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IS《インフィニット・ストラトス》~星を見ぬ者~

作者:白さん
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第三十八話『勘違いのお買い物』

「付き合ってほしい」


スウェンにそう言われて、最初は頭が真っ白になった。突然のこと過ぎて頭が回らなかったというか……スウェンがそんなことを言うとは思わなかったとか色々考えたけど……

付き合ってほしいっていう意味は





「買い物の事だったんだね……」


土曜日の10時頃、誰にも聞こえないほどの小さな声で呟いた。私は今、スウェンとの待ち合わせ場所にした街の広間に向かっている。
今日の格好は何時もの制服。寮をでて、本音にそんな格好で何処に行くの?と聞かれたけど……とりあえず買い物って言った。

そして広間につくとスウェンは既に居た、しかも制服姿で。スウェンの私服ってそういえば見たことがないような……
スウェンは私に気づくと此方に歩いてくる。待たせちゃったかな……



「ごめん……待ってた?」

「いや、俺もつい先程来たところだ」

「なら……良かった」


って、このやりとり……ま、まるで恋人みたいな……ううん、これはただの買い物、スウェンと私はただの友達なだけ。


「どうした、簪」

「な、なんでもない……」

「そうか。それではデパートまで案内頼む」

「うん……」


私はスウェンの横に立ち、街へと歩いていった。





「……」


朝、スウェンが突然街に行くって言ってたから、ほんとは他の人の日常を尾行するだなんて、僕はしたくないけど……あのスウェンが街に行くなんて珍しいから怪しんで着いてきた……
ってあの子誰!?スウェンと仲良さそうに並んでるよ!?
しかも簪って恐らく名前。スウェンは基本的に他の人の事を苗字で呼ぶのに……。
ラウラならともかく、僕だって名前で呼んでもらったの結構時間かかったのに、あの子は普通に呼んでもらってる……スウェンとどういう関係なんだろ……。


「む~……気になるよぉ……」


あ!いけない、このままじゃ見失っちゃう!そうして僕のスウェンの追跡が始まった。











「む……気のせいか?」


少しだけ背後に気配を感じ、そちらに意識を移すスウェン。すると簪が


「ね、ねえ、スウェン」

「何だ?」

「どうしてデパートに案内してほしい、だなんて私に頼んだの?クラスの子にでも頼めば良かったのに……」


スウェンは暫し考え、直ぐに言葉に出す。


「お前くらいしかこのような事を頼める相手が居なかった……といったところか」

「私……くらい?」

「ああ」

「そ、そうなんだ……」


簪はスウェンに表情を見られないように下を向く。街並みを見ながらスウェンは感慨深く


「このように街へと来るのは初めてだな、何時も休みとなれば格納庫かアリーナか自室に居たからな」

「……スウェンって実は引きこもりじゃないよね?」

「変なことを言うな、俺は引きこもり等ではない」

「冗談だよ……真に受けないで」

「……お前はどうなのだ?」

「え?私?……私は……何時も格納庫に……」

「俺と変わらないな」

「そう……だね」


似た者同士、と言った所であろう。とスウェンは思う。


「そういえばスウェンは何でデパートに行きたいの?」

「来週、臨海学校があるだろう。その為に水着を買わねばならない。学校指定の物で構わないと思ったんだが、女子連中に海を甘く見ない方がいいと訳のわからん事を言われてな」

「そういうことだったんだね……なら最初にそう言ってくれれば勘違いしなかったのに」

「? 何か言ったか」

「……何も。そろそろつくよ」


こうして歩いていると、この街で一番大きなデパートへと辿り着いた。





スウェン達はデパートに入っていった……まさか……まさか……


「で、デート!?」


男の人と女の子が一緒にデパートだなんてそうしか考え……い、いや……スウェンに限って……そんなこと。で、でも……


「あれ、シャルロットじゃん」

「え?」


後ろから呼び掛けられてそちらを向くと、一夏と箒が一緒に居た。


「何してんだ?」

「べ、別に何もしてないよ!買い物でもしよーかなーと思ってね」

「そっか、俺達もなんだけどシャルロットも一緒にどうだ?」

「む」


……いや一夏、箒と二人きりなのに僕を誘うのはどうかと思うんだけどな~……ほら、箒凄く睨んでるよ。


「ごめんね、遠慮しとくよ」

「うーん、わかった。じゃ俺達行くから、またな」

「それではな」

「うん」


一夏と箒はデパートへと向かった。……は!スウェン達見失った!









