遊戯王GX 〜漆黒の竜使い〜
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episode5 ーSpell Collectorー
前書き
キャ ラ が 劇 変 !
Q:おいおい、どうしてこうなった?!
A:今までが無口過ぎたんだ……。本来はこれくらいの台詞量。メソラシ
というわけで、本編どーぞ
プロリーグでのデュエルが開始される前、いつもの控え室には顔を赤らめ慌てた様子のレンカとそれをニヤニヤしながら眺める彼女のマネージャー 橘 楓が居た。
どうやら、先日変更された衣装に対し、文句を言ってるらしい。
「ちょっ!?ほ、ホントッにこれで行かなきゃいけないんですか!?」
「モッチのロンですよ!」
レンカは迷いなど全くもって感じさせない一言で一蹴されてしまい、肩を落とす。
かく言うレンカの今の格好は全身を黒いローブで覆い隠してはおらず、
下は太もも辺りまでの緋色のフレアスカートに、黒のハイソックスできっちりと絶対領域を作りだし、上はブラウスと色こそ黒や紺色ならば、学校指定の制服にもみえる衣装を着ている。だが、それとは不釣り合いと思える黒一色のポンチョを被り、顔を一切隠してしまっている。
楓曰く、『黒と赤の相性はバツグン。身長の低いレンカさんに最適なコーデ』とかなんとか。
「や、嫌ですよ!?こんな太もも出したスカートなんて!」
「え〜?いいんじゃないですかそれくらい。レンカさんの羨ましいくらい真っ白な肌が黒のハイソックスに映えてとっても妖艶な雰囲気を醸し出していますよ?」
「よ、妖艶?!わ、私まだそんな歳じゃない、です!」
当の本人は妖艶というワードで何を想像したのかフードの奥では耳まで真っ赤に染めあたふたと慌てる。盛大な自爆である。
早速此処には、凛々しく、そして冷酷に相手を屠る『漆黒の竜使い』レンカの姿はない。
「そ、れ、に!その表情がギリギリ見えそうで見えないフード!
幼気な少女がフードの奥ではどんな表情をしているのか……。それを想像するだけで私は白飯3杯はいけますよ!
「お、幼くないですっ!こ、これでも高校生なんですから!てか、後半どんな意味ですかぁ!」
「お、怒るところはそこですか?」
160cmにも足らない身長の事を指摘され、涙目になりつつ怒るレンカ。だが、楓にとってはそれすらも愛おしく思えてしまう。
ちらりと時計に目を移せば、そろそろ開始の時間が迫っていた。
パンッと一つ柏手を打つとその瞬間、和んでいた空気は消え去り、彼女とレンカの関係は年少と年長から、プロとそのマネージャーへと変わる。
「ご健闘を祈ります。」
恭しく一礼をする楓。
豹変したマネージャーの態度に若干戸惑いつつも、レンカも気持ちを入れ替える。
「……い、行って……きます。」
「……!はいっ!」
顔を真っ赤に染めつつ、蚊の鳴くような声で呟かれた返答に思わず俯くレンカを見つめてしまう。 だか、すぐに笑顔を咲かせ、もう一度彼女を送り出す。
◆◇◆
「さぁ!今宵もこの時間がやってきた!早速だが、今回の対戦相手はぁ!既に知らない人が居ない程に知名度を上げたこの決闘者!」
会場を照らすスポットライトが一点に集まり、一人の人物を照らし出し、観客がその姿を拝見した途端、野郎共のスクリームが響き渡る。
先日の孔雀 舞との一戦の後、シークレットとされていたうちの一つである性別が公表され、早速衣装変更の問い合わせが来るほど、レンカの人気は鰻上りになっていた。
そして、顔を見せていないとは言え、黒一色の味気ないフード姿から、少女の可憐さとミステリアス感を押し出した衣装へと一変した事実に会場は沸きに沸いた。
それはもう、この後のメインイベントであるプロ同士によるデュエルなんて忘れる程に。
スポットライトの中心で立ち尽くす当の本人はフードの奥で『もう帰りたい……』と涙目を浮かべていたりする。
