ソードアート・オンライン〜Another story〜
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
SAO編
第96話 白銀と漆黒の挟撃
リュウキに続き、レイナ達が悪魔との距離をつめたその時には。
ぎぃぃんっ!!!と言う金属音を響かせていた。もう既に、そのけたましい音を響かせながらリュウキと悪魔の武器が交差していたのだ。
リーチ・重さ・強度……これらにおいては圧倒的に青眼の悪魔の方が上だ。だから、正面からのぶつかり合いは得策ではない。リュウキのステータスは基本的にバランス型、この相手にはパラメータ的には支えきれない。壁仕様スキル、装備ならば或いは防御に徹すれば安全性も増すが、生憎今のメンバーの中には適任者はいなかった。
キリトは攻撃特化型、アスナ・レイナは速度特化型。クラインはキリトには劣るものの、完全な攻撃型。
壁仕様はもう瀕死の軍隊のメンバーの中に何名かいるだけ……このパーティでは、最早いないのだ。だから、ダメージディーラーであっても壁の働きをしなければならない。
この極めて危険な事を。
ぎぃぃぃん!!きぃぃぃ!!ガキィィィ!!! と何度も交差する刃。
だが、リュウキのパラメータ的には明らかに劣っている筈なのだが、リュウキはHPを減らしつつも青眼の悪魔と互角以上に渡り合っている。単純にBOSSとはHPの差がかなりあるから、一概に互角とは言えないが。それでも、敵のHPを着実に削り続けてた。
「うおあああああああっ!!!!!」
雄叫びは留まる事無く、リュウキから発せられていた。……リュウキの目はいつもの眼と違っていた。彼の目は赤く、染まっていたのだ。そう、あの己の死すら畏れない笑う棺桶のメンバーでさえ、畏怖した姿。
リュウキは、竜鬼と化していた。
「ッ!! リュウキ君っ!!」
距離を更に詰め、悪魔と打ち合っているリュウキを見た時、リュウキが悪魔の攻撃を避けたその時、レイナはそのリュウキの眼を見てしまった。
その瞬間、心臓が跳ね上がる。
それは……悪夢を思い出させる瞳だったからだ。あの笑う棺桶との戦いの時になっていたと言うあの真紅の眼。仲間達に支えられなければ、立つ事もままらなかったリュウキの姿。そしてあの戦いの後、アルゴの情報ではリュウキは、数週間何処にもいかなかったと言う事実。
あの眼がどのような仕様なのかは解らなかったけれど、解るのはあの眼を使ってしまったらリュウキが深く傷ついてしまうと言う事。
『リュウキ君に、あの眼を使わせたら駄目なんだ!』
レイナはそう咄嗟に思ったからこそレイナは疾風の如き速度を更に上げ、青眼の悪魔の方へと駆け出した。
「ッ!! 駄目だレイナっ!! あの連中をここから連れ出してくれ!!」
レイナが近くに来ていたのを視界に捉えるとリュウキはそう叫ぶ。恐らくは、レイナはスイッチを行う為に来たと解った。……だが、この相手はこれまでとはまるでレベルが違った。
複雑化されたその複数の攻撃パターン。そしてアルゴリズムの異様な、異質な変化。直前でまるで気が変わったかのように攻撃の軌道を変えるその太刀筋。まるで、人間、プレイヤーが操っているかのような行動。巨体に似合わないその剣速。
そして、その精度はHPを削れば削るほどに、その凶悪さは更に増していくんだ。リュウキは、集中力を切らしたその瞬間、HPを大幅に削られると悟った。
下手をしたら、命の全てを持っていかれてしまう事を。
レイナの実力を決して信じていないわけじゃない。
それは、共に攻略をしてきたリュウキは、その実力はよく知っている。だけど、この巨悪の前にして、正面でスイッチをするなんて……、彼女にそんな危険な事させられなかった、させたくなかったのだ。
そして、もう1つ理由はある。この今の状況が最悪な事。
まだ、このエリアには軍の連中が視界の中で7人倒れている。そして、目の前の悪魔がいつ自分じゃなく他に、気が変わるとも限らない極限の状況。その上、フィールドに渦巻いている青白い炎にも どうやら読み通り攻撃判定があった。あの青炎が動きでもすれば、一気に倒れているプレイヤー達の残り少ないHPを削りかねない。
これ以上は誰も死なせたくないリュウキにとっては、一瞬の手の判断もミスる事が出来ないし、そして今は人数をかけなければ、彼ら全員を助ける事は出来ないのだ。
