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真田十勇士

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巻ノ十八 伊勢その十一

「そちらは私達は関係ないけれど」
「忍の者にとっては」
「戦の場で戦うことがない故に」
「それで、ですね」
「そちらは関係ありませんね」
「けれどあの御仁は噂ではね」
 聞いただけの話だが、というのだ。それは。
「軍学も相当だから」
「そちらではですね」
「我等は敵うことが出来ない」
「そうなるのですね」
「そうよ、そちらは武士の方々のことだから」
 それでとだ、巫女はこうしたことは淡々として述べた。
「関係ないから」
「だからですね」
「忍としてのあの御仁にはですね」
「我等で対しますが」
「そちらは」
「武士の方々にお任せするわ。幸い徳川家は武辺の方が揃っているわ」
 三河武士は強い者が揃っていることで知られている、そのうえ生真面目で忠義一徹の者ばかりであり家康の下に見事にまとまっているのだ。
「その方々にお任せするわ」
「ですか、では」
「今は、ですね」
「妖花様は紀伊に向かわれ」
「あの国を見られますか」
「そうしていくわ、それが終わってから」
 そのうえでというのだ。
「駿河にも戻るわ」
「では我等も」
「それぞれの国に赴きます」
「半蔵様に仰せつかったそれぞれの国に」
「そう致します」
「では駿河で会うわよ」
 巫女は周りの者達にこうも言った。
「半蔵様もそこにおられるわ」
「半蔵様は今は徳川様とご一緒ですが」
「お元気だそうです」
「ええ、あの方がおられれば」
 巫女は半蔵の名前を聞いて微笑んで述べた。
「徳川様も安泰よ」
「伊賀越えの時と同じく」
「そうですね」
「あの方がおられれば」
「徳川様のご身辺の心配は無用です」
「風魔が来ても」
 北条家が抱えている忍だ、その強さは西の伊賀、甲賀と並び東の風魔とさえ言われる程のものである。
「あの方がおられれば」
「安心出来ますね」
「そうよ、幾ら風魔小太郎が強くとも」
 その風魔の棟梁だ、東国一の忍と謳われている。
「半蔵様に勝てはしないわ」
「どれだけ風魔殿がお強くとも」
「半蔵様は天下一の忍」
「その半蔵様に勝てる者はですね」
「この世にはいないですね」
「ええ、ただ分けることが出来る者はいるわ」
 巫女は周りにこうも言った。
「それがね」
「風魔殿に、ですね」
「あの御仁ですね」
「その二人ですね」
「あと今も生きているかどうかわからないけれど」
 巫女はもう一人の名前を出した、その者はというと、
「果心居士ね」
「あの伝説のですか」
「都に出たと聞いていますが」
「その素性は一切知られていない」
「謎の人物ですね」
「仙人とも妖術使いとも言われていますが」
 忍ではなくそうした者ではないかという噂もあるのだ、その者には実際に。 
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