IS~夢を追い求める者~
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第1章:修正の始まり
第5話「思いのよらない再会」
前書き
マドカがヤンデレみたいな感じになりますが洗脳の影響です。本来はただの甘えたがりなシスコン&ブラコンです。
=桜side=
「...しかし、信じられないな。」
「んー?なにがー?」
俺は束と共に亡国機業について調べている時、ふとそう呟いた。
「...四季さんと春華さんが千冬達を捨てたなんて。」
「...でも、事実だよ。」
織斑四季さんと、織斑春華さん。千冬たちの親だった二人は、俺が事故に遭ってから6年近く...ちょうど、束たちが中学に上がった頃に千冬たちを置いてどこかへ行ってしまったらしい。
「何か目的があったのか、今の私でさえ、あの時の二人の考えは分からないよ。」
「そうか...。」
俺も与えられた知識の中に二人の事は載っていなかった。
「...いい人達だったのだから、何か事情があったと信じているんだけどな...。」
「それは私もだよ。」
俺や束は二人に結構優しくしてもらったりしていたから、実の家族達を“捨てる”なんて行為はしないはず...。
「....と、これぐらいか。」
「こっちも終わったよー。」
そうこうしている内に、亡国機業の戦力を調べ終わった。
「じゃ、気持ちを切り替えて。」
「早速明日出発だね!」
そうと決まれば明日に備えて早めに寝るか。
「...ここか。」
そして翌日、早速俺たちは亡国機業のアジトの前に来ていた。
「...あの、なんで俺まで...?」
「今は秋十君と俺が戦力だからね。束は自分のISを作ってなかったし、他の皆はバックアップだ。」
【頑張ってねー!】
早速通信から束の激励が入ってくる。
「俺、対人戦とかやったことないんですけど。」
「そうだな...まぁ、攻撃してきたのを軽く返り討ち的な感じでいいよ。」
「はぁ...?」
よし、突入開始だ!
「【束、データを随時送るから案内を頼むぞ。】」
【任せて!】
【それ以外のバックアップは私達もします。】
【皆さん、頑張ってくださいね~!】
クロエとユーリちゃんからの通信も入る。俄然やる気も湧いてくる。
「俺が先陣を切るから、ついてきなよ!」
「あ、ちょっ...!」
ステルス装置を起動させ、アジトに侵入していく。正面から入ってもいいが、面倒臭いので見つからないようにしている。
「...っと、ストップ。」
「っ...。」
秋十君を止め、通路の角に身を隠す。そうして通りかかる人をやり過ごし、また進む。
「...ここは...。」
しばらく同じことを繰り返し、アジト内を監視できる部屋を見つける。
「...秋十君、誰か来ないか見ておいてくれ。俺が行く。」
「大丈夫ですか?」
「なに、すぐ終わらせるさ。」
非殺傷改造した銃を二丁取り出し、ステルス装置を一時的に解除して突入する。
「っ!?なんだ!?」
「侵入者か!?」
「遅いっ!!」
室内にいた人たちを一気に撃ち、気絶させる。
ビーッ!ビーッ!
「ちっ、さすがに判断が速い。警報を発動させたか。」
撃たれる直前に一人が警報ボタンを押していたようだった。
「とにかく...警報を止めてデータを入手するか。」
「さ、桜さん!どうすれば...!?」
「秋十君、ISを展開して見張っておいてくれ。ただし、正体が分からないようにフルスキンでな。」
秋十君に指示を出し、コンピュータにハッキングを仕掛ける。
「っと、なかなかに固いな。だが、無意味だ。」
あっという間にハッキングを終わらせ、警報を止めてアジト内のデータを束に送る。
「よし、もういいぞ秋十君!ステルスを使って移動する!」
「は、はいっ!」
ステルス装置を起動させ、その部屋から離れる。
「光学迷彩装置も使うか...!」
ISのエネルギーを少し使うから気が引けるが、四の五の言ってられんしな。
【さー君!あっ君!】
「【どうした束!?】」
焦ったような声で通信を入れてくる束。
【送られてきたデータを見たんだけど、とんでもない情報があったよ!】
「【なに?】」
【そのアジトの幹部のいる場所の情報と...。】」
そこまで言って少し言葉を区切る束。そして、続きの言葉が紡がれる。
【...あっ君の妹、織斑マドカがいるって言う情報。】
「な...に....!?」
「マドカ...?」
秋十君の妹である織斑マドカがここに?