それは、青眼の悪魔の背後を取ったキリトやアスナも重々理解した。敵の背後を取った。圧倒的に有利な状況だと言うのに、それはまるで隙が無いかのような姿だったんだ。飛び掛ったその刹那にあの巨体の野太刀で切られてしまうかのような、予知能力に似た映像に襲われたんだ。
ぎゅんっ!!!と言う風を斬る音がした、と感じた瞬間、キリトは、その感覚は間違えていなかったと悟る。リュウキの剣を弾きその勢いのまま遠心力を活かし、後方のキリトへ切りつけたのだ。
それは刀スキル≪旋車≫。
全方位攻撃スキルなのだが、キリトはそのスキルの予備動作を見切ることが出来なかった。今まで腐るほど見てきたスキルだと言うのにだ。
「ッああああああッッ!!!」
キリトは辛うじて防御する事が出来ていたが、これまでの攻撃とは、まるで重さが違った。アスナは、キリトの背後にいたから、彼女にまで衝撃が届く事は無かったが、気圧されてしまったのだ。
キリトが、押し切られそうになっていたのを見たリュウキは即座に動いた。そして、極長剣を突きの構えを取り、切っ先を悪魔の腹部へと突き立てる! ずんっ!!! と言う鈍い音を響かせて。
“極長剣上位スキル”《“レイジング・ドライブ》
それは、超近接、零距攻撃。
切っ先から入り根元にまで 超高速で突き立てる、細剣スキルの《リニアー》を彷彿させるそのスキルは現実世界であればかなりショッキングなシーンだが、此処では出血付与効果がかなり高く技が出る速度も速い突き。近接戦闘の苦手な極長剣のスキルの中では、その弱点を限りなく補う優秀な上位スキルだ。そして、技後硬直も極小である為、そこから別スキルに繋げる事も出来る。
《レイジング・ドライブ》⇒《エターナル・スラスト》
範囲攻撃へとリュウキは繋げる。リュウキが極長剣で得意とする連携攻撃った。特に囲まれた状況の際には重宝するのだ。
レイジング・ドライブは幾ら技後硬直が極小とは言っても、その長い剣の切っ先から根元まで突き立てる為、相手が複数ならば反撃も喰らい安い。
それが、上位のモンスターなら尚更だった。
だが、そこから極長剣を扇状にスライドさせるエターナル・スラストは、突き立てた相手にダメージを与えつつ、取り囲んできた相手も巻き込むのだ。敵の重量も加わり、かなりの筋力値を要求させられるが、リュウキは問題なく使用しているのだ。
流石にこの巨体を動かす事は叶わないが、キリトへの攻撃の威力は殺せた様だ。
「正面はオレが捌く!! みんなは背後! 左右から頼む!!」
リュウキはそう叫んだ。
横目で周囲を確認すると、クラインのギルド、風林火山のメンバーが軍の連中を避難させてくれているのが確認できた。
つまり……、これで全員がBOSSのみに集中できる。
そして、リュウキのその言葉を聞いて皆が奮起した。
「解った!!」
「おっしゃああ!!!」
「うんっ!!」
「任せてっっ!!」
これまでで、タッグを組んでいた相手なら兎も角、パーティ全員にリュウキが頼む事、そんな事一度も無かった。レイナと出会い、結ばれて変わったから……っと一瞬皆が心に過ぎったが、そうせざるを得ないほどの相手だと言う事も即座に理解した。
「ぐるあああっ!!!!」
青眼の悪魔はリュウキの技後、僅かだがその巨体が揺れた。だが、HPの減少も大して望めず、即座に反撃をしてきた。
がきぃぃんっ!!、と炸裂音を響かせてくる。……反撃どころか、その反撃をリュウキはパリィで弾いたのにも関わらず、刀スキル・緋扇の三連撃で返してきたのだ。倍返しどころじゃない、3倍返しで。
あまりの重さと剣撃にリュウキは、堪えきる事が出来ない。
「ぐぁぁっ!!!」
リュウキは、剣で防ぐ事は出来たが、ノックバックが凄まじく数m弾き飛ばされてしまったのだ。その技の威力に負け、HPも削られてしまう。
「ッッ!! リュウキっ!!」
キリトは、弾きとばされたリュウキを見て瞬間的に手を動かす。キリトは、こんな時にまで迷っていた自分自身に心底腹立たしさを覚えていた。あの時リュウキは言っていた筈なのに、『後悔しないように』と言っていたはずなのに。
そう、自分自身もそう決めていた筈なのに。迷うくらいなら行動すると決めていた筈なのに。
何もしないで、後で後悔するなんて……もう嫌なんだ!
