東方変形葉
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変化は永遠に……
終章 東方変形葉
東方変形葉60話「そして変化は続くのか」
前書き
紫「封印は、もって二日かしら」
霊夢「みじかっ!?」
レミリア「……確かに、あの人食い妖怪の力は、私だけで抑えきるのは難しそうね」
パチェ「あら珍しい、ほかの妖怪の力を認めるなんて」
レミリア「敵の実力を侮ると死ぬもの」
霊夢「……で、どうするのよ。裕海がどうなってるかさえわからないというのに」
紫「一度封印が解かれたら、もうしばらくは再封印することはできないから、なんとしてでも二日以内に裕海が帰ってこなきゃいけないわ」
霊夢「帰ってくる……?どこから」
紫「そうねぇ。世界の真理から、かしら」
あはは、まだ百人しか救えてないや。期日まであと数時間なのに。
「いったい、どうしろと言うんだよ……」
現実世界の霊能者が思っている程妖怪が多いわけでもないのに、どうやって救えばいいのか。
そう考えた時、ふとあることに気が付いた。
「まてよ……?妖怪はこの世界の住民にとって人知を超えた存在だ。ということは、人知を超えた現象であれば、どうなる……?」
そして、一つの結論にたどり着いた。
「もしかして、あの神は、この後起こる天災から人々を守って見せろ、と言ってるんじゃないのか?」
しかし、どうやって?災害が起こった瞬間に「すきまわーるど!」とか唱えて地球の住民を亜空間の彼方へ放り込めばいいのか?いや、それはめんどくさい。そもそも俺の力じゃ地球なんていう大きな星を包み込むようなことはでき……、まてよ?神が、俺の力を最大限にまで引き上げたのだろう?全く実感ないけど。
「……だったら、あれもできるよな?」
それは、以前紫から教えてもらったこと。
『世界を救うには、どうすればいいと思う?』
唐突に、紫はそう言ってきた。
『なにさ、突然』
『ほら、気まぐれってやつよ。あなたもよく言い訳に使ってるじゃない』
『お、おぉ。まあいいけどさ。……世界を救うには?そりゃ、大きな力を使えばいいんじゃないのか?それこそ、その世界を包み込めるほどの』
そう答えると、紫はふふっと微笑んだ。するすると紅茶を啜り終えると、ふぅ、と息を漏らし、言った。
『そうね。だけど、その大きな力というのは、具体的にはどう使えばいいのかしら』
『う。そ、それは~……』
わからない。
頭に浮かんでいたのは、どれも現実味のない不可能な方法だったからだ。
『世界は、一つだけではないのよ。今でこそ何百という世界に分かれ、外の世界の人間たちは知らないけれど、あらゆる世界と隣接しているのよ』
『ふぅん?』
『けれど、元をたどれば結局世界は一つだけなのよ。その後に勝手に分裂しただけで。それがどういうことか、わかる?』
『……すべての世界における力素が、同じ性質を持つってこと?』
力素とは、空気中に漂う、魔力や霊力の元になる素粒子である。
『よくできました。知っての通り、力素自体は無限に増やすことができるわ』
魔力や霊力の量が人によって変化するのは、その人の力素が入る器の大きさによって変わってくるからである。
『紫が言いたいのって、つまり―――』
「こういうこと、なんだろ?」
両手を広げる。すると、瞬く間に空が空間の裂け目で覆われた。
接続結界「全世界力素パイプチェーン」
その瞬間、地球の表面から淡い青色の光が漏れだした。地上では今ごろ大騒ぎだろう。
各世界に接続された空間の裂け目から伸びる一筋の光は、すべての裂け目につながり、たちまち光の筋による鎖によって世界が覆われた。
「全世界との力素供給接続を確認。現実世界への力素供給を開始」
手のひらを地上に向けると、青白い閃光が発生した。
眩しすぎて地上で何が起こっているかはよくわからなかったが、少なくとも地球に力素が溜まっていくのはよくわかった。
そう。
天災とは、地球の活動がさかんである証拠ではあるが、それと同時に力素の不安定が関係してくる。
ならば、地球を力素で満たしてムラをなくせばいい。
少し前までの俺にはできなかったことだ。
なぜなら、さすがに力を使いすぎるからである。しかし、神力が無尽蔵に湧く今ならば可能だったのだ。
そして程なくして、地球に力素が完全に溜まったことがわかった。
それと同時に、俺の視界はみるみるうちに白くなっていった。
✤ ✤ ✤
「まずい、封印が解けるわよ!」
封印の異変を察した霊夢が、そう叫んだ。
「ちょっと早いわね」
「まあ、この程度のイレギュラーは想定済みみたいなものだけどね」
「ちょっとは危機感感じなさいよ!?」
ゆったりしている紅魔組に、霊夢は衝撃を受けた。
しかし、目にとらえることを許さないほどの小さな震えが、レミリアとパチュリーを襲っていた。
結界「魅力的な四重結界」
紫がスペルカードを唱えたのと、封印が解けるのはほぼ同時だった。
