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フランの狂気になりました

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第十二話

 
前書き
よろしくお願いします 

 
「っつ!何であいつが!?」

フランお嬢様がそう叫んだ。
今私も同じように叫びたい気分だ、少なくとも目の前で死んだ筈の“人間”が再び姿を現す何て話し聞いたことない。
能力で復活?死んでも蘇る能力なんてある筈がない。
死は不変、二度と死した者は蘇ることは無いのだから。

では、他人の空似か?と言えばそれは無い。
私の能力が告げている、『あの者は先の者と同じ』だと。気が全く同じ者が二人居るなんてことは無い。
唯一有るとしても、死んでからすぐさま転生出来るので有れば可能かも知れない。
だが、それでは結局あそこに居るのはさっきの男である。

だが今はどうやって死んだ筈の男が戻って来たよりも、明らかに先ほどとは違う気配を纏った男である。
上空から降った光に腕を貫かれたレミリアお嬢様、そしてそれを見下ろす男。

このままだと確実にレミリアお嬢様が殺される。

「フランお嬢様、私はあそこへ………」

『あそこへ行きます』そう言おうとしたら、フランお嬢様が私を手で制した。
フランお嬢様の顔は何かを覚悟した様な顔。
そんな表情で一歩踏み出したフランお嬢様を私は咄嗟に呼び止めた。

「フランお嬢様!?何する積もりですか!」

「何って……あのままだとおねぇ様死ぬじゃん。今おねぇ様に死なれるのは困るし、めーりんだっておねぇ様が死ぬのを黙って見てる訳にもいかない。だ・け・ど、今のめーりんに戦闘はまだ無理だし、だったら私がおねぇ様のとこに行くのが普通じゃない?」

フランお嬢様が言ったことは確かだ。
今の私では、フランお嬢様にさえあっという間にやられてしまうだろう。だが!

「フランお嬢様が行くと言うのは許容出来ませんね。それに、あんな方々でも私はあなた方のご両親からお二人を守る様言われて居るのでね」

「じゃあどうするの?私もダメ、かと言ってめーりんも使えない。だったらどうやっておねぇ様を助けるって言うのよ?」

………そう言われたら頭が痛い。
私が行くと言っても、フランお嬢様は許してくれないだろう。それこそ「だったら私が行く」と言いかねない。
私達以外に彼処へ向かえるものも居ない。
どうすれば………?どうすれば……!?

「…………無い、のね?だったら私が「それはダメです!」……! だったらどうするの!?今、この瞬間にもおねぇ様が死ぬかも知れないのよ?こんな問答してる場合じゃないわあれもダメ?、これもダメ?で、だったらどうするつもりなの!?」

鬼気迫る勢いで、私を問いただすフランお嬢様。
その表情には焦り、苛立ち、恐怖。様々な感情が入り混じっていた。

駄目だ、“この子”を彼処へ行かせてはいけない。
何故気づかなかった、この子の気の流れはとても乱れてるじゃないか。このフランお嬢様じゃあ、今の弱った私を倒せてもあの男の前じゃそれこそ、今の私よりも戦う事は出来ないだろう。

だが、それでも少しの代案さえ私の頭は導き出さない。
私達の誰も欠けずにレミリアお嬢様を助け出してあの男から逃げ出す。
それがダメでもそれに近い代案を…………。

「………てい!」

「ひんにゅうっ!?」

考えていたらフランお嬢様にデコピンされた……。凄く痛いです。
見上げればフランお嬢様は、私を見下ろしていた。

「めーりん、私は大丈夫。今現在は私の方が強いんだから、ね?めーりんにとっておねぇ様は守らないといけない相手なんでしょ?だーいじょうぶ!チャチャッとおねぇ様助け出してもどって来るから!」

フランお嬢様は本心を隠すように、やや震えた声音で、明るく言った。
己を遥かに超える存在。私もたとえ十全の状態だったとしても勝てないであろう存在。
負傷した私に勝てると言っても、経験が足りてないのだ。戦術、心構え、他にも戦いに必要なものが何一つとして足りていない。