「アスナ! レイナ! クラインっ!! 頼む! 10秒だけでいい時間をくれ! リュウキをフォローしてくれ!!」
後方に飛びながらキリトはそう叫んでいた。今自分が抜ける事で、その負担が一気にリュウキにいくと思ったから。
「う、うんっ!!」
「解ったわ!!」
「任せろゃ!キリトっ!!」
※これまで、リュウキだけが戦っているかのような描写で他の人の描写が少ないですがレイナは勿論、アスナ・クラインたちも戦ってます…… 側面から、ちくちくっ!っと。 あしからずっ!
続いて……キリトは考えた。
あの異常なまでの反応速度。ならばコチラも速度で対抗するしかないと。技と技の繋ぎの速さ、そして様々な変化。それらに対応するのは一見しただけじゃ不可能だ。リュウキの≪眼≫が無ければ、コチラはやられていた可能性も十分にある。だから、……残された選択は攻撃特化・速度特化型、両方を持ち得る自分の全てを以って立ち向かうしかないんだ。
今、悪魔の正面からの攻撃は殆どリュウキが捌いてくれている。つまり、悪魔から攻撃を受ける機会の大部分は削ってくれているんだ。その間に持てる全てをぶつけるしかない。
背後、側面で攻撃してた3人は頷いた。
キリトが弾きブレイクポイントを作った所で、間髪入れずにクラインが飛び込んできた。
「うおおおおおおっ!!!」
クラインの一撃は、正確に青眼の悪魔の腹部を穿ったが、
きぃぃぃんっ!!と、その刀を突き刺した瞬間、悪魔の青い瞳が……一瞬鋭くなった。
「拙いッ!!クラインっ!後ろへ飛べ!!」
リュウキの咄嗟の言葉。あの動作は、反撃をする前の動作だ。まさに刹那時間だったが、リュウキの言葉を聞く事が出来たクラインは反射的に床を蹴る事が出来た。
「がぁぁぁぁっ!!!」
その瞬間!クラインのいた場所の地面が抉られたのだ。
「うおわっ!!!」
クラインに、当たる事こそ無かったものの、その凄まじい風圧はクラインの身体に衝撃をあたえノックバックが発生し数m後退してしまう。
「せいっっ!!!」
「やぁぁっ!!!」
追撃をさせない為に、レイナとアスナが飛び込んだ。最も得意とする細剣スキル、《リニアー》で最短且つ正確に、さらに素早く腹部の中心を貫いたのだ。
「ぐるっ!!!」
青眼の悪魔は武器を振りぬいたその瞬間を狙われた為、カウンターアタックとなり、通常よりも大きくよろけていた。……が、その位で、動きを止める事は無い。BOSSを冠しているモンスターは。
再び、青い瞳が光り輝いた。
BOSSの名に恥じぬ輝きを以って、狙いを定めたレイナの身体目掛けて剣をスライドさせる。先ほどリュウキに使った 刀スキル≪緋扇≫ の繋ぎに成る剣技だ。
「させるかあぁぁぁぁ!!!!!」
リュウキは、レイナが技後硬直しているのを見てすかさず飛び込んだ。
がきぃぃぃんっ!!と、けたましい刃音を響かせながら、後一寸程でレイナに届く前に、その巨大な剣を弾き返した。今度は圧されない。圧されてしまえばレイナに当たってしまうのだ。
「ッ!! リュウキ君っ!」
「体勢を……っ!! ぐっ!!」
リュウキは、一度体勢を整えろ、と最後までは言えなかった。
即座に反撃をしてくるこの悪魔から一瞬でも《眼》を逸らすのは危険すぎるからだ。
「レイッ!!!」
そこで硬直から解放された、アスナが素早い速度でレイナの手を?むと、レイナを連れ、すぐさま数m程下がった。
「ナイスだッ! アスナっ!!」
何よりも技後硬直が一番怖い。身体では理解しているのに、動くことが出来ないから、モロに攻撃を受けてしまうのだから。今回は、アスナとレイナの2人の内、レイナが狙われ、アスナは比較的安全圏だった事も功を成し、レイナを救う事が出来たのだ。アスナも、目の前で妹であるレイナが斬られてしまう所など、見たくない。だからこそ、動かすことが出来たと言えるだろう。
