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魔法少女リリカルなのは~過ちを犯した男の物語~

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九話:フェイト・テスタロッサ

 二人が意識不明という情報に居てもたってもいられなくなり、自分から投降する形で次元船アースラに赴き、フェイトとアルフの安否を確認しに来たヴィクトルは二人の命に別状がないことを知りホッと胸を撫で下ろしていた。今現在、彼女達は意識を失っているが直ぐに目を醒ますという事でヴィクトルは手錠を付けられて拘束された状態でクロノに尋問を受けていた。

「今回の件で君達はプレシア・テスタロッサの命を受けて動いたという事で間違いがないんだな?」
「ああ、それで合っている」
「では、ジュエルシードを回収していた理由は何なんだ?」
「悪いがそれにお答えすることは出来ない。単純に知らなくてね。恐らくはフェイトやアルフでさえ知らないだろう」

 理由は知らないと答えるヴィクトルに訝しげな視線を向けるクロノだったが嘘をついているとしてもこの男から無理に聞き出すのは不可能だと判断し、またプレシアの攻撃を逆探知した結果が出ればすぐにでも彼女の本拠地に赴くことが出来、直接理由を問いただすことが出来るだろうと判断してこの件に関してはそれ以上問いただすことはしなかった。

「次に、あなたは今回のプレシア・テスタロッサからの強襲を知っていたのか?」
「知っていればわざわざこんな所に自ら赴いたりはしないさ」
「だろうな」

 どこか二人を守れなかった事を後悔する様な表情をするヴィクトルにクロノは分かっていたとばかりに頷く。実際の所、フェイト達を捨て駒にしてジュエルシードを回収するという作戦ではないかという考えはヴィクトルが自ら投降してきた時にほとんどなくなっていた。プレシアの独断であればまだ可能性はあるが、自身の武器をこちらに預けて自分から手錠をかけるようにまで言って、二人の安否を確認するためだけにやってきた男が知っていたとは到底思えない。

(クロノ君、二人が目を醒ましたの)
(分かった、なのは。僕もそちらに行こう)

「たった今、彼女達が目を醒ましたらしい。僕が見張りとして付き添う事になるがそれでもいいならあなたも着いて来てほしい」
「感謝するよ」

 自分の申し出にお礼を言い立ち上がる男の手錠を外しながらクロノはどことなくルドガーと似ているなと感じる。ルドガーとそれ程親交が深いというわけでもないが魔法を持たない彼が実戦に耐えられるのかを確かめるために模擬戦の相手を務めたのだがものの見事に負けてしまったのは記憶に新しい。

 そんな彼とヴィクトルは良く被るのである。預けられた武器にしても双剣に双銃そしてハンマーと二人共珍しいことに三種類の武器を使いこなす。クロノが、共通点が多いと感じるのはそう言った所からだった。この時は、それ以上は思わなかったがクロノはすぐに二人の因縁の関係を知ることになる。





「無事か、二人共!」
「ヴィクトル!」
「ヴィクトル…さん……」

 クロノに連れられて行った場所には沈み込んだフェイトとそれを何とか励まそうとしているアルフが居た。他にもなのはやユーノ、それにルドガーとリンディが陰鬱な表情をしながらもフェイトの傍に居た。ヴィクトルは二人の傍居る者達を無視してフェイトの目線に合わせるようにしゃがみ込む。

「……お母さんが私に攻撃したんだよね」
「……そうだ」
「私…また何か悪い事したのかな?」
「そんなことはない―――」
「じゃあ、どうしてお母さんは私とアルフに酷いことをするの!?」

 ヴィクトルの言葉を遮ってフェイトが絶叫する。ただ、母親に認められたいから、ただ、母親に愛して欲しいからという理由で必死に頑張って来た少女にとっては余りにも酷過ぎる仕打ちにフェイトの心は壊れかけていた。幼い少女の悲鳴にその場にいる者達は全員悲痛な面持ちになり黙ってうつむくことしか出来ない。

