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IS《インフィニット・ストラトス》~星を見ぬ者~

作者:白さん
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第三十九話『二人きり』

 
前書き
お久しぶりです、白さんです。長らく更新を止めていて申し訳ありません。合間を見て何とか更新していきますのでご了承ください。 

 
「はぁ……」

開幕大きなため息を吐いてしまった僕。今日は何と言ってもスウェンと二人きりのショッピング。
隣にはデパートへ一緒に向かっているスウェン……この状況はとても嬉しい事なんだけど……。


僕がなんでこんなに不安かと言うと、十分前に遡る。




「~♪」



鼻唄混じりに僕は寮の廊下を軽い足取りで歩いていく。昨日、一緒に居た娘が誰かとスウェンに聞いてみたけど

「友人だ」

としか言ってなかった。スウェンの事だから詮索されるのが嫌いだろうし僕も問い詰めるつもりは無い。それよりも今日は──


「随分と機嫌が良さそうだな、デュノア」

「勿論だよ!今日はスウェンと二人きりで──」


……はっ!?今気づいた、目の前に仁王立ちしているラウラの事に。ラウラは維持の悪そうな笑みを浮かべて僕の隣に立つ。


「そうか、隊長と……それでは……な」





そうして何処かに行ったんだけど、凄く嫌な予感しかしないよ……


「……シャルロット、大丈夫か?」

「え?」

「先程から浮かない表情をしているが……体調でも悪いのか?」

「違うよ!ほら!昨日良く寝れなかったから少し眠いなーって!」


両手をブンブン振りながらスウェンにそう言う。


「そうか。無理はするな」

「うん、ありがとね、心配してくれて。スウェンは優しいや」

「俺が優しい?……どうだろうな、俺なんかよりもお前の方が優しい性格をしている」

「え?ぼ、僕の方が?」

「ああ、俺が保証する……む」


気づけばデパートは直ぐ目の前に。けど日曜日だからか人の数が昨日よりも多い。


「混んでいるな」

「まあ日曜日だからね、天気もいいし絶好のショッピング日和だよ」

「……」


するとスウェンが僕に手を差し出した。え?え?何?


「こうも人が多くては離れる危険もある、手を掴んでいればその心配も無くなるだろう」

「ええ!?手繋いでもいいの!?」

「良いも悪いもあるか、早くしろ」

「うん……」


そのままスウェンの手を掴む。うわ……僕の心臓、凄くドキドキしてる……スウェンに気づかれないかな?


