魔法少女まどか☆マギカ こころのたまごと魂の宝石
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第14話
私があむちゃんを浄化した頃、ほむらちゃんも魔女を全滅させて、優木沙々を元に戻った部屋の隅に追い詰めていた。
「さて、どうするのかしら、優木沙々?」
「くっ・・・こうなったら。とうっ!」
沙々は天井ぎりぎりまで飛び上がった。そして・・・
「ごめんなさい!」
見事なまでの土下座をした。って、えええええええ!?
「もう見滝原には手出ししません!だから、どうか御慈悲を!!」
「どうする?」
「いや、どうするったって。」
「どうすればいいの?」
「私としては、本当にもう見滝原に手を出さないのならいいけど。」
沙々の態度に私とさやかちゃんにキリカさん、そして正気に戻ったマミさんは困惑する。
「そんな手に引っかかると思っているのかしら?」
でも、ほむらちゃんは冷徹に銃を向けた。
「そうだね。あたしも、あんたを許す気は無いよ。」
「あら。意外ね、日奈森あむ。あなたなら彼女を見逃すと思っていたのに。」
「だって・・・こいつ、あたしのこの格好の写真をあたしのケータイのカメラで撮って、唯世君達にメールで送ったの!!」
言い忘れてたけど、キャラなりの解けたあむちゃんは、犬耳メイドの姿に戻っています。
「唯世君達にあたしが変な趣味に目覚めたって思われたらどうしてくれるの!ヤバイ!あたし恥ずか死ぬ!!!」
「落ち着いて、あむちゃん!」
「後で誤解を解けばいいって!」
「似合ってたですよぉ。」
「焦らない焦らない。」
混乱するあむちゃんを✖️の取れたしゅごキャラ達が宥める。
「あむ、そう言う事はどうでもいいでしょ?」
「どうでの良く無い!!」
さやかちゃんも宥めようとするけど、あむちゃんは余計にヒートアップしちゃう。
「今!!」
その時、優木沙々がこの隙を突いて窓を突き破って外に逃げた。
「あいつ、待て!!」
それを見たさやかちゃんが追いかける為に飛び出した。
「ちょっと!美樹さん!!」
「ラン!あたし達も行くよ!!」
「う、うん。」
マミさんがさやかちゃんを止めようと叫ぶけど、あむちゃんが追いかける為にキャラなりした。
「あたしのこころ、アンロック!キャラなり、アミュレットハート!!」
「ちょっと日奈森さん!落ち着いて!!」
「深追いする必要は無いわ。」
「ハートスピーダー!!」
マミさんとほむらちゃんが止めようとするけど、あむちゃんは聞かずに飛び出してしまった。
「しょうがないわね。私達も追いかけるわよ。」
「ええ。」
仕方ないので、私達も追いかける事になった。でも、ほむらちゃんの表情が何処か深刻だったのは何でだろう?
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下僕を全滅させられた私は必死に逃げていた。
「あの黒髪の魔法少女、1人で全滅させるとか何者な訳!?」
私の下僕達は決して弱くは無い。なのに、あいつはそれを全滅させた。あれ程の手練れなら少しくらい噂を聞いてもおかしく無いのに、どう言う事?
「不味いわね。そろそろ魔力が・・・」
私は得意ではない身体強化で逃げてきたので、ソウルジェムの穢れが大分溜まって来た。なので、一旦足を止めて持っていたグリーフシードで穢れを除去する。
「あなたのソウルジェム、中々綺麗ね。」
その時、背後から声を掛けられた。振り向くと、そこには右手に剣を持ち、ゴスロリ風の白いドレスを纏ったサイドポニーテールの魔法少女が居た。
「こんな時に・・・あんたも見滝原の魔法少女なわけ?」
「違うわよ。」
「そう。なら、見逃してくれる?私はここから逃げるから。」
「そうはいかないわ。」
そ言うと、相手は剣を構えて襲いかかって来た。
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先に行ったさやかと後から追いついて来たマミさん達と合流した。
「全く。下手に追いかけて洗脳されたらどうするの?」
そして、あたしとさやかはマミさんに説教されていた。その時・・・
「ぐあああああああああああ!!」
遠くから悲鳴が聞こえた。
「今の、あの洗脳魔法少女の悲鳴じゃない?」
「何かあったのかな?」
「様子を見に行ってみましょう。」
