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遊戯王GX 〜漆黒の竜使い〜

作者:ざびー
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デュエルアカデミア編
  episode1 ーRe:startー

「はぁ〜……、遂に今日からか」

ベッドへと寝そべりながら、ため息を吐く。

橘 楓さんにデュエルアカデミアへの転入を薦められた日から早くもニ週間が経っていた。その間に以前通っていた学校を辞めたり、入学等の手続きを済ませたり、必要な備品を揃えたりと楓さん達に協力してもらい、急ピッチに作業を進めた。

特に新しいデッキの作製は大変だった。
楓さん曰く、プロデュエリスト"レンカ"として戦う時用と、通常時ではデッキを分けて欲しいとの事。そもそも、私がプロである事は一部の人間を除き、秘密らしい。

最上級(レッドアイズ)の連続召喚による数と力の暴力に慣れてしまっていた為、中々しっくりくる物が出来ず、それが完成したのは、昨夜だったりする。

それにペガサスさんから山のように贈られてきたカードは全て確認しておらず、軽く百枚を超えたカード達は目を通すだけでも大変なのだ。
その中にはやはり"チューナー"と名付けられたカードも含まれている。

「…………」

そして、それらとは別のペガサスさんと会ったあの日、帰り際に渡された二枚のカードを寝転びながら眺める。

一枚はレッドアイズと同じ、"アイズ"と名付けられたドラゴン。
そして、もう一枚は、白一色のカード。通常ならば絵柄が描かれている部分は疎か、枠もテキストの部分まで白色。
印刷ミスか何かですか?と言って見れば、酷く真面目な表情で

ーーそのカードには、強大な力が封印されてイマース。貴女はその封印を解く事が出来る、と実際にデュエルを通して実感したのデース。その力は必ず貴女を護りマース。

力の宿ったカード、そして私はその力を解放させられると。
ただのデュエリストである私にそんな特別な力があるかどうかはわからない。

ーーBut、これだけは覚えといてくださーい。
ーー強大な力は正しい使い方をすれば、自身やお仲間を護り救う事が出来ます。しかし、使い方を間違えば、傷つけ、破壊し、最後には自身の破滅のみが待ってイマース。

ーーくれぐれも、注意してください

ペガサスさんの去り際に言った言葉は今でもはっきりと覚えている。

「…………力か」

天井を見上げたまま呟く。
あの人はデュエリストの"強さ"と言う意味で言ったのではないと分かる。けど、それが実際にはどんな物で何を意味するかはピンと来ない。

考え過ぎで目眩がしてきた所にちょうどノックと共にお母さんが部屋に入ってくる。

「準備出来たの〜?って、あら似合ってるじゃない?」
「そ、そうかな……?」

部屋へ入り、私の事を見つけるなり目を輝かせるお母さん。
先日、楓さんに着ておくようにと言われたデュエルアカデミアの制服についての感想だと思うが、この制服、中々露出が多い。

