ペルなの
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13.霧中
前書き
ロミオ先輩がミーハーアイドルオタクは仮の姿で真の正体は勝ち組リア充だという事実に驚きが隠せず、思わず書きなぐってしまいました。ちくしょう、あの時涙した俺の涙を返せあの野郎……
「うわっ、ホントに前が見えない」
ペイルダイダーに乗り、なのはとヴィータ達と共に濃霧に包まれた市街地に入った彼女だが、常住する煙幕みたく前方が全く見えない霧に少々たじろぐ。
「流石にこれは予想外だね。スバル達の報告だとここまでじゃなかったはずなんだけど」
「アタシ等に合わせて強めたってことか。ハッ、上等じゃねえか。こっちだって何の準備もなく来ちゃあいないんだからな」
ヴィータは額の所に上げていたゴーグル型の装置を下げて装着する。
このゴーグル型の装置はシャーリー達が用意した物で、この様な視界最悪な状況の時に各種センサーと魔法処理により辺りを解説して可能な限り視界をクリアにしてくれる補助装置。
ヘリから出る前になのはから渡されたソレを彼女も装着する。
「おおっ!前が見える!」
数センチ前も危うかった視界が数メートル先まで見渡せる様になり喜ぶ彼女だが、
「チッ、結構気合い入った煙幕だな。コイツでも補正しきれねぇか」
とヴィータは舌打ち混じりに悪態をつく。
「えっ、これじゃあ駄目なんですか?」
「管理局の最新装備だぞ。それでこの程度ってことは相手の方が幾らか上手ってこった。やっぱ簡単にはいきそうにはねぇな」
「でも有るのと無いのじゃ大違いだよ。とにかく今は出来る範囲の事を精一杯頑張ろ」
「そうだな。まずはシャーリー達との通信状況を目安にして回るぞ。この状況でシャーリー達からの情報が切れたらシャレにならねぇからな」
「了解です!」
そうして三人が一定距離を保ちつつ霧の中を進んで索敵を行っていた時、“ソレ”は現れた。
『二時方向ゆり急激に接近する反応アリ!タイプ【アンノウン】、スバルさん達からの報告にあったドローンではない生物兵器と思われます!』
シャーリーから届いた緊急報告に三人が二時方向を向いたのとほぼ同時に霧の中から四体の、大玉転がしに使えそうなぐらいの大きさをした球体が大口を開けて飛び出してきた。
「なんだコイツ等!?」
変な模様のある大玉が一人ぐらいなら一飲みに出来そうな大口をこれでもかと開けて襲いかかってきた一体をヴィータがグラーフアイゼンで叩き潰しながら叫ぶ。
明らかに生物として異形なソレは、幾多の管理世界の様々な生物の情報を持つ管理局から見てもふざけたものだった。
残りの三体も大口から飛び出すこれまたデカい舌を振り回しながら突撃、または指向性を持った電撃を意味不明な奇声と共に放ってきたりしてきたが、なのはが放ったシューターと彼女の一閃で迎撃された。
下級ドローンと大して変わらない強さのソレを出オチ気味にあっさりと倒せ、倒したソレは下に落下する前に黒い影状に崩れて霧散した。
なのはとヴィータが通信でシャーリーを交えてさっきのソレについて意見を交わしている横で、彼女は微かに青ざめていた。
彼女はハッキリと見たし、なのはとヴィータがシャーリーに話す特徴にもソレは言及されいる。
あの大玉には確かに、『シャドウの仮面』が付いていた。
形状からして『魔術師』のアルカナに属するシャドウに付いていた仮面で、放ってきたあの電撃は雷属性の魔法『ジオ』に違いない。
つまりはあの大玉はシャドウ、そしてシャドウがいるということは────
「…………影時間が、タルタロスが、残ってる?」
だがタルタロスは確かに消滅したのをあの時に彼女達は確認しており、それ以降影時間はあっちでもこっちでも一回も発生していない。
では何故か?
何故?何故?何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故ナ故何ゼ何故──────
一つの可能性が彼女の脳裏に走る。
その可能性は彼女にとってはかなりの説得力を感じさせるもので、シャドウが影時間でもタルタロスでもないのに出現している理由を一挙に説明出来た。
彼女がこの可能性を推論しようとした時、
「おい無海!ちゃんと聞いてんのか!」
「はっ!」
ヴィータに強く肩を握られた上に耳元で大声で怒鳴られ、彼女は思考の渦から半場強制的に通常意識まで引っ張り上げられた。
「ヴィータ副隊長……すみません、ちょっと考え事をしていました」
「考え事で済むもんじゃあねぇだろ。自分じゃあ分かってねぇだろうがお前、この霧ん中で解析機無しでも分かるぐらいに顔が青くなってんだぞ」
「朱音ちゃん、さっきのアンノウンのこと何か知ってるの?」
「………………仮面、です」
「仮面?あのちょこっと付いてた?」
「アレは、私達が『シャドウ』と呼んでた、存在に共通してあるものです」
そこまで聞いたヴィータは後頭部をガシガシをかく。
「あ~、何か訳有りだとは思ってたがな。取り敢えず詳しくは後だ。無海、そのシャドウとかいうのの弱点や行動の特徴とかはあんのか?」
「種類毎に行動の特徴はありますが、弱点はそのバリエーションで違います。あのシャドウは初めてみた種類で、分からないです。済みません……」
「んなのいちいち謝らなくていいっての。まぁとにかく、アンノウン──シャドウは数種類いてしかもバリエーションあり。さっきの大口お化け以外のもいるかもしれねぇってわけか」
「大して強くは無いけど、見た目からしてドローン以上に混乱を呼びそう。霧が深くて一般の人には目撃され難いのが、不幸中の幸いかな。早急にどうにかしないとだね」
「あの、なのはさん……」
「無海、お前には何か事情があって色々と黙ってて、今それを言って吐き出してぇのはわかるがな、今は任務中だ。あんなんが居るとなったらノロノロとかやってられねぇ。シャドウとかについての情報とか以外は今は我慢しろ」
「……ですね」
ヴィータからクギを刺され、彼女は言葉を飲み込む。
「ヴィータちゃん、ちょっと言い方がキツいんじゃないかな」
「お前が緩いんだよ!ドローンやさっきのだけならともかく、敵性魔導士もいるんだぞ。現場で余計な事に気を散らせば命取りだろうが」
内容を気にしなければ教育方針に揉める夫婦みたいな会話をする隊長と副隊長。
彼女は深く深呼吸をして切り替える。
頭を過った可能性は一先ず棚上げをし、現状の打開を最優先する事にする。
「なのはさん、ヴィータさん。移動しながら知ってるの限りのシャドウの情報と関係あると私が思う情報をお伝えします」
過去の闇は未だに彼女を離さず正に五里霧中。
目先も未来も霧かかり、先導してくれる灯りもその胸中の不安が塗り潰す。
彼女が霧払い進む先は未来に続く道程か、はたまた過去を無為にする断崖か。
答は全て霧の中
後書き
でも何だかんだでロミオ先輩は嫌いじゃないです。
後、次回の投稿は仕事と他ので遅れると思いますが許して下さい。
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