IS~夢を追い求める者~
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第1章:修正の始まり
第4話「夢を追う」
前書き
リリなののユーリを登場させたのは好きなキャラだからです。他に特に理由はありません。
=桜side=
「桜さーん。これ、解析終わりましたー。」
「ありがとうユーリちゃん。そろそろ一段落つくから先に一休みしておいてくれ。」
「分かりましたー。」
ユーリちゃんが作業部屋から出て行く。
ユーリちゃんがここに住んでから一週間が経つ。最初でこそコンピュータの扱いに戸惑っていたが、解析する事に関してはすぐに慣れて俺や束に近いレベルにまでなった。
「確かに解析関連に長けているとは思ったが...ここまでとはな...。」
なんでエーベルヴァインの所はこんな事にも気づかなかったんだ?秋十君と違って洗脳とかもされていないのに。
「...よし。終了っと。」
ふぅ、これで一段落。俺も休みに行こう。束や他の皆もいるだろうし。
「あ、あっ君、後で訓練室に来てね。」
「訓練室にですか?」
皆で昼食を取ってる時、束が秋十君にそう言った。...そういえばアレ完成してたっけな。
「あぁ、見せたいものがあってな。あ、クロエとユーリちゃんも見に来ていいぞ。」
「分かりました。」
いよいよお披露目だな。秋十君、気に入ってくれるといいが。
「...それで、見せたいものってなんですか?」
「あー、少し待ってくれ。....束ー!まだかー!?」
どこかに呼び掛けるように束を呼ぶ。
「あっくーーーん!!おっまたせーー!!」
「わぷっ!?ちょ、束さん!?」
訓練場の観覧席からダッシュで飛びついてきた束を秋十君はなんとか受け止める。...おい束、観覧席の高さから抱き着くって、秋十君ほど鍛えてないときついぞ?俺もできるけど。
「<ベシッ!>ほら、束、さっさとするぞ。」
「ふぁ~い...。」
チョップする事で引きはがし、本来やろうとしてる事をさせる。
「さぁさ!ご覧あれ!」
そう言って、空中に浮かぶキーボードを叩く。すると示した場所の地面が割れ、そこから“ソレ”は現れた。
「あれは...IS?」
「そのとーり!」
地面から現れた無骨な白い鉄の塊は束の言うとおりISだ。しかも...。
「あれは俺と束で開発した本来のISだ。」
「桜さんと束さんとでですか!?」
「いえ~す!私達の“夢”を追うために改めて作ったIS...その名も、夢追!」
空を自由に飛ぶため。無限の成層圏に行くため。宇宙の果てを目指す俺たちの想いが込められたのがこのISだ。
「性能は操縦者によって左右するが、軽く第三世代を凌駕するな。」
「それって、第四世代って事ですか!?」
ユーリちゃんが驚いたように聞いてくる。
「いや、ちょーっとばかし違うかな。」
「このISは確かに次世代型だよ。だけど、これは私達の“夢”を追うため一から作り上げた完成されたIS...。完成された世代ならその後に出る世代はない。そしてこのISは操縦者に合わせて進化し続ける。...言うなれば“最終世代”...だね。」
「最終...世代...。」
秋十君はそう呟きながら夢追に触れる。
〈マスター、織斑秋十様を認証。初期化及び最適化を開始します。〉
「えっ!?ええっ!?」
女性の声と共に、秋十君に纏わりつくように展開される夢追。その事に秋十君は戸惑っているようだ。
「あ、そうそう。最終世代は男女関係無く乗れるようになってるからね。...まぁ、それは秋十君専用の機体だけど。」
「せ、専用機ですか!?」
「そ。俺と束が秋十君に合わせて作ったISがこの夢追だ。」
元々、洗脳される寸前の束は秋十君にもISをあげるつもりだったらしい。だから、このISに使われているコアはその時のコアだとか。
「俺に...合わせた...。」
「その通り。秋十君は、シンプルで応用に生かせるものと、トリッキーだけど使いこなせば強いもの。どちらのが使いやすい?」
「えっ?...俺は才能がないから、シンプルな方がやりやすいですけど...。」
予想通りの答えだな。まぁ、その通りだけどさ。
「そんな秋十君に合わせたISがこの夢追なんだ。武装もシンプルなものでしょ?」
夢追の今の武装は、近接ブレードが刀型と剣型の予備を合わせて四本、遠距離武器はハンドガンとアサルトライフル、ショットガンが二丁ずつで、他には手榴弾型の爆弾が何種類かぐらいの、特殊な武器のないシンプルなものだ。
「ISなしでも使われるような武器をIS用に強化しただけなシンプルさだ。これなら使いやすいでしょ?」
「..なんか、軍人とかみたいな装備ですね...。」
「本来ならその武器の代わりに宇宙開発のものを入れるはずなんだけどねぇ...。ま、世界が変わるまで我慢してね。」
戦闘用に装備を整えた結果がこの軍人染みた武装だ。ブレードは少し違うけど。
「あ、それと単一仕様能力がもう使えるようになってるからね。」
「えっ!?それって、確か二次移行しなければまず使えないんじゃ...。」
まぁ、普通はそうだね。...というか、秋十君も結構ISについて分かるようになってきたな。
