魔法少女リリカルなのは 世界を渡りあるく者
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問題児編 第1章 手紙に誘われ
最強の階層支配者
前書き
うん。やってしまった。次回予告書いてから次の話書くっていうスタンス取り始めてからいつかはやるんじゃないかって思ってた
はい、まさかの1万オーバーです。そりゃそうなるわな。だって着地から白夜叉との邂逅までやるんだもん
最初はキンクリしまくろうと思ったけどそれやると違和感あったのでやめました。馬鹿みたいに長いですが、どうぞ
「ここから落ちたら流石にただじゃすまないな」
とりあえず焦ることなく、冷静に事態に当たろう。地面に衝突するまで猶予はある
「あれ?クロスミラージュ!?」
<環境変化を確認 最適化を開始>
「っち!予想通りデバイスは使えねえか。ちょっと体勢変えるぞ!」
「え?ちょっ!ゃぁ///」
俺は手を繋いでいた状態からティアナの膝と腰周りを支えて抱える。いわゆるお姫様抱っこの状態に変えた。そうすれば俺とティアナを一つとしてみた重力軽減で衝撃を和らげる
ただねティアナさん。俺の首に手を回してしがみ付くのはいいのですがね。そんなに力込められると息が苦しいのですが?
そんなことを思いつつ、魔術回路を励起させる。そのまま、いざという時のためにプリセットしておいた重力軽減を発動させようとして、気がついた
「ん?なんか上から声聞こえてきてる気がするんだが...」
上を見上げると、俺たちを灰にしようとしてるのではないかと思うほどにきつい光を放っている太陽と、これまた憎々しいまでに快晴な空。その中にポツンと、染みのように3つの黒点が存在していた。そしてそれは、こちらの落下速度が落ちていくほどに大きくなってきて
「って人じゃねえか!!しかも三人と、ありゃ猫か?」
見た感じ全員高校生程度、体もぱっと見頑丈じゃなさそうだ。とすればこのまま下に落ちればどうなるかなど自明の理。流石に見殺しにするのは少しだけ気がひけるので、あいつらもまとめて助けますか
「そこの少年少女!そのまま動くなよ!!」
少し計算することが多くなるが、仕方がない。俺は三人を対象に重力軽減をかける。マルチタスクのお陰でそこまで苦もなく発動できたが、それでも頭が少しキリキリするな。くそう、プリセットだけで済むと思ったのに...
そんなこんなで、もう地上、というより落下地点は湖面の上だったのか。まあいいや、地上はすぐそこに見えていた。水面に落ちればずぶ濡れ不可避なので、ちゃんと地上に足をつく。他の三人に関しても、うまく着地できたらしい
<最適化完了 リブートスタート セットアップ可能まで50秒 完全起動まで100秒>
ちょうどデバイスの最適化も終わったらしい。こんなんなら飛行魔法の練習しておけばよかったな...ってあれ、なんかデジャブが...
「し、信じられないわ!まさか問答無用で引き摺り込んだ挙句、空に放り出すなんて!」
「右に同じだクソッタレ。場合によっちゃその場でゲームオーバーだぜコレ。石の中に呼び出された方がまだ親切だ」
「.......。いえ、石の中に呼び出されては動けないでしょう?」
「俺は問題ない」
「そう。身勝手ね」
我が強そうな二人ーーヘッドフォンをつけている金髪でカジュアルな服を着た少年と赤いドレスみたいな服を着た少女が言葉を交わす中
「ティアナ、大丈夫か?」
俺は優しくティアナを地面に下ろしつつ確認する
「なんとか。いきなりでびっくりしましたが//」
顔を赤くしながら横に顔を逸らされる。まあ、あの状況だから許してくれ
さてと、一先ずやることは
「まず間違いないだろうけど、一応確認しておくぞ。もしかしてお前たちにも変な手紙が?」
ほう、金髪の少年はいきなりこんな場所に放り込まれたというのに冷静だな。その年にしては頼りになりそうだ
「そうだけど。まずは"オマエ"っていう呼び方を訂正して。ーーーーーーー久遠飛鳥よ。以後は気をつけて。それで?そこの猫を抱きかかえている貴方は?」
