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ロード・オブ・白御前

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もう一つの運命編
  第4話 合流――しかし

 舞とタワーに攫われた人々を救い出さねばならない。

 葛葉紘汰の訴えに心動かしてくれたかまでは知らないが、ガレージ組は(ケガ人のペコと世話係のチャッキー以外は)全員が賛成してくれた。

 紘汰が耀子に、タワー侵入で凌馬の協力を頼みたいと告げると、耀子はユグドラシル専用の端末で凌馬に連絡をつけた。
 凌馬は鼻歌でも歌いそうな上機嫌で、10分と経たず現れた。


 トルーパー隊が乗り捨てて行ったカーゴ車を拝借し、いざ紘汰たちが出発しようとした時だった。

 ガレージにロックビークルに二人乗りした男女が現れた。
 ヘルメットを外してローズアタッカーを降りたのは、初瀬亮二と関口巴だった。


「どこ行くんだよ。そんな重装備で」
「俺たちは舞と街の人たちを助けにタワーに……そうだ! お前らも協力してくれ! 今は一人でも多く戦力が欲しい!」

 初瀬と巴は顔を見合わせてから。

「別にいいぜ」
「協力自体は特に問題ありません」

 紘汰がガッツポーズを決めたところで、初瀬から待ったが入った。

「ただし、俺たちは俺たちで別に動く」
「なっ」
「わたしたちが用のあるのは別の人。正面から入って堂々と取り返します。ですから一緒には行きません」
「正面の陽動を買って出てくれるワケ?」

 凰蓮の元傭兵らしい観点からの発言に驚き、紘汰は巴と初瀬をふり返った。両者共に、肯いた。

 すると、カーゴ車から裕也が飛び降りた。

「俺も行く」
「裕也!?」
「お前は舞んとこ行ってやれ。きっと待ってる。俺も――用がある奴は多分、正面に出て来るだろうからな。お前らと一緒のほうが都合がいい」

 裕也は紘汰たちの輪から出ると、ロックビークルを展開した。

「~~っだあ、もう!」

 紘汰は頭を掻き毟り、裕也たちのほうへ走っていき、殴る勢いで裕也の胸にゲネシスコアを突きつけた。

「絶対死ぬなよ! 終わったら生きてもっぺん会うんだからな!」
「――おう!」

 裕也は眩しいくらいの笑顔でゲネシスコアを受け取った。
 紘汰は知っていた。こういう笑い方をする時の裕也は、決して嘘はつかないし、約束を破らない。


 紘汰がカーゴ車の後部座席に乗り込もうとするのと同時、助手席のドアが開いた。助手席にいた城乃内が降りた。

「初瀬ちゃん!!」

 紘汰は初瀬を見やる。かつて裏切られた城乃内に声をかけられて、初瀬が何を思うかが心配だった。

 初瀬はふり返らない。

「帰って来たら、話が、したい。だから……気を、つけろよ」

 それだけ、絞り出すように言って、城乃内は助手席に乗り直した。

「おい、葛葉。早く乗れ」
「あ、ああ」

 紘汰は心配や不安を振り切り、後部座席に乗り込んだ。
 紘汰がドアを閉めると、車が発進する振動が伝わった。

(無事でいてくれ。裕也、初瀬、巴ちゃん)






 巴は初瀬を見上げた。初瀬は城乃内に声をかけられてから動かない。

「亮二さん」
「行くぞ。しっかり掴まっとけ」
「あ……はい」

 巴はロックビークルが発進する前に、心を込めて初瀬を背中から抱き締めた。

「……わり。俺、情けねえな」
「情けなくても好きです」

 初瀬は答えず、ローズアタッカーのアクセルを回した。巴も初瀬にしがみつき直した。

 2台のロックビークルが、ユグドラシル・タワーに向けて発進した。 
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