青と白を基調した制服はどこかの有名デザイナーが作ったらしいが、太ももの半分程しか隠さないミニスカと、ノースリーブは如何なものかと抗議の声を上げざるを得ない。

そして頭の天辺から、脚の先まで眺めたお母さんの視線はちょうど首下辺りで止まり、一言。

「もうちょっと、欲しいわね」
「余計なお世話です‼︎」

カラカラと笑って誤魔化そうするお母さんを思わず半目で睨みつける。

「うーん、変なとこだけ私に似ちゃったのかしらね〜?せめてBまで育って欲しいわね……」
「あ、あるから!B!い、いやCもワンチャン……」

咄嗟に反論するがあまり自信がないのが声に表れてしまう。

「けど、残念ね。せっかく綺麗な紅髪なのに……。青より、赤い制服のが良かったわ」

ベッドの縁に腰かけると手櫛で髪の毛を梳いてくる。

「ん……、仕方ないよ。女子はみんなオベリスク・ブルーっていうクラスに入るのが決まりらしいから」

母親譲りの紅髪はお母さんの自慢らしい。
以前まで顔は疎か、髪の毛までフードで隠していた時はよく勿体無いと言われたものだ。

「そうよね〜。けど、女子寮なんでしょ?お母さん、華蓮が心配だわ」
「……どうして?」
「襲われないか……」
「……⁉︎んなことあるわけないじゃん!」

本気なのか、冗談なのかわからない発言に思わず吹き出す。

「あらあら、顔を紅くしちゃって。けど、女子寮は万魔殿(パンデモニウム)ってよく言うじゃない?」

だから気をつけてね?と言うお母さんはどこまで本気で言っているのかわからない。

「おーおー、親子仲良きことはいいことですね〜……」
「あら、楓さん……?」
「っ⁉︎居たの!」

いつの間にか、扉の所に楓さんが立っており、苛立ちを露わにしていた。

「あらあら、すいません。すっかり忘れてましたわ」
「全くいつまで待たせてくれちゃってんですか。ついでに、私的にはユリ科の植物とか咲いたら、好みなんですが……、まぁそれは置いといて」

なにやら物凄く不穏な事を言っていた気がするがあえて触れないでおこう。

「お迎えにあがりました。レンカさん、いや花村 華蓮さん」
「……はい!じゃ、お母さん、行ってきます!」
「はい、頑張ってね。応援してるから」

お母さんのエールを受け、アカデミアへと向け出発する。

「ねぇ、華蓮?」
「ん、何?」

家を出ようとする矢先、呼び止めれる。

「カを一番後ろに持ってきて、レンカって……、安直よね〜?」
「余計なお世話ですっ!!」


◆◇◆

ところ変わって、デュエル・アカデミア
そこの校長室は一通の電話によって慌ただしくなっていた。

「はいはーい、こちらクロノス校長……だいり……デスーノ。どちら様ですーか?
ファ!?海馬社長⁉︎ななな、急になんの用なのですすーか?
転入生⁉︎この時期に⁉︎前から連絡していた……?聞いてな……つべこべ言うな?そ、そんな事言われててもって、むちゃくちゃ……。
しかも、VIP待遇で⁉︎ワケガワカラないノーネ?
……はい、わかりましたノーネ!早速準備しますノーネ。で、到着はいつ頃なノーで?早朝一番の便⁉︎じゅ、じゅ、準備がぁ⁉︎
はい、すいませんナノーネ。静かにしますので、減給だけわ……。はい、万事了解ナノーネ……。それでーは……。がちゃり。」

電話を切ると今の数分の会話のうちにかいた冷や汗を拭い、ため息を吐く。

「朝から海馬社長からお電話とかトんだ厄日ナノーネ……。ふぅ、さて転入の手続きとーか今から大変ナノーネ」
「あぁ、そうだ!デュエルの試験官も誰か先生に頼まねば……」
「てか、VIP待遇って……、またエド・フェニックスみたいなプロデュエリストナノーネ?」

校長室を行ったり来たりしていると息を切らせたナポレオン教頭が入ってくる。

「クロノス校長代理(・・)!さっき船でアカデミアに来るのが見えでアルが、一体何なのでアール⁉︎」
「代理は余計なノーネ!って、もう来たノーネ⁉︎いくら何でも早すギルガメッシュ!!?」

電話を受け、10分と経たないうちの到着にオーマイガッ!と頭を抱え出す始末。

「こうなったらヤケナノーネ!ワタシーが、お迎えに行ってくるノーで、そこの書類に必要なとこだけ書いといて欲しいノーネ、お願いノーネ!」
「ワ、ワカッタっでアール……。ち、近いのでアルヨ」

普段なら、めんどいのでアールとでも言って断るだろうが、鬼気迫る表情のクロノス校長代理に迫られ、止むを得ず了承してしまう。

ナポレオン教頭は「アー、今日はとんだ厄日ナノーネ!ゴルゴンゾーラチーズ!!」とかなんとか言いつつ、校長室を飛び出して行ったクロノス校長代理を横目で見つつ、上質な肘掛け椅子に腰を下ろす。

