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戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~

作者:黒鐡
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二十五章
  甲斐・躑躅ヶ崎館からの旅路×坂本城での軍議内容

甲斐・躑躅ヶ崎館で、ソレスタルビーイング総司令官である織斑一真の命により、桜花・結衣・沙紀の三名が一真隊お頭代行として命令されてから出発をした一真隊。信州の山々を望みながら一路は西へと進んでいた。

今回は上空からの監視を桜花にしてから、残りの二名が地上からの定期通信により現在黒鮫隊が戦闘開始後今どこにいるのかを報告していた。川を渡り、峠を越えて一路を西へと進んで行くが、夜となってはいるけど京では戦闘中断している。

『現在甲斐を出発し、中山道をひたすらに西進。途中、美濃・岐阜城で一泊してからそのまま中山道を通って観音寺城までのようです』

『なるほど。こちらにとっては、予測通りとなっている様子だな。連合軍の他、武器弾薬を運ぶ小荷駄隊が前線の集積地に向けて出発したようだな』

『はい。中山道はこちらとしては驚愕する程ではありませんが、とても混雑しており一真隊の横を小荷駄隊が追い抜いて行く事が何回かありました。なのでそれぐらいの速度で全軍が動いている様子です。まあ一真隊はのんびりしていますがね』

結衣と沙紀は、通信機で手を置いておりその間は一真隊にとっては頭である俺との定時通信をしているので静かにしてもらった。やがて手を離したので、詩乃や雫が先程まで話していた内容を聞いて結衣らが聞いていた。

「観音寺城を出てから・・・・このまますぐに洛内でしたっけ?」

「結衣さんも沙紀さんも先程定時通信をしている間に、壬月様の使番が来て坂本に寄ると言っておりました」

「そうなのでしたか。ところで坂本城というのは、どの辺りなのでしょうか?」

「坂本城は、琵琶湖南湖の西側に位置する洛内を望むには丁度良い場所に建てられたお城ですよ。結衣さん」

滋賀県の琵琶湖南湖でしたか、まあそこからもっと直進すると黒鮫隊が配置していると聞いています。昨日は大量の鬼がこちらに来ては、試運転だと言っては愛紗さん達奥方衆の武闘派の御方達が槍やら鎌と剣で屠っていたと聞きますね。

「そこそこの広さもありますし、上洛前に最後の準備をするには良い場所ですよ」

「説明ありがとうございます、ひよ。ですが坂本よりも最前線では、既に鬼の群れがやってきては奥方衆が刈り取っていると言ってましたね」

「東山道を北上後、琵琶湖をグルッと回って大原口から攻める中入り組と、しっかりと足並みを揃える必要がありますからね。にしても、一真様達は今どのぐらい強化体の鬼を倒しているのでしょうか?」

「洛内には大勢の鬼がいたそうですが、遠距離からの狙撃により出来る限りの強化体を倒していると隊長からの報告にあります。まあ私達が到着後にいるのは、ほとんどが
足軽や武将らが倒せる鬼だと思いますよ」

「これだけの規模の軍隊を、手足のように動かす指揮するのは至難の業。しかも別働隊と足並みを揃えなくてはならないと言うのですから・・・・腕の見せ所ですわね。ハニーだったら、これぐらいの規模を簡単に手足のように動かすと仰ると思いますわ」

