キルト
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第二章
「スコットランドの」
「今度は独立煽るか?」
「えらい過激だな」
「フランス人でスコットランドの独立煽るってあれだろ」
「あからさまにイングランドへの工作だよな」
「イングランドは好きじゃないけれど」
この辺り実にフランス人らしい。
「何で民族の誇りを着ないんだ、皆は」
「だから理由言っただろ」
「ズボンの方があったかいんだよ」
「下にトランクスもバッチも穿けるしな」
「スコットランドは寒いからな」
「寒さに負けてどうするんだ」
引かないピエールだった。
「僕の覚悟はどうなったんだ」
「勝手に覚悟してろ」
「じゃあそっちもフランス人の格好しろよ」
「モーツァルトみたいなお貴族の格好をしてな」
「モーツァルトはオーストリア生まれじゃないか」
言わずと知れたことだ、ピエールが言うまでもなく。
「フランスとオーストリアは長い間何かあれば戦争をしていたんだぞ」
「イングランド、ひいてはイギリスともな」
「いつも戦争してたな、そういえば」
「百年戦争では勝っても大抵負けてたな」
「オーストリアにもイギリスにも」
「あとドイツにもスペインにもな」
「戦争に負けても外交で取り戻しているんだよ」
フランスの常だ、戦争をすればかなりの確率で敗北するがその後の外交で取り返してきたのだ。もっともイギリスもオーストリアも外交は得意だったので苦労してきたが。
「いつもな」
「やれやれだな」
「フランスも大概な国だな」
「負けてばかりでしかもああ言えばこう言う」
「難儀な国だよ」
「フランスはいい国だよ、とにかくキルトのないスコットランドなんて」
それこそと言うピエールだった。
「紅茶のないイギリスだろ」
「つまり全部ないってのか」
「そこまで言うか」
「いや、そこまで言ってないからな僕も」
全部ないとまでは、というのだ。
「流石にな」
「だといいけれどな」
「とにかくこうy茶のないイギリスか」
「キルトのないスコットランドは」
「そこまでのものか」
「ネッシーみたいなものだよ」
ピエールの中ではというのだ。
「スコットランドにとってキルトは」
「そこまでか」
「キルトにこだわるんだな」
「外国から見ればか」
「もうキルトはないのかい?」
かなり真剣にだ、ピエールはクラスメイト達に尋ねた。
「この国には」
「いや、あるよ」
「ないかっていうと」
「ちゃんと残ってるさ」
「だからそんなに言うなよ」
「熱いんで暖房にはなっていてもな」
それでもというのだ。
「それは安心しろよ」
「お祭りの時とか見られるから」
「キルトの下もな」
「そっちは見たくないよ」
そこには関心のないピエールだった。
「全然」
「ああ、そうか」
「やっぱりそっちにはそう言うか」
「興味がないか」
「そうだよ、とにかくお祭りの時に見られるのなら」
それならと言うピエールだった。
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