「全く何なのでアール。しかし〜、もしも校長がこのまま帰らず、そしてクロノス校長代理がミスをすればこの椅子はワシのもの……」

グッフフ、と悪い笑みを浮かべつつ書類に取り掛かるナポレオン教頭がそこにいた。

◆◇◆

「さて、着きましたよ!レン……華蓮さん!」
「そ、そうですね……、ウプッ」

島に着き、ハツラツとする楓とは対照的に船酔いでフラフラとしている華蓮。

「全くもー、だらしないですねー、漆黒の竜使いさんが……」
「うー、やめてください、それ。今更ですけど、凄く恥ずかしいです」

その二つ名を呼ばれる事はプロと戦っている時は、なんとも思わないが、改めて冷静な時に呼ばれると恥ずかしいことこの上ない。
華蓮は耳まで真っ赤に染めつつ、苦言を呈する。

「そうですか〜?しかし、デュエルアカデミアめ、迎えの一人も寄越さないとか……海馬社長も舐められたものですね……。ちょ〜とっ、制裁加えた方がいいんですかね……」
「く、黒い……」

ちらりと黒い一面を見せる楓に恐怖を感じていると、島の中心の方角から鬼気迫る勢いで誰かがこちらへと向かって走って来るのが見えた。

「ぬぉぉぉぉぉぉ!!」
「ひっ⁉︎な、なんですか、アレ!」
「きっと、華蓮さんを狙おうとする不逞の輩です!私の後ろに下がってください」

そういう楓の行動はとてつもなく迅速だった。
華蓮を後ろへと下がらせると、係船柱を踏み台にし……

「せいっ!」
「ふんだらべっちゃ⁉︎」

不審者(仮)へと飛び膝蹴りーー別名・シャイニングウィザードでダイレクトアタックで強襲。
綺麗に側頭部へと命中し、男は三回転半しつつ、横にある倉庫の壁へとガッシャーンと派手な音を立てつつ、叩きつけられる。
目の前の惨事に目を丸くしていると平然と装った楓が不審者(負傷)を引きずって戻ってくる。

「お怪我はありませんか、華蓮さん」
「私より、その人……、死んでませんか?」
「大丈夫です、寸止めですから」
「完全に吹っ飛びましたよね⁉︎」
「ただの風圧ですよ」
「ありえない、ですよ⁉︎」

あくまですっとぼけようとする楓に対し、ツッコミを入れ続けて、しばらく立つとガバリと男が起き上がる。

「ほら、大丈夫でしょ?」
「デッドオアアライブ⁉︎下手すれば死んでますよ!」

未だ意識がはっきりしていない男を指差しつつ、叫ぶ。
華蓮が喚いている間に楓は意識が定まっていない男の下まで近づくと仰々しく一礼する。

「それより……、お初にお目にかかります、クロノス・デ・メディチ教諭。
橘 楓と申します。今日から此処でお世話になります」
「おぉ、待ってました。しかし、シニョーラ 楓?先数分間、記憶がないのデスーガ、何があったかしりませんーか?」

コテリと首を傾げるクロノス教諭に対し、「モイスチャー星人に襲われたんでしょう、よくありますよ」などとのたまう楓さん。もっともクロノス教諭もそれで信じてしまっていたが。

「まぁ、よくあるならきっとそうナノーネ。おっと、自己紹介が後になってしまいましたが、ワタシーは、クロノス・デ・メディチ校長……だいりナノーネ。で、其方のガールは?」
「えっと、花村 華蓮です。よろしくお願いします」

軽く自己紹介を交わすと早速アカデミアの校舎へと向かって歩き出す。

そして、荷物を預け、書類の処理を済ませた後、早速デュエルアカデミアのデュエルコートへと足を運んでいた。
ついでに楓さんは別の用事があるらしくこの場には居なかったりする。