私達は悲鳴の聞こえた場所に向かった。すると、そこには変身が解けた沙々と、剣を持った白い魔法少女が居た。
「うふふ。綺麗。」
そして、その子の手には沙々のソウルジェムが持たれていた。
「か、返せ・・・」
「嫌よ。これはもう私のもの。あら?」
すると、白い魔法少女はあたし達に気付いた。
「あらあら。まだこんなに魔法少女が。でも、欲張り過ぎはいけないわね。」
そう言うと、白い魔法少女は1つのケースを取り出してフタを開けた。その中には色とりどりのソウルジェムが入っていた。彼女はそこに沙々のソウルジェムを入れると、フタを閉じる。
「あんた、ソウルジェムなんて集めて何してんのよ!!」
それを見たさやかが叫んだ。
「何って、コレクションよ。これ程綺麗な宝石なんて、この世に存在しないもの。なんたって、“魂の輝き”なんだから。本当はあなた達のも欲しいのだけれど、流石に全員を相手して奪うのは無理そうだから、今日の所は引くわ。」
そう言うと、白い魔法少女は去って行く。
「待て!!」
「言い忘れてたわ。私は双樹あやせ。いずれあなた達のソウルジェムも貰うから、待って居てちょうだい。」
「私のソウルジェムを返せ!!」
沙々が立ち上がってあやせを追いかけようとする。でも、急に糸の切れた人形のように力無くうつ伏せの状態で倒れた。
「今まで魔法で好き勝手して来たんだから、バチが当たったのよ。」
倒れた沙々を見下ろしながらさやかが言う。でも、沙々は全く無反応だった。
「ちょっと、聞いてるの?」
さやかが沙々の身体を揺らす。でも、やっぱり反応が無い。何度も揺らすうちに沙々は仰向けの状態になる。その顔には全く生気を感じられなかった。
「あれ?」
「どうしたの、美樹さん?」
「マミさん。こいつ、息して無い!!」
「何ですって!?」
マミさんは沙々に駆け寄って脈拍や呼吸を調べた。
「どっちも止まってるわ。早く人口呼吸と心臓マッサージを・・・」
「そんな事をしても無駄だよ。」
その時、突然この場にキュウべえが現れた。
「無駄って、どう言う事よキュウべえ。」
「沙々はさっきの魔法少女、双樹あやせが連れ去ってしまったじゃないか。そこにあるのはただの抜け殻だよ。」
「え?」
私達はキュウべえの言っている事が理解出来なかった。
「キュウべえ、今のはどう言う意味かしら?」
「僕達は魔法少女と契約する際、日奈森あむの言うこころのたまごをベースに君達の魂を実体化させるんだ。それが、ソウルジェムだよ。」
マミさんの質問にキュウべえは淡々と答えた。それを聞いたさやかがキュウべえに詰め寄る。
「何よそれ。それじゃあ、あたし達の身体って今、魂の無いゾンビみたいな状態って事?冗談でしょ!?」
「僕は嘘はつかないよ。」
「何で言ってくれなかったのさ!!」
「聞かれなかったからね。全く、君達はいつもそうだ。ありのままの真実を伝えるとそうやって急に怒り出す。訳が分からないよ。それに、根本的な所はオリジナル魔法少女と差異は無いよ。」
「どう言う意味よ、それ?」
今度はあたしがキュウべえに質問した。
「オリジナル魔法少女が生み出すしゅごキャラは、魂の一部であるこころのたまごが変化し、分離して出来た存在だ。つまり、どちらも魂を肉体から分離させているんだ。一部か全てかなんて些細な違いさ。」
「何で、そんな事をする必要がある訳?」
「君達の身体はとても脆いからね。そんな状態で魔女との戦いなんて任せる事は出来ないよ。でも、その身体だとソウルジェムさえ無事なら、手足がもげようが、全身から血を抜かれようが、魔力で修復する事が出来るんだ。オリジナル魔法少女は身体は脆い人間のままだからこうはいかないよ。だから、むしろ感謝して欲しいくらいだね。」
「そんな・・・」
マミさんはショックが相当大きいみたいで、言葉を失っていた。この人、キュウべえの事を本当に信頼してたみたいだし。
でも、暁美さんはあまり驚いた様子じゃなかった。
「暁美さん。もしかして、この事を知ってたの?」
「・・・そうよ。」
あたしが聞くと、暁美さんは肯定した。
「ちょっと!それなら何でいってくれなかったの!!」
「私が言っても、あなた達は信じなかったでしょう?」
「そ、そりゃそうだけどさ・・・」
抗議するさやかを暁美さんはあっさりと受け流す。そんな中、キュウべえが聞いて来た。
「それで、そこに倒れている優木沙々の抜け殻はどうするんだい?」
確かに、こんな所に死体があったら後で騒ぎになりそうだし、どうしよう?
