ぶそうぐらし!
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第3話「かんせん」
前書き
放送室前でゾンビに襲われる時期がどのあたりか分からない...。
先に言っておきますが、この小説は原作6巻序盤辺り(読んでない)で終わる予定です。
ハッピーエンドに持っていくには、そこで終わる可能性が高いんです...。
=遼side=
「....着いた。」
塀に取り付けられている“私立巡ヶ丘学院高等学校”のプレート。ようやく俺は学校の門まで来ることができた。
ここまでに度々何体ものゾンビに襲われたけど、模造刀のおかげで、銃弾を節約して突破する事ができた。...相当疲れたけど。
「...だけど....。」
だけど、せっかく学校に着いたものの、グラウンドを覗くと、そこにはゾンビしかいなかった。
「...いや、まだだ。中に生き残っている可能性がある。」
屋上には菜園があったし、空腹を凌ぎつつ籠城する事ぐらいはできるはずだ。...可能性は低いが。
「...とにかく、探索に行くか。」
音をなるべく立てずに、下駄箱まで走る。
「....ふぅ。」
数は多くても密度は低かったので、特に気づかれる事なく下駄箱まで辿り着く事ができた。
「(...しかし、荒れてるな...。)」
玄関のガラスは割れ、下駄箱は所々が血まみれになっている。
「(...昨日の、部活の頃だもんな...。)」
学校に残っている人も多かったんだろう...。
「(...くそ...!)」
身近な人が当たり前のように死んでいる事実に、俺は憤りを感じる。
「(頼む...!誰かいてくれ...!)」
そう思いつつ、再び歩き出す。
―――...クラッ...
「(....?)」
一瞬、ほんの一瞬だけ、俺はふらついた。
「ここまで来るのにまた疲れたのか?無理もないが...。」
大した事ではないと決めつけ、廊下の角を曲がる。
「っ―――!!?」
その瞬間、すぐさま俺は身を翻し、角に隠れる。
「(狭いうえに多すぎだろ...!)」
ざっと二十人はいそうなレベルの密度でゾンビが徘徊していた。
「(やばっ...!反対側からも来た...!)」
玄関や、反対側の廊下からも奴らが出てくる。
その事につい後ずさり、床の血だまりに足を滑らせ、尻餅をついてしまった。
...今の俺は、スナイパーライフルや、いろんな物を詰め込んだ鞄を背負っている。その状態で尻餅をつけばどうなるか?
ガチャン!
―――大きな音が出てしまうって事だ。
「っ....!やべぇ....!」
油断した油断した油断した...!!
一斉に気付いて襲ってくる奴ら。こんな人数、倒せる訳がない...!
「くそ....!どこか逃げ込める場所...!」
ゾンビ達の合間を駆け抜け、襲ってくるのを刀で撃退しながら、逃げ込める場所を探す。
「っ!電算準備室...!」
扉の前にはあまりゾンビはいない。こっから駆け抜ければ中に避難できるだろう。
「はっ!」
唯一いた一体のゾンビを倒し、電算準備室の扉を開けて中に入る。鍵は開いていたようで助かった。
「中には...いない。」
運よく、中にはゾンビがいなかったので、とりあえず扉の鍵を閉める。
「....っ~~...!助かったぁ....!」
さすがに噛まれて終わるかと思った。そう思って安堵していると。
〈う゛あ゛あ゛ぁ~....。〉
ドン!ドン!ガリガリガリ...!
ゾンビ達が扉を叩いたり、ひっかいている。
「ちっ...!」
とりあえず重い物をドアの前に置いて、塞ぐ。
「このドアが部屋の内側に開くタイプなのが仇になったか...!」
外側に開くのなら、抑える必要は...あるのか。じゃあ、特に関係ないか。
「このままじゃ、ジリ貧だな...。」
どうやら数が多いらしく、次から次へとドアを開けようと集まってくる。
―――...クラッ...。
「っ...!(また...!)」
また眩暈がした。一瞬、視界がぼやける。
「これは...熱...?」
まさか、風邪がぶり返したのか...?