雰囲気からして無口で、三毛猫を抱えている少女はここで初めてこちらに興味を示し
「.........春日部耀。以下同文」
「そう、よろしく春日部さん。そこの貴方たちは?」
む、明らかに敬う気持ちとかなしに、というか見下してる感が凄いんですが。流石にこれは看過できないな
「その前に年上には敬語を用いて、敬うべき...とは言わないが見下すのはどうなんだ久遠嬢。俺はーー」
一瞬、どうやって名乗るか迷ったが詳しく言ってこいつらが理解できる可能性はないと思ったので
「遠藤蒼炎、こいつはティアナ・ランスターだ」
「そう。よろしく遠藤さん、ランスターさん。最後に野蛮で凶暴そうな貴方は?」
こいつ、少しだけむかつくな。言われて敬語すら使わないとか、喧嘩売ってるようなものだろう
俺は心の内で溜息をつきながら最後の一人の自己紹介を待つ
「高圧的な自己紹介をありがとよ。見たまんま野蛮で凶暴な逆廻十六夜です。粗野で凶悪で快楽主義と三拍子揃った駄目人間なので、用法と用量を守った上で適切な態度で接してくれお嬢様」
.........こっちはこっちでまた面倒くさそうな。これ別に助けなくてもよかった気がしてきた
「蒼炎さん、救える命をほっておくのはよくないです。だから間違ってませんよ」
「とは言ってもなぁ....はいごめんなさい。こんなこと考えないのでその睨むのをやめていひゃい」
余計なことを考えてたらティアナにジトーっと睨まれ、さらに頬を引っ張られた。これ地味に痛いし何故俺の思考がわかるのですか
「乙女の秘密ってやつです」
俺はその言葉に突っ込もうとしたが嫌な予感がするのでやめた。思考を放棄、とりあえず目の前のことを考えよう。こいつらは無視して
「手紙に書かれていたのは誘いの文句だ。ってことはここに誘った存在があるはず。流石に説明がないなんてこと...あり得るかもしれないけど、多分そこに隠れてタイミング伺ってるやつがそうだろ」
草むらに目をやると僅か、いや何かがかなりはみ出している。そのため、本人は隠れているつもりなのだろうが見えているし、気配に関しても少しも隠せてない
「なんだ、あんたらも気がついてたのか?」
「はぁ...。さっき久遠嬢に言ったことを聞いてなかったのか逆廻少年。年上には敬語を使うべきだと思うぞ」
「わりぃな。これが俺だ」
ヤハハ、と笑いながら悪びれることもなく、寧ろ威張りながら言う。ここにはまともな人間はいないのか。後ろでは2人が当然、嫌でもわかる、と逆廻に対抗するように言う。物静かな少女だと思っていた春日部嬢まで我が強いときたか...
「.........はぁ。とりあえずそこにいるやつ出てこいよ。いつまでもそこにいちゃこっちも困るんだが」
そろそろこの三人と話すのも疲れてきたので、話の流れを変えられることを祈り、草むらの方を睨む。流石に威圧まではしないが、潔く出てこないようなら殺気でも飛ばしてやろうか。と若干イライラしてきていたので思考がかなり暴力的になってきていた。ティアナにすぐばれ、腕を抓られてそんな考えはすぐに吹き飛んだが
「や、やだなあ皆様方。そんな狼みたいに怖い顔で見られると黒ウサギは死んじゃいますよ?ええ、ええ、古来より孤独と狼はウサギの天敵でございます。そんな黒ウサギの脆弱な心臓に免じてここは一つ穏便に御話を聞いていただけたら嬉しいでございますヨ?」
俺含め計四人の威圧を受け、怯えながらも草むらから少女?ーー頭にはウサ耳らしきもの、ミニスカとガーターソックスを履いているーーが出てきた。両手を挙げ、所謂ホールドアップ又は降参の意を表す仕草をしながらこちらに近づいてきている。歩きながらこちらにどうか話を聞いてくれと乞い願うが
「断る」
「却下」
「お断りします」
「あっは。取りつくシマもないですね♪」
性格に一癖も二癖もある問題児共にそのようなものを受け入れてもらえるわけはなく、逆に冷ややかな視線がさらに増し、余計に怯えただけであった。その様子はぱっと見では確かに野生の獣に怯える兎そのものであろう。がしかし
「それは、ちょっと感心しないな。その態度がこちらのデフォなのか?」