「別に、どうもしないわ。」
その時、暁美さんが言った。
「彼女は私達の敵だったのよ。なら、その身体が腐ろうが火葬されようが、知った事では無いわ。」
「ほむらちゃん!いくら何でもそれはあんまりだよ!!」
「なら、どうすると言うのかしら?」
「うっ・・・」
まどかが抗議するけど、他の打開策が思いつかなくて言葉を詰まらせてしまう。
「何も思いつかないと言うのなら、放置する事ね。」
「いや、放置する訳にはいかないよ。」
「ミキ、どう言う事?」
暁美さんに反対意見を言ったミキにあたしは聞いた。
「よく考えて、あむちゃん。さっきさやかとマミさんがあの子の身体を触ってたんだよ。」
「そっか!もし警察に見つかったら、指紋とかから2人が怪しまれちゃう!!」
「た、大変!さやかちゃんとマミさんが逮捕されちゃう!!」
「え?ちょっと2人とも!それどう言う事!?」
あたしはしゅごキャラの見えていないさやか達にミキの言った事を説明した。
「ヤバイ。マミさん!コレ何とかしましょう!!」
「何とかって、どうするの!?」
「そりゃ、埋めるとか・・・」
「埋めても腐ってきたら腐臭でバレるよ。」
さやかの提案に対し、キュウべえが淡々と指摘した。
「じゃあどうすんのこれ!?」
さやかは頭を掻き毟りながら混乱する。その時、解決策を提案したのは、意外にもキュウべえだった。
「何を悩んでいるんだい。方法ならあるじゃないか。あやせから彼女のソウルジェムを取り返せばいいのさ。それまでの身体の管理は魔力を使えば問題無いよ。」
「あんた、何を企んでいるの?」
あたしは警戒しながらキュウべえに聞いた。あんな事を言った後に、こんな提案をして来るなんて怪し過ぎる。
「企んでいるとは心外だね。僕はただ打開策を提案しただけさ。」
「そう。で、どうするの、さやか、マミさん?」
「こいつ助けるのは気が進まないけど、そうしなきゃあたし達の社会地位がヤバイんでしょ!!」
「それに、キュウべえの言う通り、ソウルジェムが魔法少女の魂だって言うのなら、それを奪うのは許される事じゃ無いわ。そう、許される事じゃ無い。」
さやかはともかく、マミさんはどこか自分に言い聞かせているような感じがして、どこか危うい感じがした。
「キュウべえ!あいつ、まだ見滝原の外に出てないよね?」
「多分、彼女は君達のソウルジェムも狙うだろうから、まだこの街にいるとは思うよ。」
こうして、あたし達はソウルジェム泥棒、双樹あやせから優木沙々のソウルジェムを取り戻す事になった。
因みに、沙々の身体は一人暮らしのマミさんに預かってもらう事になった。
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ほしな歌唄とそのマネージャーがエンブリオについて知ってるかもしれないと言う情報を手に入れた後、あたし達は直接、今のほしな歌唄の所属事務所の場所を確認した。
「ここがほしな歌唄の事務所か。流石に、この時間はもう真っ暗だな。」
「そうだね。どうする?自宅に乗り込む?」
「いや。芸能人相手に下手な事をすれば目立つ。ここは、穏便に行かなければならない。」
ニコの提案に対して、サキは反対意見を述べた。
「大企業に潜入しといて、今更何言ってんだ?」
「今回はデータを覗くとかではなく、直接会うんだ。潜入の時のようにはいかないぞ。」
「そりゃあ、そうだけどな・・・」
そんな風にあたしがイマイチ納得出来ないでいると、ニコが耳打ちしてきた。
「サキはほしな歌唄の大ファン。」
「あ、なるほど。そう言う事か。」
「こらそこ!黙っていろ!!」
すると、サキが顔を赤くしながら怒鳴って来た。
「で、これからどうすんだ?」
「とりあえず、どこかのホテルで休もうと思うが、多分持ち合わせでは宿泊費が足りない。だから・・・」
「分かったよ。あたしが何とかするから、報酬のグリーフシード1個追加な。」
「ああ、助かる。」
そして、あたしらは事務所の近くにホテルが無いか探した。その時、サキの携帯に連絡が届いた。
「ミライか。どうした?何!?カオルと海香をかずみをあすなろ市の外に連れ出しただと!?」
ミライとカオルそれに海香っつうのはこいつらの仲間だ。でも、カズミってのは何だ?響きからすると人の名前っぽいが、新しい仲間か?
「なあ、そのかずみってのは誰だ?」
「君には関係無い。」
そう言うと、サキは連絡を済ませてホテル探しに戻った。にしても、気になるな。
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「くっ・・・あ・・・」
私の中で何かを壊したい、殺したいと言う衝動が渦巻く。それと同時に身体には黒いツタのような模様が浮かび上がって来た。これが私が人間じゃない証。きっと、私はこのままだと暴走して皆を傷つけちゃう。だから、私はもう消えないと・・・
「かずみ!しっかりしろ!!」
なのに、私の仲間は私を助けようとする。どうして?私は失敗作なのに。もう、私の事は処分して今度こそ“本当に”ミチルを生き返らせなきゃいけないのに・・・
「かずみ、このトランクに入ってろ。この中に居れば、暫く暴走は抑えられる。」
「でも、カオル。これってその場しのぎじゃ・・・」
「大丈夫よ。魔女の力を極限まで抑える結界の張られた街を“親切なお兄さん”に教えてもらったの。かずみも前に会ったでしょ?その中でならあなたは暴走する事は無いわ。」
「海香。でも、私は失敗作で・・・」
「それでも、あなたは生きてるわ。だから、消えようとなんてしないで。そして、生きて。」
「これが、勝手な都合でお前を生み出したあたし達に出来るせめての罪滅ぼしだ。」
そう言うと、2人は私をトランクの中に押し込んだ。
続く
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