魔法少女リリカルなのは 世界を渡りあるく者
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第五章 過去との決別 〜ミッドチルダ J・S事件〜
第四話 幻想体系
前書き
今回....全然ダメだったかも....
今更ですが今回も駄文です...申し訳ない
遅くなりましたが、どうぞ
「蒼炎指揮、交代の時間です。....あまり体調が優れないようでしたら仮眠室に行かれては?」
「....いや、大丈夫だ。後は頼むぞ」
俺は六課隊員に資料を引き継ぎ、なのはの元に向かおうとして、やめた
振り返ると、目に写るのは見るも無惨な六課隊舎。それを見て俺は、唇をかんだ。
一昨日、俺はバハムートに足止めを頼み六課隊舎に向かった。だが、そこはもうすでに火の海に沈んでいた
戦闘機人数体が、その全戦力をもってして交代部隊しかいなかった六課を襲撃。メンバー全員奮闘したが、被害は甚大。そして、奪われた物もあった
なのはが保護していた少女、ヴィヴィオが連れ去られた。
彼女はこの間、レリックと同時に保護された少女で、初めてあいつーー俺のクローン体と遭遇したときに護衛していたヘリで六課に保護された
そのあと検査を行い、人造魔導士であることが判明。特殊な出自も重なってなのはがいったんの保護責任者ということで六課で面倒を見ていた
そして、なのはが約束を交わした少女でもあった
「ヴィヴィオのママが見つかるまでは、私が守ってあげる。何があっても」
だが、連れ去られてしまった。なんでヴィヴィオを連れ去ったのかは今もまだ不明だが、守れなかったという自責の念がなのはを苦しめている
そんな彼女に会って、なにを話そうというのか。今の俺には、護ると決めたものすら護れない俺には掛ける言葉なんてない。多分それは、別の人間がやるべきことなのだろう
「.......どうして、いつも遅いんだろうな」
俺は崩壊した六課を見つめながら、不意に声がこぼれた
俺が俺になってからいつもそうだ。護る護るといいながら、結局間に合わない
でも、そのことについて後悔しても何も変わらない。なら、前を向くしかない
もうすぐ決戦の時がくる気がする。この間の地上本部襲撃時に、スカリエッティはこちらに対して宣戦布告をしてきた。そして、俺たちをあざ笑うように、ここまで大々的に攻撃をしてきたんだ
いままで隠れていた奴が表に出てきたってことは、準備が完了したってことだろう
そのときがくるまでにやるべき事がある
「はやて、早めにあがっていいか?ちょっと無限書庫に寄る用事があるんだ」
[了解、いつ帰ってくる?]
俺の通信に素早く反応してくれた。忙しいだろうに、少し申し訳ないな
「わからない。定時連絡はするよ」
[........本当はダメって言うべきなんやろな。でもわかった。すこしお休みや]
「ありがとう」
俺は通信を切り、フルメンテナンスをしてもらうためにデバイスルーム担当官にアルティメイタムを預けた後、辛うじて無事だった自分の車に乗って地上本部から本局、無限書庫へと向かった
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私....ティアナ・ランスターはこの間の地上本部襲撃及び六課襲撃事件の資料整理をしている
本来この手の仕事は隊長であるなのは隊長かフェイト隊長、前線指揮官として戦闘時は部隊長と相当の権限を持つ蒼炎さんがやるべきなのだけれど、なのは隊長は崩れた六課の整理、フェイト隊長と蒼炎さんは本局にいっている。そのため、私がやることになった
いまは交戦した戦闘機人であろう敵についての報告書と、連れ去られたギンガさんの損傷状況から考えられる現状
についてまとめ終わったところ
少し休憩を入れてから、今度は戦闘記録の検証をする予定
なんとか使えるように簡易修復したオフィスの端っこにおいてあるコーヒーメーカーを使い、コーヒーを入れていると
「ごめんねティアナ。面倒な仕事押しつけちゃって」
なのは隊長が資料を脇に抱えてきた
「このくらいスバルやちびっこたちに比べれば。整理の方は?」
「いったん休憩と、ゲンヤさんから戦闘機人と人造魔導士計画について聞きに行ってくるよ。だから資料整理もう少しお願いすることになっちゃうけど....」
戦闘機人と人造魔導士計画という言葉に私は覚えがある、というだけではなかった
「....この間の戦闘、やっぱり戦闘機人でしたか」
「うん。ティアナはどこまで?」
「スバルから、ある程度は。そのおかげで、今回戦闘機人システムに適応してる幻術を使うことが出来ました」