フランお嬢様には逃げ帰る事すら………いや、こんな考えじゃ駄目だ。
現に私は動けない、結局私もフランお嬢様も行かずにどうにかなる訳無かったのだから。
だったら信じよう。フランお嬢様にはレミリアお嬢様を連れて帰ってきて頂こう。

私の考えが伝わったのか?フランお嬢様は「おねぇ様は絶対に連れ戻す」、そう言って飛んで行った。
どんどん離れていくフランお嬢様。その行き先である男の方を向き────気が付いた。
何故?何故、気づかなかった?あれは駄目だ、戦術とか心構えでどうにかなる問題ではない。





─────あれは“神”だ。
多分“日の本”……“ジパング”の神だと思う。
“八百万の神々”ジパングには大なり小なり力の差はあれどとても多くの神の集う場所。
何故ジパングの神がここへ来たのだろうか?いや、それも問題だが、彼処へ行ったフランお嬢様、そしてあの神の目の前に居るレミリアお嬢様。

「フランお嬢様………必ず、必ず戻って下さい……」





──────────────────────





めーりんを抑えて何とか彼処へ飛び出した私。
おねぇ様と男の居る場所へと今出せる全力で飛行する。

眼下に広がるおねぇ様が作ったクレーター、その中で燻る妖怪たちの死体。地獄絵図をはるかに超えて、その空間が、世界が、死んでいた。

おねぇ様と男が見えてきた。私は“レーヴァテイン”を手に握り、間合いに入ると同時にその獄炎の魔剣を振り下ろす!

「はあああああああ!!」

「うおおっっっ!!?」

男は間一髪………いや、かなり余裕そうに身を翻してよける。
私が“レーヴァテイン”振り下ろした直線上は真っ黒に焦げ付き、長い長い煤けた道を作った。

「おいおい何だ??また新しい吸血鬼か」

男はひょいひょいと擬音が着くように軽々と、私の振るう“レーヴァテイン”を躱していく。

「フラ………ン?何で……何で此処にいる!!?」

何でって………。この駄姉め……

「私の目の前で死にかけてる“一応”親族の姉を助けに来たの!こんなできた妹を持って幸せだね??」

取り敢えずおねぇ様を煽る事も忘れない。
そのあいだにも男はちょこまかと逃げてむかつく。

男が光を撃ってきてた様だ。だが、私には当たらない。レバ剣から出た超高熱は陽炎を起こした。
簡単に言って、光の屈折によって起こる陽炎がこちらへ飛んできた光を明後日の方へ飛ばしたのだ。

「んあ、外れた?おっかしいな??確に狙ったんだ……が!」

再び飛んできた、結果は同じ。陽炎が光を明後日の方へ飛ばす。

「うお!?なんだなんだ! 何したんだお前?すげぇな!」

「っつ!?」

私の目の前で腕が舞った。
私の腕だ。光の攻撃が通用しないとわかった途端、私の腕を切り裂いた様だ。引き裂くと言うより“引きちぎる”という方が正しい気もするが……。

腕は一瞬で再生した。
私は男を油断なく見据える。月華の為に書庫を漁った時に偶然見つけた『剣の構え方ー入門編ー』で見た構えを実践してみる。

生きてて何が起こるかなんて本当に解らないな……。
まさか、偶然読んだ本の内容が活躍するなんて思っても見なかった。

「あー……何だ、あいつ、お前の姉なのか?」

男はおねぇ様を指差してそう言った。
嘘つく理由の無いので頷いておく。

「ふーん。そうなのか」

聞いてきたにも関わらず素っ気ない返答で返してきた男に苛立ちを感るが、黙っている事にした。

男は棒立ちのまま他人を小馬鹿にしたような顔で言った。

「おら、かかって来い。本気は出さないでやるからよ?だから、ほら?泣くんじゃねぇぞ!?」

私の“レーヴァテイン”が今までに無い程の火力を纏った瞬間だった。
 
 

 
後書き
|´-`)ダイニラウンドカイシ!! 
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