阿鼻叫喚も時間とともに鎮火し、ようやくMCがナレーションの続きを話せるようになる事には、予定より10分以上遅れていたりする。
「(敵のモンスターを)粉砕!(相手のライフを)玉砕!(観客が)大喝采!と此処まで連戦連勝を続けてきた『漆黒の竜使い』レンカに相対するのは!アメリカのナショナル・リーグから参戦したこの男!!」
MCの相変わらずのナレーションに頭を悩ませていると、レンカとは真向かいに位置する地点にスポットライトが照射され、拘束具とも見てとれる服に身を包んだ大男が照らし出される。
「IQ200の大犯罪者!ドクタァァァァ、コレクタァァァァ!」
「ぬぉぉォォォ!」
雄叫びと共に四肢に力を込め、相当頑丈そうな拘束服を破りさる。
ほぼ上裸の格好になる肉体美を自慢したいのか、レンカへ向けてドヤ顔を決めるDr.コレクター氏。
レンカは服を破るくらいなら、着てくるな……と内心つっこむがそれも彼のエンターテインメントのうちなのだろうと渋々納得する。
「ほう、お前が最近シャバで名を上げてる決闘者か……。ドラゴン使いって言うからもっと凄い奴を想像していたのだが……。ふん、年端もいかないガキじゃないか。」
品定めするような視線に晒され、ゾクリと悪寒を覚える。だが、極力それを表に出さず、気丈にもフードの奥から睨み返す。
「ククッ、俺を前にして気圧されるどころか睨み返してくるか……。なるほどな。これも噂通りってやつか。中々に肝が据わっている。」
「…………。」
Dr.コレクターからの問いかけには無言を返す。
(噂で知ってるなら、極力話す事を避けているのも知ってるでしょ!話しかけてくるな!)
と、内心思っていたりする。
そんな態度のレンカに気を悪くするところか、むしろ愉しそうに笑みを刻む。
「久々のデュエルだ。せいぜい俺を楽しませてくれよ?」
そう言う間に決闘盤の装着、デッキのセット、決闘盤の展開の三行程が終了し、準備が完了となる。対するレンカも既に左腕には、ブラックデュエルディスクが通されており、準備を終えている。
「さぁて、両者の準備が整った!これより、プロ同士による意地と誇りをかけた決闘が始まる!
熱き血潮を滾らせ、白熱の闘いを俺たちに魅せてくれ!」
MCのーーいつも以上に熱の篭ったーー声を聞き流し、今夜の相手となるDr.コレクターと視線がぶつかる。
「それでは……」
「決闘だぁ!」
「……決闘!」
◆◇◆
「……先行、ドロー!ぇ……?」
自分の手札を見て、思わず声がうわずる。
初手は『真紅眼の黒竜』、『黒炎弾』、『ブレイクスルー・スキル』、『レッドアイズ・トランスマイグレーション』、『真紅眼の凶雷皇 エビル・デーモン』の5枚。
(……なんて酷い手札事故。)
序盤、しかも先行1ターン目ではどうしようもないカード達を眺め、半ば呆然とする。
これもきっと衣装替えしたせいだ。と楓へと責任転嫁をしつつ、ドローしたカードが手札交換カードである『手札抹殺』であった事にひとまず安堵する。
「マジックカード『手札抹殺』発動。5枚捨て、5枚ドローする。」
手札の総入れ替えを行い、ドローしたカードを確認し思わず口元がほころぶ。対するDr.コレクターは良い手札だったのか名残惜しそうに手札を墓地へと送っていく。
「うわっ、『次元の裂け目』……。除外ギミック積んでるのか……)
墓地へと送られたカードを確認するとモンスターカード、汎用魔法・罠カードの他に『D・D・R』や『次元の裂け目』などの除外系カードが落ちており、思わず眉を顰める。
『墓地こそ第二の手札』を信条とするレンカのデッキに置いて、除外ギミックは天敵なのだ。早々に相手のデッキのパターンを把握したと同時にそのキーカードを墓地へと送れたのでよしとする。
だが、恐らくDr.コレクターも此方のデッキの分析にかかっているだろうと気を引き締める。