「それでーは、今より試験デュエルを始めるノーネ」
「は、はいっ」

今先ほど会ったばかりのクロノス校長……代理とデュエルする事になり、若干緊張する。

「お、なんだなんだぁ?デュエルか!」
「兄貴ぃ、勝手に入っちゃダメっすよ!」
「翔、止めても無駄だドン」
「剣山君の言う通りよ、翔君」


いざ始めようとするときに限って四人ほど観客席の方から現れる。

「ど、ドロップアウトボーイ⁉︎一体どこから沸いて出てきたノーネ!ていうか、授業はどうしたノーネ!」
「おっ、クロノス先生じゃん。授業なら、今日はないぜ。それより、デュエルか?クロノス先生のデュエルって、久しぶりだなー。めちゃくちゃ強いから、あんたも頑張れよ〜!」

視線が華蓮へと集まり、思わず心臓が鷲掴みされたような感覚を覚える。

(っ……落ち着け。これくらい、大丈夫にならなきゃ……!)

久々の人前でのデュエルに極度の緊張に晒されるが、胸に手を当て、なんとか動悸を鎮める。

「可愛い子っすね……」
「おっ、翔、お前あーゆー子が好みなのか?」
「ち、違うっすよ、兄貴⁉︎」

「しかし、初めて見る顔だドン、明日香先輩は知ってるザウルス?」
「いや、心当たりはないわ、転校生かしら……?」

翔と呼ばれた男の子とその兄貴?の二人が戯れる一方で、黄色と青の制服の二人が疑問を口にする。

「邪魔が入ってしまったが、構わないノーネ。ぶっちゃけ、時間の無駄ナノーネ。シニョール 十代、絶対に、ゼッタイに邪魔はするな、ノーネ!」
「おぅ、心が広いぜクロノス先生!」

そう言うと最前列に腰掛ける少年と、それにつられて他の三人も彼に近い席へと座る。
こうして観客を間近に置いてデュエルするのも中々ないため、少し緊張を感じながら、コートの向かい側へと立つクロノス校長代理を見据える。

「さっきも言いましたが、このデュエルは成績の参考にするだけで、勝敗は関係ないノーネ。ナノーデ、あまり気負わずにデュエルすればいいノーネ」
「はい、よろしくお願いします!」

「それでーは、決闘(デュエル)!」
「……決闘(デュエル)!」

クロノス:LP4000
華蓮:LP4000

「先行はあげるノーネ」
「はい、私のターン、ドロー!『プチリュウ』を守備表示で召喚!」

「「ぷ、プチリュウ⁉︎」」

愛くるしい小さなドラゴンを見て、私を除いた全員から驚愕の声が上がる。
思わず目を丸くしていると、落ち着きを取り戻したのか口々に言い始める

「ま、まぁ……可愛いわよね、ぷ、プチリュウ」
「そ、そうすっね。それにまだデュエルは始まったばっかですし……」

なんとなく予想していたが、受けは悪いらしい。

「なんか失礼ですね……。カードを二枚伏せてエンドです」
「シニョーラ 華蓮がナニを使おうと関係ありまセン!それでーは、ワタシのターン、ドロー、ニョッ!」

華麗なターンと共にカードをドローすると、ニヤリと口元に笑みを浮かべる。

「ワタシは、フィールド魔法『歯車街(ギア・タウン)を発動するノーネ!」
「っ!」
「なっ、ヤバイ!気をつけろ、あんた!」
「っ……わかってますよ!」

デュエルコートの風景は一転し、幾つもの巨大な歯車が噛み合い、回り続ける機械の街へと変わる。
と同時に十代という少年から忠告が飛ぶ。

「さらに、フィールド魔法をセット!そして、『歯車街』が破壊された事により、デッキ・手札・墓地から一体、『古代の機械(アンティーク・ギア)』を特殊召喚するノーネ!カモーン、『古代の機械巨竜(アンティーク・ギア ガジェルドラゴン)』!」
「……来たっ!」

歯車街は崩壊し、崩れ落ちたパーツを基に一体の巨大なドラゴンが構築されていく。
そして、その攻撃力はなんと、3000。

(最上級モンスターは見慣れてますが、相手に出されるのはキツイですね……)

