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ぶそうぐらし!

作者:かやちゃ
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第4話「きゅうじつ」

 
前書き
原作のめぐねえって、他のゾンビより足の力が強いんですかね?地下二階に降りて救急箱を置いた後に完全にゾンビ化したと考えると、地下一階の水のある通路に上ってきた事になりますから。
しかも、アニメだと日記(?)を書きに地下二階に戻ってる事から、何度か行き来してる事になりますよね。
...めぐねえって、特異個体だったのかも。

ちなみに前回から二日経ってます。風邪と感染が重なって丸一日遼は眠りっぱなしでした。 

 


       =遼side=



「....う....うぅん....。」

  ゆっくりと瞼が上がる。

「こ、ここは....?」

  目を覚ます以前の記憶が曖昧だ。何があったんだっけ...?

「っつ...怪我?....っ、そうだ!!」

  腕の怪我の痛みで思い出した。

「.....あれ?無事だ....。」

  噛まれた傷はまだ残っていて、弄ると痛みが走るが、ゾンビ化の予兆のような浮き出ていた血管などが治まっており、ついでに風邪も治っていた。

「薬、効いたんだな....。」

  大きなため息と共に安堵する。

「....よかった....。」

  俺らしくない、そんな安堵の声が自然と出てくる。俺は...まだちゃんと生きてる...。

「...そう言えば、ここどこだ?」

  追い詰められるように来た場所だが、ここがどこだか知らない。

「俺が眠っていたのに無事な所を見るに、奴らもいないようだし...。」

  無意識に電気のスイッチを入れていたのか、電気はついていた。

「...あれ?ここ、電気が通ってるのか?」

  ...そう言えば、この学校ってソーラーパネルがあったな。もしかしてそれか?

「それはともかく....って、うわっ。血だらけ...。」

  至近距離で何度も奴らを斬ったりしていたので、服が血まみれになっていた。

「...替えの服、持っておいてよかった...。」

  動きやすい服(親父曰く、ゲリラ戦でも使える)をバッグに入れていたので、それに着替える。

「一応、ここを探索しておくか。」

  何があるかも把握できてないしな。





「...これは、血痕?」

  少し探索していると、血痕を見つけた。ここはどうやら備蓄庫なようで、血痕があるのは不自然なんだが...。いや、パンデミックが起きてる時点でおかしいか。

「.....こっちか...。」

  血痕を辿っていくと、一つの扉に辿り着く。

「(....何かが動いている気配はない。...奴らがいる訳ではないのか?)」

  用心に越した事はないので、ゆっくり扉を開ける。

「....なっ!?」

  すると、中には....首吊りの死体があった。

「...ゾンビ化はしてないのか?」

  血痕から噛まれたものだと思っていたが...。

「...って、この人、教頭先生じゃないか。」

  縄を切って降ろすと、その事に気付く。

「...噛まれた傷...。ゾンビ化していないって事は、薬を打っていたのか。」

  あのつっかえていたシャッターもこの人がか?

「パンデミックの状況に精神が耐え切れずに自殺...って所か。」

  まぁ、一般人ならそうなってもおかしくはないか。...しかし、奴らは既に人を逸脱していたから何とかなったが、本物の死体を見るのは嫌だな...。

「体温と血が渇いている事から、もしかしたら俺が来たときには自殺していたのか...?」

  いくら精神に限界が来ていたとはいえ、俺の後に来たのなら薬を打つ時とかに俺に気付くはずだからな。

「....まったく...。」

  こんな事になってしまったのなら、自殺したくなるのは分かる。...だけど、先生である貴方がそうなってしまってはダメだろう。

「....うん?」

  ふと、傍にあった机に、気になる冊子があった。

「...“職員用緊急避難マニュアル”...?」

  “校外秘”や“禁転載”と書かれており、いかにも怪しい冊子だった。しかも校長及びその代理の指示がないと開封禁止なのも怪しい。

「“感染対策は初期の封じ込めが重要であるが、それに失敗し、感染が爆発的に増加した、いわゆるパンデミック状態が引き起こされた場合―――”」

  2ページ目に書かれている事を読み進めて行くと同時に、段々と背筋が冷えてくるような感覚になる。...なんだよ、これ。

「“―――対応できる資源、人員ともに限定―――”」

  俺たち生徒には一切知らされていなかった情報。

「“―――厳密な選別と隔離を基本方針とすること。”」

  それは、まるでこの出来事が想定されているようだった。

「“あなたの双肩には、数万から数百万の人命がかかっている。”...だって..!?」

  非常事態用のマニュアルである事から、教頭先生もこの事態になるまで中身を見ていなかったのだろう。

「この事を知ってしまって、罪悪感に押しつぶされたってか...?」

  俺たちに知らされていなかった事や、この出来事を想定されていた事に対する怒りはある。だけど、自殺した教頭先生を見ると、その怒りよりも、先生に対する情けなさの方が大きかった。

