ダンジョンにSAO転生者の鍛冶師を求めるのは間違っているだろうか
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アカギミナト×武器製作×ヘファイストス様
前書き
更新が遅れてすいません。
できるだけ定期更新にしたいのですが、立場上少し困難な状態です。
申し訳ありません。
ですが、読んで楽しんでいただければと思います。
「………………どうしたもんか」
先ほどの騒がしさが消え、静けさで満たされた部屋に俺の独白が頼りなく漂う。
…………アカギ……ミナト……か……。
俺はこの名前をSAOで長い間目にしていた。
彼女は物静かで、おしとやかで、引っ込み思案で、顔立ちが柔和で、線が細く儚げで、背が俺ぐらい高くて、そして優しかった。
そんな俺の知るアカギミナトは先ほどまでいたアカギミナトと似ても似つかなかった。
名前以外の共通点を強いてあげれば、性別しか見つからないぐらい正反対だ。
なのに、俺はこうしてアカギミナトのことを考えてしまう。
「あれからもうすでに一ヶ月半も経ったのか」
そして、あの別れの瞬間を夢想してしまう。
「もしかして、アカギの生まれ変わりだったりして。俺だってなんだかんだでこうやって生きてるんだから、有り得なくもない…………わけがないか」
全然似てないって言ったばかりじゃないか。
「神様の気まぐれかな?」
俺は少女、もといアカギミナトが消えた方、なおも明けっ放しの扉の方を見詰めながら独り言ちる。
「いや、神様は神通力を押さえられているんだっけ。まあ、いいや。考えてたって、何かが変わるわけじゃないんだ。とにかく、仕事をしよう」
俺は無意味な思考に終止符を打って、取り敢えず、仕事に取り掛かることにした。
まず、消しておいた炉の炎を、朝と同じ方法で、復活させてから、ストレージに入ったままだった精練せずに残しておいた鉱石の中から鉄鉱石四個を選んで、オブジェクト化してぽいっと放り込む。
続けて、ストレージ内のインゴットから《スチール・インゴット》を選んで、ほうり込んだ。
SAOでの《武器作成》には、素材が三つ設定されている。
それが、《心材》、《基材》と《添加材》だ。
《心材》は、名前から推測するに、武器の根幹をとなる素材で、インゴット一個がそれに使われる。
《基材》は………………なんだろう。
よくわからない。
ただ強化のとき、《心材》が必要なくて《基材》と《添加材》だけでいいのを見ると、《基材》――一度の武器作成及び強化に使える個数は四つ――は武器作成のときは、《心材》の補助材で、強化のときは強化の基となる素材みたいだ。
あくまで、推測だけど。
それで、《添加材》は素材は素材でも、鉱物ではなくて、ドロップアイテムを使う。
どんな《添加材》、つまりどんなドロップアイテムを選び、どれほど入れるか――ちなみに、武器作成も武器強化のときも上限が二〇個――によって効果は変わる。
特に強化のとき、強化の種類、と強化成功率を決める。
ちなみに、SAOでは、強化パラメーターが五つ、《鋭さ》、《速さ》、《正確さ》、《重さ》、《丈夫さ》があり、《鋭さ》は攻撃の貫通力に、《速さ》は攻撃速度に、《正確》は攻撃のクリティカル率に、《重さ》は武器の重量、《丈夫さ》は武器の耐久値に影響する。
そして、武器作成のときに使えば、性能が上がるのだけど、ドロップアイテムを集めるのがめんどくさくてしていない。
ここの世界の《ドロップ》の確率が一番高いものでも、『ドロップすればラッキー』という感じで、レア度の低いアイテムであればぽんぽんドロップしてくれるSAOとのギャップにここの世界でのドロップアイテム収集に尻込みしている。
まあ、それはさておいて、説明が長くなったので、ここぐらいで、話に戻ろう。
鉱石が溶解してインゴットと混ざり合ってできた鉄塊をヤットコで取り出し、鉄床に載せた。
それを腰にさしていた鎚で叩く。
勿論、適当だ。