「マジックカード『竜の霊廟』発動。デッキから『真紅眼の黒炎竜』を墓地に。さらにエフェクトにより、『真紅眼の飛竜』を墓地に送る。
カードを二枚伏せ、エンドフェイズに移行。
『真紅眼の飛竜』を除外し、エフェクトを発動する。私は……」
ふと、レンカの手が止まる。
何時もなら次のターン、より多くのダメージを与えるため、『黒炎弾』内蔵ドラゴンこと、『真紅眼の黒炎竜』を出すところだが、せっかくあのモンスターが墓地に居るのだから、偶にはこっちでもいいだろうと思う。
「……墓地から『真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン』を特殊召喚する!」
「出たぁ、レンカのお約束パターン!現れるのは、紅い眼を持った漆黒のドラ…ゴ…ン?んん?へ?違うの?」
現れたのは、紅く鋭い眼光を放つデーモン。
その凶悪な容姿を観た観客達からたちまちに悲鳴が上がる。
「な、なんとぉ!?冥府より真紅眼を持ったデーモンが登場だぁ!凶悪な容姿に、一体どんな効果を隠し持っている?!」
凶悪な悪魔の出現など、構いっこないと言った様子で自らのターンを進めるDr.コレクター。
「ドロー!まさか、手札交換で俺のワンキルコンボが崩されるとは思わんかったが、俺の勝ちは揺るがん!
永続魔法『魂吸収』発動!さらに『天使の施し』を発動だ!」
前者はカードが除外される毎にライフを500回復できる永続魔法。そして、後者は悪名高き手札交換カードだ。3枚ドローし、2枚捨てたDr.コレクターは早速お目当のカードが来たのか勝ち誇った笑みを浮かべる。
「行くぞ!先ずは通常魔法『魂の解放』発動!俺は墓地の『氷の女王』、『マジシャンズ・ヴァルキリア』2体、『黒魔導士 クラン』、『白魔導士 ピケル』の5枚を除外!さらにカードが除外された事でライフを計2500ポイント回復する!」
『手札抹殺』と『天使の施し』によって墓地に送られていたカードを除外、ライフを回復させる。
「いくぞ、これこそが我が必殺コンボの要!ライフを2000支払い、『次元融合』発動!」
その効果はライフを2000支払い、互いに除外されているモンスターを可能な限り特殊召喚する効果。『死者蘇生』を遥かに上回る蘇生効果だが、いかんせん初期ライフの半分という重いコストに加え、モンスターを一度除外するという工程を踏まなければいけないため、あまり使われる事は少ない。だが、一度決まればその制圧力は計り知れない。
だが、これにもライフコストの他に一つ欠点がある。それは……
「チェーンして永続トラップ『竜魂の城』を発動。墓地の『真紅眼の黒炎竜』を除外し、『真紅眼の凶雷皇ーエビル・デーモン』の攻撃力を700ポイントアップさせる。
そして、私は『次元融合』のエフェクトによって、除外されてる『真紅眼の飛竜』と『真紅眼の黒炎竜』を守備表示で特殊召喚する!」
互いに除外されているモンスターを特殊召喚するため、それを逆利用し展開する事も可能なのだ。
「俺は先ほど除外した五体を特殊召喚!さらにカードが新たに除外された事でライフを500ポイント回復する。」
Dr.コレクターのライフは莫大なライフコストを支払ったにも関わらず、初期ライフを上回る5000ポイント。さらにフィールドには攻撃力2900の『氷の女王』に『マジシャンズ・ヴァルキリア』2体でロックコンボを決め、決して少なくない効果ダメージを与えられる『黒魔導士 クラン』、さらに回復効果を持つ『白魔導士 ピケル』の五体が並ぶ。
美しい魔術士と可憐な魔法少女達の登場にワッと会場が盛り上がる。
一方、カッコイイドラゴンを召喚したはずのレンカは見向きもされず、内心結構落ち込んでいたりする。
「いくぞ、バトルだ!『氷の女王』で『真紅眼の黒炎竜』を攻撃!
