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IF―切り開かれる現在、閉ざされる未来―

作者:黒川 優
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序章 May―踊り始める現在
  Does he already know it?


(優side―デュノア社内)


車でデュノア社の敷地内に入る。
既にそこにはフランス警察とIS委員会フランス支部の方々が捜査を行っていた。

「君!勝手に入られちゃ困るよ!」
「あー。こういうものです」

止められた警官に身分証明書を見せる。

「国際IS委員会日本本部AIF副隊長、黒川 優……。し、失礼しました!」

警官の顔がみるみる青くなる。
AIF(対IF部隊)はIS、亡国機業に関連する事件等を処理するため、俗に言えばエリートと言われてもおかしくない所なのだ。
あんな言い方で引き留めてしまえば首が危ない。

「いいって19のガキに気遣わなくて。じゃあ失礼」

ひょいと中に入り現場を確認する。

「こりゃまたすげぇな……」

社内の中庭は弾丸の跡で一杯だった。

「えーっと……」

アリスが渡してきた資料に目を通す。
狙われたのは社内の空きとされているラボ。死亡者、怪我人はゼロなのは救いである。
ただ不思議な点がひとつ。

「使用されたのが『クアッド・ファランクス』?」

『クアッド・ファランクス』は装備すると本体は動けないことから通常のISに積むこともないため生産数は少ない。
その分、特定には時間がかからない。

(これは社長に聞いた方がいいか)
とっとと特定してフランス支部に委託させれば事件は解決。
俺は休暇が取れる。
そんな風に楽観視しながら俺は社長室のドアを開けた。

「デュノア社長、失礼します」
「黒川 優君だったかな?息子のこと以来だね」

息子(シャルル)のこと以来とは、
フランスに現れた男性IS適合者はIF操縦者の可能性があるため調査をしたのだ。
IFのコアがあればそれを代用することでISに乗れる可能性があるからだ。

「その時はお手数をお掛けしました。それで今回使われた武装についてですが…」
「それはこちらでも調べてみた」

流石一流企業。対応が速い。

「で、結果は?」
「それが…、わが社に登録されたものではなかった」
「……ないと?でも、弾丸はここで作っているものですよね?」
「信じられないが同じものだ」
「…………」

着弾した弾を見るかぎり放たれたのは上空。
だが、『クアッド・ファランクス』を装備したISが飛翔することは不可能。
つまり、これは不可能犯罪――

「黒川君。私の推測ではあるがこの襲撃『亡国機業』の仕業じゃないかと」

亡国機業。確かに活動の一つにラボを破壊する謎めいた行動をする。
だが、亡国機業がわざわざ企業のラボを破壊する利点は無いはず。あるとすれば……。

「もう1つ言いにくいことですが、この社内の何者かの可能性があります」
「…………」

あくまで可能性の一つとしてあるだけではある。
しかし、登録されていないクアッド・ファランクスが使われているということはリブァイブを作る技術を持ったものが犯行を行ったとも推測できる。

「しばらく貴方の敷地を跨ぐことになりますがどうか許して下さい」
「……わかった」



(優side―国際IS委員会フランス支部)

「それで一週間近く調査してどうでしたか?」

今回の騒動で駆けつけた国際IS委員会のトップの一人、レクス・ゴドウィン長官に簡易報告を行う。

「内部犯の可能性はほぼゼロ。現段階では消去法で亡国機業となります」
「そうですか」
「では、ここの方達に捜査を委託します」

俺にできることは一通り終わった。
ここのことなら、後は他の人にでもできるだろう。

「学園に戻るのですね」
「はい。千冬さんがうるさいので」

長官の言葉に半ば苦笑いで答える。
本分は学業だって言われてもね……。
結局仕事に呼び出され授業を休み、出席日数が足らず留年。
毎年こんなオチである。


「失礼しました」

バタンっと長官室の扉を閉める。

「『赤い靴』ね……」

デュノア社から拝借した資料に目を通す。
Slave Mode 同様、AIによって操縦者の意志と関係なく機体を強制操作させるシステム。
こんなものを積む理由は……。

(早く学園に戻るか)
俺は日本に戻るべく車を動かした。

 
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