魔法少女リリカルなのは~過ちを犯した男の物語~
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
番外編:十年後
前書き
要望があったので少し短いですがほのぼのと書いてみました。
普通に本編で出ないキャラが出ますがご了承ください。
それではどうぞ。
後にPT事件と呼ばれるプレシアが次元振を引き起こした件の十年後、次元世界の中心であるミッドチルダにはある部隊が設立された。
時空管理局、『古代遺物管理部 機動六課』。
ここはその名の通りロストロギア関連の事件を扱うためにレリックの対策と、独立性の高い少数精鋭の部隊の実験のために設立された部隊である。
そこでは日々職務に精進している若者達がいる。
「はぁー……お腹空いた」
「あんたはホントそればっかりよね」
六課の食堂に4人の少年、少女が向かっている。
彼女達はこの機動六課の前線部隊『フォワード』部隊員である。
隊はスターズとライトニングに分かれるが訓練自体は共同で行う。
そして今食堂に入ってきたメンバーでヘトヘトといった感じで最初に口を開いた青髪の少女の名はスバル・ナカジマ。
階級は二等陸士でいわゆるムードメーカーだ。そのスバルに呆れ顔で接する朱色の髪の少女はティアナ・ランスター二等陸士でフォワード隊の頭脳でもある。
「あはは……でも、確かに僕もお腹空いてきました」
「私もです」
呆れ顔なティアナを若干苦笑いで諭す彼女達より更に年下の少年少女。
赤髪の少年の方はエリオ・モンディアルで桃色の髪の少女の方はキャロ・ル・ルシエ。
階級は二人とも三等陸士である。二人ともまだ幼くはあるが、そこらの魔導師より力があり舐めてかかると痛い目を見る事とになるだろう。
「まあ、お腹が空くのは仕方ないけど……あんたはいつも空き過ぎなのよ」
「そんなぁ」
若干きつくスバルにあたるティアナだがいつものことなのでエリオもキャロも苦笑するだけでそれ以上は何も言わない。
そんな、仲の良い四人が談笑しながら食堂に入るとそこには既に先客がいた。
「あれ? あそこにいるのってフェイト執務官と……料理長さん?」
スバルが先客に気づき見てみるとそこには自分達の上司であるライトニング隊の隊長フェイトと料理長である黒い髪にエメラルド色の目をした男性が実に仲睦まじそうに談笑しているところだった。
「もしかして……大人の関係!?」
「違いますよ、スバルさん。ヴィクトルさんはフェイトさんのお父さんです」
「え、うそ!?」
エリオから告げられた衝撃の事実に驚愕の声をあげるスバル。
その声に反応してフェイトとヴィクトルの二人が振り返り四人に微笑みかける。
「四人ともご苦労様」
『ありがとうございます!』
声を揃えて敬礼をする四人にフェイトは満足気な笑みを浮かべて頷く。
ヴィクトルはこの十年で少し柔らかくなった視線のみ四人を見つめお腹をすかせているだろうと判断し本来の自分の仕事に戻っていく。
「ルドガー、仕事だ」
「ああ、腕によりをかけて作らないとな」
途中、厨房で忙しなく動いていたルドガーに指示を出しながら。
ルドガーとヴィクトルは、今は六課の食堂でコックとして働いているのだ。
そして、ヴィクトルは料理長となりルドガーは部下である。
「あのー……」
「何、スバル?」
「料理長さんってフェイト執務官のお父さんなんですか」
「うん。血は繋がっていないけど私の自慢のお父さんだよ」
そう答えながらヴィクトルの背中を様々な想いを込めた目線で見つめるフェイト。
始めは自分に父を名乗る資格はないと拒否していたヴィクトルだったが度重なる『お父さん』攻撃の前に屈して今は呼ぶことを認めている。
アルフが言うにはアリシアと一緒に責め立てた計画的な犯行だったらしい。
「それって、母親が再婚されたとかですか?」
「母さんとはそういう関係じゃないよ。でも、私を娘として愛してくれる」
フェイトの言葉にどういうことだと混乱するスバルだったが取り敢えず、最初に勘ぐったような関係でないことは理解した。
しかし、見ようによっては血の繋がっていないダイナマイトボディの美人にお父さんと呼ばせている危ない人に見えるだろう。
そんなことを若い四人が考えているところに料理が運ばれてきた。
「お待たせしました。トマトソースパスタとトマト風オムレツです」
「ありがとうございます―――って、え? 髪の色が変わってる?」
「ん? ああ、そういうことか」
料理を運んできたルドガーの顔を見てヴィクトルだと思ったティアナだったが髪の色が変わっていることに気づき困惑の表情を浮かべる。
ルドガーはそんな様子に一瞬不思議そうな顔をするがすぐに合点がいき頷く。
フェイトは困惑する四人の様子にクスリと笑いながら厨房からヴィクトルを呼び出す。
「何かね、フェイト」
「うわ!? 二人に増えた!」
「スバル、あんた幾らなんでも失礼よ。……本当に似てるのは認めるけど」
ティアナの言葉に確かに失礼だったと思いヴィクトルとルドガーに頭を下げるスバル。
その様子から自分がなぜ呼ばれたのかを理解したヴィクトルは軽く笑ってそれを許す。
「二人に増えたか……当たらずとも遠からずだな」
「ふっ、俺達を倒したところで必ず第二、第三の俺達が現れるだろう」
「ルドガーさんがどこかの魔王になってるの……それとその冗談は二人が言うとシャレになってないよ!」
「な、なのはさん!?」