「....意気地なし。」

  だから、俺はついそう呟いた。







「....よし、マガジンはこれでオッケーっと。」

  あの後、とりあえず空になったマガジンに予備の弾薬を詰め込んでおいた。

「軽く点検もしておくか。」

  と言う訳で銃を少し分解して点検する。



「...よし、大丈夫だな。」

  どこにも不具合はないのでこれからも使えるだろう。

「刀は大丈夫か?」

  模造刀だから、切れ味に関しては特に気にしてないが、血で折れやすくなったりしないかが心配だ。一応、ナイフのための砥石はあるが。

「...水、あるかな?」

  まだここら一帯を探し回っていないので、一先ずは水を探すことにする。

「...あったあった。」

  隅の方にだが、普通に水道があった。

「そういえば、ここって避難区画だったな。」

  さっきのマニュアルをさらっと確認した通りだと、ここはパンデミックが起きた時のための緊急避難区画になっていた。

「だからここまで設備が整っているのか。」

  食料の備蓄はもちろん、水道や電気の設備、生活必需品などが揃っていた。

「水道は雨水などの貯水を浄水してて、電気は屋上のソーラーパネルか...。」

  想定されていたとはいえ、設備が揃いすぎてる...。

「...っと、ナイフも洗っておかないとな。」

  こっちは切れ味が落ちたら困るからな。後で研いでおくか。





「....よし、完了っと。」

  刀とナイフを研ぎ終わり、砥石を洗っておく。

「....?何か違和感が...。」

  さっきから水に触れた時に違和感が生じる。...一体なんだ?

「ま、いいや。...腹、減ったな。」

  備蓄倉庫の食料も気になるが、せっかく水があるんだし、レーションでも食うか。

「水汲んで...と。」

  テキパキと準備していく。しかし、準備を進めて行くうちに、さっきの違和感が膨れ上がってくる。

「(おかしい...。何かがおかしい...。)」

  違和感が募っていく中、温めてた物をつい手の上に落としてしまう。

「熱っ....くない...?」

  充分に温めていたので、熱いはずだ。なのに、熱くない。

「...いや、熱さを、感じてない...?」

  ...一気に血の気が引く。嫌な予感がした。

「....考えるのはよそう。まずは飯だ。」

  作り終わった飯を食べる。嫌な予感よりも食欲の方が強かったな。



「...ごちそうさま。」

  あっという間に食べ終わる。一体、どれだけ寝てたんだ?俺。めちゃくちゃ腹がすいてたぞ?