内心ゴチるも華蓮の表情に焦りは見当たらない。

「さらに、セットしたフィールド魔法をオープン!『始皇帝の陵墓』発動ナノーネ!そして、ライフコスト2000を支払い、『古代の機械巨人(アンティーク・ギア ゴーレム)』を召喚ッ!」
「……そっちもですか⁉︎」

クロノス:LP4000→2000

攻撃力3000のモンスターが二体並んだ様はまさしく圧巻の一言に尽きる。さらに、機械巨人に至っては、貫通能力まで持っているため、マトモに喰らえば致命傷だ。

「や、やばばばは⁉︎あ、ああ兄貴!やばくないっすか、絶対絶命っす!てか、もう負けっす⁉︎」
「いや、落ち着けよ翔。あいつ、諦めてねぇ」

負けたな、と三人が思う中で十代ただ一人が華蓮の持つ余裕に気がつく。
そして、ギャラリーが見守る先で華蓮はあらかじめ伏せておいたカードを発動させる。

「リバースカードオープン、『同姓同名同盟』発動!私のフィールドに存在するレベル2以下のノーマルモンスター一体と同名モンスターをデッキから全て特殊召喚します!
来て、『プチリュウ』!」

仲間のピンチに駆けつける英雄の如く、二体のドラゴンが現れる。

「壁を増やしましたか。しかーし、『古代の機械』モンスターには攻撃時に、魔法・罠カードを封じる効果があるノーネ。例え、もう一枚の伏せカードが攻撃反応系としても無駄!さらに『古代の機械巨人』には貫通能力があるノーデ、そんなお粗末なモンスターを並べても意味ナッシング!ナノーネ!」
「それは、どうでしょうか……。リバースカード、『スリーカード』発動!」
「フォワッチ⁉︎」

刹那、クロノスの場のカードが弾け飛ぶ。

「私のフィールドに同名モンスターが三体存在するときにのみ発動でき、相手のカード三枚を、破壊します!」

「すげえ、逆転したドン!」
「なるほど、低レベルのモンスターは相手を油断させるための囮なのね」

華麗なコンボを見せつけ、形成を逆転させる華蓮。

「くっ、ならば!魔法カード『死者蘇生』!甦れ、『古代の機械巨竜』!」
「蘇生カードまで⁉︎」

せっかく破壊したというのに再び現れるドラゴン
さすがに予想外らしく、声をあげる

「バトル!『古代の機械巨竜』でプチリュウに攻撃!」

ガジェルドラゴンの一撃を受け、呆気なく破壊されてしまうプチリュウ。

「これでワタシはターンエンドナノネ」
「私のターン、ドロー!よし、魔法カード『苦渋の決断』を発動します。デッキから『デーモン・ビーバー』を墓地に送り、同名カードを手札に加えます。そして、そのまま召喚!」
「また、低レベルモンスター……!」

一部から非難の声が上がった気がするがこれでいいのだ。

「さらに通常魔法『馬の骨の大価』発動!『デーモン・ビーバー』を墓地に送り、二枚ドロー!さらに『トライワイトゾーン』発動!墓地からレベル2以下の通常モンスターを三体特殊召喚します!私は『プチリュウ』と二体の『デーモン・ビーバー』を特殊召喚します!」

ポンポンポンッとリズムよく三体のモンスターが並ぶ。

「お、モンスターが五体並んだ!」
「けど、クロノス先生のモンスターに全然敵わないっすよ……」

絶望したようにメガネの少年が呟く。
私のフィールドにいるモンスターはどれも攻撃力1000以下の、言わば弱小モンスター。対する、クロノス校長代理のフィールドには、攻撃力3000のモンスター。
どちらが有利は一目見て明らか……

「……そんなわけない」
「えっ……?」

思わず言葉が漏れてしまう。

「魅せてあげます!力がない者の戦い方を!魔法カード『デルタ・アタッカー』、発動!同名通常モンスターが三体存在するとき、その三体はダイレクトアタックが可能となる!」
「なんっ⁉︎」