突如として現れ、ルドガーにツッコミを入れたスターズの隊長なのはに驚いて慌てて敬礼をする四人。
それに笑顔で返した後なのはは呆れた様子でルドガーを見つめる。
ルドガーは十年経って今では三十歳になったが生きてきた環境の為かヴィクトルと違い大分軽い態度をとる。
まあ、一番の理由は未だに結婚していないからかもしれないが。
「ま、俺達の事は歳の離れた双子だと思ってくれ」
「それって双子って呼ばないんじゃ……」
「スバルさん、こういうことは余り聞かない方がいいんじゃないでしょうか」
簡潔に話すルドガーにスバルが困惑した表情で聞こうとするが、事情を知るエリオがそれを止める。
そのせいで少し気まずい空気が流れるがヴィクトルが、料理が冷めてしまうと進めて空気を変える。
四人は微妙な気分で料理を口に運ぶがその美味しさからあっという間に先程の事を忘れてしまい夢中で料理を食べていく。
そんな子供組の様子を微笑まし気に見つめる大人組は各々会話を始める。
「ルドガーさんは何年たっても変わらないね」
「私がその年の頃はもう少し落ち着きがあったのだがな。……ルドガー、結婚はしないのか?」
「定職について働くのが楽し過ぎて結婚する気が起きなかったんだ。ただ、そろそろ本気でやばいと思い始めて来た」
「にゃははは。でも、ルドガーさんならすぐに結婚出来そうなのに」
四人の話題は何故かルドガーの結婚についての話題へと移っていく。
今までの不幸から毎日定職について働ける喜びを感じていたルドガーは結婚していないことに特に何とも思っていなかったが、流石に三十代に入って焦り始めて来た。
「特技は掃除、裁縫、料理で趣味は貯金通帳を見る事なんだが貰い手は居ないか?」
「どこかのお母さんみたいなプロフィールだよね」
「因みに最近はバラのジャムを作るのにはまってる」
「お婿さんじゃなくてお嫁さんとして売り出した方が貰い手が多そうだね」
ルドガーのプロフィールになのはが苦笑いを浮かべながらツッコミを入れて、フェイトは至極真面目な顔でお嫁さんになった方がいいと答える。
因みにヴィクトルは、プロフィール自体は全くと言っていいほど同じなので苦笑を浮かべる事しか出来ない。
「それにしても結婚か……」
「フェイトちゃん、もしかして誰か好きな人が居るの?」
「い、いないよ! なのは!」
意地悪そうな顔でフェイトを問い詰めるなのは。
フェイトは顔を赤らめていないと言うが隣に立っていた『父親』の顔はみるみるうちに能面のような無表情になっていく。
何を隠そう、この男―――親馬鹿である。
「フェイト、結婚するなら真面目な男でなければダメだ」
「う、うん。そうだね、父さん」
「それと家事も出来なきゃダメだ。私以上に料理が上手で私以上にカッコよくなければダメだ」
「ふふ、フェイトちゃんのお相手は大変そうだね」
「そして、私の秘奥義を十発受けても立っていられる奴じゃなきゃダメだ」
「彼氏を生かして返す気ないよね、それ!?」
背後にゴゴゴゴ……という効果音が付いていそうな凄まじい威圧感放ちながらヴィクトルが大真面目な顔で言い切る。
この男は娘に近寄る虫はすべて排除する気である。
恐らくはフェイトが結婚できるようになるのはまだまだ先になるだろう。
そんなことをなのはが考えている時にあることを思い出す。
「そう言えば、この前買い物をしている時にナンパされたんだけど……どうしようか悩んでちょっと目を離したすきに麻酔弾で撃たれてたの」
いかにも不自然な出来事を思い出して犯人と思われるルドガーの方に目を向けるとサッと目を逸らされる。
完全に黒の反応である。確かに自分も困っていたがいくら何でもやりすぎだと思ったなのははルドガーに文句を言う。
「もう、ルドガーさん何を考えているの!?」
「いや、恭也と士郎さんと話し合った結果、半端な男がなのはに近づくようなら始ま―――遠ざける様に決めたんだ」
「今、始末って言おうとしたよね!? それとお父さんとお兄ちゃんもなにしているの!」
衝撃の事実に完全に混乱しながらもなんとかツッコミを入れるなのはだが、我が家の男性陣の過保護っぷりに頭を抱えて転がりたい気分だ。
そんななのはの様子を見てフェイトも思い当たる節があるのか手を口に添えて以前あった出来事を思い出す。
そう、あれは自分も同じようにナンパをされた後だった。
「ナンパをしてきた人が消えた方に母さんの雷が見えたことがある……」
あの時は気のせいだろうと思って気にも留めなかったが今思えば随分と過保護になったプレシアの仕業だったのだろう。
「そう言えば、アリシア姉さんも同じようなことがあったって言ってたような……」
少しジト目でヴィクトルの方を見てみるがこちらは動じるどころか開き直った態度で腕を組んでいる。
その姿は素直にカッコイイのだがやってることがやってることなのでどうにもため息が出てしまう。
「親として当然の責務を果たしたまでだ」
「心配してくれるのは嬉しいけど流石にやりすぎだよ、父さん」
「人生、時には泥を被る必要がある」
「それっぽく言ってもダメだからね」
こんな性格だったかなと深い溜息を吐きながらフェイトはなのはと顔を見合わせて目で想いを伝え合う。
―――私達、ちゃんと結婚できるのかな?
六課の夜は年頃の乙女の溜息と共に更けていくのだった。
後書き
はやてはアインスをどうするか決まってないので出せませんでした。
もしかしたら今後AS書くかもしれません。
ページ上へ戻る