『マジシャンズ・ヴァルキリア』で『真紅眼の飛竜』を攻撃!」
杖から放たれる猛吹雪はレンカのドラゴンを瞬く間に氷像へと変えてしまう。
ただレンカも破壊される事は折り込み済みなのか、守備表示で召喚していたためダメージはない。
「カードを一枚伏せ、さらに永続魔法『魔法族の聖域』を発動する。これにより、このカード意外の魔法カードが自身のフィールドのみに存在する時、相手が魔法使い族以外を召喚・特殊召喚した場合、そのモンスター召喚されたターンには攻撃できず、効果も発動する事は出来なくなる!」
Dr.コレクターを中心とし、光輝く魔法陣が形成される。
これによって、モンスター効果による破壊はほぼ不可能となり、さらに次ターンになれば、回復とバーンのコンボが待っている。
だがしかし、そう易々と覆せない布陣を前にしても、レンカの冷静な態度は崩れる事はない。
「……ドロー!マジックカード『アームズ・ホール』発動。召喚権を放棄し、デッキから『スーペルヴィス』を手札に加え、デッキトップを墓地に。
そして、『スーペルヴィス』を『真紅眼の凶雷皇』に装備する。」
真なる力を取り戻したことへの歓喜か、凶雷皇は身体中から紫電を迸らせ、雄々しい雄叫びをあげる。
「『真紅眼の凶雷皇』のエフェクト発動!
このモンスターの攻撃力よりも低い守備力を持つモンスターを全て破壊する。」
言ってしまえば、モンスター効果版の『魔霧雨』だ。
そして、Dr.コレクターの場に並ぶモンスターの中で一番守備力の高い『氷の女王』ですら、2400に足らない。
「ーー一掃しろ、《ライトニング・ロード》!」
「なっ!?」
紅い電光が迸り、鉄壁と思われた布陣をいとも容易く崩壊させる。
その事実に驚愕を露わにするDr.コレクター。だが、百戦錬磨の決闘者。すぐに立て直す。
「破壊された『氷の女王』の効果により、墓地の『天使の施し』を手札に加える。」
「っ!……それを?!」
デュエルモンスターズ界屈指の壊れカードが再び相手の手札へと加わり、若干戸惑いを露わにする。
「っ……。バトル!『真紅眼の凶雷皇』でダイレクトアタック!」
「ヌグォォォォォ!?」
真紅眼の凶雷皇の拳がDr.コレクターへ直撃し、大きく吹き飛ばし、残りライフは2500ポイントまで削る。
「……カードを一枚伏せ、エンドフェイズに移行。墓地の『真紅眼の飛竜』を除外し、真紅眼の黒炎竜』を特殊召喚する!」
火の粉を巻き上げながら、漆黒のドラゴンが三度姿を現し、凶雷皇の隣へと並び立つ。
「俺のターン、ドロォォォ!」
「……わわっ?!」
突如、突風が発生し、慌ててフードを手で押さえつけるレンカ。
孔雀 舞の時のような事は2度とごめんだと思う一方で、ドローだけで風圧を起こすDr.コレクターを半目で睨みつける。
「いくぞ、ここからは俺のターンだ!
まずは、『天使の施し』を発動!三枚ドローし、二枚捨てる。
さらにお前の場にのみモンスターが存在する時、手札から『太陽の神官』を特殊召喚する!
そして、さらに『太陽の神官』を生贄に捧げ、『ブリザード・プリンセス』を召喚する!」
「っ!生贄一体で攻撃力2800!」
驚きを露わにする彼女。もっとも、ポンポンと最上級モンスターを召喚しているので人の事を言えないが。
「さらにライフを1000ポイント払い、『拡散する波動』を発動!『ブリザード・プリンセス』を選択し、このターン全てのモンスターに攻撃でき、この効果を受けたモンスターにより、破壊されたモンスターの効果を封じる!