三体のプチリュウが嘶きを上げ、闘志を露わにする。

「バトルです!三体の『プチリュウ』でダイレクトアタック!」
「ふげっ、むぐっ、ふべらっ⁉︎」

クロノス:LP2000→200

プチリュウ三体の華麗な連携攻撃を喰らい、くるくると宙を回り、吹っ飛ばされたクロノスを見て、ギャラリーからオオッと歓声が上がる。

「カードを一枚伏せ、ターンエンドです」
「ぐぬぬ、やってくれたノーネ……。ワタシのターン、ドロー!
手札から魔法カード『暴走する魔力』を発動!ワタシの墓地の魔法カードを全て除外し、その数×300以下の守備力をもつ相手モンスターを破壊するノーネ。ワタシは三枚カードを除外したことで、守備力900以下のモンスターを全て破壊なノーネ!」

コート中央に発生した魔法陣から雷のような魔力が迸り、瞬く間に華蓮のモンスターは破壊され、客席からは落胆の声が聴こえてくる。

「せっかく五体も並べたのに……」
「これじゃ大ピンチだドン!」

「バトルするノーネ!ガジェルドラゴンでシニョーラ 華蓮にダイレクトアタック!」
「はわわわ〜!」

華蓮:LP4000→1000

ガジェルドラゴンの攻撃で発生した風にミニスカートが煽られ、思わず慌ててしまう。
はた迷惑な演出だと思う一方で、絶対仇を取ると密かに誓う。

「ワタシはこれでターンエンドなノーネ」
「私のターン、ドロー!手札から『ガード・オブ・フレムベル』を召喚し、さらに『馬の骨の対価』を発動!『ガード・オブ・フレムベル』を墓地に送り、二枚ドロー!
よし、やっと来た!私は墓地の『プチリュウ』三体を除外し、『聖刻龍 ー セテクドラゴン』を特殊召喚します!」

現れたのは、黄金の鱗に覆われたドラゴン。作り物であるガジェルドラゴンを威嚇するかのように咆哮を轟かせる。

「っ!シカーシ、ワタシのガジェルドラゴンには攻撃力は及ばないノーネ!」
「なら、セテクドラゴンのエフェクト発動!1ターンに一度、墓地のドラゴン族・通常モンスターを除外し、カードを一枚破壊します!私は『ガード・オブ・フレムベル』を除外し、ガジェルドラゴンを破壊する!セイントバースト!」

黄金色の奔流はガジェルドラゴンを呑み込み、跡形もなく消し去る。

「よし、これでクロノス先生の場はガラ空きだ!」
「チャンスっす!」

ギャラリーの声援に背中を押され、そのままバトルを決行する華蓮。

「バトルです!セテクドラゴンでダイレクトアタック!セイントストリーム!」

再び黄金色の奔流が今度はクロノスに向けて放たれる。

「甘々なノーネ!手札から『速攻のかかし』を捨てて、バトルフェイズを終了させるノーネ!」

しかし、機械仕掛けのかかしにより、セテクドラゴンの攻撃は防がれてしまう。

「くっ、カードを一枚伏せてターンエンド、です」

完全にやれた、と思っていた分攻撃を躱され悔しい思いをする。
そして、今の攻撃は運の悪い事にクロノス・デ・メディチに火をつけた事になる。

「なかなかやるようですが、ワタシの本当のパワーを魅せてあげるマスノーネ!ドロー!魔法カード『天使の施し』を発動し、三枚ドローの、二枚捨てるノーネ」

ここに来て、大量の手札交換に思わず泣きたくなる華蓮。
対するクロノスは目当てのカードが来たのかやる気満々の表情だ。

「私は魔法カード『古代の整備場』を発動し、墓地から『古代の機械箱』を手札に加えます。そして、ドロー以外の方法で手札に加わった事により、『古代の機械箱』の効果を発動するノーネ!デッキから『古代の機械砲台』を手札に加えるノーネ。そしてそしてェ、これでラストなノーネ!魔法カード『融合』!」
「っ!ここで⁉︎」