目だけは異なっていた。初対面にも関わらずまるでこちらを値踏みするかのごとく観察されるのはあまり気持ちの良いことではない
俺の言葉にまさか当てられるとは思ってなかったのか、驚きで目を見開く。そのまま誤魔化そうとするが、俺が目を細めると素直に頭を下げて
「確かにあまり褒められる行為ではありませんでしたね。非礼をお詫びします」
「それと、説明するもなにもこちらは貴方のことをなにも知らない。せめて名だけでも教えてもらえるか?」
「黒ウサギと申します。この度皆様方を箱庭にお誘いしたのは私でもあります」
本当か?悪いがこいつにカケラを超える力があるようには見え無い。ただ、完全に嘘ってわけでもなさそうだから力があるのか、あるいは他の誰かに協力してもらったのか
と、頭を下げている中春日部嬢が黒ウサギ.....なんか嬢ちゃんっていう風には見えないけど嬢でいいのか?まあいいや。黒ウサギ嬢の背後をとり、耳の根元の方をガシッと鷲掴み
「えい」
「フギャ!」
「うわ....」
隣のティアナが若干引くレベルの力で引っ張る。黒ウサギ嬢は女性が出してはいけない叫びをあげたあと春日部嬢に対して文句を言うが、残りの問題児達も春日部嬢に乗っかる形で黒ウサギ嬢の耳を弄り始めた
俺とティアナはその光景を見ながら
「これは止めるべきでしょうか....?」
「まあ、いいんじゃない?下手うつと俺たちまで巻き込まれそうだし。....煙管すっていいか?」
「ダメです」
「きびしー...」
のほほんと湖畔に座ってました
ーーーーーーーーーーーーーー
その後やつらが満足するまでに一時間弱かかってしまい、黒ウサギ嬢の説明を聞くまでにかなりの時間がかかってしまった。やっと聞けた説明をまとめると
・ここの名前は箱庭。ここには修羅神仏から授けられた"恩恵"を持つもの達が「ギフトゲーム」というもので争っているらしい。争うといっても賭けているものは、例えば果物、野菜、日常品などの売り物などから、土地や人、果ては恩恵そのものなどもあるらしい
・俺たちはその恩恵を所持しているためこの世界に招かれた
・ギフトゲームとは様々な"主催者が開催しており、勝者にはその"主催者"が提示していた商品をゲットできる。チップはなんでもいいらしいが、基本的に双方納得していなければ行えない。ただ町のお店やなんかでは結構やってるらしいので参加が簡単なものもあるのだろう
・"コミュニティ"に属さなければいけない
・この世界は外界よりも面白い
こんな所か。このあと、黒ウサギ嬢がこのまま立ち話もなんだから自分のコミュニティに来ないかと提案してきたが...
[ティアナ、どうする?]
[何か裏がある気がしますね...]
やっぱティアナもそう思うか。さっきから彼女の言葉の裏には焦りに近いものを感じた。まるで俺たちに離れられたら終わりと言わんばかりに
[でも、着いて行く以外に選択肢はない気がします]
[....うし。まあ何かあっても俺たち2人程度なら逃げられるしな]
そう考え、俺たちは彼女について行くことにした
ーーーーーーーーーーーーーー
さてさて、歩くこと30分程度、俺たちは一先ずのおもてなしとして喫茶店に入っている。途中十六夜少年が勝手に行動しそれを黒ウサギ嬢が追いかけるはめとなり、彼女の属するコミュニティのリーダーであるジン=ラッセル少年が彼女の役目を引き継ぐ形になるというイレギュラーが発生したため、本来の計画とは大分ずれたらしいが
やっと一息つけると、俺はレモンティーを、ティアナはミルクティーを頼み久遠嬢と春日部嬢から興味深い話ーー彼女たちの異能についての話を聞いていた所
「おんやぁ?誰かと思えば東区域の最底辺コミュ"名無しの権兵衛"のリーダー。ジンくんじゃあないですか。今日はお守り役の黒ウサギさんはいっしょじゃないんですか?」
張り付いた、薄っぺらい作り笑顔をしながらこちらの席に近づいてくるタキシード男がやってきた。視界に入った瞬間から嫌悪感を感じるこの男、しかも一瞬幻視した姿は血塗れの虎だ。真っ当な生き方をしていないことがうかがえる
ん?待てよ。俺今幻視した...?