青眼の悪魔の攻撃は、複数でスイッチを繰り返しすればそれを防ぐ事も出来るだろう。だが、如何せん敵の反応速度が異常なまでに上昇している。
スイッチのタイミングを確認し、そして行う……じゃ遅すぎる程に。
そして、アスナは背後に回り込み、すかさず攻撃を行った。
「やぁぁぁッ!!!」
アスナの細剣上位スキル《ペネトレイト》が直撃する。突きの3連擊は、正確に青眼の悪魔の身体を捕えた。このスキルは高命中技である為、ミスが少なく非常に優秀なスキルだ。
「よしっ!!! いいぞっ!!!」
アスナの攻撃が当たったその時だ。キリトの声が、後方から聞こえてきた。
「アスナッ!!スイッチ!!!」
「ッ!!」
アスナはキリトの声を聞いたその次の瞬間には身体を動かす事が出来た。それは、リュウキとレイナがしている様にする事が出来た。この時は、わかって無かったけれど、2人とも息のあった連携をする事が出来ていた。
「うおおおおおおおおおっっ!!!!!」
キリトがエリュシデータで、向かってくる悪魔の尾を弾き飛ばすと。
きぃぃぃんっっ!!!と再び弾く金属音が響く。それは左手に現れたもう一つの剣。
リズベット武具店でリズに作ってもらった、リズ本人もキリト自身も認める最高の剣で斬り裂いたのだ。
それは闇を払う剣《ダーク・リパルサー》悪魔相手にはうってつけの剣。
“ずごんっっ!!!剣での攻撃とは思えない程重い攻撃 二重に交錯した衝撃は凄まじく……、そして悪魔の後方からの衝撃であった為、青眼の悪魔は防御も叶わなかった。
「ぐがあああっ!!!!」
青眼の悪魔は、俯せに倒れ伏すのを辛うじて踏ん張り、キリトの方へ振り向こうとしたが。
「……させるかよ!!」
好機と視たリュウキがそれをさせなかった。極長剣を突きの構えで携えた。
「ぐるっっ!!」
青眼の悪魔も嫌な予感が走ったのか、キリトの方へ向くのを反射的に止めていた。
「行くぞキリト!!」
「おおぉ!!!」
リュウキには、キリトの姿は青眼の悪魔に隔たれている為視る事は出来ない。だが、キリトは絶対にこの悪魔の背後に居る筈だ。例え、視えてなくても確信が出来た。
それは、キリトも同じであり、リュウキの事を最大級に信頼しているから迷うこと無く、そして同時にソード・スキルを合わせる事が出来たのだ。
「ディザスター……」
「スターバースト……」
悪魔を挟む、白銀と漆黒の挟撃。それは正に白銀の雷と漆黒い雷、それが交差するような瞬間だった。
「ライトッ!!」
「ストリームッ!!」
リュウキのは《極長剣》の上位スキル。
それはダメージも勿論見込めるが、どうしても溜めに時間がかかりすぎる。その時間を与えたのが、キリトの二刀の衝撃だった。
突きを人体で言うの四肢と急所、各部位に殆ど同時に5連擊を叩き込むそのスキル。それは、長モノである極長剣最大・最速のラッシュ。そして、攻撃が成功すれば、出血の付与は勿論、全パラメータダウンの効果つきのかなり優秀なスキルだ。
設定では、敵に与えられる攻撃は、合計では5連撃。その筈だが……そのラッシュは明らかに限界を超えた動きだった。正に突きの壁と言えるものだろう。
そして、キリトのスキルは、《二刀流》の上位スキル。
両手に剣を持ちそれは連撃数にして片手直剣を大きく上回るのだ。そして、盾を持てなくなると言うリスクはあるものの、その攻撃力は片手剣を大きく上回る。そして、そのエクストラスキルである二刀流の上位スキル《スターバースト・ストリーム》それは16もの連撃。キリトも絶叫しながら左右の剣を次々と叩き込み続けた。そして、視界のがあまりの速度に灼熱し最早敵の姿以外は何も見えない。全身のアドレナリンが駆け巡り、そして視界が赤く染まる。まるで、レッド・アウトを起こしたかの様にだった。
