東方変形葉
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新鮮な日常
第五章 不変知らずの幻想郷
東方変形葉59話「あんた誰?」
「あ~あ、せっかく力を取り戻したのにぃ。裕海ぃ~、貴方を食べたいよぉ……」
裕海に束縛の術を掛けられ、動こうにも思うようにあまり動けなくなっているルーミア。裕海は、空中で何やら敵たちと話をしているようだ。
「むぅ~……」
『その術を解いてやろうか?』
「!!」
怪しげな声に、ルーミアは身構えした。
『まあ待て。私と契約をすれば、その術を解いてやるというだけだ』
「……契約?」
『左様。のぅ、“闇の王女”。お前の力をさらに上げ、あの裕海とやらを食べるのなら』
「…………」
ルーミアは、迷っていた。
神をもしのぐ力を秘めた裕海を食べるのは、人間でいえば、五つ星グルメを一生分食べるに等しいほどの超豪華な食糧なのだ。
しかし、食欲とは別の欲望があった。
独占欲である。
ルーミアは、彼にいつしか好意を寄せていたのだ。
その葛藤を見知らぬ者に見せたのが、失態だった。
『はぁっ!』
「!!」
黒い影が、ルーミアの中に入ってしまった。
妖怪は、精神が弱い。なので、迷いという“隙間”があると。人間の傷口から菌が侵入するように、心の隙間に入りこまれるのだ。
「うっ……不覚…………」
ばたっと、ルーミアは横たわる。そして、再びムクリと起き上がった。しかし、それはルーミアではなく……。
「あはははははははははは!ついに私の時代が来たのだっ!闇の王女の強大な力を手に入れたからには、もう怖いものなど無いっ!」
高笑いをしながら、黒いベールで身を隠していく偽ルーミア。
そして、思いっきり床をけり、外へ出た。
「……おい、ルーミア?ルーミアなのか?」
「…いや、こいつは、ルーミアじゃないわ。何者かに乗っ取られている……?」
霊夢はそう説明しながら、強大な霊力を前にして少し冷たい汗を流した。
禍々しい闇を被ったルーミアは、いや、妖怪は、俺のほうを見た。
「貴様だ。貴様を食えば、もっともっと強くなれるのだっ!」
紅い目を光らせながら高速で襲いかかる。
目に留まらぬ速さで襲いかかる闇は、俺の右肩を裂いた。
「がぁっ!?」
「葉川さんっ!」
「裕海っ!いきなりやってくれるじゃない、妖怪!」
肩に熱いものを感じる、だが、能力で威力を軽減し、さらに傷を癒したので、大したことはない。
神霊「夢想封印」
八つのカラフルな光の弾が、妖怪を襲った。
しかし……。
「ふん、その程度か」
「!?」
妖怪は、人差し指でそれを消したのだ。
「ちっ、五行霊剣、火乗金!スペルカード!」
霊剣「ファイアバブル~3st~」
炎の霊剣を振りかざすと、妖怪の周りを瞬く間に炎の泡で覆った。
「ふん、こんなもので―――」
「『全変化』」
「っ!!」
炎の泡から鎖が伸び、泡と泡同士でつなぎ合わせる。さらに、その泡は小さく分かれていき、また鎖でつながれ、それを繰り返し、そして炎の鎖で隙間なく埋め尽くされた。
「うっ……」
しかし、その反動でふらついたが、なんとか立て直そうとする。そこに、聖が俺の肩に手を置いて横に首を振った。
「少し休んでください。酷い疲労の色が見えます」
「そ、そういう、わけには、いかないんだ。あいつからルーミアを取り戻さなければ、ルーミアは…………」
その時だった。
鎖が破られ、禍々しく黒い光線が俺に向かって一直線に飛んだ。
「がふっ!?」
俺はそれを胸に受けた。
力をなくし、下にある魔界の森にとんでもない勢いで落ちていった。
落下時、俺の心臓は動かなかった。
だんだんと目の前の景色から鮮やかさがなくなっていく。
そして、闇に呑み込まれたかのように視界は真っ暗になった。
と、思っていた。
急に、世界が白くなったのだ。
しかも、床がある。
「な、なんだ……?天国か?小町から聞いてたのとはずいぶん違うな」
「いいえ。ここは神界です」
「!!」
目の前に突然現れた美しい女性に、目を白黒させた。
「あなたは死にます」
「ですよね!?」
「ですが、貴方には先生が宿っておられる。ここで死なすわけにはまいりません」
「先生……?」
それを、すぐに変化神のことだと理解した。
「しかし、自然の摂理に逆らうことを簡単にしてはならないのが私ども、神々の掟です。なので、この試練に少しお付き合いください」
女性は、一枚の紙を手渡した。
「現実世界で、10000人の命を救ってください」
「はあ……はあぁ!?」
一万人だって!?そんな大人数を救うって!?