華蓮自身もよく使うカードをこの土壇場で発動された事により、動揺を隠せない。

「ワタシは手札の『古代の機械巨人』と『古代の機械箱』、『古代の機械砲台』を融合!カモンなノーネ!融合召喚、『古代の機械究極巨人(アンティーク・ギア アルティメットゴーレム)』!」

紫電を体躯中から迸らせながら現れたのは、『古代の機械巨人』よりさらにふた回りほど巨人なモンスター。天井に届きそうなほどの大きさを持つそのモンスターはかの『青眼の究極龍』と同じ攻撃力4400!

「っ!……私はあらかじめ『和睦の使者』を発動させておきます。エフェクトにより、モンスターは戦闘では破壊されず、戦闘ダメージも無効になります」
「ぐぬぬ、しぶといノーネ。次をラストターンと思うノーネ!」

クロノスも流石に既に発動されている効果は無効にできないため、ここは諦めて引く事を選ぶ。

「あ、危なかったっす」
「けど、クロノス先生に切り札使わせるなんて凄いわね……」
「そうザウルス。自分も初めて見たドン!」
「くぅー、俺も戦いてぇ〜!!」

四人共、デュエルコート内で圧倒的な存在感を放つ『古代の機械究極巨人』を見上げつつ感想を述べる。だが、十代以外の三人は内心で終わったな……と諦めていた。

例えセテクドラゴンの効果で破壊したとしてもアルティメットゴーレムには召喚制限を無視して、墓地から『古代の機械巨人』を蘇生させられる。そして、返しのターンでトドメをさせられるのがオチだ。

防御を固めても無駄、破壊しても後続が沸いてくる。もはや積んでいる。

(攻撃力4400がなんですか!プロリーグでこんなピンチ何度も乗り越えてきました!)

だが、華蓮は微塵も諦めてはいない。そして、その事に十代のみが気がつく。

「おっ、あんた凄えな。こんなピンチなのに勝つ気満々だな!」

「魅せてくれよ!」とサムズアップと共に声援が送られる。

「えぇ、先輩……魅せてあげます!私の新たな仲間を!ドロー!」

勇ましい宣言と共にデッキからカードをドローする。

「まずはリバースカード『アヌビスの呪い』を発動!フィールド上のモンスターを全て守備表示に変更し、さらに守備力を0にします。」

セテクドラゴンとアルティメットゴーレムに黒い瘴気がまとわりつくと二体共、耐えられなくなり、跪く。

「手札から『ドラゴラド』を召喚し、効果発動!墓地から攻撃力1000以下の通常モンスターを特殊召喚します。私は『デーモン・ビーバー』を特殊召喚!」
「今さら壁を増やしたところで遅すぎなノーネ!」

召喚されたどちらもアルティメットゴーレムには足元にも及ばない。
だが、華蓮は不敵な笑みを浮かべ笑ってみせる。

「これで終わりじゃないですよ!私はフィールド上から『ドラゴラド』と『デーモン・ビーバー』を墓地に送り、融合召喚!」
「っ!融合魔法無しで融合⁉︎」
「おっ、俺のコンタクト融合みたいじゃん!」

変わった融合召喚に、客席から声が上がる。

「鋭き牙の獣よ、漆黒のドラゴンと一つとなりて新たな力を生み出さん!融合召喚!出でよ!野獣のまなこ光し獰猛なる龍!『ビーストアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』!」

雄々しい咆哮を上げ、新たなドラゴンが姿を現わす。
そして、さっきまでの低レベルモンスターが獰猛なドラゴンへと化けた事に三人は絶句する。

「さぁ、バトルです!『ビーストアイズ・ペンデュラムドラゴン』でアルティメットゴーレムに攻撃!ヘルタイブバースト!」
「ダケード、アルティメットゴーレムは守備表示!よって、ワタシへ〜の、ダメージはないノーネ!」