「でも一真隊、皆からだいぶ遅れてるの」

「それに関しては、隊長から指示ですので」

まあ遅れているのは確かなのですが、時間稼ぎをしなければならないという指令もありました。煌めく髪を靡かせて行軍しています、隊長の妾に目をやった。

「ん?どうした沙紀?さては余に見惚れておったのか?」

「いくら同性同士であっても、それ程ではありませんよ。集合時間に遅刻したのは事実ですけど、それだけで泰然自若としていられますね」

「この季節特有の暑くもあり、涼しくもある。そんな気怠い朝の一時に、ちょっと蓐との別れを惜しんでおっただけではないか」

「別れを惜しむと仰いましても、昨日の夜は随分と夜更かしをしていましたではないですかね。一葉様」

「・・・・てへっ♪『パシイィィィィィィィィイン!』いったーーーーー・・・・この痛みは主様か!?」

何か知らんが、トレミー3番艦にて通信で聞いていたらむかついたのでハリセンで一葉の頭を叩いてみせた。すると叩かれる理由に関してを幽が言っていた。公方ともあろう御方が朝寝坊をするなどと言っていたが、梅も幽が遅れていたらしい。

「・・・・てへっ♪『パシイィィィィィィィィイン!』いったーーーーー・・・・これが一真様のハリセンによる痛みでござるか。それがしも体験して改めて畏怖しました
ぞ」

「んもー、この二人はなのー。一真にとって大切な大切な戦になるんだから、朝寝坊はメーッなの!それにしても一真は良い所で、ツッコミもするのー!えへへー」

「いたたた、すまぬ・・・・以後気を付けよう。主様のハリセンにはもう喰らいたくないからのう」

「まだジーンとしますが、右に同じで」

鞠が良い事を言ったので、鞠にはハリセンじゃなくて空間から腕だけを出したかに見えたら、手で鞠の頭を撫でていたのだった。それを見た梅達は羨ましがっていたので、一葉と幽以外の者らに頭を撫でてやった。

「・・・・一真様の褒美をもらった事ですし、一真隊が遅れている現状も理解出来た事なのでそろそろ進軍速度を上げましょうか」

「一真様からのちょっとした褒美ではありましたが、ハリセンよりかはマシでしょうしね。坂本城では最後の軍議となるでしょうが、そちらで合流なのですか?沙紀さん」

「隊長は船で指揮を取っていますが、恐らく到着次第だと思います」

「ハニーの褒美をもう少し堪能したかったですが、まあいいですわ。それよりも腕が鳴りますが、八咫烏隊のお二人もしっかりと功名を稼ぐのですよ?」

「はーい♪って言っても、雀達は後ろから黒鮫隊と一緒に鉄砲を撃つぐらいだもんね」

「・・・・(コクッ)」

「援護射撃は任せろー!パパーンッ!」

「やれやれ。相変わらず緊張感の欠けるお二人ですわ」

まあ平常心だからそれはそれでいいかと思います。それと隊長は今現在、東西南北にて京から外に出た鬼共を刈り取っている様子です。前菜であると共にリハーサルも万全のようでしたが、何やら梅さんと森親子が争っていた。何故本陣先手である森親子が、こんなに後ろまで来ているのでしょうか?

「ワシらがどうかしたかのう?沙紀」

「何やら争っておりますが、森一家は本陣先手のはずですが?」

「今は一真がいないけどよー、今一真が何をしているかを聞きに来ただけなのにこのがもちょろぎは」

がもちょろぎと聞いた梅は矛を出そうとしていたが、梅の頭にも隊長のハリセンが流れ弾のように飛んできました。そして現在強化体の鬼とドウター化した鬼を刈り取っていると言ったら、ちゃんと残しているのか安心した森親子でした。梅は頭を押さえながら、烏と雀の所まで離れて行きましたが。

「ところで森親子はこの戦に勝つとどうなるかはもう知っていますよね?」

「応さ。戦に勝利すると、何やらワシら達は一真が乗ってきた船に乗ってこの日の本から脱出すると聞いている」

「オレもさ。だがまあ森一家の奴らを置いていくのも癪なんだけどよー、その辺りは一真から聞いているのかー?」

「まだ教える事はありませんが、我らの拠点にお連れした後に隊長の奥方衆に加わってもらいます。それも隊長の二番目に強い者と戦闘をしてもらいますがね」

強者と戦ってもらうと言ったらそれはそれはとても喜んでいた。まあ拠点に戻れば、自動的に黒神眷属の仲間入りとなって黒の駒と聖剣エクスカリバーを譲渡する事となっていますからね。本来の会話ではスマホに載っていますが、この戦で勝った場合はしばらく桐琴さんの菩提でも弔ってから森一家の奴らは暴れ者が多いと聞きます。大人しく出来ないのであれば、どこかに攻め込むとも書いてあります。