「行くか」


手を繋いだまま、僕とスウェンはデパートへと。うん、やっぱりスウェンは優しいよ。僕が保証する♪











ドイツ軍上層部会議室にて。円状のテーブルにはそれぞれ、ドイツ軍の将軍等のトップクラスの人物が集まっていた。その中にはゲルハルト、シュハイクもいる。


「シュハイク大佐、先日現れた天輪について報告を」


促されたシュハイクは席を立つ。


「天輪は我が国内の研究施設を襲撃し、死傷者も数人……天輪は索的範囲外へと姿を消した。奴を見失ったのは手痛いが、変わりに面白い事がわかった」

「面白い事?」

「奴が襲った施設は……VTシステムを研究していた」


その言葉に部屋はざわつく。


「しかも此度のラウラ・ボーデヴィッヒのレーゲンに仕組まれていたものは其処で開発されたものだ」

「まさかVTシステムが……本格的に施設状況を洗い直さねばならんな」

「ふん!あの近辺の管轄はザルバ、貴様だろう!貴様も関与してるのではないのか?」


白い髭を撫でながらに言う一人の将軍。ザルバと呼ばれた初老の男は反論する。


「確かにあの近辺は私の管轄だ!VTシステムの施設があることを知らなかった非は認める、だが私は関与していない!」

「どうだろうな、貴様は然程信用──」

「喧しい!!」


そのシュハイクの怒声と共に部屋は静まり返る。


「内部の者で争う暇などはない、今我らがすることは次にもし天輪が襲撃して来たときに、いかに迅速に対応するかだ」

「シュハイクの言う通りだな」


今まで黙っていたゲルハルトは口を開き始める。


「奴の力は図りしれん。下手すりゃ黒ウサギ隊でも苦労すんのは必死だ」

「……」


ジトッとシュハイクは睨むが、ゲルハルトはそれを無視し


「だがな、こっちには切り札があんだろ」


皆が互いに顔を見合わせる。


「スウェン・カル・バヤンか……」

「そう、あいつは恐らく前よりも圧倒的に力を付けた……それこそ」

「私に勝るとも劣らない強さを持っているに相違ない」


うんうんと何度もシュハイクは頷く。


「最悪の場合はスウェンを本国に帰還させる事もあり得る。基本は我ら黒ウサギ隊に事態は任せてもらうことになるが、異論はあるか?」

「……」


無言。ゲルハルトはよしと呟き


「さて、んじゃ会議はお開きだ」









「老害どもめ、所詮は役立たずの烏合の衆か」


シュハイクは苛立ちつつ、通路を歩いていると端末がなる。それを見ると表情を更に曇らせ


「私だ。一般通信で掛けてくるなと何度もいっているだろう。ああ、奴は私の隊で面倒を見ることになった。あれの存在は計画にも邪魔になるだろうよ……わかった、切るぞ」


通話を切り、もう一度端末を仕舞おうとするが再び端末は鳴る。


「今日は随分と……む、これは……」










水着売り場へとやってきたスウェンとシャルロット。


「俺は買うものを既に選んでいる。お前も選んでくるといい」

「うん、そうなんだけど……」

「どうした?」

「僕あんまりこういうの選んだことないからさ、スウェンが似合うと思うのを選んでほしいかなーって」

「……」


暫しスウェンは沈黙する。


「ダメかな?」

「……俺もあまりよくわからん。厳選したものを持ってこい、話はそれからだ」

「うん!」


意気揚々とシャルロットは駆けていく。


「我ながら妙なことを頼まれたものだ」





「それじゃ着替えるね」

「ああ」


2着の水着を持ったシャルロットは試着室のカーテンをしめ、着替え始める。布の擦れる音が聞こえるがスウェンは気にもせずに時を待つ。音がやむと


「お待たせ」


カーテンが開けられると鮮やかな水色の水着を着たシャルロットが。


「どうかな?」

「……悪くはないと思うが、あまりお前と合わないのではないか?」

「それじゃもうひとつの着るね」


再びカーテンが閉められると今度は先程よりも早く終わる。開けられたカーテンから覗くのは、晴れやかな黄色の水着、シャルロットの髪の色も際立ってより明るく見える。スウェンは「ほう」と腕を組んでそれを見る。


「……スウェン見すぎ、エッチ」

「いや、すまない。やはりお前はそういう明るい色が似合っているな」

「ホント!?それじゃこれにするね!」

「いいのか?まだ時間はある、他に選んでも……」

「ううん、せっかくスウェンが似合うって言ってくれたんだもん、これにするよ」


スウェンは先日の簪とのやり取りを思いだし軽く笑う。


「そうか、ならいい。それで……」


隣の試着室に視線を移し


「お前は何時までそうして隠れている?」

「え?」


すると隣の試着室のカーテンが開くと、そこにはラウラが居た。


「ええ!?」

「……隊長、何時からお気づきに?」

「ここに来てからだ、こそこそ着いてくるのはあまり関心はしない」

「申し訳ありません……」

「まあいい……せっかくだ、女子生徒なら女子生徒らしくショッピングの一つでも経験しておくといい」

「……はい?」


更に咎められると思ったラウラだったが、思わず呆気に取られる。


「お前は水着を持っているか?」

「学園指定のものなら」

「ふむ、シャルロット、すまないがラウラの水着を選んでやってくれ」

「僕が?」

「適任だろう、頼む」

「……はぁ、スウェン、ズルい。そう頼まれると断れるのも断れないよ。わかった、ラウラが何でいるのかは置いておくとするよ」

「恩に着る、俺は少しよるところがあるのでな、あとは頼んだ」


そう言うとスウェンは何処かへと歩いていった。ラウラは申し訳なさそうな表情をしながら


「デュノア、本当にすまない、隊長とお前が二人きりと聞いて居てもたってもいられなくなった……」

「んーまあそうだよね、僕でもそうしたかもしれないし、気にする必要はないよ」

「デュノア……ありがとう」

「よし、それじゃスウェンが驚く位似合うのラウラのために選んじゃうよ!」

「ああ!頼む!」









シャルロット達と別れたスウェンは本屋へと足を運んでいた。品揃えも中々で、あちこちへと目が移る。そしてふと立ち止まったのは星に関するコーナーだ。


「……星か」


思い出すのは本国に居る義妹、リズだ。


「戻るときに何か買ってきてやるか」


いざ歩き出そうとしたが


「きゃ!」

「っ……」


スウェンは誰かとぶつかってしまい、相手の少女はその場へと尻餅を着いてしまう。


「申し訳ない、大丈夫か?」

「いえ、こっちが前を見てなかったので、ごめんなさい」


少女に手を差し伸べ、それをとり少女はありがとうございますと、立ち上がる。スウェンはその少女の容姿を見て数秒固まる。美しい長い銀髪と紫の瞳。何とも言えない違和感にスウェンは駆られる。


「何か?」

「……いや、すまなかったな」


その横を通りすぎ、少女はスウェンの後ろ姿を見やる。


「あの方が私の……とても素敵な御方ではありませんか」










「ふっふっふ……完成!!」


高らかに声をあげる天災こと篠ノ之束。


「スーくんもきっと喜んでくれるよね!」


束の目の前には独特なユニットの搭載された、全体が黄金色をした何かが鎮座している。


「この『束さんゴールデンエクストリームストライカー』をプレゼントしたら!!」


ネーミングについて言及されるのは後のことになるだろう。  
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