ソードアート・オンラインーもしもあの時、サチが死ななかったらー
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
SAO
青眼の悪魔
第19話
前書き
サチとクラディールがデュエルする事となる辺りまで書きます。
リズベッドとの一件からおよそ4ヶ月後の10月中旬、場所は最前線74層の迷宮区。キリトとサチは、〔リザードマンロード〕の群れと戦っていた。〔リザードマンロード〕は攻略組のプレイヤー内でも厄介なモンスターで知られているが、2人のレベルは90後半、何があっても問題は無いだろう。
そして最後の1体を倒した後、2人は武器を収めた。
キリト『何とかなったな。』
サチ『そうだね。』
2人はそう言うと、迷宮区を歩いてフィールドに出た。
因みに74層の迷宮区は、およそ80%が攻略され、近々ボス部屋が見つかっても不思議は無い状況となっていた。
ーーーー
2人が主街区に続くフィールド内の森の中を歩いていると…、
サチ『≪ピタッ≫』
サチは立ち止まった。目を凝らしながら辺りを見回している。キリトは【索敵スキル】は鍛えているが、サチはキリト以上に鍛えている。するとサチは指を指した。
サチ『キリト、あそこ。』
キリト『……。』
サチが指を指す方向にキリトが視線を向けると、およそ10m先の木影に隠れる小型モンスターがいた。
キリト『あれか?』
サチ『うん。』
それを聞いたキリトは、長さ10cm程あるピックを取り出した。キリトは【投擲スキル】を有しているものの、練度はそれ程高くは無い。だが、小型モンスターを狩るには、それで充分通用する。しかも、相手はキリトとサチには気付いていない。早速キリトは、【投擲スキル】の"シングルシュート"を発動した。攻撃は外れたが、小型モンスターは驚いて飛び上がった。それを合図に、キリトは2回目の"シングルシュート"を発動。今度は見事に命中して、小型モンスターのHPは0となってポリゴン状に四散した。
キリトがウインドウを確認すると、そこにはS級食材で知られる<ラグー・ラビットの肉>の名前があった。
これは、最低でも10万コルくらいの値がつく程の食材。
キリトとしては、サチに調理して貰いたいと思ったが、一旦サチに確認する。
キリト『なぁサチ、お前って【料理スキル】は……』
サチ『ごめんなさい。まだコンプリートしてないの。』
キリト『そうか、なら無理かぁ。』
どうやら、サチでは無理な様だ。S級食材を調理するには、【料理スキル】高くなければならない。
サチも上げてはいるが、キリトが知る限りでは大体中間辺り、それでは調理はまず無理だ。
他の誰かに頼もうにも、サチ以外にアテはない。
キリト『仕方ないから、売って金にするか。』
サチ『そうだね、そろそろ防具を新調しないといけないし。』
キリト『ああ、じゃあ、エギルの店に行くか。』
サチ『うん。』
と言う訳で、S級食材をお金に替えるべく、2人は主街区の転移門に急ぎ足で向かい、転移門に到着すると、エギルの店がある50層へ転移した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
50層。主街区には多数の店が立ち並ぶ層で、いつも活気が溢れる層だ。
キリトとサチのホームもこの層の一角にある。
ーーーーーーーーーー
早速2人は路地裏に入ると、行きつけのエギルの店に入った。
エギル『よぉ、キリトとサチ、いらっしゃい。』
キリト『よぉ。』
サチ『お久しぶりです。』
エギルの挨拶に、キリトとサチは元気良く返した。
キリト『俺達も買取を頼む。』
エギル『おぉ、勿論だ。一体何だ?』
サチ『これなんですけど……。』
サチはウインドウを操作して、トレードウインドウを表示した。
エギルがそれを覗き込むと驚いた。
エギル『おい、これってまさか、S級食材じゃあねえか⁉︎流石の俺も、現物を拝見するのは、初めてだぜ。』
そう言ったエギルは疑問が浮んだ。
エギル『なぁ2人共、お前等金に困ってないだろう?食おうとは思わなかったのか?』
キリト『そりゃ思ったさ。だが、こいつを調理出来る程、【料理スキル】を上げている奴はそういないぞ。』
エギル『サチはどうなんだ?サチも【料理スキル】は持っているだろ?』
サチ『持ってはいるけど、そんなに上げていなくて……』
エギル『そうか、なら仕方ないかぁ。』
サチが【料理スキル】を持っている事はエギルも知ってはいたが、S級食材を調理出来る程上げていない事は流石に知らなかった。
その時…、
『キリト君。』
後ろから誰かに声をかけられた。キリトが後ろを向くと…、
アスナ『……。』
<血盟騎士団>副団長のアスナ(SAOにおけるアスナの格好は、原作とアニメで違うので、アニメ版と言う設定でいかせて頂きます。)がいた。しかも後ろには、護衛らしき<血盟騎士団>のメンバーが1人いた。
キリト『珍しいな、こんな場所に姿を見せるなんて。』
アスナ『失礼ねえ、生きてるかどうか確認しに来たのよ。貴方達は、ボス攻略では主力を担っているのだから、特に、貴方はねサチ。』
サチ『私?』
アスナ『そうよ、〈俊足の槍突〉さん。』
サチ『その呼び名はやめてよ。』