「ふふふ、この程度の封印で、この私が静まるとでも?」
「大丈夫よ、元からそんなこと思ってないから」
紫はスキマで妖怪を幻想郷上空に移すと、レミリアやパチュリー、霊夢が一緒になってスペルカードを唱えた。
境界「生と死の境界」
神槍「スピア・ザ・グングニル」
日符「ロイヤルフレア」
神霊「夢想封印」
いずれも、スペルカードの中で強い部類に入る攻撃が開始された。
「ふん、幻想郷の攻撃はそんなものか」
すらっと大きな剣を取り出し、一振りした。
すると、瞬く間に攻撃を吹き飛ばしてしまった。
「なん……ですって?」
その恐ろしい力に、レミリアが思わず目を見開いた。
暗血「王家の病」
霊夢たちの周りに、赤黒い塊がまとわりつく。そして、塊から紅い光線が無数に放たれ、瞬きさえも許さぬ攻撃が開始された。
「警鐘陣っ!」
とっさに霊夢が守護結界を張る。今はもちこたえているが、長くはもちこたえられないだろう。
「……しまったわ。まさかあの妖怪、私の能力を封じる術を持っていただなんて」
「はぁ!?」
紫が珍しく、失敗したような顔で呟いたので霊夢が思わず大声で反応した。
「くくっ、さすがに大賢者様でも気が付かなかったみたいだな。能力が制限される空間に誘導されたことに。ふふふっ、ふはははははははははははははははははははは!」
そして妖怪は、勝ち誇ったような笑みで狂喜に満ちていた。それを、悔しいのか唇を噛んでぎろっと睨むレミリアが、とうとう我慢できなくなったのか、妖怪めがけて飛び出した。
しかし、スペルカードを唱える前に、妖怪の剣の一振りで叩き落とされてしまった。
「ふふ、死ぬといい」
「ぐっ……!」
そして、レミリアに赤黒い光線が放たれた。
それは、当たる寸前だった。
「っ!?」
赤黒い光線が、消失した。
「無事か、レミリア」
それは、いつもより神々しい恰好をした少年。
変幻操作の人間。
葉川裕海だった。
「……もう、来るのが遅いわよ」
「ああ、悪い。なんか、神がこの服を着ろと聞かなくてさ」
そう言いながら、片手を霊夢たちに向けると、その周りをまわっていた赤黒い塊が破壊された。
そして、涙をこらえるレミリアを、霊夢たちのところにスキマで戻した。全員の無事を確認すると、目つきがキッと鋭くなる。
こげ茶色の瞳が、夕焼けのせいだろうか、紅く見えた。
「さて……ずいぶんやってくれたみたいだな?」
「ひっ!!」
裕海の瞳に、不吉な光が宿る。
その刹那、裕海から天地をひっくり返すような巨大な神力が放たれた。
「……私が封印されている間に、何をしたのだっ」
「さぁ?それは神に聞いてくれ。そんなことより―――」
裕海は扇子を取り出すと、
「さっさと、ルーミアを返してくれる?」
神変「ストーカーメリー」
攻撃を、開始した。
妖怪は後ろに気配を感じてさっと振り返るも、そこには誰もいなかった。そして正面を向くと……。
「俺はメリー。今、お前の目の前にいる」
裕海が霊剣で妖怪を切り裂いた。
否、妖怪の魂だけを。
「があああああああああああああああああああっ!?」
心理的な概念のこのスペルカードは、主に精神に傷をつける。ルーミアの身体をのっとっているため、深くはえぐれないがそれでも大ダメージに変わりはなかった。
変化「精神寸勁」
よろよろとふらつく妖怪に拳をこつんと当てる。すると、まるで内部から爆発するような音がした。
「――――――っ!」
ルーミアの身体から、妖怪が抜ける。ぴゃーっと悲鳴を上げながら逃げようとするが、裕海はすでにルーミアを回収してスペルカードを唱えようとしていた。
召還「ドールズアロウ」
「き~らき~らきら♪」
「呼ばれて飛び出て~♪」
「やってきた~♪」
崖の上のポ○ョを思い浮かべる謎の替え歌を歌いながら、綺羅星人形、蛍石人形、姫雪がスキマから飛び出した。
そして、攻撃を開始する。
蛍石人形が攻撃範囲の域を定め、姫雪は滅茶苦茶に矢を放ち、綺羅星人形は折れた矢を元に戻して攻撃範囲に投げる。
攻撃範囲の域を定めることで、その部分に攻撃が集中する仕組みである。
つまり、妖怪は矢の豪雨にさらされているのだ。
「わ、私の野望がああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
そして、妖怪は瞬く間に姿を消した。
その後は、裕海が生き返ったことに重ねて妖怪を倒したことによる喜びが、レミリアたちや騒動を聞きつけてやってきた者たちに襲いかかり、しばらく裕海の周りできゃっきゃとはしゃぎ始めた。
笑みや言葉を返しながら、裕海はあることについて疑問を持っていた。
―――紫、どうしてお前は嘘をついているんだ。
続く。
次回、最終回
後書き
次回、最終回です。フリではありません。
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