物騒な事=森一家だからか、それと本来の主人公だとこの先はしばらく連合を纏める者として久遠様の側にいるとか。それが終わり次第、駿府を取り戻すらしいですけどそれももうありません。松平衆の考えも分からないですが、私達の所に行けば考えも変わると思いますし歴史を見たら驚きだと思います。それに戦国チーム(仮)となっていますが、葵には軍師か医療班として働いてもらいましょうか。

「一真よりも二番目の強者と戦える日を待っているが、今は鬼をブッ倒す事が先だぞガキ?」

「わーってるよ母。一真に伝えといてくれ、オレらがブッ倒す鬼を残しといておけな。とな」

「はい。そう言うかと思ってもう伝えてありますが、森一家の働きを期待していると」

期待していると聞いた森親子はニカッと笑った桐琴さんと小夜叉が、私らに別れを告げると本陣先手に向けて馬に鞭を入れた。その背中を見送った後、私達は他の仲間達を振り返り言った。

「それでは私達も急ぎましょうか。詩乃に雫、頼みましたよ」

「御意」

「では一真隊!行軍速度を上げます!皆さん、駆け足ー!」

雫の可愛らしい下知に従い、速度を上げた一真隊は大きな遅れもなくではあった。中くらいの遅れでもあったが、最後の軍議が行われる坂本城へと到着した。何とか日が沈む前には到着しましたが、まだ隊長は船にいると思われます。

「何とか到着しましたね」

「想像以上に遅れていた・・・・というより、先手と本陣が想像以上に速度を上げていましたね」

「皆気が逸っているんでしょうか・・・・」

「長尾衆はともかく、織田衆、一真隊を含めて鬼に一度はコテンパンにやられていますからね。そろそろこちらの番だと考えているのも当然ですわ」

「そのようではありますが、我々にとっての腐れ縁は鬼ではなくドウターだと言う事をお忘れ鳴きように」

長尾衆以外の者達は、一度鬼によって負けているのか焦った感じではあった。それと使番が来て、到着してからすぐに上段の間まで来てくれと言われましたが、私達はお頭代行として来ているので桜花を地上まで降ろさせてから、三人でワンセットである私達が行く事となった。

城門を潜り、上段の間へと急ぎますが坂本城内部は小谷城というよりも二条館に近い造りとなっていました。木板の廊下を足音高く歩いて、私達は上段の間へと駆け込みました。隊長は現在最前線で戦っているので、通信は切っています。

「お待たせして申し訳ありませんが、皆の者は揃っていますか?」

「いや。まだ三若が来ておらん」

「ウチも柘榴がまだよ。・・・・あいつ、何してんだか」

「まあここはあと一歩で最前線ではありますが、隊長は現在強化体の鬼と戦っている為来られませんので」

ここから見える最前線は既に煙が上がっているが、これは全ては倒している証である。

「すみません、佐々和奏遅れましたー!」

「犬子とうちゃーく!」

「・・・・おまたー」

「っすー!」

「遅いぞ三若ぁ!貴様ら何をしておった!」

壬月がいつも通りの説教かと思いきや、母衣衆集めて夜間警備の打ち合わせをしていたようらしいですが、柘榴も同じ言い訳だった。長尾衆七手組と織田の母衣衆で夜警体勢を整えていたそうです。

「あらそうなの?たまには偉いわね柘榴」

「へへーっ、御大将、もっと褒めるっす!」

「偉い偉ーい」

「っすー♪」

柘榴がそう言ったら、美空様はたまには偉い事をしたようだったのか。もっと褒めて褒めてーというオーラだったのか、柘榴の頭を撫でる美空様の姿を見た三若達が羨ましそうに見つめてた。犬子は指を銜えているし、そんな三若がついっと視線を壬月さんに向けたのでした。

