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真田十勇士

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巻ノ十八 伊勢その十

「歓待はされないかも知れないけれど」
「そういうことですか」
「では今は穏やかにですね」
「あの御仁も三河に入られ」
「旅をされますか」
「家臣の人達と一緒にね」
 その彼等と共にというのだ。
「そして我々も特にね」
「何もせずともですね」
「いいのですね」
「ええ、私達はこのまま色々な国を見ていくわ」
 こう微笑んで言うのだった。
「半蔵様に言われた様にね」
「では妖花様はですね」
「これから紀伊に向かわれ」
「あの国を御覧になられますか」
「半蔵様に言われた様に」
「そうするわ。高野山だけでなく雑賀衆も見てくるわ」
 その紀伊にいる忍達だ。鉄砲や火薬を使うことを得手としている。
「若しかしたらね」
「その雑賀衆とですか」
「一戦交えることになりますか」
「あの者達と」
「そうなってもね」
 それでもというのだ、巫女は周りに微笑んだまま述べた。
「私なら大丈夫だから」
「ですね、十二神将筆頭にして伊賀の副棟梁」
「半蔵様の片腕であられる妖花様ならば」
「例え雑賀衆でもですね」
「何でもありませんね」
「そうよ。もっとも半蔵様に揉めることは禁じられているわ」
 そうしたことがというのだ。
「だから雑賀衆と揉めることになったら」
「その時はですね」
「避ける」
「そうされますか」
「そうよ、忍は忍ぶものよ」
 このこともだ、巫女は言った。
「だからその時はそうするわ」
「その時も雑賀衆にですね」
「遅れを取りませんね」
「あの者達に」
「そうよ、私に忍の術で勝てるのは」
 巫女は自信に満ちた笑みで言い切った。
「半蔵様かあの御仁だけよ」
「あの御仁とは。まさか」
「あの」
「ええ、今はお会いしただけだけれど」
 巫女の笑みが変わっていた、自信に満ちた笑みからだ。
 鋭いものを含んだ笑みになってだ、こう言ったのだった。
「両家が揉める様になった時はね」
「あの御仁と渡り合えるのは」
「妖花様だけですか」
「そして半蔵様だけよ。他の十二神将で家臣の人達とね」
 その彼等と、というのだ。
「互角でね」
「半蔵様と妖花様がですか」
「あの御仁と互角ですか」
「そうしたところよ。あの御仁の忍術と他の術の腕はね」
 そういったものはというのだ。
「半蔵様、私に匹敵するわ」
「そういえば気が尋常ではありませぬ」
「あそこまで大きな気の持ち主です」
「その様な方と対することが出来るのは」
「お二人だけですか」
「天下最強の忍である私達ですらね」 
 そうだというのだ。
「忍術と剣術、あと槍や手裏剣も出来るわね、それと」
「それと?」
「それと、とは」
「軍学も相当なものね」
 兵を戦の場で動かすそちらもというのだ。 
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