
「あの子ね、ベビーエルフに名前を付けたのよ。ルインと話したがっていたのも名前を一緒に考えて欲しかったからなんですって、出来なかったから私が一緒に考えたんだけど」
「そっか…とにかく、ベビーエルフは厳重に保管しててね?レプリロイドにどんな悪影響を及ぼすのか分かんないから」
「分かったわ。エルピスと相談してみる。」
「うん」
ベビーエルフの保管方法を司令官であるエルピスに相談してみることにしたシエル。
後にそれが取り返しのつかない事態を引き起こすことになるとは、シエルもルインも微塵も思っていなかった。
~ルインとアルエット~
時はゼロとルインがレジスタンスに合流し、細部のメンテナンスを受けている時であった。
アルエットはゼロのお見舞いに行こうと、一緒に食べるためのエネルゲン水晶を持ってメンテナンスルームに向かっていた。
一年間ゼロと離れていて寂しかったアルエットはゼロに早く会いたくて足早に向かい、メンテナンスルームに入るとアルエットにとって初対面の人がいた。
「ん?女の子…?どうしてここに?」
朱色のアーマーに背中にまで伸びている金髪はアルエットが兄のように慕っているゼロに似ているが、声や顔や体つきから女性であることはアルエットにも分かった。
「(綺麗な人…)」
幼いアルエットはルインの整った顔立ちを見て思わず胸中で呟いた。
「えっと、君…どうしたの?どこか痛いところでもあるの?」
メンテナンスルームに来たと言うことは怪我でもしたのだろうかと、ルインは屈んでアルエットと目線を合わせる。
シエルがアルエットと話す際に良くやってくれる動作に不思議と安心したアルエットはルインが優しい人だと判断出来た。
尤も子供は他人の善悪に敏感なのだが、レプリロイドであるアルエットも例外ではないようだ。
「えっとね、シエルお姉ちゃんからゼロが帰ってきたって聞いて…メンテナンスルームで寝ているからお見舞いに来たの…お姉ちゃんは誰?」
「私?私はね、ルインって言うの。ゼロの後輩…んー、昔の仲間なんだよ。君の名前は?」
「あ、私…アルエットって言うの」
「アルエット…“雲雀”って鳥の名前なんだね…うん、凄く良い名前だねアルエットちゃん」
頭を撫でながら名前を褒めると、アルエットは嬉しそうに笑う。
「えへへ、シエルお姉ちゃんが考えてくれたんだよ」
「そうなんだ、仲が良いんだね」
「うん、私、シエルお姉ちゃん大好き!」
「でもアルエットちゃん、ゼロのお見舞いに来てくれたのに悪いんだけど、ゼロはまだ寝ているからまだお話出来ないの」
「そうなんだ…」
久しぶりに色々話したかったが、流石に寝ているゼロを起こすのは申し訳ないと感じているのだろう。
「なら、アルエットちゃん。私と一緒にお話しよう」
優しい笑顔を浮かべながらアルエットを誘うルイン。
「良いの?」
「勿論、私もアルエットちゃんしか知らないゼロのお話を聞きたいな。教えてくれる?」
「うん、一杯お話しようねルインお姉ちゃん!」
アルエットにもう一人の姉が出来た瞬間であった。
後書き
レジスタンスって、シエルと同年代がいない感じ。
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