「・・・・・」←和奏

「「・・・・・」」←犬子と雛

「・・・・んー、ゴホンッ。・・・・き、貴様らも、なかなか気が付くようになったな」

「「!!!」」←和奏と犬子

「・・・・・♪」←雛

と褒められたのかもっと褒めるように言ったら、三若は思わず地雷を踏んでいました。

「へへー!もっと褒めて良いんですよ、壬月様~」

「褒めて褒めて~♪」

「金一封を所望するのー」

「・・・・調子に乗るな!」

と言い三若はいつもの拳骨を喰らった三若だった。

「あいたーっ!酷いですよ壬月様ー!」

「うえぇ~ん!結局、こうなるぅ~!」

「目がチカチカすりゅ・・・・」

「全く。ちょっと褒めたらすぐに増長しおってからに。ほれさっさと席に着け!」

今回は隊長のハリセンはありませんでしたので、一瞬壬月様も可笑しいな?という顔をしていましたが後々分かる事ですので気にしていなかった。三若は三バカのようにして席に座ったが、殴られた頭をさすりながらだったので三人の滑稽な姿に笑いが生まれた。

甲斐を発し、畿内への道を行く中で連合の中には良い雰囲気が生まれた。気負いもなく組んだばかりの独特の余所余所しさも無いので、連合全体が一つとなった感じであった。

『こちら最前線。今どこにいる?』

『今坂本城に来ておりますが、今はどんな感じなのでしょうか?』

『もう少しで前線のようだが、まだ強化体の鬼がいるので排除を行っている。洛内は遠距離で狙撃しているが、予想よりも多いので最前線に来た時に全足軽達のコーティングを解除してもらう』

「なるほど・・・・皆さんも揃ったので早速軍議を始めましょうか。隊長はただいま最前線で戦っておりますが、ご心配なく。現在強化体の鬼とドウター化した鬼のみを屠っている様子のようです」

「数的にはどのぐらい屠ったのか?『約一万から十万を屠った様子でしたが、久遠様達が刈り取れる普通の鬼もそのくらいいると仰ってました』ならば良し。麦穂、まずは物資について説明せい」

「御意。兵糧、玉薬などについては現在美濃より坂本城と観音寺城に分けて輸送しております」

「甲斐で言っていたように、後方の拠点として観音寺、そして前線の拠点としてこの坂本城を使うという事ね」

「そうです。尾張、伊勢の物資は駿府封じ込めを行う松平衆への補給物資として運用しておりますれば。京攻めを行う物資は美濃、観音寺、坂本の三箇所へ集積する形となります」

「道中の安全は?」

「南近江の国人衆の他、松永衆、大和の国人筒井などが協力してくれております」

「飯も茶も、鉄砲弾薬も私に任せておけ」

「うむ。麦穂。経路を示せ」

「御意!ではこれより主攻の作戦についてご説明申し上げるが、地図の映像を出してもらいますか?沙紀様」

そう言うと麦穂さんが、上段の間に詰める仲間達に顔を向けた。そして沙紀は無言で頷いてから、投影型の端末から大きな地図と共に作戦通りの動きをする為でもある。

「我ら連合軍主攻は、坂本城を最前線の拠点とし観音寺城を後方の拠点とし、一真様率いる黒鮫隊と奥方衆と合流した後に五条大橋を通って洛中に至った後。まずは禁裏を包囲しているであろう鬼共を追い払い、畏き所を御救い申し上げる事となります」