「....さて。」

  一旦、落ち着いた所でさっきの嫌な予感を確かめるとするか。

「味覚はあったし、視覚・嗅覚・聴覚も問題ない。触覚も一応あるはずだが...。」

  そう呟きながら、バッグからライターを取り出す。

「....俺の予想が正しければ...。」

  火を点け、手をギリギリまで近づける。

「...やはり、か....。」

  熱さが、ほとんど感じられなかった。刀とかを研いでる時の違和感は、水の冷たさが感じられなかったからなんだろう。...つまり、

「皮膚感覚の一部が欠落している....。」

  原因は大体分かってる。先日噛まれた際に感染したウイルス(仮)が原因だろう。薬を打ってゾンビにはならなかったが、こうやって温度覚が失われた。

「触覚はそのままだが、温度覚はほぼ失われた。....まさか...。」

  ナイフを取り出し、傷が残らない程度に切りつける。

「....少し予想と違ったが、概ね合ってたか...。」

  本来なら、反射的に手を抑える程の痛みが走るはずなのに、紙で切った程度の痛みしかなかった。...いや、それでも十分痛いけど。

「皮膚感覚の内、温度覚はほぼ喪失。痛覚も半分くらい欠落してるな。」

  ...いつか日常生活で支障を来すな。これ。

「....ま、生きてるだけ儲け物か。」

  死んだらゾンビ化なんだし、そうなってないだけマシだからな。

「....ちょっと色々試してみるか。」

  デメリットがあるならメリットもあると思い、少し試してみる事にする。大抵のゾンビゲーってゾンビになった奴は身体のリミッターが外れてるし、俺も何かあるかもしれん。





「...結論、身体能力やスタミナが飛躍的に上昇...と。」

  黙々と体を動かした結果、そんな感じだった。

「皮膚感覚の約半分を代償に身体能力向上か...。」

  いいのか悪いのかよくわからん。

「...飯食って寝よう。」

  考えるのが面倒になってきた。腹も減って来たし。せっかくだから備蓄倉庫の食料を使うか。







「....ぁ、寝てたのか。」

  飯を食ったら眠くなったのでそのままぐっすり寝ていたようだ。

  .....備蓄倉庫の肉、美味しかったです。

「...地味にここじゃあ、時間が分からないな。」

  一応時計を持ってるから時間は分かるんだが。

「...午前8時...。普通に次の日になってたし。」

  そろそろ行動を起こさないと...。

「この区画には人気が全くない。だから探すとすれば上の階だが...。」

  朝食を準備しながら考える。

「普通逃げるとすれば上へ上へと行くからな...。」

  一般的な人ならすぐさまゾンビの群れを突破しようとなんてしないだろう。ましてや、噛まれたらその時点でアウトなのだから。

「この学校には俺のようなサバイバルに長けている人物はいないから、大抵がパニックに陥ったはずだ。それで皆が皆、屋上の方へと逃げたとしたら...。」

  ....全滅は必須...か。

「屋上も普段は閉まってるからな...。学校がいつゾンビに襲撃されたかは知らないけど、園芸部あたりが屋上を開けっ放しにしてない限り、あそこで袋小路になるな。」

  必死に逃げて屋上目前で噛まれて終了。...そうでなくても屋上は行き止まりだから助かろうにも助かれない。

「考えられるのは屋上に逃げた後、扉を抑えて籠城だけど...。確率が低すぎるな。」

  例え、それで一時的に凌げたとしても扉を破ろうとするゾンビが多いだろうし、精神状態的にも危ない。...俺や友人(あいつ)みたいな図太さでないと...。

「...で、肝心のあいつはあの日学校をズル休みしたから行方も分からないし...。」

  ...ダメだ。考えれば考える程、生存者のいる確率は絶望的だな...。

「...それに、弾薬も心許ない。ある程度は予想していたけど、あまりにも奴らの数が多い。」

  街の人間の数とほぼ同じ数だからな...。パンデミック起きて初めて人間って多いんだと思ったぞ。

「狭い通路で多数の奴らに襲われた時、銃を撃ちづらくとも、数を減らすのにハンドガンだけじゃ、あまりにも無意味だ。」

  刀やナイフじゃ危険すぎるし。それの危なさは先日嫌というほど味わった。

「....とにかく、この避難区画を拠点に活動するべきか。」

  まずは武器を安定させたいな。...家にある銃と弾薬を全部ここに持ってくるか?

「電気が使える学校の方が、拠点としてはいいからな。...そうするか。」

  武器を充実させ、ここを安全な拠点として確立できれば生存者がいた場合に保護できるしな。

「...早速行動するか?」

  と言う訳で、早速準備をする。非常食とスナイパーライフルとその弾薬をいくつかここに置いて行き、その代わりにワクチンの入った救急箱を入れる。これならもし噛まれても大丈夫だろう。