おかしい。人間として今俺はここにいる。上位世界としての存在を概念的に封印することで依り代無しに存在を確定させてる俺が、その技能を現界で使えた...?ってことはやっぱりここは...
「蒼炎さん!」
俺はティアナの声で現実に引き戻される。見ればあの虎ーーえっと、コミュニティ"フォレス・ガロ"のガルドとかいったか?は俺たちと同じテーブルに座っており、そいつも含めて全員の目が俺、正しくは俺とティアナを見ている
えっと、どうしてこうなったのか記憶を探ってみる。確か...ガルドがいきなりこっちにきて、ラッセル少年のコミュニティの実態、魔王と呼ばれるものに全てを奪われてしまい底辺にまで落ちてしまったということをまるで同情することもなく、自慢気にこちらに教え、うちのコミュにこないかと誘ってきたと。その途中正論を振りかざしてはいたがそこの声にははっきりと新しい有能な駒が欲しいという思いが溢れ出ていた。そこからも俺はこいつと共に生き抜きたいとは思わないし、女性を入れようとは思わない。しかしこの少女達には甘美な誘いかもしれないと思ったが、それは俺の見立てが甘かった
初めに啖呵を切ったのは久遠嬢。彼女はここに来る前、かなりのお嬢様だったらしく、あの外道の誘いはまったく心が揺れないものであったらしい。春日部嬢はただ単に友達が欲しかったらしく、久遠嬢が友達一号になり、2人ともラッセル少年に着くことに決めたらしい。そして、俺の番になっていたようだ
「悪いが、部下を駒としか見ないような奴の下に付く気は無いし」
俺は一度息を吸い、目を閉じて
「てめぇ、ティアナが旗下に入ったらなにしようとしてやがった...?」
ーー考え事をしていても感じたこいつの卑しい感情。それを俺が見逃すとでも思ってんのか?
俺は少しの殺意を乗せてこいつを睨む。たかだかこれだけで汗を流し体が震えてやがる。こいつ、本当に誇れるようなコミュニティのトップか?
「......お、お言葉ですが」
まだ何か言おうとしていたので更に威圧を上げようとした時、久遠嬢が言葉を放つ。そして俺は彼女のことをまだ見誤っていたことを思い知らされる
「黙りなさい」
ガチン!!と歯が砕けるのも厭わない、そんなレベルでいきなり口を閉じた。今のが久遠嬢の力か。他者に対して強力な強制を働きかける力ってところか?
久遠嬢は残っていた紅茶を飲み干してから
「私の話はまだよ。あなたはそこに座って、私の質問に答え続けなさい」
ーーーーーーーーーーーーーー
そこからは久遠嬢の独壇場だった。彼女はガルドの本質に気がついていたのだ。だからこそ自身があまり好きでは無いと、誇れるものではないと言っていた力を使い、その悪行の数々を衆人の目がある中で彼自身に吐かせた
奴は自身のコミュニティを広げるために、他のコミュニティの女子供を誘拐し強制的にギフトゲームを仕掛ける。そして、例え吸収しても子供を人質に取り続け奴の下で働かざるを得ないようにする。そこまででも十分外道だろうに、それに加えて子供達はイライラするから殺したと。これは救いようがないな。殺された人々に対して何か思うことはないが、それをやりながら正論を述べていたという事実に嫌悪感を感じた
久遠嬢の拘束が終わると同時に身体を膨らませ、丸太のようになった右腕を振り上げ拳を彼女に叩きつけようとする。このままでは彼女は新鮮な挽肉と化してしまうだろう。そんなものを周りに見せるわけにはいかないし、先程のやり取りは見ていてすっきりした。だから
「逆上してまだ18にもなってない少女に殴りかかるとは、仮にも自分を紳士と名乗ったもののやることじゃないな」
ドコ!!
