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キルト

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第三章

「見るか」
「その時を楽しみにしているんだな」
「とりあえずうは」
「スコットランドの料理でも楽しみながらな」
「いや、どうも」
 スコットランドの料理についてはだ、彼は。
 難しい顔でだ、こう言ったのだった。
「ここの料理は」
「まずいか」
「口に合わないか」
「そっちの方も覚悟していたよ」 
 スコットランド、ひいてはイギリスの料理自体にだ。
「最初からね、そして」
「そっちはか」
「覚悟通りになったか」
「無事に」
「無事じゃなかったさ」
 素直な怒りを見せてだ、ピエールはクラスメイト達に言った。
「予想が当たって」
「そうか、まずいか」
「外国から来た奴は皆そう言うんだよな」
「スコットランドの料理はまずい」
「食えたものじゃないってな」
「本当にまずい」
 今度は言い捨てたピエールだった。
「君達はこれで満足なんか」
「満足云々よりもな」
「ずっとここの料理食ってきたからな」
「まずいとかそんなのな」
「思わないな」
「お父さんもお母さんも覚悟はしていたけれど」
 フランスから来ただけにというのだ。
「本当に覚悟通りだよ」
「まあ家で食ってなフランス料理」
「店とか学校の料理は諦めろ」
「この前日本人の観光客が泣いてたからな」
「マクドナルドの方がずっと美味いってな」
「実際にそっちの方が美味しいよ」
 マクドナルドのハンバーガーの方がと言うのだった、ピエールにしても。
「僕はハンバーガーは好きじゃないけれどね」
「じゃあそっちはいいな」
「言わなくても」
「キルトとは違っていて」
「お祭りの時は楽しみにしているよ」
 こちらにはこう言うのだった。
「キルトについても」
「そうか、じゃあな」
「その時まで待っていろよ」
「キルトを見られる時を」
「その時を」
「是非ね、じゃあネス湖にも行って」
 スコットランドだけあってこれは外さなかった。
「ネッシーを見ながら待とうか」
「いたら写真撮れよ」
「インチキ写真はばれないように発表しろよ」
「最近グーグルで見付かったらしいけれどな」
「その目で見たら絶対に写真撮れよ」
「僕達にも見せてくれよ」
「その時は是非見せるよ」
 ピエールも笑って返す。
「見たいからこそ行くんだからね」
「そのネス湖にな」
「是非」
「だからね」
 こうしたことも話してだ、そしてだった。
 ピエールはスコットランドでの学園生活を送りながら家族でネス湖にも行きつつ祭りの時を待った、その祭りの時にだ。
 彼は私服でグラスゴーのある祭りに出てだ、クラスメイト達に言った。
「綺麗な湖だったね」
「ああ、そうだろ」
「あそこネッシーだけじゃないんだよ」
「実は景色もいいんだよ」
「湖を山が囲んでて」
「それに古城もあって」
「景色いいんだ」 
 ネス湖とその周りはというのだ。
「そのことも楽しんでくれたら嬉しいな」
「それでネッシーいたか?」
「見たか?」
「見なかったよ」
 肝心の存在についてはとだ、ピエールは苦笑いで言った。 
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