アバンチュール
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第二章
「いいわね」
「そんな心配は」
「だって彼もホモじゃないでしょ」
かなりダイレクトな問いだった、今度は。
「そうでしょ」
「ええ、それはないわ」
「それならよ」
「あるのね、浮気も」
「そう、だから気をつけてね」
「ううん、あんたの叔父さんみたいなことは」
「確かにうちの叔父さんは最高のロクデナシだけれど」
何しろ姪のこの娘が言う程だ、相当なことがわかる。
「けれどよ」
「それでもなの」
「誰だってあるから」
「まあ覚えておくわね」
「そう、油断はしないでね」
こう私に言ってだ、友達はこんなことも言った。
「うちの叔父さん五回目も近いかしら」
「それある意味凄いわね」
「だから最高のロクデナシなのよ」
「飲む打つ買うで」
「太く短く生きてやるって言ってるわ」
「お仕事何?叔父さん」
「ギャンブラーよ」
最早普通の仕事ですらなかった。
「運だけは強いの、そっちで負けたことないから」
「それで勝った分だけなのね」
「遊んでるの」
「つくづく最高ね」
「そうでしょ、本当に最高のロクデナシなのよ」
少なくとも彼はそんな人じゃないことは確信していた私だった、それでこの時のことを思い出しながらだった。
私は彼と一緒にバレンタインの日チョコレートをあげた後でデートをしていた、彼が言うには。
「チョコレートのお礼にね」
「レストランなのね」
「うん、イタリア料理のね」
私の大好きなその料理のというのだ。
「予約しておいたよ」
「予約なのね」
「うん、もらえるって思ってたから」
もうそれは既にというのだ。
「それでなんだ」
「有り難う、けれど」
「けれど?」
「何か私がプレゼントするのわかっていたみたいで」
それが気になってだ、私は彼に少し苦笑いになって述べた。
「何かね」
「まあバレンタインだからね」
「それでなのね」
「うん、くれるっていうのはね」
決まっていたというのだ、チョコレートを。
「そう思って予約していたんだ」
「そういうことね」
「駄目だったかな」
彼は私に申し訳なさそうに問うた。
「予約は」
「まさか、そんな筈ないわよ」
私は彼にくすりと笑って返した。
「だから今からね」
「一緒にだね」
「有り難う」
こう彼にお礼を言った、そしてこれがそのまま返事になった。
「じゃあ今から一緒にね」
「行こうね」
こう話してだ、そうしてだった。
私は彼にそのイタリア料理のレストランに案内してもらった。そこは私達が結構行くお店で洒落たミラノにあるみたいな内装のお店だった。
テーブルもお店の壁も白くて彫刻も飾られている、ルネサンス調のそれが洒落た雰囲気にさらに芸術的なものを醸し出している。
カーテンも白くて床は奇麗に磨かれている、そのお店の中に入るとすぐにお店の人に二人用の席に案内された。
そしてだ、その席に二人で向かい合って座ると。
ワインにパスタからはじまってコースが運ばれた、私達は共に食べつつ。
その中でだ、彼はにこにことして私に尋ねて来た。
「楽しんでる?」
「この通りね」
私はワイン、赤いそれを飲みつつ笑顔で答えた。
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