「????」
「え??!?」
「....なにがおきた?」
ガルドを万物流転を使い土に投げ飛ばした投げられた本人は何が起きたかわからないと半ば放心しており、他の三人もぽーっとしている。再起動が早かったのは久遠嬢だ。そして彼女は未だ仰向けに寝ているガルドを見下しながら
「ガルドさん、私達と『ギフトゲーム』をしましょう。"フォレス・ガロ"の存続と"ノーネーム"の誇りと魂を賭けてね」
ギフトゲームをしろと脅迫した
ーーーーーーーーーーーーーー
日が傾き、地平線が紅く染まる頃、俺たちは噴水広場で黒ウサギ嬢と逆廻少年と合流。ここまでの経緯を語ると
「聞いているのですか三人とも!!」
「「「ムシャクシャしてやった。今は反省している」」」
「黙らっしゃい!!!」
まあ、そうなるわな。勝てたとしても自己満足しか得られないようなゲームをこちら側から仕掛けたのだから。しかもゲームルールもステージも向こうが用意する。これじゃあ例え勝てないゲームを持ってこられても可笑しくないだろう。まあ彼女達の、あいつに即刻裁きを受けさせたいという気持ちは分からなくもないが
そして何言っても反省の色を示さない三人を見て黒ウサギ嬢は諦め、取り敢えず今出来ることをするためにとある店に向かうことになった
ーーーーーーーーーーーーーー
黒ウサギ嬢の後ろをついていき街を歩くこと数分、脇を綺麗な桜で埋め尽くす道に出くわした
「ほほう。これまた立派な桜並木だ...」
「今は真夏なのに桜が咲くわけないでしょう?」
「いやいや、まだ初夏だからな。気合の入った桜が残っていても可笑しくないだろ」
「? 今は秋だったと思うけど」
三人全員が同時に首を傾げると共に俺はなるほどと納得もしていた。確かにあの方法なら時間を飛び越えるのも不思議ではないな
「皆さんはそれぞれ違う世界から召喚されてるのデス。元々の時間軸以外にも歴史、文化などなど様々な相違点がある筈ですヨ?」
「へぇ?パラレルワールドってやつか?」
「正しくは立体交差並行世界論というもので、これの説明をすると軽く1日は過ぎてしまうのでまたの機会に。それよりも、着きましたよ」
黒ウサギ嬢の視線を追うと、そこには互いに向かい合う双女神の像が書かれている看板の店があった。あれが黒ウサギ嬢の言っていた、コミュニティ"サウザンドアイズ"の旗か
しかし時刻は夕暮れ時。恐らく店仕舞いをし始めたのであろう割烹着の女性店員を視界に入れた黒ウサギ嬢は滑り込みでストップを掛けようとするが
「まっ」
「待った無しですお客様。うちは時間外営業はやってません」
無理だった。その後も粘るが相手は岩のごとく動かない。さらには、こちらが(恐らく)ノーネームであることをわかった上での旗と名を求めるという行為。流石にこれは一店員としてはやり過ぎだと感じ、俺も話に入ろうとしたところ
「いぃぃぃやほおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!久しぶりだ黒ウサギイィィィィ!!!」
白い何かが黒ウサギ嬢に飛んできた。そして彼女はそのまま悲鳴を上げつつ回転しながら街道の向こうにある浅い水路の中に落ちていく
「なあティアナ。いまの....なに?」
「さ、さぁ...」
逆廻少年と店員さんが何か話していたが、そんなことにきにする余裕はなく、未だフリーズしている思考回路を再起動させるのに手一杯でした
ーーーーーーーーーーーーーー
「あらためて自己満足をしようかの。私は四桁の門である三三四五外門に本拠を構えておる"サウザンドアイズ"幹部の白夜叉だ。この黒ウサギとは少々縁があってな。私のことは黒ウサギ達をちょくちょく支援している器の大きい美少女と認識しておいてくれ」
「はいはい、本当にお世話になってます」
先程のことで少々苛立っているのか投げやりになって応える黒ウサギ嬢。しかし否定しないところを見るとどうやら本当らしい
因みに外門というのは箱庭の階層を示す外壁にある門のこと。数字が若ければそれだけ中心部に近く、さらに強力なもの達が住んでいるらしい。そしてここ、黒ウサギ嬢のコミュニティがあるのは七桁の外門。逆廻少年達流に例えるならばバームクーヘンの一番外側の皮がここだ(この例えを出した時白夜叉は笑っていたな)