 そこに、プレシアが使った次元魔法をもとに、転送位置の割り出しをしたエイミィから、いつでも時の庭園に武装局員を送れると連絡が入る。リンディはすぐに思考を切り替えて時の庭園に向かうように武装局員に指示を出す。

 するとすぐにモニターに武装局員がプレシアを取り囲んでいる様子が映り、同時にポットの中に浮いている見覚えのある金髪の少女が彼等の目に入った。

「なんで……私が?」
「フェイトちゃんが……二人?」

 訳が分からずに呆然とモニターを見つめるフェイト達の元にプレシアの叫び声が聞こえてくる。

『私のアリシアに近寄らないで!』

 痛々しい叫び声を上げながら武装局員達をまるで虫けらの様に電撃で打ち払っていくプレシア。彼女の鬼気迫る表情と圧倒的な強さに恐れをなし局員達は知らず知らずのうちに後退っていく。その様子にリンディは歯噛みしながら低い声でエイミィに職員達の送還を指示する。局員が消えるのを見届けるとプレシアはゆっくりとポットに入った少女の元に近づいていき憂いに満ちた声で呟く。

『そろそろ潮時ね。 十一個のジュエルシードでアルハザードにたどり着いてアリシアを生き返らせられるかどうかわからないけど……でも、もういいわ。終わりにする。アリシアを失ってからの何の希望も見出だせない時間も、アリシアの代わりの―――人形を娘扱いするのも』
「アリシア…? 人形…?」

 続きの言葉など聞きたくないと首を横に降り続けるフェイトだったが非情な現実は彼女に逃げ場を与えない。


『聞いていて? あなたのことよ、フェイト。せっかく アリシアの記憶をあげたのにそっくりなのは見た目だけ役立たずでちっとも使えない私のお人形』
「う……そ、嘘…っ!」

 告げられる残酷な真実に壊れかけの少女の心はさらに傷付き軋んでいく。プレシアは少女の様子を知ってか知らずか高笑いしながらこと細かく説明していく。

『とある事故で私の本当の娘アリシア・テスタロッサは死んだわ……いえ、私が殺したと言った方がいいかしら……。 アリシアが死んでから私はある研究に没頭したわ』

 フェイトは耳を塞ぐことも出来ずに震えながらプレシアの言葉を聞くことしか出来ない。フェイト以外の者は様々な思いを抱きながら身動ぎ一つせずにモニターを見つめる。

『使い魔とは異なる使い魔を超える人造生命の生成の研究。 そして死者蘇生の秘術。 その研究の開発コードの名前はプロジェクト―――F.A.T.E(フェイト)

 その名を聞いた瞬間フェイトは崩れ落ち、アルフとなのはは驚愕のまま固まる。リンディやクロノは察しがついていたのかなんとも言えぬ非情で顔を俯けるだけだった。

『だけどダメね。ちっともうまくいかなかった。 作り物の命は所詮作り物。失った者の代わりにはならないわ。 アリシアはいつでも私に優しかった。……フェイト、アリシアの記憶を上げてもやっぱりあなたは、アリシアの偽物よ。あなたは―――アリシアにはなれない! 』
「何故、それを分かっていながらあなたは……」

 ヴィクトルがやるせない表情で呟く。自分とは違い同じ者などこの世に存在しないと気づいているにも関わらず止まらない。いや、気づいたからこそ後戻り出来ずに、よりアリシアに執着してしまう結果になったのではないのではないかと。

 自分が仮に生まれ変わったとしてもそこに居るラルとエルが自分の妻と娘ではではないと気づいたらプレシアと同じようになったのではないかと思わずにはいられなかった。プレシアはかつてのヴィクトルであってあり得たかもしれない未来の彼の姿でもあったのである。