「ふむ……」


スウェンは水着売り場に来るや否や、腕を組んで悩んでる。スウェンの視線の先にあるのは灰色と黒色に白いラインの入った水着、どちらにするか迷ってるみたい。


「……スウェン、悩みすぎ」

「すまない、こう言った買い物は初めてでな。どちらにするか決められないんだ」


またスウェンは静かに悩み出した。スウェンって本当に黒色とか灰色とかの渋めの色が好きだよね……けどスウェンなら……


「スウェンなら……黒が似合うと思うよ」

「そうか?ならばこれにしよう」


そう言ってスウェンは黒の水着を手に取った。


「いいの?悩んでたの直ぐに決めちゃって」

「ああ、お前が似合うと言ってくれたんだ。無下には出来ない」


至って真面目な……というよりも何時も通りの表情でスウェンは言うけど。


「すまないな、簪。付き合わせてしまって」

「ううん、私も新しいの買いたかったし」


手に持った袋をスウェンに見せながら私は言う。そしてスウェンと一緒にレジに向かう。


「お!よお、スウェン!」

「!?」


陽気な声でスウェンの事を呼ぶ男子……織斑 一夏……。


「スウェン」

「何だ?」

「先帰るね」


私は逃げるように、スウェンに顔を合わせずにその場から離れた。





「……簪」

「あれ、今の子って」

「4組の更式簪、俺の友人だ」

「ほう、4組か……一夏を見てまるで逃げるように行ったが……一夏、お前はまた何かしたのか?」


ジト目の箒に焦りながら一夏は


「いや知らねぇって! 俺初めて会ったし!……あ、そういえばさっきシャルロットと会ったぞ」


話を反らすかの如く一夏は言う。


「シャルロットが?……まさか先程の気配は……フッ、全く」


スウェンは軽く笑う。一夏達は何故か全くわからない様子だ。するとスウェンは手にした水着を持ち、元あった場所へ向かった。









「はぁ……」


結局スウェン達を見つけることが出来ずに、寮に帰ってきた。今でも思い出せる、デパートに向かうスウェンは何処か楽しそうな表情をしていた。僕はあんなスウェンを見たことないや。

部屋に戻ると


「帰ってきたか、シャルロット」


椅子に座ってスウェンはコーヒーを飲んでいた。


「随分とお楽しみだったみたいだね」

「まあ、楽しくなかったと言えば嘘になるな」

「そう良かったね」


スウェンに対して冷たい反応しか出来ない……僕って最低だ、あの子に嫉妬しちゃって……どうスウェンと話せば───


「シャルロット、明日は空いているか?」

「え?……えっと、うん、予定は無いけど……」

「なら明日、街へと一緒に行かないか? 臨海学校の為に水着を買いに行きたいのでな」

「今日買いに行ったんじゃないの?」

「俺としたことが、財布を忘れてしまってな……買えなかったんだ」

「そっか……一緒って、二人きり?」


横目で見るとスウェンはこくりと頷いてくれた。


「そうだな……もしあれならラウラも──」

「いや!二人で行こう!一緒に行こう!」

「あ、ああ……」


二人きり……スウェンと二人きり……これをチャンスにしなきゃ!……あの子の事も気になるけど、今は明日の事だけを考えないとね!







「はっ!?何故だ……何故か先を越されような気がするぞ!!」


一方のラウラは何かを察知したようだ……。

 
 

 
後書き
劾って空間認識能力あったんですね……かなり驚きです。

次回再び買い物回『二人きりの時間』お楽しみに!! 
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