SAOのリファレンスヘルプには一応、プレイヤーの技術は作成した武器のできに影響せず、ただそのプレイヤーの《鍛冶》スキルの熟練度のみが左右するとなっているが、叩くリズムの正確さや気合いができに影響すると考えて、真剣に鎚を振るう鍛冶プレイヤーが多かった。
しかし、俺のステイタスにある発展アビリティの鍛冶がIであることからわかるように、鍛冶なんてほとんどしていなかった、というかただの保険で《鍛冶》スキルを習得していた俺はそんなオカルト的な意見は無視して、適当に振るっている。
叩く回数ができる武器の性能に比例するのだけど、俺が今作成している武器は平均で四〇回ぐらい叩いていて、一日一〇個ぐらい作っているから、全体で叩く回数は約四〇〇回。
一振一魂とかしてたら、途中で倒れそうだ。
やわいと思われても仕方ないかもしれないけど、一応俺も何個か真剣にやったことがあって、調べてみても統計的にあまり数値に違いはでなかったのだ。
それなら、疲れるより疲れない方を選ぶのは当然じゃないだろうか。
そういうわけで、今日も適当に鎚を振るっている。
というのに、
「今日も精が出るわね、ヒロキ」
相変わらずノックも無しに入ってきた主神は俺が叩き終わってできた武器を箱にほうり込んだのを見て言うのだった。
「昨日も来たばかりでしょう、ヘファイストス様。また、椿さんに怒られますよ」
もうノックのことも俺が精など出していないということを論証することも諦めて、俺は小言を言う。
ていうか、ここにあなたが来る度に、元から絶望的なほどに悪い椿の俺に対する心証がさらに悪くなるんですけど。
別に今から俺に対する椿さんの意識改革をしようというわけではないけれど、これ以上悪くなったら何が起きるかわからない。
「大丈夫よ、今日椿は仕事から手が離せないはずだから来ないと思うわ」
俺の遠回しな早期退去の念を込めた言葉を我が主神様はにこやかな笑顔とともに流す。
というか、椿の予定は把握済みかよ。
ヘファイストス様のサボタージュが周到になってきたような。
「そうですか。それで、今日はどのような御用でしょうか?」
諦めて、炉の炎をそばに置いてある桶の水で消してから、主神に向き直った。
「なんだか気になって様子を見に来たのよ」
俺の問いに、より一層笑みを深めたヘファイストス様は言った。
「………………つまり、特に御用はないということですね」
「あら、悲しいわ。本当に心配しているのに」
「それはそれは失礼致しました」
のらりくらりとしたヘファイストス様の受け答えにほとほと疲れながら答える。
「このごろはどうなのかしら?」
「…………どうっというと?」
ヘファイストス様の言わんとしていることを汲み取れずに純粋な疑念に衝き動かされて訊いてしまう。
「そうね…………身の回りで何かあったりしたかしら」
俺の質問にヘファイストス様はしばらく思考を巡らすように天井に視線を遣ってから、ふと気になったから、というような何気ない感じで言った。
「身の回りですか…………ああ、それなら面倒なことがありました」
そのヘファイストス様のように俺も先まですっかり失念していたことをふと思い出したから、というような然も重要でないことのように言った。
「あら、そう。面倒なことはどういったことなのかしら?」
「ええっとですね。昨日に直接契約を申請してきたその本人にばったりでくわしてですね、追いかけ回されて大変だったのですよ」
昨夜のことを頭に思い浮かべながら言った。
「それは、本当に大変ね」
「逃げ切れたのですが、どうしてか場所を突き止められていたのですよ」
「それも大変ね」
「ええ、それで、おこがましいと思いますが、工房を移させてもらっていいですか?荷物は少ないから、一人で引っ越しは済ませれますので、誰にも迷惑はかけません」
話しているうちに思い至ったことを口にした。
ほとんどの鍛冶系ファミリアが効率化で数人で共有する共有様式の工房にしている中、前述の通り、【ヘファイストス・ファミリア】は所属している鍛冶師一人一人に個人の工房を与えている。
その理由は偏に鍛冶師の技を守るためだ。
俺の世界では単一的、画一的な製品を作ることが工場のモットーだけど、この世界は違う。