守備力0となったアルティメットゴーレムへとビーストアイズの攻撃が放たれ、破壊する。

「さらに〜、アルティメットゴーレムは破壊された時、墓地から『古代の機械巨人』を特殊召喚できるノーネ!」

勝ち誇った風貌のクロノス。だがしかし……

「甘いのはクロノス教諭です!『ビーストアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』は戦闘でモンスターを破壊した時、融合素材とした獣族モンスターの攻撃力分のダメージを与えます!」

『デーモン・ビーバー』の攻撃力はたった400。しかし、ライフ200のクロノスへとトドメを刺すのは充分過ぎる。

「チェックメイト、です!やれ、ビーストアイズ!」
「ヌワァァァァ⁉︎」

クロノス:LP200→0

ビーストアイズの一撃を喰らい、本日何度目か吹っ飛ばされるクロノス。

◆◇◆

「ガッチャ!凄えいいデュエルだったぜ!」

デュエルに決着がつき、一番に私を応援してくれていた少年からエールをもらう。

「ぐぬぬ……、まさか負けてしまうとは。しかーし、今のは実力の6割程ナノーネ!生徒相手に本気を出す教師などいないノーネ!」
「……2ターン目にゴーレムとガジェルドラゴン出して、更に切り札のアルティメットゴーレムまで使った人が何を言うドン」
「……同感ね。流石に試験で、アレはないです」
「……サイテー、っす」

言い訳をしようとした為、四人から冷たい視線が照射され、早速針のむしろになっているクロノス校長代理。
弁論してあげたいが、流石にあの初見殺しは酷いと思うのであえてスルーさせてもらう。というか、デュエルアカデミアではアレが普通なのだろうかと疑問を抱く。

「しっかし、あんた面白いデッキ使うんだな!」

クロノスへの無言の圧力もとい、視線攻撃が終わったのか今度は先の決闘の勝者である華蓮に注意が向く。
四人に囲まれ、いつもなら頭が真っ白になりそうなところだが、デュエル後の高揚感のせいか然程気にならない。

「花村 華蓮です。えっと……?」
「そーいや、名前言ってなかったっけ?遊城 十代だ、よろしく」
「丸藤 翔っす!これでも、二年生っすよ」
「……丸藤って、何処かで」

丸藤の苗字に少し引っかかりを覚えるも二人も自己紹介を交わす。

「ラー・イエローの一年生、ティラノ剣山ザウルス。好きな動物は恐竜さん、だドン!」
「一年生って……。あ、じゃあ同級生ですね!」

一年生と思っていた翔が二年生と知り、二年生ばかり居ると思っていた為に同級生と知り合え少し表情を明るくする。

「最後は私ね。オベリスク・ブルーの二期生、天上院 明日香よ。よろしく、華蓮さん」
「は、はい!」

自己紹介が完了し、暫し談話に興じる。

「華蓮……、かれん。……れん」

しかし、その裏で明日香一人は難しい顔をして呟いていた。

「……レン、か……」
「……っ!」

その言葉が明日香の口から漏れた瞬間、ピクリと肩を震わせる。そして、一抹の不安が心中をよぎる。

「……まさかね」

幸いにも、明日香は偶然と片付けたらしく、華蓮(レンカ)の不安は杞憂に終わる。


 
 

 
後書き
というわけで厄日なクロノス校長(代理)VS華蓮ちゃんでした。
ここに来てようやく本名明かすとか遅すぎな気もしますがまぁいいよね?

Q:真っ白なカードって、どんなの?
A:遊戯王DMのドーマ編でペガサスが遊戯に託したアレ(レジェンド・ハート)的な……?

Q:封印って……、一体どんなカードだよ
A:ご想像にお任せします。ヒントは、強いです。後、派生カードも増えましたね。

Q:シャイニングウィザードって、やる必要あった?
A:無言の腹パンがあるから、OK。あと、気分。

というわけで、次回も読んでくれると嬉しい限りです。
 
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