「一真の奥方衆と先手組の速度が重要になるわね。・・・・柘榴、松葉、頼むわよ。それと奥方衆魏である曹操様達の指示には絶対に聞く事、いいわね?」

「あいっすー」

「了解」

「禁裏の解放は先手組に任せる。・・・・頼むぞ、美空」

「あたしを誰だと思ってるのよ。魏の覇王だった御方と一緒に戦えるのは光栄の至り何だから、任せときなさい」

「うむ」

「次に、本隊である我ら織田衆についてですが・・・・織田衆は奥方衆魏と長尾衆が解放した禁裏の守備固めと、洛中に巣くう鬼共の掃討を行います。本陣先手の森一家は、禁裏守護より離れ、奥方衆呉と共に独自行動で洛中の鬼共を掃討して下さい」

奥方衆呉には優秀な諜報がいますから、雪蓮様らと森一家が離れたとしても明命や思春が暗殺のようにやってくれる。それに武田衆には、光璃様と同じ顔をしている三国志最強の武将であった恋さん達なので安心しています。

「掃討という事は、ワシらは鬼を皆殺しにすればいいのかのぅ?」

「ええ。一騎当千の森一家であれば、目立った働きをお願い出来るでしょうからね。それに奥方衆呉には、森一家と同じ匂いがすると一真様が仰ってました」

「へっ。よく分かってんじゃねーか。麦穂姉ちゃん、鬼共皆殺し命令はちゃんと受けてやんし呉にいた孫策と同様の匂いと言う事は、一真みたいに戦闘狂という事なのか?」

「そうですが、指示については孫策様にでも聞いておいて下さい。それと洛中掃討戦において、必ず兵を集注して運用を行って下さい。分散させてはマズイ地でもありますので、まあそこら辺の指示は周瑜様にでも聞いているかと思います」

洛中は朱雀大路を中心に碁盤目状に広がる町なので、横撃と背後に回り込めるような動きが容易く出来てしまいます。分散しては鬼の思うつぼとなるので、森一家と奥方衆呉にいる繋ぎ役の明命や思春達で連携を取れば最善の策とも言えるでしょう。本隊との連絡を密にするようにとの事ですが、我らはいつでも報告をしています。

「要するにワシらを心配している殿と一真だからなのだろう、その策通りに進むとしようかのうガキ!」

「応さ!森一家と孫策の姉ちゃんと連携してやんよ!」

「ふふっ、ありがとう」

慈愛に満ちた瞳で桐琴と小夜叉を見つめていたが、視線を外して再び前へ向くと武将の目となっていた。長尾衆は禁裏を解放後、奥方衆魏と呉と共に連携しつつ洛中の鬼を掃討させる。久遠様率いる本陣には、丹羽衆が警護につきますが軍師組と医療班や一部の黒鮫隊も本陣にて待機してもらいますかね。

「本陣には丹羽衆と奥方衆の軍師と医療班と一部の黒鮫隊が、警護と他での繋ぎをしてもらいます。なお壬月様率いる柴田衆と三若衆は、二条館の確保をお願いします」

「りょーかい!けど麦穂様、どうして二条館を確保するんです?」

「森親子の手伝いをした方が良くないですかー?」

「いやいやいや。母衣衆の二人がそれを言っちゃぁ、マズイでしょー」

「何だよ?雛は何でか分かってんのかよ?」

「えー、雛ちゃん一人ズルいー。犬子分かんないよぉ」

「簡単簡単ー。鬼に籠られたら面倒だからだよー」

和奏にとってはそれだけかもしれないが、籠城されたら攻略時間にどれほど掛かるか分からないからだ。壬月が注意したら、分かってたフリをしていたがヘタレなのか。禁裏を解放後はすぐに二条館を接収してから、拠点として洛中の鬼を掃討するというのが理に適っているからだ。そしたら三若の背後からハリセンを持った隊長の腕だけが出て来た。

