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大地はそこに

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6部分:第六章


第六章

 ガイドさんを見上げる形でだ。アボリジニアンの言葉で話す。
 ガイドさんもその言葉でやり取りしてだ。そうしてだ。
 夫婦にはだ。日本語でだ。満面の笑顔で話すのだった。
「いやあ、運がいいですね」
「運がいいですか?」
「そうなんですか」
「はい、運がいいです」
 まただ。こう二人に話すのだった。
「いつもはこんなに早く見つからないんですか」
「見つからない?」
「見つからないといいますと」
「ええ、もっともっと深く掘らないと見つからないんですよ」
 二人に対して笑顔で話し続けている。
「六ヤードは掘らないと」
「大体五メートルですよね」
 夫が頭の中でヤードをメートルに換算して話した。
「それ位ですよね」
「はい、その位ですね」
「五メートルも掘らないと駄目だったんですか」
「けれど今回はすぐでした」
 こう話すのだった。
「本当に」
「五メートルとは」
「そんなの掘らないと駄目だったんですか」
 夫だけでなくだ。妻も怪訝な顔になって言うのだった。
「ううん、そこまでして食べるものとは」
「何なんですか?」
「はい、それはですね」
 老人がだ。その足元から何かを取ってそれをガイドさんに手渡した。ガイドさんはその受け取ったものをすぐに二人に差し出した。それは。
「これです」
「!?それは」
「まさか」
 見ればだ。蟻だった。しかし普通の蟻ではない。
 尻のところがだ。橙色になって膨らんでいる。そこだけ宝石の様になっている。そうした変わった蟻だった。
 ガイドさんはだ。その蟻を見て目を丸くする二人にだ。こう話すのだった。
「これはミツアリです」
「ミツアリ!?」
「それがその蟻の名前なんですか」
「正式にはミツツボアリといいます」
 その名称も話される。
「オーストラリアの他に北米にもいましたね」
「そうなんですか」
「それがこの蟻の名前なんですか」
「はい、それで」
 ガイドさんの話は続く。
「この蟻はですね」
「この蟻をまさか」
「食べるんですか?」
「はい、そうです」
 ガイドさんは夫婦に笑顔で話した。
「この蟻がそのご馳走なんです」
「蟻を食べるんですか?」
「虫を」
「そうです。食べるのはこれです」
 笑顔で話すガイドさんだった。
「美味しいんですよ、これは」
「まあ日本でも虫を食べますけれどね」
「それはありますけれど」
 このことはだ。二人も認めた。
 
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