「...よし、行こう。」

  半開きのままだったシャッターをくぐり、外へと向かう。

「......あ、あいつ...!」

  歩いていると、先日俺を噛んだゾンビがまだいた。

「...ちょーっと、俺、怒ってるんだよなぁ...?」

  ゆっくりと近づいていく。音も結構立てているから気付いてこっちに向かってくるはずだ。

「....うん?」

  奴さんの反応が鈍い。...いや、ゾンビだから色々鈍いだろうけど、そういう事じゃなくて、俺に襲い掛からなくなっている。

「...おい!」

〈....グ...。〉

  思いっきり聞こえるように呼んだのに、こっちを向いただけで襲い掛かってはこない。

「なんだこいつ...?」

  なんで襲ってこないか疑問に思い、もっと近寄ってみる。

〈グァアアア!〉

「っ、っとぉ!いきなりかよ!?」

  すると、ようやくそこで襲い掛かってきた。もちろん、俺は難なく避ける。

「どういうこった?」

  今までのゾンビと違い、様子がおかしい。...先日は他と同じだったはずだが...。

「...ま、いいや。」

  とりあえず刀で切っておく。そんでもって頭を踏み潰す。頭の中にある脳みそとかが飛び散るけどさすがに慣れた。

  ...え?元々同じ学校の奴だったって?...どうせもう死んで別物になってるし、そう割り切ったからどうってことない。

「どうせ他にもたくさんゾンビはいる。そいつらもこいつと同じだったら調べてみるけど、そうでなかったらどうでもいい。」

  何らかが原因で劣化していただけかもしれないしな。

「...よし、玄関の様子でも見に行くか。」

  購買部倉庫から出て、廊下の様子を確認する。

「...今は少ない方だな...。」

  ちょうど数が少なく、突破しやすい感じだった。

「...よし。」

  そのまま玄関まで走り抜ける。

「(...やっぱり反応が鈍いな...。)」

  相当至近距離を通り抜けない限り、どいつも反応しなかった。

「...後で確かめるか。」





「....到着っと。」

  家にあっさりと到着する。シャッターもそのままで、中には誰もいなさそうな雰囲気だ。

「ここまでほとんど襲われなかったな...。」

  人間のゾンビどころか、犬のゾンビにも何回か遭遇したのに、近くに寄らないと襲ってこなかった。...一応、犬のゾンビは厄介だから殺しておいたけど。

「家の中は...無事か。」

  ま、無人だからゾンビも寄りつかないわな。

「これならシャッターも開けていいだろ。」

  というか暗いから開ける!

「...って、さすがに寄ってくるか。」

  音自体には反応するらしく、何体か寄ってきた。...まぁ、襲ってこないんだが。

「これについては帰ってから考えるか。」

  とにかく今は詰め込めるだけ弾薬とかを詰め込んで学校に戻った。







「音自体に反応して俺の方は向くが、至近距離にならないと襲ってこない...。」

  学校の地下に戻ってから、俺は推測を述べて行く。

「...俺が噛まれた事が関係してるのか?他に原因も思いつかないしな...。」

  噛まれてワクチンを打った結果の皮膚感覚の一部の欠落。温度をほとんど感じなくなったから分からないが、確かゾンビは体温が低くなってたはずだ。

「俺も体が冷たくなっているというのなら、あいつらが認識しなくなるのも納得だ。」

  あいつらに近づいた事によって、捕食対象として見られにくくなったという所か。

「...考えても仕方ない。どの道、常に行き詰ったような状況だ。こんな事でいちいち悩んでられん。」

  もし薬がなかったら俺は噛まれた時点で死んでたからな。

「...さ、今日はもう寝るか。」

  さすがに暗くなってきた時間帯に動くのは危険すぎるからな...。

「武器と弾薬はまだ家に残ってるから、明日も取りに行くか。」

  明日の予定を(一応)決めて、俺は就寝した。













       ~おまけ・その頃の友人~





「むぁ~...髪ぼさぼさ...。」

「一時的な寝床じゃ、全然寝付けないなぁ...。」

「ゾンビ達は高い所にはあまりこないみたいだし、高い所ならぐっすり寝ても大丈夫かな?」

「殲滅して安全を確保してもいいけど...バール(これ)がもたないし...。」

「拳銃を警察官(ゾンビ)から拝借したけど、音に反応するから使えないんだよね...。」

「初期装備だけでリアルバイオハザードとか結構鬼畜だよねぇ...。」

  そんな事を言いつつも、様々な困難になりうるものを余裕で突破していた...。







 
 

 
後書き
パンデミック状態の街で、学校地下でダラダラと時間を過ごしていく。...現実の休日も家でダラダラするものだから展開が進まなくてもいいよね!(おい

遼は噛まれる前に、閉じ籠った部屋の扉を無理矢理突破されたため、ゾンビ達はしばらくすると扉を破るのを諦める場合があるのを知りません。だから生存者はいないも同然と考えてます。

感想、待ってます。 
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