そして白夜叉のいる四桁以上は上層と呼ばれ、先程噴水広場で逆廻少年が見せてくれた水の出る苗木を元々持っていた白蛇の神格も白夜叉が与えた恩恵らしい。(その苗木は蛇神を素手で殴り飛ばして手に入れたらしい)因みに神格とは、その恩恵を受けたものをその存在が属する種の最高ランクにまで引き上げるものらしい。例えば人に与えられれば現人神や神童と化すといった具合だ
「へぇ? じゃあお前はあのヘビより強いのか?」
「ふふん、当然だ。私は東側の"階層支配者だぞ。この東側の四桁以下にあるコミュニティでは並ぶものがいない、最強の主催者なのだから」
最強、その言葉に問題児三人は目を輝かせ立ち上がる。その姿からは最初の目的、依頼のことなど二の次になっていることが明らかだ
それに対し白夜叉も乗った。元々遊び相手に飢えていたらしく、黒ウサギ嬢の制止も聞かない
「して、そこの先程からあまり喋っていないおんしらはどうするんじゃ?」
「流石に自分の数倍生きて、尚且つ全力を出しても生きて勝てるかわからないような人に挑戦するなんてことはしないし、する意味がない」
「ほう。つまりおんしは私に勝てると?」
目を細めながら問われるが
「今の貴方に対してなら、可能性はある」
「そこの女子、おんしはどうじゃ?」
「私一人では無理でも、蒼炎さんと一緒なら」
そう言うと
「フ....フフフ....フハハハハハ!!良い、良いぞおんしら。おんしらには小僧達とは別のゲームをやろう」
「おいおいまてよ白夜叉。それは一体どういう了見だ」
逆廻少年が白夜叉につっかかる。それを右手で制し
「まあ待て童ども。確かに先におんしらにも聞くことがあったの。おんしらが挑むのは"挑戦"かーーー」
いつの間にか左手に持っていた青色のカードを掲げ
「それとも"決闘"か?」
瞬間、世界が変わった
白い雪原と凍る湖畔、そして水平に太陽が回る世界へと俺たちが存在している場所が突然変わった。この変化に先程の三人は驚き、固まっていた。恐らくは星を一つ、世界を一つ創り出したかのように見えているのだろう。だが俺は騙されない。なにせ、これと同じことを限定的に俺は出来るのだから
「白夜叉、白夜と夜叉。この世界はお前を表すゲーム盤といったところか」
「そうとも。ーーーさて、今一度名乗り直すとしよう。私は"白き夜の魔王"ーー太陽と白夜の星霊・白夜叉。おんしらが望むのは、試練への"挑戦"か?それとも対等な"決闘"か?前者ならば手慰み程度に遊んでやる。だがしかし後者ならばーー魔王として、命と誇りの限り闘おうではないか」
あの、全員が全員自信家である三人が共に即答出来ずにいた。当然だろう。このゲーム盤と高まった威圧、これを受けてもまだ引かぬのはただの愚か者のすること。その点彼らはわかっていた。ゆえに
「わかった。今回は試されてやるよ白夜叉」
「ええ、そうね」
「うん」
彼らは命を捨てることよりもプライドを捨てることを取った
俺は内心ホッとしつつも
「その中に俺たちは含まれてない、っていう認識でいいか?」
「勿論。おんしたちは決闘じゃ。この私をコケにしたのだからな」
笑いながらそう言ってきた。くそ、これなら下手に出ればよかったか?今更ながら自分の言動をほんの少し後悔する
「では、先に小童どもの試練からやるとするかの」
ーーーーーーーーーーーーーー
挑戦者は春日部嬢。試練の内容は気高きグリフォンに認められるというもの。その試練に対して彼女は臆することなく、勇敢に立ち振る舞い見事達することができた
「さてと、ではこちらも始めるとするかの」
「し、白夜叉さま!どうか考え直してください!!」
先程からも繰り返している、黒ウサギ嬢が頭を下げるのを見て俺は彼女の前に立つ
「大丈夫だ。安心しろとは言わないが後ろで見ててくれ」
「で、ですが」
「逆廻少年。彼女のこと頼むぞ。いざとなったら止められるのは君一人だ」
俺は後ろを見ずに魔法を用いて黒ウサギ嬢を逆廻少年の隣に移動する。彼ならこれから起こる余波程度ならば防げるだろう
「さて、なら始めようか白夜叉。ーー悪いが勝たせてもらう」
ーー初っ端から本気だ
<エクストリームブレイク>
「ええ。さっきの言葉は事実だと証明します!」
ーーいくわよ、クロスミラージュ
<ECコントロール スタンバイ>
俺とティアナを中心に魔力が渦巻く。それを見て白夜叉は笑みを深め
「フフフ。これは久しぶりに楽しめそうじゃの」
呑気なのも今のうちだ
目に物を見せてやりましょう
俺たちは心を通わせ、同時に声高らかに叫ぶ