鍛冶師の特性を伸ばし、個性を重んじる。
その一貫として、鍛冶師のオリジナルの技術を盗まれないために個人の工房を与えているのだ。
それが計らずも俺の異常性を隠す隠れ蓑になっているわけなのだ。
「そうね…………あなたからお願いごとなんて本当に久しぶりだから役に立ってあげたいのだけど、今工房にちょうど空きがないのよ」
「い、いえ、なかったらないでいいんです。これは俺の勝手なお願いなんで」
本当に申し訳なさそうにするので、恐縮し、慌てて答える。
「だけど、何でここがばれたんだろうか?」
答えた後に、かなり遅ればせながら、ふと疑問になったことを口からこぼした――が、
「他に何かあった?」
そのことを深く思考するに至る前にヘファイストス様の声に意識が引き戻される。
「い、いえ、特に」
「そう。だけど、工房の場所がばれたのはまずいわね。私の方で別の方法を考えさせてもらうわ」
と、言い残して朱髪を翻して扉に向かうヘファイストス様の背中に、
「それほどには及びません。こちらでどうにかします」
と、言ったが、
「いいわよ、気にしなくて。私が好きでしていることよ」
ヘファイストス様は俺に振り返ると、ニッコリしながらそう言って、俺に返事をさせる間もなく、扉を開け、去っていった。
後書き
すこし展開が速いですかね?
ご指摘またはご感想お願いします。
二つお詫びしたいことがあります。
先ず一つ目に、原作の読み込みが足りなく、設定に誤りがありました。
私は《基材》はインゴットと勘違いをしていました。
故に第一話及び第四話に変更点があります。
第一話は「新しいインゴットを二種類取り出す」から「新しいインゴットを一つと鉱石を五個取り出す」に変更。
第五話は、鉱石を精練するシーンの一部を、
というわけで、メニューウィンドウを開いて、採掘した鉄鉱石×五、獄黒石×二、朱雀鉱×一、白雷石×一、紅炎石×一。
をまとめてオブジェクト化して炉の中に放り込む。
不純物が入っても勢いが衰えない炎に包まれた鉱石は瞬く間に赤熱して、溶け合っていく。
そして、もうそろそろかなと、思った俺に答えるようにして、一分もせずに、赤熱した鉄塊が青白く輝いたと思うと、次第にうごめきながら、綺麗に並べられた一〇個の直方体に変形する。
それらをヤットコで順々に取り出し、鉄床に並べていった。
その過程の途中からすでに白熱していた鉄塊は冷却され、輝きを失い、俺の知る硬質な光沢を持った様々な色のインゴットができる。
「よしと」
できたインゴットの内訳は、《スチール・インゴット》×八、《ヴィルドネリア・インゴット》×四、《スザクルフィア・インゴット》×二、《アークリオル・インゴット》×二、《クリムフォイアー・インゴット》×二、《玉鋼・インゴット》×二。
…………最後のは完全に変なんだけど。
漢字って…………もっと他に何かあったんじゃないか。
それに、これって何なんだ?
タマハガネって読めばいいのか?
まあ、あーだこーだ言ったところで名前が変わるわけではないし、気持ちを切り替えていこう。
ああ、それと、全部精錬しなかったのは後程説明させてもらうかな。
に変更しました。
他にも細々した変更点はありますが誤差の範囲に収まりました。
ですから特に読み返す必要はありません。
本文中に誤りがあったことを再度お詫び申し上げます。
二度と同じことをしないと言って、舌の根も乾かぬ間に同じ誤りをしてしまいました。
申し訳ありません。
それともう一つは以上の変更を前回の更新で第五話にしか反映させていませんでした。
四話まで読んでいただいた読者の中には第五話を読んで疑念を抱いた読者が沢山いたと思います。
既に全話を修正した話と差し替えています。
不手際がありましたことを再度お詫び申し上げます。
申し訳ありませんでした。
こんな抜けた二次作家ですが、どうか温かく見守っていただければ、幸いです。
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