『パシイィィィィィィィィイン!パシイィィィィィィィィイン!パシイィィィィィィィィイン!』

「ってぇぇぇぇぇ・・・・このハリセンは一真か?」

「隊長から代わりに言いますと『何を分かったように気取るバカがいるか!調子に乗ると壬月の拳骨と俺の拳骨を入れてやるから、覚悟しておけ!』だそうです」

「一真様のお陰でスッキリしましたぞ。こんなバカ共を連れて戦うのはと思ったが、私の拳骨よりも一真様の拳骨の方が怖い事ぐらいは私も知っている」

「ふふふっ、若手に経験を積ます良い機会ではありますが・・・・一真様の拳骨は想像出来ない程の威力かと存じております。なのでよろしくお願いしますね、壬月様」

「分かっておる。こんなバカ共を引き連れ回すのも、やってやる」

「松永衆は丹羽衆と共に本陣警護をお願いします」

白百合を解き放てば、何をするかは分からないからな。数寄者であるからか、京都でそのような無粋な事はしないと言っているが消滅対象となっている事を知っているのは俺達だけだ。後備(のちぞなえ)である江北衆はどうするかだったが、市達浅井衆は一真隊と共に行動する事となった。下知は全て俺らしいが、今はいないので代わりにいる桜花達が返事をした。

『了解しました。我ら一真隊頭代行でありますが、後々隊長と合流すれば下知は隊長へと聞いて下さい』

「それと隊長よりも詩乃達にお任せすると言っております」

「まあ黒鮫隊と奥方衆を率いている一真にとっては、それが上策のようね」

「はい。隊長は力を温存しておく事も重要ですが、最終的には一真隊の司令塔は詩乃か雫であり黒鮫隊の司令塔は隊長ですから」

「それより一真隊と黒鮫隊は何を担当するのかしら?」

「一真隊と黒鮫隊及び黒神眷属は、この戦の元凶であるルイス・エーリカ・フロイスの探索と成敗です。最もアレは邪な魂が憑りついたと言ってもいいので、それを成敗後に本人を保護する事が最大の目的でもあります」

「なるほどね。・・・・まあ妥当か」

「しばしお待ち下さい!聞く所によれば、エーリカとやらの狙いは一真さんのお命。ならば本陣にて一真さんをお守りするのが上策ではないのでしょうか?」

まあ確かにそうなのだが、俺の性格を考えれば分かる事だ。俺は決して後ろから指示を出すだけではなく、最前線にて活躍をしている事を忘れているのではないのか?

「隊長の性格は、最前線で戦う司令官であり鈍感な輩ではないと言っております。実際現在も最前線にて強化体の鬼とドウター化した鬼を退治していますから」

「ああそうでしたね。一真さんが、決して後ろでの行動者ではない事を忘れておりました」

戦闘狂でありながら、今までの行動を積み重ねていけばそう言われるかもしれない。ま、実際は神であるから死ぬ事も無ければ殺す事も出来ない。ひよ達でも俺の性格は熟知しているからか、一真隊はエーリカの探索だけでいいのかと久遠に聞いていた。

「洛中の鬼掃討戦も任せたいと思っているが、一真隊と黒鮫隊の鉄砲はやはり力だからな」

「御意でございますわ!蒲生衆と八咫烏隊の総力を挙げて、鬼共を蜂の巣にしてご覧に入れます!」

「頼もしい限りだ。・・・・良いと思うか、桜花よ」

「こちらとしても最重要任務がエーリカ探索なので、隊長曰く了解したと言っております」

戦いの元凶がエーリカだとしても、それは悪しき魂と鎖によって外史での決着を付ける事が俺らの最重要任務となっている。違和感もあるが、今は神界にて神の鎖が出来上がったのであとは探索するのみ。無理をせずに引く事は出来ないので、鉄砲玉のような俺であっても妻の気苦労を察する俺であるがそんなのは取っ払うぐらいの力を見せてやるさ。

「では下知は以上!出陣は明朝とする。共々の働きに期待する!」

『応!』

広間に響き渡る雄叫びであったが、その前に俺から言う事があると言ってそのまま待機だと言った結衣。そして数分が経過した時に空間が歪み、そこから出て来たのは鬼の返り血を浴びたようにしていた俺の登場により最前線は想像以上となっていた。