「ちく..しょう...こんな時に...!」
疲労のせいか、しっかりと頭を働かす事ができない。
ガリガリ...!ドンドン!ミシ...
「(...やばい...まさか、ドアが...?)」
ドアから軋むような音が聞こえてくる。
「くっ....!」
それに比例して、ドアを押してくる強さがさらに強くなっていく。
「(くそ...!風邪のせいで、力が...。)」
上手く力が入れられない。このままだと...!
ドンドンドン!ミシ...ミシ....バン!!
「くぅっ....!!」
ついに押し切られ、ドアが開いてしまう。その際に、俺は弾き飛ばされる。
「(完全に袋小路...!突破するしかない...!)」
数がどうとか言ってられない。刀をすぐさま構え、ドアから入ってくるゾンビを叩き倒す。
「はぁっ...!はあっ....!」
疲労と風邪が重なり、いつものような動きができない。それでも無理矢理出入り口を突破して、ゾンビの群れを抜けようとする。
「(やばい....!)」
横からくるゾンビを刀で壁に叩き付けるように頭を粉砕する。肉の潰れる音と共に血飛沫が飛び散る。その血飛沫が収まる間もなく違うゾンビが襲ってきたので、さらにそれを叩き飛ばす。
「(やばい...!やばい...!)」
正面から襲ってきたのを蹴り飛ばす事で他の奴も巻き込んで吹き飛ばす。その隙に後ろから襲ってきたのを、振り返る勢いで裏拳を決め、間合いを離す。
―――焦りが強くなっていく...。
「(視界がぼやける...。集中力が持たない...!)」
前へと突き進み、襲い掛かってくるのを噛まれないように刀で倒し、蹴りや拳で牽制する。
―――徐々に刀の軌跡がぶれていく。
「(逃げ込める場所もない。俺はどこに向かえば...。)」
体がふらつく。それでも何とか噛まれないように奴らを倒していく。
―――息切れが激しくなっていき、力が入らなくなる。
「(まずい....!)」
廊下を走りぬけて行く。だけど、段々と進むスピードが落ちてきた。
「二階に....!」
数が少ないと思えた二階に逃げ込む。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁ....!」
昇り切り、そこに座り込む。
「くっ....!」
風邪のせいで意識が朦朧とした。やばい...どこか安全な場所を...。
「ここ...にもいるからな...。」
すぐに立ち上がる。それと同時に、下の階から少しずつ奴らが這い上がってくる。
「くそっ....!」
三階に上がろうにもちょうど階段の中間に二体程留まっていた。今の俺だと突破するのも一苦労なうえ、おそらく三階にもうじゃうじゃいるだろう。だったら、上がっても変わらないので、とにかく反対側の階段辺りまで逃げる。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ、....はっ!」
廊下を覚束ない足で走りながら、接触してきたゾンビを倒す。
「くっ....。」
反対側まで来たときには、階段を上るという気力すらなくなっていた。そして、熱で思考能力が落ちていた俺は、そのまま自然と一階へと降りた。
「くそ...ここにも....。」
一階に降りて、廊下を見渡すと、玄関辺りにはまだまだ奴らがいた。
「一度、休まねば....。」
ふと目に入った購買部倉庫に入る。
「まじかよ...やっぱ、どこにでもいるのか...。」
しかし、その倉庫内にも奴らはいた。
「っ....、倒して、安全を...!」
近くにいたので隅の方に逃げてから、銃を構えて、撃つ。
パシュッ!
「っ、はずした...!」
風邪のせいで、狙いが定まらずに外す。その音に気付いて奴らは集まってきた。
「このっ、このっ、このっ...!」
撃つ、撃つ、撃つ。何発もはずれたが、何とか一体まで減らした。
「当たれ...!当たれ...!当たれ...!」
残り一体に中々当てる事ができない。意識が朦朧としてるせいで、照準が全然定まらなくなっているからだ。
―――...思えば、この時に武器を刀に変えてれば良かったのかもしれない。
カチッ、カチッ
「弾切れ...!?」
あまりにも外しすぎて、弾切れになる。慌ててマガジンを変えようとするが、ゾンビが既に傍まで寄って来ていて...。
「しまっ....!」
....ガブッ!