「【束!どこにいるか分かるか!?】」
【...ごめん。そこまでは。とにかく、一度幹部のいる所へ向かって!】
「【わかった!案内を任せる!】」
幹部の所に行き、幹部を問い詰めればどこにいるかぐらいは分かるだろう。
「秋十君!急ぐぞ!」
「マドカ...が...?」
「秋十君!!」
呆然としていた秋十君に一喝する。
「何がどうなっているかは、行けば分かる!今は急ぐぞ!」
「...はいっ!!」
走りだし、束の案内の通りに進んでいく。そして...。
「ここ...かっ!!」
辿り着いたドアを蹴破る。
「...随分と乱暴な侵入者さんね。」
金髪の妙齢の女性が出迎えてくる。傍らには一人の女性と、少女がいた。
「敵陣地の扉を蹴り飛ばすのが趣味なんでね。」
嘘です。さすがにそんな偏った趣味は持ってない。
「...それで、何の用かしら。篠ノ之束。」
「.....どうって事ないよ。ただの取引に来ただけ。」
やっぱり束に勘違いされたけど、今回はそのままでもいいや。と言う訳で声と口調を変える。
「取引...ねぇ。」
「ま、ちょーっと手荒な感じになっちゃったけどね。」
...あれ?秋十君、戸惑ってないな。俺が束の真似してる事に少しばかり動揺すると思っていたが...。....と、思ったら別の事に囚われているみたいだな...。
「...マドカ...?」
「(...なるほど、あの少女が織斑マドカか。確かに、千冬に似ている。)」
後ろの方に控えていた少女がその織斑マドカだった。
「秋兄?どうしてここに?」
「...それはこっちのセリフだ。どうして亡国機業に....。」
一見、険悪な仲には見えないけど、よく見ればマドカちゃんの瞳に違和感がある。
「あら、知り合い...と言うより、兄妹だったみたいね。」
「ここに居るのはさっき知ったからね。ついでにどこにいるか聞き出そうと思ってたけど、手間が省けたよ。」
「それで、貴女はどういう取引をしようと言うのかしら?」
秋十君達を余所に、俺らは会話を進める。
「...簡単な事だよ。この狂ってしまった世界を変えるために、私達と協力しよう。ただそれだけ。」
「協力...ね。それで私達になんのメリットがあるのかしら?」
取引なら双方にメリットがないとおかしいからな。その質問は尤もだ。
「...あなた達個人にメリットはないけど、“亡国機業”としてはメリットがあるよ。」
「....聞かせてもらえるかしら?」
「調べてみた限り、亡国機業の目的は“恒久的平和”らしいね。そして、今は穏便派と過激派に分かれている。そしてスコール・ミューゼル、貴女は穏便派らしいね。」
これは昨日の時点で調べがついていた事だ。良く知られている亡国機業のテロ行為はほぼ全てが過激派によって行われている。
「私の名前も当然分かってたのね。」
「本来の目的である恒久的平和とまでは行かないけど、私達は“女尊男卑”と、“ISの密かな軍事利用”の完全撤廃を目的としてるよ。それを達成できれば、そっちの目的にぐっと近づけると思うんだけど。」
「...そうね。」
もちろん、こんな穴だらけの取引で終わらせる気はない。いざとなれば束に頼りつつ強硬手段に出るかもしれない。
「....取引に応じてみたい所だけど...そちらの戦力、いまいち信用できないのよね。」
「戦力...ね。」
「いくら私達が穏便派でも、戦力を持つに越した事はないわ。」
それは言えてるね。もし襲撃された時に撃退できなかったら意味がない。
「...じゃあ、試してみる?」
「あら、貴女が戦うの?」
「まさか。最高戦力だけ見ても意味ないでしょ。相手なら、もうここにいるよ。」
そう言って秋十君を見る。あ、ちなみに俺が最高戦力と言うのはあながち間違いではない。
「...えっ、俺?」
「そうだよ。あっ君が戦うんだよ?」
「いやいやいや。俺、弱いですよ?」
そう言って戦う事を遠慮する秋十君。
「強い弱いは関係ないよ。...重要なのは、成し遂げる意志だ。」
「っ....!そうでした。」
「うん♪じゃあ、そっちから誰でもいいから相手になってくれる?」