「あなたには、特別に仮の命を吹き込みます。本来宿っている力もすべて引き出して差し上げましょう。ですが、期限は明後日までです」
「早すぎる!?」
「はいはい、ごたごた言ってないで早くいってらっしゃい」
「えっ、ちょ、まっ!?」
視界は、パッと夜景になった。
一年前まで見てきた、現実世界の光景である。
ちなみに今、俺ははるか上空で浮いていた。
「……展開早すぎだろ」
そうつぶやかざるを得なかった。
一方、幻想郷。
「ちっ、しぶといわねっ!二重結界を破る奴なんて初めてよ!」
霊夢がなんとか妖怪を食い止め、聖が裕海を捜しに森に降りた。
「霊夢。とりあえず今は封印のことを考えなさい」
「紫っ!?」
幻想郷最強の妖怪、八雲紫が突然姿を現した。いつもとは違う、緊迫感のある紫の表情に、少しだけ焦りを覚える。
「光と闇の境界はもう弄れないわね、もう闇しかないわ。仕方ない」
結界「魅力的な四重結界」
幻想「第一種永久機関」
外力「無限の高速飛行物体」
三枚同時スペカである。
妖怪の動きを四重結界が封じ、その周りを弾幕で埋め尽くし、さらに高速レーザーによってじわじわと攻撃する戦略だ。
「ぐぅっ!?ちぃっ、妖怪の賢者ときたか……」
「あら、あなたに発言権は無いわよ」
境界「生と死の境界」
境符「波と粒の境界」
「っ!!」
体を貫かんばかりの光速光線。弾幕によって埋め尽くされた360度の檻。体をこれでもかと封じる四重結界。そして、美しい弾幕によって彩られる視界。
それらは、妖怪に恐怖心を抱かせ、精神を狂わした。
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!!!!」
「今よ!博麗式封印術―――」
神霊 「夢想封印 瞬」
霊夢は目に留まらぬ速さで妖怪の周りを飛び、お札で包囲していく。お札はやがて動き出し、妖怪の身体に貼り付いていく。
宝具「陰陽鬼神玉」
そして、お札によって体の包まれた妖怪は、霊夢が用意した陰陽玉に吸い込まれた。
ゴウッと質量の持った陰陽玉はすぐさま、紫によって二重封印をかけられ、スキマに入れられた。
「……はぁ、危なかったわ。今のを弾かれたらどうしようかと……」
紫がそうつぶやいた後、ハッとなった霊夢がバッと顔を紫に向けた。
「それよりも、裕海がっ!」
「ええ。既に手をまわしてあるわ」
「?」
うっすらと微笑みながらも、哀しい光を宿す紫の瞳と、紫の言葉に疑問を抱く霊夢。
「あの子の死を読んだ後にちょっと知り合いの神様に頼んだのよ。あの子には、そろそろ“自分”と戦う経験を持ってほしくてね」
「???」
「そう、あのルーミアにも、私にも、八百万の神々を束にしても敵わないような力を、今こそ解放してもらわなければならないの」
紫は、あることを心の中でつぶやきながらそう言った。
「……宿る力をすべて引き出した、と言われてもなあ」
確かに体は軽く感じるが、それはルーミア戦までの疲れが取れたからであり、つまるところ何も変わっていないどころか、むしろ神力が減った気さえする。
「二日で、一万人の、命を救え……か。チャンスをわざわざ与えてくれたとはいえ、相当無茶な要求をするなぁ……」
しかし、この要求は正しいともいえる。
生きる者を死なせることは至って簡単かつ完全に禁じられてはいないが、死んだものを生き返らせるのは禁忌。この世に存在できる物質の許容量が増え、世界が飽和するからである。そうなると、ビッグバンによって膨らんだこの世が破裂する可能性がある。
この理論は紫から教えてもらったが、実のところ俺にもよくわからない
「…………」
裕海は、幻想郷につなげる変化を起こそうとしたが、それは敵わなかった。神様がこの行動を予測していたのか、これだけはブロックされていたのだ。
吹き込んだだけの脆い命は、幻想郷を覆っているような高級結界を超えるだけで危ないからだと裕海は考えた。
「…………」
裕海は、スキマからマントとゴーグルを取り出した。
「ぐっへっへ、あんたに俺の子を産ませてやるよ」
「いや~っ!助けてーっ!」
その時、窓際に謎の人物が立つ。
「そこまでだ」
「なんだきさまがぁぁっ!?」
弾幕で黙らせて終了である。
「じゃっ」
「あ、ありが早っ!?」
瞬間移動である。なお、一連の流れ約十秒である。
「あぁん?なめとんのかワーレー」
「ひぃっ!?ごめんさないごめんなさい」
「ごめんなさいは一回じゃボケ!」
「ひぃっ!?」
その時、壁際に謎の人物が立つ。
「そこまでだ」
「なんだきさまがぁぁっ!?」
弾幕で黙らせて終了である。
「じゃっ」
「ど、どうも早っ!?」
壁突き抜けである。なお、一連の流れ約十秒である。
「くらへ!ウルドラマン!なんたらビーム!」
「ぐっ!?もはやここまでか……」
その時、カメラ際に謎の少年が立つ。
「そこまでだ」
「な、なんだ君はぐぼぉぉ!?」
なんたらビームで黙らせて終了である。
「じゃっ」
「け、警察を早っ!?」
スタジオ突き抜けである。なお、CMからの番組再開後約十秒である。
「……これじゃ駄目かもしれない」
いろんな意味で謎の少年、裕海が黄昏た。
続く
後書き
はい、気づけばもう東方変形葉一周年。めでたいものです。
作風は、こんな感じで行こうと思いマッスル。古いなこのギャグ。
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