秋葉原総合警備
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都外のアニメフェス 完結
もう夕方、久々に通報が鳴らなかった。しばらくの間だが、秋葉原は大人しいだろう。一昨日の新聞が、まだ応接スペースのテーブルで開いていた。
『2015千葉アニメフェスティバルで誘拐未遂 プライベート来客の声優を標的に』
見出しでは不安を煽るようなワードであったが、犯人集団は拳銃を持っていながら、死者0人。個人経営の警備会社が手柄と書かれていた。その数日経っての、ここ事務所。美咲はまだ入院している。
「……?……よっ。」
「…どうも。…本当にありがとうございました。」
ぐうたら寝ていた陽一に、やっと今日一人の来店。千夏だった。
「警察所に行って、美咲さんのお見舞いに行ってきました。」
「そうか。これで誘拐犯がバシバシ言われて、暴力芸能事務所まで発覚して…これで俺の仕事も減る!」
暇なくせに、さらに客人を目の前に、思い切り腕を伸ばす陽一。
「あの…、お話がありまして。」
「ああ、美咲から聞いたよ、バイトしたいんだってな。」
長い欠伸をぶつりと切るように真剣な顔に切り替える。やっと体を起こすと、社長デスクのすぐ目の前にある椅子を動かして、千夏をどうぞと誘う。面接代わりに陽一から質問をした。
「俺ら結構面倒な二人だけど、それでもいい?」
「はい。」
「喉の病院もちゃんと通うことが条件だからな。」
「は…はい。」
「掛け持ちとかは全然OK。何してるかをちゃんと言ってくれればいい。仕事増えても、いつでもきてもいいから。」
「……はい。」
「困っている人、団体がいたら必ず俺に知らせること、くだらないことでもいい。」
「……は…い。」
「しっかり休むこと、頼みがあれば素直に言う、…これ以上溜め込まないことだ。」
「…は…ぃ。」
「これからよろしく。ほら、泣くなって。」
「…っ…、うっ…。」
さらに数日、イベント運営会社にも報酬を貰った。ちょっとばかり仲良くしている警察からのお礼も貰った。今回の活躍で記事を作ってやろうと企む記者を脅して、千夏の事は秘密にしろとも言った。これで気持ち改めて仕事に取り組める……。
『陽一さん!秋葉原駅、男性集団が不可解な行動を行っていて、迷惑しているようです。』
事務所に一つの机を陣取り、鳴り続ける通報を捌き、優先順位を自分で決め、陽一や美咲に知らせるという大役を任された千夏。まだ美咲が入院中であり、どの道事件は全て陽一に行ってしまうが、これでもう無駄な移動は省くことができると考えた。
「不可解な行為?」
『今…先程から通報が殺到して…います。』
「分かった、サンキュー。」
なかなか筋が良い千夏。重なっていく通報から場所や事の大きさで決めてくれている。先程、駅に比較的近い場所でひったくり犯を捕まえたばかりだった。
「君たち!警察を呼ぶぞ!早く出ていってくれ!」
「時間が無いんです!!キャラ総選挙まであと2日しかなくて!少しでも票が取らなくてはあ!!」
走ってきてこの光景を見て、余計に息が上がる。
「な…なんだありゃ。」
美咲も一時外出が決まり、場所は美咲の要望で焼肉店に。
「じゃあ、私の退院と、新入り千夏さんと、千葉の大仕事成功を祝って、かんぱ~い!」
「退院じゃねぇだろ。おう、千夏さん遠慮なくな。」
「はい…本当に、ありがとうございます。お世話になります。」
「かすれたその声もなんかアニメっぽいよね、千夏さん。」
陽一の奢りで、ひとまとめの大祝い。まだまだ片付いていないことは積もっており、千夏はまだ不安な顔だった。最初だけ。怪我人と暴力警備員の顔を見ると、何故が重い気持ちも消えていく気がする。もう少しだけ、どんな所かを見てみたい。千夏はそう思っていた。
「千夏さんお酒イケるんだ!?」
都外のアニメフェス編 終
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