『あなたはアリシアを蘇らせるまでの間に私が慰みに使うだけのただのお人形。だからもうあなたは私の傍にいる必要はない。どこへなりと消えなさい!』

 その言葉に何処かしら裏を感じたルドガーは僅かに眉をひそめてヴィクトルの顔を見る。ヴィクトルも同じように感じたために意味有り気に視線を返す。

『そう言えばヴィクトル、あなたはその人形を気にかけてたわね。いいわ、私にはもう、必要ないからあなたにあげるわ』

 その言葉にヴィクトルとルドガーは裏がある事を確信する。なのはやユーノから聞けばまさに必要のなくなったゴミを他人に押し付けるような物言いだったがヴィクトルの耳には信頼できる者に預けると言われたように聞こえた。

『それからフェイト、最後に良いことを教えてあげるわ。あなたを作り出してからずっとね。あなたを―――憎んで(・・・)いたのよ!』

 その言葉は容易く少女の心を砕いた。彼女が消えたモニターを見つめながら、ヴィクトルは自身が彼女に告げた言葉を思い出し別の意味も含まれているのではないのかと考えるが、所詮は想像でしかない。結局の所は直接プレシアから真意を問いたださなければならないだろう。

 しかし、今すべきことはプレシアに聞きに行くことではなく、心の壊れた少女を立ちなおさせることだ。茫然自失の状態で目から光を失い、まるで本当に人形になってしまったような少女にヴィクトルは声を掛ける。

「……フェイト、確かに君はアリシアのクローンで―――偽物だ」
「あんた、何を―――」
「黙っていろ、アルフ」

 突如としてフェイトの傷口に塩を塗り込むような発言をしたヴィクトルにアルフが噛みつこうとするが今まで聞いたこともない重い声で黙るように言われて思わず尻尾を丸めて震えてしまう。そんな様子に悪い事をしたなと思いながらもヴィクトルは言葉を続けていく。

「君は偽物だったらそこで永遠にしゃがんで立ち止まっているのか? フェイト」
「……ヴィクトルさんには私の気持ちは分からない。本物の人には分からないよ…!」
「いいや……分かるさ。誰よりもな」

 フェイトの悲痛な声にも動じずにヴィクトルは落ち着いた声で返す。その言葉を聞いていた者達はどういう意味だろうかと不思議そうにヴィクトルを見つめるが、ただ一人ルドガーだけは彼が何を話そうとしているのかを察して意味あり気に目配せをする。

「お前……話すのか?」
「ああ、こうなった以上隠す必要もない。それよりもそっちの方こそいいのか?」
「俺も構わないよ。俺もいつかは話さないといけない事だったしな」

 何を話そうとしているのかと二人に視線が集中し、フェイトまでもがおぼろげな目をしているものの顔を上げている。ヴィクトルはそんな視線に少し苦笑いしながら仮面に手を当て取り外す。まず、あらわになる化け物の様な顔の右半分に彼を知らぬ者が息をのみ、続いて明かされた左半分の顔に全員が驚愕の声を上げる。

「ど、どういうことなの…? なんで、ルドガーさんとヴィクトルさんの顔が……」

「改めて自己紹介をしよう。私の本当の名前は―――ルドガー・ウィル・クルスニク。偽物の彼さ」

 告げられた衝撃の言葉に誰もが声を出すことが出来なかったが、やがてユーノが意を決して尋ねる。

「あなたはルドガーさんの……クローンなんですか?」
「クローンとは少々違うな。そもそも年齢で言えば私の方が年上だ」
「どういうことなの?」

 自身を偽物と言うにも関わらずクローンでもなくあげくの果てには自分の方が年上だと話すヴィクトルに一体どういうことかとなのはが問いかけるとそれにルドガーが答える。

「俺達が前にいた世界は本来の流れである正史世界とそこから枝分かれするように存在する分史世界……あり得たかもしれない、あり得るかもしれない可能性の世界があったんだ」
「そして、分史世界は正史世界の存続のために必要なエネルギーを奪うので正史世界存続の為に偽物の世界として壊すのが私達の仕事だった」
「世界を……壊す」

 世界を壊す仕事という現実味のない話になのはは理解が追い付かずに呆然とする。だが、ルドガーとヴィクトルの説明に頭の回転の速いクロノとリンディは二人がどういった存在なのかを悟る。