覚悟を決めてくれて助かるよ。確かな意志を持った秋十君は、俺にも劣らなくなるからな。
「そうね...。なら、こっちはマドカにするわ。」
「...兄妹対決をさせようって事?」
「それもあるわね。...けど、戦う方法を問われていないのが大きいわね。」
...なるほど。マドカちゃんにISを使わせる魂胆か。...でも残念。
「ISを使うならどうぞ。....誰も、秋十君がISを使えないとは言ってないから。」
「っ!なんですって...?」
おお。初めて驚いた顔になったぞ。彼女。後ろの女性も驚いてるし。
「じゃ、頑張ってねー。」
「ちょっと!?丸投げみたいな言い方!?」
「....勝ちなよ。洗脳されてる相手に負けてちゃ、意味がないよ。」
丸投げみたいな言い方で秋十君の後ろに行こうとした時、耳元でそう言う。
「っ...!...分かってます。マドカだって、いつまでもああなのは可哀想ですから。」
「...いい返事だ。なに、いつも通り、努力の成果を見せる感じでやればいい。」
秋十君にとって、それがベストな戦い方だ。
「秋兄、ホントに勝てると思ってるの?ISに乗れるのは驚いたけど、どうせ全然使いこなせないでしょ?」
すると、マドカちゃんがそんな事を秋十君に言い始めた。...洗脳の影響か。
「変に私に逆らわずに、大人しくしてれば許してあげるけど....。」
「っ...お断りだ。俺はもう、惨めな立場には戻らない。勝てる勝てないかじゃない。俺は、この戦いで、マドカ...お前に勝つ!!」
「なっ....!?」
今まで散々な目に遭ってきたからか、震えていた秋十君だが、面と向かってそう言いきった。そして、その言葉を受けたマドカちゃんはショックを受けたように俯く。
....様子がおかしい...。
「...あは...あははは....。」
「っ!秋十君!気を付けろ!」
「アハハハハハハハハハハ!!」
突然狂ったように笑い出す。マドカちゃん。...おいおい、これも洗脳の影響か?
「あれだけ散々調教したのに、まだ逆らうんだ!!いいよ!もう一度...今度は絶対逆らわないくらいまでボロボロに調教してあげる!!」
「くっ....!」
狂ったようにそう口走るマドカちゃんに、秋十君は歯を食いしばる。...あんな姿を見たくないのだろう。
「...一時的だが、叩きのめしてしまえ。秋十君。」
「...いいんですか?」
「秋十君も、あんな姿を見たくないのだろう?」
「...分かりました。」
さすがにマドカちゃんの狂った姿は、相手側も驚くほどだった。
「ほらほら、危ないから避難するよ。」
「っ...それもそうね。そっちに心配されるとは思わなかったわ。」
「あんな風に狂うのは誰だって予想しないよ。」
用意されていた打鉄に乗って秋十君に攻撃を開始するマドカちゃん。危ないので俺たちはもっと離れる。
「...ここに連れてくる前から何かおかしいとは思ってたけど、まさかここまでとはな...。」
「ええ、私も予想外よ。」
どうやら、亡国機業側も知らなかったようだ。
「...洗脳はここまで悪影響を及ぼすか...。」
「.....どういうことかしら。」
「彼女は洗脳されてるんだよ。それも、科学的なベクトルじゃなくて、オカルト的な方で。」
秋十君とマドカちゃんの戦いを見ながらそう言う。
「洗脳....ですって?」
「術者の都合のいいように記憶や認識の改竄がされてるんだよ。...秋十君も、その二次被害で、今まで蔑まれてきた。」
「厄介ね...。」
戦いに目を移すと、どうやら強さ自体は秋十君が上回っているが、妹相手だからか攻めきれていないようだ。
「くっ...!」
「どうしたの?やっぱり秋兄じゃ私に勝てないんだよ!」
戦況自体は秋十君の圧勝だが、トドメを刺す事が出来ずに戸惑っているようだ。
「....これでどれくらいの強さか把握できたでしょ?」
「...ええ。そうね。...でも、身内と言うだけでここまで苦戦するのは...。」
やっぱりそこが不満か。...念のためにコレ持ってきて正解だな。
「秋十君!」
「っ、なんですか!?」
「これを!」