そう。もし、スバルから戦闘機人システムに関してなにも聞いてなかったら、なにも知らなかったら私たちはあの場で倒れていただろう
「そっか。じゃあそのことも報告書には」
「全部載せてあります。あとで確認してください」
なのは隊長は頷くと
「ありがとう。じゃあいってくるね」
とだけ言って、去った
「私もログ確認始めるか」
そうして、私はあの人の真実に近づいて行った。まずはじめに気がついたのは、能力の特異性だった
この間の戦闘、蒼炎さんが肩にくらった攻撃は確かにバリアジャケットを貫通していた。だというのに次の瞬間はすでに治っていた
よくよく考えてみればおかしい。現代の魔法にはあれだけの大けがを、詠唱も、トリガーアクションもなしに治療することはできない
まあ、これは稀少技能があるとして考えれば問題ない、と思う。でも、そこで引っかかったのは模擬戦の時の行動だ
あの日、私が気を失って居た時の状況はスバル達に聞いたし、クロスミラージュの録画も見た。だから大体の状況は把握している。私を庇って防御したあと、なのはさんとエアレイドを繰り広げそのまま勝利。これだけなら蒼炎さんってなのは隊長よりも強いんだ、で終わる話だ。でも、それだけではなかった
戦いの中、蒼炎さんは傷だらけだった。そして、本来直ぐに治癒できる筈のものをそのままにして戦っていた。試しにクラッシュエミュレートで同じだけの痛みを受けてみたけど気を保つのが精一杯だった
ではなんでそのままにして戦っていたのか。知られたくないのであったらこの間の戦いで使うことはないだろう。ということは使わないことになにかしらの意味というか理由があるはずだ
思いつくのはなのは隊長がどれだけ危険なものを撃ったのかを気がつかせるため、かな。でも確信は持てない。.....本当はいけないことなのだろうけど、六課の権限を使って過去のデータも見てみよう
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「なんなの...これは」
調べて出てきたのは、明らかに狂ってるものばかりだった
管理局に入ってからの行動、それは常人には理解できないものばかりだった
親しい人ーー言ってしまえば他人を優先し、自分をまるで消耗品としか見ていないような行動。少なくとも、私には理解できない
掘り出してみて確信を持った
「やっぱりおかしい。蒼炎さんは壊れてるとしか思えない...。このこと、なのは隊長達は気がついているのかな...」
そう、こんなことを普通に行える人なんて、壊れているとしか言い表せない
でも、もしもこの行動全てに意味が、想いが込められているとしたらそれはどのようなものだろう。私は少し目を閉じて思い浮かべてみる
自殺願望者
そんな言葉がふと頭に浮かんだ
いやいやそれはないと、私は首を振る。でも、なにか的外れではない気がする。自殺願望まではいかない。けれど、それに近いもの
自己が限りなく薄く、他者の為に自身の存在価値があると思い込んでいる?
あるいは
自分は現実にいないとでも思ってるんじゃないだろうか
私はそんな馬鹿げた考えを鼻で笑い捨てる
「いくらなんでもそれはないわよ....」
確かに断定はできないけど否定もできない。訓練中にも蒼炎さんが自身の負担を度外視してるような光景を見ることがある
考えれば考えるほど思考の迷宮に囚われていく。答えは有るのだろうかと自問し始めた頃、それは現れた
<彼を理解出来るのはあなただけだと思ってはいましたが、一人でそこまで辿り着くとは思いませんでした>
私1人の筈の空間にいきなり声が聞こえて驚いた。反射的に立ち上がりクロスミラージュを起動したくらいだ
<それ以上はどれだけ考えた所で答えは出てきません。彼の魔法について知らなけらばその先へ進むことは不可能です>
声の出処はどこ。私はこのオフィスを見渡す。隅から隅まで目を光らせるが見つからない
<貴女は、彼を知る覚悟はありますか?>
一通り見渡して、正面を向くとそこには
「アルティメイタム?」
<.....>
蒼炎さんの愛機、アルティメイタムがいた。蒼炎さんが忘れるなんてことはないだろうから、六課に置いていったのだろう。まあ、それはともかく
「知る、覚悟があるかって、どういうことよ」
<.....>
アルティメイタムは何も言わない。私の答えを待っているかのように。いや、待っているのだろう
「私は」
深く考えなくても、言葉は出てきた
「私は知りたい。例え、過去に何があろうとも今の蒼炎さんは間違ってる。それだけは断言できるから」
そうだ。私は蒼炎さんに憧れてたんだ。でも、だからこそあんなのを認められるわけがない。自己犠牲の精神?そんなもの犬にでも食わせればいい