「つまり……どういうことなんだい?」
「私は偽物の世界に生まれたあり得たかも知れない十年後の“ルドガー”で本物の世界のルドガーによって世界を壊された身だということだ」

 その言葉に息を呑むアルフ。そして、全員がルドガーに目を向けるが彼は若干ばつの悪そうな顔はするものの真実から逃げるわけにはいかないとばかりに顔を真っ直ぐに上げて全員の視線を受け入れた。

「あの……壊された世界に住んでいた人はどうなるんですか」

 ユーノが先程から気になっていた事をルドガーに質問する。ルドガーはユーノの質問にやるせなさそうに顔を歪めてぎゅっと手を握りしめるがこれは自分が背負っていかなければならない罪だと腹を括って短く答える。

「世界と共に消える」
「全て跡形もなくな」

 ルドガーに続けてヴィクトルが自嘲気味に答える。その言葉をユーノは信じたくなかった。ユーノは何の見返りも求めずに自身を助けてくれた心優しい彼が大量殺人者など思いたくなかったのだ。だが、その思いは彼自身から否定される。

「俺はお前達が思っているような聖人君子じゃない。俺は自分の守りたい者の為に世界を壊し続けてきた、エゴイストなんだ」
「私はそのエゴイストにすらなれなかったのだ……そう卑下することもあるまい」

 自分のしでかしたことに罪の意識は感じているもののその選択に一切の後悔はないことを聞く者に感じさせる声にヴィクトルの方がどこか後悔を感じさせる声でルドガーを庇う。二人の間に流れる不可思議な空気に耐えられなくなったのかなのはが口を挟む。

「ルドガーさんの守りたかった人って……どんな人なんですか?」
「そうだな……俺の大切なアイボーで―――」
「私の一人娘だ」

 ヴィクトルの娘と言う言葉にフェイトが驚きヴィクトルを見つめる。そして、自分も彼の様な優しい親の元に、本物として生まれて来れていたらどんなに幸せだっただろうかと考え、ふと、ある事に気づく。彼は自身が偽物だと言った。実際目の前で瓜二つの顔を見せられると同一の存在であることを認めなければならない。だとしたら、そんな彼の娘もまた―――偽物なのではないのだろうか?

「でも、ヴィクトルさんの娘ってことはその子も……」
「分史世界の人間で………私が偽物と言ってしまった子だ」

 深く、深く、懺悔するようにそう吐き出すヴィクトルにフェイトとアルフが信じられない物を見たような表情になる。二人は、ヴィクトルはそのようなことを絶対にするような人間ではないと思っていた。信じていた。だが、その信頼は彼自身により壊された。

「私はプレシアと同じように“娘”を利用し大切な者を取り戻そうとした……。ルドガーを娘に分史世界に連れて来させそこで、ルドガーを殺し本物と成り代わろうとした」
「正史世界では同じ物は同時には存在できないんだ」

 ヴィクトルの話にルドガーが軽く付け加えるがフェイトには聞こえていなかった。ずっと優しい人だと信じていたヴィクトルが平然と冷酷な事をしていたことにショックを受けたのだ。それはアルフも同じだったらしく、様々な思いを籠めた目で見つめながら立ちつくしていた。

「ちょっと、待ってくれ。正直話が複雑で全ては分からないんだが、仮に成り代わって正史世界に行ったとして、どうするつもりだったんだ?」

 クロノがどうしても納得がいかないと言った顔で尋ねて来る。ヴィクトルは様々な思いを込めた声で答える。

「どんな願いも一つだけ叶えてくれる場所―――『カナンの地』。私はそこに辿り着き生まれ変わりを望むつもりだった……かつて妻や兄が居たあの頃に戻るために」

 リンディは最後の言葉にヴィクトルの妻や兄を想う気持ちを痛い程に感じて胸を痛める。彼女もまた大切な人を失った人間なのでその気持ちは良く分かるのだ。

「そんなおとぎ話のような場所を本気で信じていたのか?」
「残念だけどおとぎ話じゃないんだよな、これが。現に俺はカナンの地に辿り着いて全ての分史世界の消去という願いを叶えた」
「全くだ。本当におとぎ話だったのなら私達の一族は―――二千年もの間、骨肉の争いを繰り広げることもなかったというのにな」