「「ドライブイグニッション!!」」
セットアップを通さずそのままリミットブレイクへ。今回はシームレスモードではなくただのアルティメットモード。その刀を左手に持ち、右手には俺の半身である運命刀を携える
隣のティアナは、クロスミラージュを第四の形態に変化させている。形的には第二形態のダガーモードとあまり変わらないが、魔力刃の部分が実体になっているのと、通常の質量兵器の弾丸を込められるようになっているのが大きな変更点だろう。それに、ティアナの姿自体も変わっている
バリアジャケットの形自体は以前と変わらずなのはのセイクリッドモードに似せているが、隠されていないへそ周りにには黒の紋章ーートーマ・アヴェニールのそれと同じ物が刻まれ、髪は白く変わっている
そう、EC完全同調者としてのティアナの姿と化している。本来この姿には普段エクリプスウイルスを預けているリアクトプラグ、マリィことヌル・シュトロゼックとリアクトしなければなれない。それをクロスミラージュを少し改造し擬似リアクトプラグに変え、さらに簡易的ではあるがエクリプスコントロールを付けエクリプスウイルス自体を少量のみ備えることによってディバイド・ゼロ程度なら撃てるようにしたのだ
俺とティアナは半身になり、互いに背を合わせ
「では」
「エクストリーム」
「ディバイド・ゼロ」
白夜叉が裾から羊皮紙を出し空高く投げる。同時に高熱の火球をこちらに数個ほど放つ。それが開戦の合図となる
「ゲームスタートじゃ!!」
「バスター!!!!」
「エクリプス!!!!」
余波により大地が揺れ、大気が震え、煙が舞う中、投げ出された羊皮紙のみがその存在を示すように輝く
ギフトゲーム名 太陽と地球と
・プレイヤー一覧
遠藤蒼炎
ティアナ・ランスター
クリア条件 ゲームマスターの打倒
クリア方法 自身の総てを使いゲームマスターを乗り越える
禁止事項
相手を殺した場合無条件で敗北とする
互いに惑星主権の使用を禁止とする。このギフトゲーム中は瀕死状態以外での星からのバックアップを受けることができない
宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下ホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します
"サウザンドアイズ"印
後書き
補足説明を
この物語においてティアナはゼロドライバーという扱いです。そして、エクリプスウイルスには自我があり、ウイルス自らが認めた者にのみ力を与えるという独自設定があります。ウイルス感染度が上がれば上がるほどウイルスと共鳴し、殺人衝動も増えますが引き出せる力も上がる。ティアナの場合エクリプス完全適合者、即ち感染度が一度100%になっています。それによりエクリプスドライバーが出来ることは全てできます。因みに病化特性だけは個々人の者なのでティアナ固有のものしか扱えません。また、ゼロドライバーにも段階があり、ディバイド・ゼロを第一段階とすれば、第三段階まである、という独自設定をいれています。なぜ彼女が殺人衝動に侵されないのか、というのはForce編の根幹に繋がる話なのでとりあえずそう言うものなのだと納得していただければ幸いです...。一応一つ言うと、エクリプス完全適合者となったティアナはリアクターと同じ様に触れた者をエクリプスに感染させることができる様になってしまい、普段は抑えることが出来ましたが極度の疲労状態や睡眠状態だと無意識のうちに感染させてしまうということがあり、エクリプスウイルスを普段は自身の中に入れるのではなく別の入れ物にいれるということをできる様にしています。そのため、リアクトしない限りはエクリプスドライバーになりません。それも殺人衝動を抑えられている一つの原因です
すこし長くなってしまいましたが、今回の様にvividやForceでやる内容が出てきて、流石にこれは注釈必要だろ、と思った時は補足説明を入れていきますのでよろしくお願いします
太陽との戦いは熾烈を極め、一種の硬直状態になる
しかし、この程度ならば幾つも乗り越えてきた
継承式に比べればどうということはないし、今は一人じゃない
さあ、お前にこれが超えられるか
次回 ギフトカードに写るのは
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