秋十君に渡したのは特殊なブレードで、シールドエネルギーを消費する代わりに絶対防御を貫いて操縦者を気絶させる電気を流す事ができる代物だ。
「それなら絶対に傷つける事はない!」
「っ!ありがとうございます!」
ブレードをキャッチしてお礼を言ってくる秋十君。そして、そのままマドカちゃんに対して構える。
「そんな武器を使った所で!」
「...せぁっ!!」
突っ込んできたマドカちゃんに対し、きっちりとカウンターを決めた。
「ガッ....!?」
「....ふぅ...。」
電気が流れ、マドカちゃんは気絶する。
「......はい、解除っと。」
停止した打鉄にアクセスしてマドカちゃんを降ろす。
「あの、今の武器って...。」
「特別製の非殺傷ブレードだよ。念のために持っておいたんだ。」
使うとは思ってなかったけど。
パチパチパチ
「.....おみごと。」
突然、この部屋にいる人物でない声が聞こえる。
「っ、誰....だ.....!?」
その声に俺は振り向き、その人物を確認する。そして、驚愕した。
「さすが桜君と言った所か。」
「秋十も、随分立派になったわね...。」
「四季さん、春華さん....?」
その人物は、千冬たちの両親だった。
【嘘.....?】
通信で聞いていた束も驚いている。
「総帥!?なぜ、総帥がここへ...!?」
隣ではスコール・ミューゼルが驚いていた。...え?“総帥”?
「なに、ここに侵入者が出たと聞いてね。興味本位で調べてみたらまさかの知ってる子だったからね。つい来ちゃったよ。」
「まさか組織に乗り込んでくるなんて、さすが束ちゃんと桜君だわぁ。」
束がバックにいるの普通にバレてるし。相変わらず何者だよこの二人。
「あの....知り合いですか?」
「あー...っと....秋十君の実の親だ。」
「....えっ?」
俺と二人を交互に見てくる秋十君。...ていうか、あの二人俺が以前会った時と全く見た目が変わってないんだが。10年以上経ってるんだぞ?
「...そう言えば、秋十が物心付く前に出て行ったのよね...。」
「あー...そりゃ、覚えていなくて当然か...。」
「えっ?えっ?」
話が良くわからなくて混乱する秋十君。
「....一度ゆっくりと話すべきか。」
「桜君、束ちゃんをここに呼べるかしら?」
「えっ、あー...。【どうだ?】」
【一応行けるよ。】
「行けるそうです。」
あ、でもユーリちゃんとクロエはどうするんだ?
【ゆーちゃんとくーちゃんも連れてくね!】
【えっ?あ、ちょ、束様!?待ってください!】
【ええっ!?なんですかこの人参型のロケットは...って、押さないでください!】
「........。」
....向こうで何が起こってるのか大体想像がついた...。
「なんか束ちゃんは相変わらずのテンションだね。」
「いや、なんで通信は聞こえてないのに大体分かってるんですか。」
「勘よ!」
そんなキッパリ言いきられても。
「...ああもう、お二人には常識が通用しないんでしたね...。」
「そこら辺は君や束ちゃんにも言える事だけどなぁ...。」
「天才的な頭脳を持ってる訳でもないのに予測不可能な事ばかりしてるあなた達よりはマシです。」
ホント、この二人は何もかもがおかしいからな。俺が事故る前から。
「秋十~!」
「えっ、ちょ、あの....。」
「あ~、赤ん坊からこの状態に至るまでの過程を抱けなかったのは残念だわ~!」
少し四季さんと話している内に、春華さんが秋十君に抱き着いていた。
「ほら、秋十君が戸惑っているからやめてください。秋十君にとっては、お二人は初対面も同然なんですから。」
「ぶぅ...。そんなの寂しいわよ。」
「...はぁ、とりあえず、束が到着するまで大人しくしてください。」
...俺一人じゃこの二人を抑え続けるか分からん。早く来てくれ束...。
後書き
亡国機業の思想は独自設定です。秋十君の両親が関わってますので。
公式でもチートレベルな束と、それに並ぶ桜ですが、一番のチートは実はこの二人だったりします。
感想、待ってます。
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