咄嗟に顔を庇った腕の手首の近くを噛まれてしまった。
「くっ...!」
すぐさまソイツを振り払い、すぐ後ろにあった機械室の扉を開けて逃げ込む。
「(やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい...!!!)」
ゾンビが入ってこないように扉を閉め、俺は焦る。
「(噛まれてしまった。感染してしまった。このままだと...このままだと...!!)」
よろよろと、奥の方に歩いて行く。
ふと、噛まれた腕を見れば、噛まれた所からウイルスが広がるように血管や神経が浮き出てきていた。
「く...そ....!」
風邪で意識もほとんどない。感染してしまったのだから、このまま意識を失えば間違いなくそのままゾンビと化してしまうだろう。
「それだけは...嫌だ...!」
このまま自殺すればゾンビ化は防げるだろう。だけど、俺は最後まで足掻きたい。
「...シャッター?」
奥に辿り着くと、シャッターが机につっかえて半開きになっていた。
「.....。」
風邪、感染と続けざまに意識に影響を与える状態異常を引き起こした俺は、無意識に中へと入っていく。
「はぁ....はぁ...はぁ...。」
電気をつけ、さらに奥へと歩いて行く。ゾンビの気配はない。...というか、人気そのものがない。
「なんなんだ?ここは....?」
とにかく奥に行ってみる。
「...まだ下があるのか...。」
下に降りようと足を進める。しかし、途中で足がもつれてこけてしまう。
「ぐっ...!」
意識が薄れる。....いや、まだだ...!
「こんな、所で...死ねるかよ...!!」
自らを奮い立たせ、立ち上がり、下に降り切る。
「ここは....?」
地下二階の電気を付けると、様々な棚があった。
「あ、救急箱...?」
その棚の中に、救急箱を見つける。
「...応急、処置....しなきゃ....。」
既に、俺は風邪と感染が重なり、まともな思考をしていなかった。応急処置をした所で、どうにもならないのに。
―――だけど、この判断が、俺を救ったのも間違いない。
「....あれ?」
応急処置を済ませた時、ある袋に気が付く。
「感染症別救急セット....?」
まるで、この状況を予想してたかのような物だった。
「....打ってみるか....。」
震える腕を抑えつつ、中から注射器を取り出す。
「一応、怪我に近い場所に...。」
この時、俺は救急セットにΩのマークがあった事に気付いてなかったのだが...まぁ、結果としては関係なかったので置いておこう。
「....ふぅ...。」
注射をして、何とか落ち着かせる。
「...あ、あれ...?意識が....?」
少し気を抜いたからか、急速に意識が薄れて行く。薬のせいかもしれないが...。
「(....まぁ、これでゾンビと化すなら、それまでだったという事...か...。)」
そこまで考えて、俺は棚にもたれつつ、死んだように眠りに入った。
~おまけ・その頃の友人~
「う~ん....遠い...。」
「学校に行きたいけど、なんで私の家って学校と離れてるんだ...?」
「...まぁいいや。ゆっくりじっくり行こう。」
〈あ゛あ゛あ゛~...。〉
ぐしゃっ!
「あっ、コンビニを経由して行けば食料とかも何とかなるかな。」
襲ってきたゾンビを流れ作業のようにバールで叩き潰す。
「...私が学校に着いた時に間に合わず全滅とかは嫌だなぁ...。」
メンタル的にきつい。と言いつつ、まるで無双のように友人の通った道はゾンビによる死屍累々な光景が広がっていた。
後書き
はい、主人公、感染させちゃいました。でも薬打ったから大丈夫だよね!
ちなみに、今の所原作キャラと登場人物の中で一番メンタルが固いのは友人だったりします。
それこそ(ありえないけど)全滅を目の当たりにしても発狂しません。
遼の父親も同レベルのメンタルだったりします。
感想、待ってます。
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