仕上げに、通常魔法『ヒュグロの魔導書』を発動し、『ブリザード・プリンセス』の攻撃力を1000ポイントアップする!
いくぞ、バトルだ!『ブリザード・プリンセス』で黒炎竜と凶雷皇に攻撃!《エターナル・ブリザード》!」
「っ?!くぅぅぅ……」
身を裂くような冷気が襲い、レンカの二体のモンスターを氷像へと化す。
「おおっと、これは強烈ぅ!圧倒言う間にライフが逆転だぁ!」
Dr.コレクターのライフはコストとして1000ポイント払い、1500になったがレンカは先の攻撃で1100ポイントまでライフを削られてしまい、MCの言うように有利であった状況は簡単に覆される。
「『ヒュグロの魔道書』の効果を受けたモンスターが相手モンスターを破壊した事で効果が発動!デッキから『魔道書』カードを手札に加える!グリモの魔導書』と『魔導書院ラメイソン』を手札に!
さらに『グリモの魔導書』を発動し、効果でデッキから『ヒュグロの魔道書』を手札に加える。
そして、フィールド魔法『魔道書院ラメイソン』を発動する!」
周りの風景が一変し、神秘でズラリと本が陳列された書院の中へと置き換わる。
神秘で満たさられたその空間に思わず圧倒されるレンカ。
「最後にカードを一枚伏せ、ターンエンドだ。」
必勝の筋道が見えたのかニヤリと不敵な笑みを浮かべ、レンカを見据える。
「…………ターン、ドロー。
手札から『強欲な壺』を発動し、二枚ドローする。
『マンジュ・ゴッド』を召喚し、エフェクトを発動する!」
召喚されたのも束の間。ブリザード・プリンセス諸共、フィールドの中央へと出現した棺桶へと吸い込まれてしまう。
「召喚成功時、リバースカードオープン『黒魔族復活の棺』!『ブリザード・プリンセス』と『マンジュ・ゴッド』を生贄に闇属性・魔法使い族モンスターを召喚する!
出でよ、『混沌の黒魔術師』!!」
「なっ!?」
レンカは棺から姿を見せた人物の姿に思わず声を失う。
それもそのはずーー
「こ、こここれはぁ!ぶぶぶ、ブラック・マジシャン?!」
実況を忘れ、発狂したかのようにそのモンスターの名前を呼ぶMC。
現れたのは、かのキングオブデュエリスト 武藤遊戯のエースモンスターである『ブラック・マジシャン』に全くの瓜二つのモンスター。
だが、その魔導師から放たれる魔力はより洗練されたもののように感じる。
「っ!ブラック・マジシャンか……。なら……!
『マンジュ・ゴッド』のエフェクトにより、デッキから儀式魔法『レッドアイズ・トランスマイグレーション』を手札に!」
「ほう、儀式魔法を……。孔雀 舞に使ったあのモンスターを召喚する気か?」
「……そう。墓地の『真紅眼の凶雷皇』を除外し、儀式を執り行う!」
Dr.コレクターの呟きも束の間に、レンカの周りを8本の火柱が囲い、炎が包み込む。
「我が身に纏え、黒き竜!降臨せよ、『ロード・オブ・ザ・レッド』!!」
炎柱が消え、元いた場所には、漆黒の鎧に身を包み、灼熱の剣を携えたレンカが剣山する。
「だが、そのモンスターでは『混沌の黒魔術師』には及ばん!」
「それは……どうかな?」
フードから一変し、漆黒の鎧に護られたレンカはニヤリと笑みを返す。
「墓地の『スキル・プリズナー』を除外し、エフェクトを発動!さらにチェーンして、『ロード・オブ・ザ・レッド』のエフェクトを発動する!