「実はだねあっ君!そのワンオフは少し特殊でねー、元々あっ君のために作った夢追なら、相性の有無は関係ないんだよ。というか、相性が悪かったらそれはあっ君のために作った機体じゃないね!」
横入りして解説をする束。...お前も説明したかったのか。
「本来ならその機体と操縦者の相性とかから自然発生する固有の特殊能力がワンオフなんだけど、夢追の場合は夢追自身の固有能力なんだよ!」
「夢追...自身の...?」
良くわからないような顔をする秋十君。...見ればクロエやユーリちゃんも分かってなさそうだ。
「まぁ、まずはこれを見てみなよ。夢追のワンオフだ。」
そう言って夢追の資料のデータを秋十君に送る。
「....“大器晩成”....?」
「そう。最初はてんで使い物にならない能力だけど、その名の通り、後になって強力になる能力だ。」
「これが、夢追自身のワンオフ...?」
夢追と大器晩成が結びつかないのだろう。秋十君は首を傾げる。
「...“夢”って言うのはさ、叶えようと思った時は、全然叶えられそうにないけど、少しずつ、少しずつその夢に追い縋ろうと努力してきたら、いつかは叶うモノだって、私は思うんだ。」
「夢を追い求めるために努力して、いつかはその夢が実る...。大器晩成って言うのは、それを表してたりもすると思うんだ。」
「....そうか。だから、“大器晩成”...。」
納得がいった顔をする秋十君。
「その、“大器晩成”って、どんな能力なんですか...?」
「おっと、ゆーちゃんやくーちゃんは資料を見てなかったから分からなかったね!はい、紙媒体の方の資料だよ!」
そう言って夢追の資料を二人にも手渡す束。
「“大器晩成”の能力は、操縦者のISを扱う時間に比例して全ての能力が加算というモノだ。」
「それだけ聞くと、確かにシンプルなんですけど...。」
「...なんですか、この仕様....。」
クロエが驚愕したように声を上げる。
「その加算される割合というモノが、100時間×0,1倍だ。」
「そんなの、全然割に合わないじゃないですか!?」
そりゃそうだ。専用機持ちでも、搭乗時間は500時間も行かない。例えそれでも、たったの1,5倍だ。あまりにも割に合わなさすぎる。
「...だから、“大器晩成”なのさ。」
「だからって、これはさすがに...。」
「いや、秋十君の努力と合わせたら、ちょうどいい能力なんじゃないか?」
元々秋十君に合わせて作った機体なんだ。使い物にならない能力なんてつける訳がない。
「秋十君は、才能を全て努力で補っている。その努力の結晶は、俺たち天災にも引けを取らない程だ。それを、ISに反映してみな?」
「っ....!」
「それに...秋十君。そのISを使いこなす努力の量と、その能力の相性。どう思う?」
「えっ...?ぴったりだと思いますけど...。それに、こういうシンプルな能力の方が俺にとってはいいです。」
そう言ってのける秋十君。...実際は、そこらのワンオフよりも扱いづらかったりするんだけど...ま、秋十君との相性がいいだけなんだけどね。
「一応、IS自体に乗らなくても、ブレードとかを生身で素振りするだけでも時間は加算されるようになってるからな?...と、言う訳で秋十君。」
「はい?」
「これからは木刀じゃなくてISブレードで素振りしてね?」
「....えっ?」
間の抜けた声をあげる秋十君。...まぁ、生身の人間が振り回すようなものじゃないからな。
「大丈夫大丈夫。実は秋十君の木刀に細工して少しずつ重くしてたから素振りできるぐらいの力は持ってるはずだよ。」
「ええっ!?いつの間に!?」
「ちなみにこれが普通の木刀。」
ISを一度はずして木刀を持たせる。
「軽っ!?...って、どれだけ重くしてたんですか!?」
普通の木刀が軽い=今まで使ってた木刀の重さがとんでもないという事に気付いた秋十君がそう言ってくる。ちなみに細工した方は普通の5倍の重さになってたりする。
「いやぁ、秋十君ってさ、才能ないとか言ってるけど、もう篠ノ之流を極めたんだろ?」
「...そりゃあ、必死に努力しましたから...。」
「だから次の段階に進んでみようと思ってね。」
それでとりあえず木刀を重くしようって事になった訳。
「じゃあ、あっ君。早速データを取るために戦ってみようか!」
「ちょ、急すぎません!?」
「大丈夫大丈夫ー。あっ君はいつものように剣を振ればいいんだから。」
そろそろ一次移行も終わるころだし、ちょうどいいだろう。
「そう言われても...。」
「なに、ISで篠ノ之流を使えばいいだけさ。なんなら、空を飛ばなくてもいい。」
「ちょっとさー君、それじゃあISの意味ないじゃん。」
いや、秋十君はISに乗るの初めてなんだからいいだろ。
「...わかりました。やれるだけ、やってみます。」
そう言って再びISを展開する秋十君。既に一次移行は終わっていたようで、白を基調に鮮やかな宇宙を表す蒼色のラインが入った機体になっている。
「よし。じゃあ早速始めようか。」
「...それはいいんですけど...。」
いざ始めようとすると歯切れを悪くする秋十君。なんなんだ一体?