『限界を超えて……速度をもっと上げろ! もっと……まだだ! もっと早く!! アイツを、助ける為に!!』
青眼の悪魔に衝撃を与え続ける事が、その行動を削ぐ結果となる。自分自身は背後からの攻撃だからまだ良いがリュウキは正面。反撃を一番喰らいやすいのはリュウキなんだ。その期間を、攻撃回数を限りなく削ぐ為に。
『これは キリトがくれた最大のチャンスだ! これで決める!! ここで、終わらせるんだ!!』
キリトが背後から攻撃を与え続けてくれている。
その凄まじい速度から繰り出される攻撃でノックバックが発生し青眼の悪魔の行動を削いでいる。故に攻撃に全神経を集中させる事が出来ていた。キリト自身の事は、一瞬だがそのスキルの確認は出来た。二刀の剣を扱う事が出来る《二刀流》だと言う事を。事、速度の領域においては、本来のキリトの反射の速さと相あまる。防げない攻撃として与え続けてくれているんだ。だが、それだけのスキルだから、上位のスキルにはその後の硬直時間も長いと判断ざるを得ない。だから……ここで決めなければ自分はおろかキリトにまでそのツケは及ぶのだ。
そして……自分達が倒れてしまえば、仲間達の命が危うくなってしまうのだ。
そう、『レイナが』『アスナが』
「「………あああああああああああぁぁぁぁぁ!!!」」
両者の思いの力はそのままスキルへと映ったようだった。それは、皆が久方ぶりに見た≪白銀と漆黒の剣舞≫、否 それ以上の代物だろう。
キリトの16撃目が青眼の悪魔の背中中央を貫く。そして、リュウキの突きも殆ど同時に胸の中心を貫いた。
がきぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!! と言うこれまでで、一番の金属音が響き渡る。 殆ど同時で、位置も同じだったからなのだろうか? それは、敵を貫くような音ではなく、金属を打ち合ったような……、刃と刃の衝突したかのような衝撃音が響き渡っていた。
「ごあああああああああああああああああああっ!!!」
そして、気がつくと絶叫していたのは2人だけじゃなかった。悪魔もその断末魔の叫びを上げていたのだ。その全身は動き続けるのを止め、硬直した……と思った瞬間だ。青眼の悪魔は、膨大な蒼い硝子片となって爆散。部屋中にその欠片を輝かせていた。
その身体の後に残ったのは、キリトとリュウキの交差した剣だけだった。
「………」
「終った……のか……?」
2人の時間はまるで止まっていたかのようだったが、キリトはそう呟いていた。凄まじい速度で動き続けた代償もあるだろう。そして戦闘の余熱による眩暈も感じていた。
リュウキも……、目の前の悪魔の光が完全に失せたのを確認すると……。
リュウキ自身の《眼》の輝きも通常通りに戻っていた。
今まで悪魔がいた為、キリトの姿を視認する事が出来なかったが、今ははっきりと目に映っている。そのHPは4分の1の辺りで、後少しでレッドゾーンにはいるが、間違いなくそこに存在している。
「………っ」
リュウキは、辺りをひとしきり視渡した。どうやら……新たな犠牲者はいないようだった。皆無事だった、キリトもアスナも……そして、レイナも無事。
『レイナ……。』
リュウキはその姿を捉え、レイナのその目を見た。間違いなく、無事だった。
それを確認した瞬間、リュウキは全身から力が抜け落ちていた。
持つこともできなくなった極長剣が自身の手から零れ落ちる。
からんっ、とこの場に響く。その剣が落下したと同時に……リュウキは両の目を閉じ意識を手放した。
その手放す瞬間、辛うじて視界に確認できた自分のHP。
それはもう2割も満たない状態だったのだ。
ページ上へ戻る