『混沌の黒魔術師』を破壊!さらに『スキル・プリズナー』のエフェクトにより、このターン『ロード・オブ・ザ・レッド』を対象とするモンスターエフェクトを無効にする!」
「っ!だが、『混沌の黒魔術師』はフィールドを離れた時、ゲームから除外される。そして、カードが3枚除外された事により、永続魔法『魂吸収』の効果でライフを1500ポイント回復する!」
レンカの放った炎剣が『混沌の黒魔術師』に深々と突き刺さり塵すら残さず燃やし尽くす。
「……バトル!『ロード・オブ・ザ・レッド』でダイレクトアタック!」
「ぐぉぉぉぉぉ!!」
Dr.コレクターの下へと一瞬に肉薄し、両手に持つ炎剣で両断する。
だが、『魂吸収』の効果で地道に回復していた事により、残りライフ600と僅かに残してしまう。
「……カードを一枚伏せ、ターンエンド。」
「俺のターン、ドロー!このスタンバイフェイズ時、『魔導書院ラメイソン』の効果が発動される。墓地の『グリモの魔導書』をデッキに戻し、一枚ドローする。」
「チェーンして、『ロード・オブ・ザ・レッド』のエフェクトを発動!私は……『魂吸収』を破壊する!」
レンカは破壊の対象を逡巡するがこれ以上ライフを回復されるのはまずいと感じたのかラメイソンではなく、『魂吸収』を破壊する事を選択した。
「魔法カード『強欲な壺』を発動し、二枚ドローする。ふふっ……来たか!」
切り札を引いたのか、勝ち誇った笑みを浮かべるDr.コレクターを見て言い様のない不安を覚えるレンカ。
「『グリモの魔導書』を発動し、デッキから『セフィルの魔導書』を手札に加える。
そして、『魔導召喚士 テンペル』を召喚する。」
新たな魔導書、新たな魔法使い族の登場にゴクリと息を呑む。恐らく次、現れるだろうエースモンスターの登場に。
「いくぞ、テンペルのモンスター効果を発動!このカードをリリースし、デッキからレベル5以上の闇・光属性魔法使い族モンスターを特殊召喚する!
世界を正せ、崇高なる魔導師よ!『魔導天士 トールモンド』!」
幾重にも重なった魔法陣の光が薄暗い書庫の内部を照らす。
クルクルと回転をする魔法陣が、一際強く光り、弾けるとその場所にはレンカとは対象的に純白の法衣に身を包んだ魔術師が此方を見据えていた。
「『魔導天士 トールモンド』の効果を発動!」
「っ!やらせないっ!『ロード・オブ・ザ・レッド』のエフェクト発動!」
「無駄だっ!墓地の『ブレイクスルー・スキル』の効果を発動し、無効にする!」
ヤバいと感じ、『ロード・オブ・ザ・レッド』の持つもう一つのエフェクトでトールモンドを破壊しようと試みるが、突如地面を突き破り、突撃してきたギゴバイトの突進を喰らい、吹き飛ばされる。
鈍痛に呻きつつ、前を見れば神々しい光を放つトールモンドの姿が映る。
「墓地の『グリモの魔導書』と『ヒュグロの魔導書』を手札に加える。さらに『グリモ』、『ヒュグロ』、『セフィル』『トーラ』の4つの魔導書を公開し、発動!
このカードを除く全てのカードを破壊する!」
「……なっ!全体破壊効果!?」
驚くレンカをお構い無しに、トールモンドは魔力を解放し、視界全てを白に染め上げる。
「さぁ、トドメだトールモンド!《オーバー・カタストロフ》!」
トールモンドが放った白い魔力の奔流は倒れ伏すレンカを呑み込み、白煙があたり一帯を覆い隠す。
「こ、これはぁ!?まさか?まさかまさかまさか!レンカが、負けたのかぁ?!」
ドームに叫びにも似たMCの声が響く。
観客皆、白煙の先……レンカの安否をいち早く確認したいが為に瞬きを忘れるほどにその一点を見つめる。
数十秒経過しても消えない幻影にまさか……とDr.コレクターも息を呑む。
(まさか……。攻撃を確実に通ったはず……。なら、なぜ終わらない!)
