ソードアート・オンライン〜Another story〜
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SAO編
第78話 リズの憂鬱
~リズベット武具店~
今日もいつも通り、接客業頑張ろう! との事で、いつもであれば、店に出る前に、笑顔を確認する時間帯なのだけど。リズは、だら~~っと椅子に腰をかけて、更に項垂れていた。
正直、女の子がとる体勢じゃないよ? って自分でも思うのだけれど、そう せずにはいられない様子だった。
「……やーれやれ。……ったく、どいつもコイツも……」
リズは1人……工房で盛大にため息を吐いていたのだ。そして頭に思い浮かぶのはアスナとレイナの姿。そしてその後に、キリトとリュウキの姿。それらを頭に浮かべながら、リズは更に強く思う。
『なんでこう……浮かぶのは良いんだけれど、何で想像の中でさえツーショットの姿なんだ!!?』と。
「あーああっ! ……いーなぁー。チクショウっ」
リズは、またまた、女子力を下げてしまいかねない言葉使いをしてた。それは本当に自分でもわかっている。体勢と同じで、わかっていてて……言わずにはいられない。友達の2人には男いるんだから!!……それも、そのどっちも……ここの世界、アインクラッドでは間違いなく1,2を争うプレイヤーだろう。そして、いろんな意味で高レベル。
だけど、確かにお似合いと言えばそうだと思う。
事アスナもレイナもこのアインクラッドでは超上級者だから……そう、同じようにいろんな意味で。
「……でも、帰ったらぜーったいするかんね……アスナ。リベンジっ! それに……」
今回はアスナだけじゃない。リズの頭にはもう1人浮かんでいたのだ。
「レイナもだよ……、ほーんと……ぜーたくな相手だし……。な~んで2人して、も~……」
羨ましいったらありゃしない。きっと、リュウキとレイナ なんだか上手くいきそうな気もするんだ。その上、2人が帰って暫くしてアスナからメッセージが来たんだ。
その内容はと言うと。
『リュウキ君が、リズのところに来たらそれとなく聞いてみてもらえないかな? 私はレイの傍に居てあげたいから……』
との事だった。
単刀直入に言えば……2人の事を手助けをしろと言う事みたいだ。今のリズの心境的には凄く複雑だけれど。でも…………あのレイナの姿を見てしまえば、リズの保護者的感情を大いに刺激するんだ。
そのいつも明るく、元気な彼女。
笑っている姿が一番似合う彼女が弱々しく涙をながしていたんだから。……自分の本当の妹の様に思えてしまうし、何よりも。
「はぁ……しょーがないっ! やってあげましょう! ……だって、あんなレイの顔、……あたしは見たくないのは事実だしね」
リズは一息つくとそう結論を出していた。元々、初めから結論なんて決まっていたんだから……。
そして、翌日の閉店時間ギリギリの時間帯。
コンコン、と扉からノックが聞こえてきた。時間は先ほど言ったとおり、もう、店じまいの時間帯だ。だけど、誰かが来たようだ。
《誰かが》とは言っているが、大体はもう解っていた。その扉の向こうに誰がいるのかが。
「はいは~~い! 開いてるよっ!」
リズは、イスに座ったままそう言う。そして、そのリズの声に反応し、店の扉が開いた。
「はい いらっしゃい」
リズは目で誰が来たのかを確認すると、軽く会釈をしていた。
「ああ……今日もよろしく頼むよ」
入ってきたのは勿論リュウキだった。さき程、『また使わせてくれ』と言うメッセージも貰っていたから、彼が来たことにはリズは別に驚きはしなかった。
そして、リュウキは装備を解除。身に着けていたフードも完全に外し簡単な部屋着に着替えた。
「さて……と……」
リュウキは工房の炉の側に。アイテムストレージから、1つをオブジェクト化。そして炉内に放り込んだ。どうやらインゴット。《金属素材》をオブジェクト化したようだった。
「おっと、そーだったそ-だった」
リズは、リュウキの側に来た。何やらわざとらしいけれど、リュウキは別に不審にまでは思っていないようだ。
「ん…?」
リュウキは振り返る。
「それでさ? 結局、今日言ってた用事ってなんだったの?」
リズはニコやか~にそう聞く。その言葉にリュウキは ピクリっと動いた。
そして……僅かの沈黙の後。
「………秘密だ」
そう一言いうと、リュウキは再び炉に向き立った。
「へぇ~ それは残念だな~」
残念だと言いつつもリズは ニコニコと笑っていた。それはとても解りやすい反応だったからだ。リズの考え、そしてアスナの考えも的中した。あの用事って言うのは絶対にその場しのぎの真っ赤な嘘だと言う事を。だから きっと何かあるんだろうというのは間違いない。
決してリュウキはレイナを嫌っているのではないんだって思う。そして、嘘を言う人間にも見えない。
……だからこそ、ああ言う行動であらわすしかなかったんだと思う。
(む~……いきなりはあれだし、もう少し間を開けたほうが良っか)
リズはリュウキを見ながらそう思う。
きっと歳下の男の子。……それも、きっと素は、ナイーブな男の子。慌てふためく姿……ちょっとまだ想像できない、非常に見てみたい!なんて思ったりしたけど、いじめになりそうだから止めた。
「はい、どーぞ」
リズはカップを取り出して、リュウキに差し出した。
「……ん? これは…?」
リュウキは再び振り返ると、リズからそれを受け取った。
「リュウキからは貰ってばっかりだしね? たまにはご馳走させてよ。まっ、そんなに良い物じゃないけどさっ」
リズは笑いながらそう言っていた。
「……そう、か」
リュウキは、手渡された当初は、よく判っておらず、きょとん……としていたけれど。直ぐに表情は綻ぶ。柔らかい表情で……頬を緩めた。
「ありがとう……リズ」
そう言うとリズに向かって微笑んだ。
「ッ……///」
その笑顔を正面から見てしまったリズは、心に ズキュンっ!! っと、何かが来たみたいだ。一気にリズの顔が紅潮していた。リュウキの事、全く興味は無い……なんてことは決して無いけれど、アスナとキリトの件も有る。
よそ見しない!って思っていたんだけれど、その信念を蹴散らされる……ような高威力だった。
「……? どうかしたのか?」
リュウキは固まってしまったリズを不審に思い顔を覗き込む。
「ッ!! な、なんでも無いってッ///」
また正面からだったから、リズ思わずそっぽ向く。
そして……、リズは心底思った。
「……この天然たらし、ジゴロ……」
ぽつりと。……っと言うより言葉に出ていた。その声が辛うじて聞こえたのか、リュウキは振り返り
「……ん? 何だ?」
そう聞き返していた。だから、リズはすぐさま続けた。
「何でも無いって! さっ、飲んじゃお!」
リズはピチピチッと顔を二度叩き、正面を向いた。幸いな事にリュウキは普段の顔に戻っている。
今なら……見ていられる!耐えれる!!
そしてその後
他愛の無い話を少しして、リュウキの作業を傍で見て明日の簡単な準備をして……リズは工房を後にした。
その寝室のベッドの上で突っ伏してて、思うのは1つだけ。
「あ~~~も~~、ったく~~ もうっ ほんっとに羨ましい……」
そのまま就寝についた。リズは今日は、そんな感じだった。
だけど、今度こそは、レイナの為に一肌脱ごう。とも改めて決意をし直すリズだった。
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