「...なんで、桜さんもISを展開してるんですか?」
「そりゃ、俺が秋十君の相手をするから。」
そう言って試合を始める位置に俺は移動する。
「....ぇええええええ!!?」
「いや、そこまで驚く事か...?」
束の機械よりも、違う操縦者と模擬戦した方が効率いいじゃん。
「秋十君のような努力型は、事前に知識を蓄えて理解するより、実践して地道に理解していく方がいいしな。なに、簡単な操作方法は束か夢追が教えてくれるよ。」
「そういう事ではなくて...俺、桜さんに勝てる気がしないんですけど...。」
あー、そう言う事か。
「...当たって砕けろだ☆」
「それってつまり負けても気にするなって事ですよね!?分かりましたよ!」
分かってくれてなによりだ。
「それじゃー、始めるよー!」
「おう。秋十君、最初は防御だけしかしないから、まずは操作方法を大体覚えてくれ。」
「わ、分かりました。」
ISから情報を得て、俺にとりあえず斬りかかってくる秋十君。
ギィン!
「よし、そのまましばらくやり方を覚えようか。あ、ちゃんと銃の方も使ってね?」
「...やってみます。」
その後、しばらく秋十君の攻撃を防ぎ続けた。
「はぁ...はぁ...もう、無理です...。」
「....よし。大分覚えたみたいだな。」
ISを纏ったまま倒れこむ秋十君。周りには銃弾や折れたブレードが散らばっている。
あの後、秋十君が大体の武器を扱った後は、偶にカウンターや銃で攻撃したりして、最後の方は普通に戦ったりもした。
「桜さん...強すぎでしょう...。」
「そりゃ、俺の想起は同じ最終世代だし、というか、束のようにISを創れる俺がISをしっかり扱えなかったら意味ないだろ。」
それに研究所で鍛えられたりもしたからな。生身でもISに勝てるぞ。
「じゃ、これからも秋十君はISで鍛えて行きなよ。」
「はいっ!?え、なんでそこまでISを...?」
「俺と束が世界を変える最前線に立つだけでもいいけどさ...。」
理由はそれだけじゃない。
「...自分が取り戻したい事ぐらい、自分の手でやりたいでしょ?そのISは、それを行える立場に持っていくためだよ。」
「.....!...ありがとう、ございます。」
秋十君が取り戻したい事は生身でも行える事ではある。だけど、洗脳されている者に不用意に接触すると、最悪ISで攻撃されるかもしれない。都合よく記憶とかも改竄されているからありえなくもない。千冬とかは特に。
「(それに、“織斑一夏”の思惑を完全に叩き潰す事もできるからな。)」
俺が直接手を下すより、見下していた秋十君にやられる方がダメージもでかいだろう。
「攻撃、防御、速度、エネルギー...どれも第三世代の専用機の平均値を超えていますね...。」
「特殊武装がないので決定打に欠けますけど...。...なるほど、それをワンオフで補うのですか。」
ユーリちゃんとクロエが資料を見ながらそう言う。普通なように見えて、ちゃんと欠点を補っているのが夢追だ。...まぁ、努力を怠らない秋十君が扱うからこそ欠点がないんだが。
「しばらくは決定打に欠けたままだけどな。」
「とにかく努力しろって事ですね。....あれ?いつも通りのような。」
今更のようにそう言う秋十君。
「いつも通りだな。」
「いつも通りだね。」
「「いつも通りですね。」」
「...気づかなかった。」
本当に今更気づいたのか...。
「努力しすぎて努力バカになっちまったか...?まぁ、悪い事ではないけどさ。」
「努力バカ....否定できないのが悔しい...。」
むしろ折れない精神とかが好ましいから大丈夫だろ。
「さて、と言う訳で、そろそろ戻ろうか。」
「さー君とあっ君はシャワーでも浴びてねー。」
「おっけー。さ、行くぞ秋十君。」
「は、はい!」
シャワールームに行き、そこで汗を流す。
その後、俺は服を着替えて束と同じ作業室に入る。
「...後は、会社を立ち上げる人員だけだな。」
「そーだね。ちゃんと社員がいないと不自然だもんね。」
会社を立ち上げる準備はほとんど終わっている。後は社員だけなんだが...。
「当てはあるか?」
「もちろん。いい所があるよ!」
束がそう言うのは少し不安があるんだが...。
「どこなんだ?」
俺が聞くと、束は笑顔ではっきりと言った。
「亡国機業。裏で暗躍している秘密結社、亡国機業だよ。」
...まさか、この束の選択が、思いもよらない再会になるとはその時の俺は思わなかった。
後書き
ユーリは一週間の間にほとんど日本語を喋れるようになっています。病弱なだけで、頭が悪いわけではありませんから。ちなみに、秋十君とクロエもドイツ語を喋れるようになっています。
生半可な知識しかないため、ISの設定を細かく考える事ができませんが、見逃してください...。
感想、待ってます。
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