白煙が晴れた先、そこに居たのはーー漆黒のフードを目深く被った赤髪の少女ーーレンカ。
全くの無傷な様子でそこに立つ彼女を見て、戦慄するDr.コレクター。
「なぜだっ!攻撃は確実に通ったはずだ!」
「確かに、通った……。けど、ダメージは……どうかな?」
「っ!まさか!」
今更ながらに気づく。レンカの周囲を覆うように張られた不可視の障壁の存在に。
「その、まさか。私は、『攻撃の無敵化』を発動し、そのエフェクトでトールモンドからのダメージを0にしただけ。」
完全に勝利した、と確信したが故に見落とした、Dr.コレクターのミス。
「くっ……。1ターン凌いだくらいで図にのるな!お前の手札は0。次の俺のターンで必ずトドメを刺す!
カードを一枚伏せ、ターンエンドだ。」
Dr.コレクターの発言は、レンカにしてみれば、先の発言はレンカが次のターンでトドメを刺すと同義語である。
所謂、死亡フラグとか言うやつである。そして、折角建築してくれたフラグだ。きっちりと回収してやろう、と内心でほくそ笑みデッキに指をかける。
「私のターン……、ドロー!来たっ!」
自身の想いに応えてくれたデッキに感謝しつつ、レンカはこの長かった攻防に終止符を打つ為、最強の下僕を呼び出す。
「マジックカード『真紅眼融合』発動!
デッキの『真紅眼の黒竜』と『デーモンの召喚』を素材に融合!
黒き竜に宿れ、悪魔の力!融合召喚!『悪魔竜 ブラック・デーモンズ・ドラゴン』!」
神秘の渦から悪魔の如き黒き竜が呼び出され、レンカの想いに応えるかのように猛々しい咆哮をあげる。
「なん……だとっ!」
レンカの真の切り札、ブラック・デーモンズ・ドラゴンの効果を知ってか、Dr.コレクターは掠れた声を出し、そいつを見上げる。
「……バトル!ブラック・デーモンズ・ドラゴンでトールモンドを攻撃!
そして、墓地の『真紅眼の黒竜』をデッキに戻し、その攻撃力分のダメージを与える!
これで、終わり!《断罪の獄炎》!」
「ぬぉぉォォォ!!」
Dr.コレクターのライフに0が刻まれたことにより、両者の決闘に終わりを迎える。
「しょ、勝者!《漆黒の竜使い》……レンカだぁぁ!!」
二人の健闘を讃えるかのように、そして逆転に逆転の末に勝利をもぎ取ったレンカを賞賛するかのように観客全員から拍手が送られる。
◆◇◆
レンカが賞賛の嵐にいる中、舞台裏でその様子を見つめる影が一人。
「エクセレント、デース。素晴らしいデュエルでした、ガール。彼女ならこのカードの担い手に相応しい……。ふふっ、ボーイの選別は確かなようですね。」
後書き
ピケクラロックバーンかと思った?ざ〜んね〜ん?魔導書でしたぁ〜!
→嘘です。やりたい事詰め込んだら、こんなカオス仕様になりました。(遊戯王ならよくある事)
それに、IQ200もあれば、問題ないよね?
というわけで、今回はDr.コレクターさんでした。やっぱり強いね、魔法使い。
特に魔導書……。『拡散する波動』と『ヒュグロの魔導書』のコンボはロマンですね、はい。決まれば強いです。
え?ジュノン?ブリザード・プリンセスとか、『世界』じゃなくて、『女教皇』出せ?
……読者様方がコレクターさんのスピンオフを望むなら(メソラシ
最後に、ラストに出てきた人。誰かぼかしたつもりですが、特徴的すぎてバレバレですよね?
次の相手はそいつだ!……多分。……恐らく
それでは、感想とか待ってます。o(_ _)o ペコッ♪
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