 クロノは余りにも現実味のない話におとぎ話だと切って捨てるが、実際にその場所に辿り着き願いを叶えたルドガーがクロノに返答し、ヴィクトルがヒンヤリとした声で続ける。その声にクロノは自分が言ってはならないことを言ってしまったのだと気づきバツが悪そうに喉を鳴らす。

「まあ、現実味のない話だというのは分かるけどな」
「それで……ヴィクトルさんの娘さんはそれからどうなったんですか?」

 一刻も早くヴィクトルの娘がその後どうなったのかを知らなければならないと感じていたフェイトが話の流れを切るように聞いてくる。彼女はどうしても自分と同じように偽物と呼ばれた少女の行く末を知らなければならないと強く思っていた。

「私がルドガーに敗れ世界と共に消えた後は……ルドガーに聞いてくれ」

 ヴィクトルは自分では話せないと、ルドガーに話を任せる。周囲の視線がルドガーに移ると彼はゆっくりと話し始める。

「あの後は、エルは今のフェイトみたいに自分が偽物だって苦しんだ。……一番辛かったのは父親に否定されたからだろうけどな」

 チラリとヴィクトルを見つめ棘のある言葉を吐くルドガー。ヴィクトルは言われても仕方がないことをしたのだと思い、黙ってその言葉を脳裏に刻みつける。そんな姿に本当にどうしてこの男があんな真似をしたのだろうかと彼は納得のできない気持ちになりながらも話を続ける。

「エルはたくさん苦しんだけど……今はきっと笑ってるよ。俺がこの命を差し出して守り抜いて―――エルの全てを肯定したからな」
「全てを肯定……」
「フェイト、俺はお前の気持ちは分からない。でも、これだけは断言できる。無限のもしものフェイトが居たとしても、俺達は―――今ここに居るフェイトを選ぶ」

 ルドガーの言葉にフェイトは何も言うことが出来ずにパクパクと口を動かすだけだったがその心にはじんわりと暖かい物が広がっていた。なのはやユーノ、アルフはルドガーの言葉に笑顔で頷きフェイトを見つめる。

「……フェイト。私はかつて娘に拒絶され、一度死んでからようやくある事に気づけたのだ。本物も偽物もない。同じ人間などこの世に存在しないだと……。私と約束をしたフェイトは君だけだ」
「ヴィクトル…さん」
「アリシアの記憶を引き継いでいたとしてもそれは思い出ではない。君には確かな思い出があるはずだ。アリシアではなく―――フェイト・テスタロッサとしての思い出が」

 フェイトの脳裏に浮かぶのは初めてヴィクトルと会った日の思い出。アルフとヴィクトルの三人で本物の家族のように食事を摂った思い出。月の綺麗な夜に約束を結んだ思い出。知らず知らずの内に彼女の目からは涙が零れ落ちて来る。

「私は…フェイト……フェイト・テスタロッサ!」
「フェイトぉ!」
「アルフ、もう大丈夫だよ。私、母さんに会って話がしたい。ヴィクトルさんも手伝ってくれますか?」
「勿論だ。約束したからな」

 立ち直り強い意志を瞳に宿すフェイトに満足気な微笑みを浮かべてヴィクトルは頷く。さらには、なのはやユーノ、ルドガーも自分も連れて行って欲しいとフェイトに頼む。その事に驚いた表情を見せるフェイトだったが、すぐに他の誰でもない自分を助けてくれる人間がこんなにもいるのだという喜びから笑みを浮かべる。


「行こう、全てを終わらせに……。ううん、全てを始まらせに!」


 本当の意味での母娘になるために少女は母の元へと歩みを進み始めるのだった。

 
 

 
後書き
駆け足気味だけど次回か次々回でラストです。 
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