「麦穂の下知で終了であるが、その前に武将らに言っときたい事がある。それは各衆にいる足軽達だ」

「足軽達がどうかしたのよ?」

「もしかして一真がしたという聖なる儀式の事か?」

「そうだ。実際俺が聖なる儀式をやった張本人であるが、その内容についてはまだ話せんが聖なる儀式にて行った足軽達を神兵としたとこの場で言っておこう」

武将達以外の者らは、静かに頷いてから俺から言う事は以上だと言うと三々五々、部屋から飛び出していった。俺は返り血を浴びたが、すぐに浄化によって洗い流してからしばらく休憩をする事にした。桜花達はこのまま待機任務とするが、空間から飲み物を飲んでから詩乃に呼ばれた。

「一真様、最前線での戦はどうでしたか?」

「意外に強化体鬼とドウター化した鬼が多くてな、久遠達の連合が倒せる鬼は洛中におるがまだまだだ。それに恋する乙女は、いくら念を押しても心配になるほど臆病になっているな」

「やはり既に察知されておりましたか。一真隊の皆、一真様を大切に想い極め、この命を賭けて尽くす事についても丸分かりの様子ですね」

「一真一人で暴走されては困るけど、それが一真だから仕方ないのー。でもその代り、鞠達で出来る限り一真の背中を守るのが鞠達の仕事なの」

「俺はお前らを信用しているし、俺が宝だと言う事も理解している。だが俺の速度に追いついて来れない限り、俺は俺でやらせてもらう」

「お頭・・・・確かに私達は弱いかもしれませんが、お頭の力が私達の力なんですから」

「一人で何でも背負うのではなく、皆でエーリカさんを止めましょう!」

「まずは皆の気持ちを受け取ったとするが、全てが終わったとしても皆がまだ愛妾という事を忘れないでもらいたい。我らの拠点にて保護するが、一葉で言えば毎夜毎晩にて皆で交代をし俺の蓐を温めて寝物語として耳元で囁く事だと言うがな。妻達の最上の礼とも言うが、ここにいる桜花達よりも下なのだ。そこだけは勘違いしないでもらいたい」

「ま、毎晩ですかっ!?体力が保つかしら・・・・」

「か、歌夜さん、心配する所はそこですか・・・・」

「毎晩と言っても、これ程正室側室が埋まっておりますから。愛妾の出番が回ってきたとしても、月に一度かと思います」

「あっ!?ち、ち、ちが!わ、なくはないですけど、その・・・・あのっ!」

歌夜も案外スケベだと言われそうだが、鬼を倒したとしても皆でのんびり出来る程の時間はまだまだ先だと思った。拠点に戻れば、側室へとランクが上がってから愛紗達のように死ぬ寸前まで鍛錬をするアグニの楽しみな笑みが窺える。長かった物語もいよいよクライマックスだと思うが、俺らの拠点に戻れば最初は横文字やら服装から始めないといけないかもしれん。

『そちらについてはお任せを。拠点に戻り次第、我らで勉学をしますので』

『頼んだぞ冥琳達軍師達よ、横文字から今までの歴史振り返りや現在ある京都や久遠達がいた所を紹介しないといかんな』

決戦を間近に控えたが、抑えきれない興奮に包まれていた坂本城。俺は夜になるまで、最前線に戻ってから前菜による鬼退治を再開した。桜花達もそう感じたように、あちこちに焚かれた篝火というのは、パチパチと弾けながら火の粉を宙に振りまいてた。

篝火の周辺には幾人もの兵士達が固まって談笑していたが、もう少しで人間を辞めるからなのか力試しや談笑をするというそれぞれの思い思いとなり過ごしていた。爛々と空を照らす篝火は、まるで連合所属している兵達が持つ勇気のようだった。 
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