何度も言うかもしれないが、サチは〈青の槍壁〉以外に〈俊足の槍突〉の二つ名を有しているが、サチは〈俊足の槍突〉の二つ名で呼ばれるのを嫌っている。
アスナ『そういえば何してるの?こんな所で。』
キリト『ああ、そうだ。<ラグー・ラビットの肉>をドロップしたんだけど、調理してくれるアテがないから、エギルに買取って貰おうと思ってな。』
アスナ『ええ⁉︎S級食材の⁉︎』
キリト『そう。』
あのアスナが動揺している。アスナでもお眼にかかれない代物みたいだ。
アスナ『だったら、サチに調理して貰えばいいんじゃない?』
サチ『私、【料理スキル】は700くらいだから。』
アスナ『そうなの?それじゃあ仕方ないか。』
アスナはサチに調理して貰えばいいじゃないのかと言ったが、サチの練度を聞いて納得した。
アスナ『それじゃあ、私が調理しようかしら?』
キリト『アスナが⁉︎でも、【料理スキル】の練度は?』
アスナ『ふん、先週コンプリートしたわ。』
キリト『何っ⁉︎』
サチ『えっ⁉︎』
エギル『嘘だろ⁉︎』
アスナが調理すると聞いたキリトは練度を聞いたが、アスナがコンプリートしたと聞いた瞬間、キリト達は驚きを隠せなくなった。
スキルの練度は、1000に達する事でコンプリートとなる。キリトでさえコンプリートしているのは、片手剣や索敵,武器防御くらい。一方のサチは、以前紹介した(番外編 サチ一式を参照)スキルを全てコンプリートしている。
アスナ『その代わり、1/3は私が貰うから、いいわね?』
キリト『ああ』
サチ『キリト、いいの?』
キリト『仕方ないだろ。他にアテがないから。』
サチ『そうだね。』
っと言う訳で、アスナが調理してくれる事で決まった。
ーーーー
キリト『悪いなエギル、取り引きは取り止めだ。』
エギル『別にいいが……』
サチ『代わりに、今度私がエギルさんに料理を作ってあげますから。』
エギル『えっ、いいのか?』
サチ『はい、エギルさんとは長い付き合いですし。』
エギル『解った、それでチャラだ‼︎約束だぜ、サチ‼︎』
サチ『はい、約束です。』
エギルは、サチが今度料理を作ってくれると聞いて喜んだ。サチの腕前についてエギルは、キリトを通じて聞いたので、一度食べてみたいと思っていたのだ。サチと約束したエギルは嬉しそうにキリト達を見送った。
ーーーーーーーーーーー
エギルの店を出たキリト達は表通りに出た。
アスナ『それで、どこで料理するの?サチが料理をしているのは知っているけど、キリト君達の部屋は簡単な道具しかないでしょ?』
キリト『うっ‼︎』
アスナの言葉に、キリトは喉を詰まらせた。
アスナの言う通り、サチが料理する為に必要な道具等はあるが、キリト達の部屋は少し汚い為、アスナを招き入れる事はまず出来ない。
アスナ『ま、今回は食材に免じて、私の部屋を提供してあげるわ。』
キリト『えっ?』
サチ『……。』
それを聞いたキリトは驚いた。サチに至っては呆然としている。
ーーーー
だが、そんな2人はそっちのけに、アスナは護衛に言った。
アスナ『今日は直接61層に転移するから、護衛はもういいわ。』
それを聞いた護衛はアスナに言った。
『大変失礼ながらアスナ様。このような場所に足をお運びになるのでしたらまだしも、そのような何処の馬の骨だか知らぬ素性のしれない奴等2人を御自宅へ招き入れるなど、あってはならない行為です。』
これを聞いたアスナはウンザリした表情を浮かべた。
おそらくこの護衛は、アスナを崇拝するプレイヤーの一人だろう。
アスナを崇拝するプレイヤーは山程いるが、最近ではストーカー紛いな行為をするプレイヤーが現れたので、〈血盟騎士団〉の幹部がアスナに護衛を付けたのだが、アスナはそれを良く思っていない。
アスナ『この2人は素性は除いても腕は達者よ。何せ女の子の方は私よりも強いのだからね。しかも、貴方より10近くレベルが上なのよ。クラディール。』
クラディール『私がこんな奴等に引けを取る上に、アスナ様より強いなど…そうか、〈ビーター〉と〈俊足の槍突〉……。』
〈ビーター〉とは、キリトが1層のボス攻略後に呼ばれる様になった呼び名で、ベータテスターとチーターを掛け合わせたもの。因みにサチは、〈ビーター〉と呼ばれるのはまだしも〈俊足の槍突〉と呼ばれる事だけは嫌っている。
ーーーー
サチ『〈俊足の槍突〉?その呼び名はやめてくれないかしら?もとより、私の前でその呼び名を使うなんて、相当な度胸があるのでしょうね?』
サチはそう言って、クラディールに槍を向けた。
クラディール『何だと⁉︎若造の分際で‼︎』
そう言ってクラディールは、両手剣を抜いた。
キリト『おいサチ‼︎』
アスナ『やめなさい、クラディール‼︎そんな言い方は……』
サチ『黙ってて‼︎』
クラディール『このような奴にコケにされては、私のプライドが許しません‼︎』
キリト『だからって……‼︎』
アスナ『貴方達……‼︎』
『『いいから黙ってて(お黙り下さい)‼︎』』
『『はい……。』』
キリトとアスナはサチとクラディールを静止させようとしたが、逆に2人の気迫に屈して黙るしか無かった。
ーーーーーーーーー
こうしてサチとクラディールはデュエルする事となった。オプションは、《初撃決着モード》。そしてカウントダウンが始まった。
後書き
次回は今週末までに公開します。
ページ上へ戻る