<わかりました。ならば全てをお話ししましょう。彼の原点と魔法の全てを>
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生まれは極々普通。親も何かを持っていたわけではないですし、ましてや近くに特別なものが混じっていたわけでもないのです。最初は親から普通の愛情を受け、普通に時が過ぎて行きました
異常が見え始めたのは5才くらいの時。いえ、正しくは明確には、を頭につけるべきですね
言葉を話すようになってから、時々独り言をいっている時があり、彼の両親はまだ小さいからそんなこともあるだろう、とあまり気にしていなかったのですが、ある時近所の人にこう言ったそうです。今日の帰り道は危ないから気をつけて、と
もちろん子供の言ったことです。心配してくれてありがとう、とは言いますが頭の片隅にも留めてはいなかった。そしてその日の帰り道の途中、事故に遭い死亡したそうです。もちろんこの一回では、ただの偶然ということで片付けられました。しかしそういうことが何回も続くと、次第に彼の両親は彼を気味悪がり、それが重なり続けた10歳の時、彼は捨てられました
もちろんお金などを持っているわけもなく。幼すぎるわけでもないので常識的観点から生きるためであろうとも強奪することを嫌悪し、そのまま餓死するのを待つだけでした
そんな中出逢ったのが、◾︎◾︎でした。彼は死にそうになっていた蒼炎に手を伸ばし、そこから二人は友となり共に暮らしていました
最初はまた平和でした。互いに初めての友人ということで目一杯遊び、人生を楽しんでいました。けれども長くは続かない。その彼もまた特別なものを持っていました。それにより、大人のつく嘘を指摘。それを繰り返せばまた気味悪がられる。そしてまた周りから迫害されることになってしまったのです。だが最初の時と明確に違う点が一つあった。それは一人ではなかったということです。人間というのは一人だととても弱い生き物ですが、二人三人となるにつれてその弱さも互いに補い合うことができる生き物です。だから今度は希望を失うことはなく、立派に生きていました
それが崩れたのは、そこから7年程がたったころです
お互いに自分のしていることが周囲の常識から逸脱しているということに気がつき始めると、隠すということを覚え始めました。同時にその力は一体どういうものなのか、どこから来ているのかということも自分たちなりに調べ始めました。そして、体系化することに成功したのです。体系化したということは、その力について完全に理解したということ。二人は、気がついてしまったのです。お互いの持つ力が相容れないということに
そもそも彼らの持つ力が一体何なのか、を知る必要がありますね
先ず蒼炎から。彼が生まれながらにして持っているのは「幻想」そこにないけれどあるという存在、すなわち万人から認識されているわけではないモノに敏感なのです
この力により彼は異能と呼ばれているものに対してはあり得ないくらいの適性を持っていますし、精霊との交感も高いレベルで可能です。ああ、この場合の精霊というのは世界を構成する要素を司る精霊のことですね。地水火風に陰陽、光と闇といったほうがいいでしょうか。幼い頃、彼らと交感することにより、簡易的な未来予知をしていたわけです
まあこの話は今はいいでしょう。もう一人が持っていた力は「真実」こちらに関しては私もよくわかりません。具体的に言えば、嘘がわかったり幻を見なかったりといった所らしいです。その名の通り真実を見分ける、というところでしょうか
元に戻りましょう。なぜこの二つが相反しているのかというと、蒼炎曰く幻想は境界線をあやふやにする力で真実は境界線を確定させる力だそうです。意味わかりませんよね
そうですね、ここに一つの玉があるとします。それをコップで隠し、開けるとその中から玉が消える。この事実を認めるのが幻想で、認めないのが真実。もっと簡単に言えば、魔法を認めるのが幻想。否定するのが真実です。だって、魔法は万人に認められてるわけじゃないのだから
このことがあり二人は敵対。最終的には殺し合いとなりました。なにせ互いに互いを否定し合う存在、今まで共にいれたのが奇跡ですからね
最終的に生き残ったのは蒼炎。最も精神的なダメージが大きすぎてしばらくは死人同然だったらしいですが
それを救ったのが彼の師匠。神崎凪でした
暴れていた蒼炎を黙らせるために送られたのが彼女ですが、結局彼を引き取ることになりました。何を思ってそうしたのはわかりませんが
それからはかなり長い間平和な時間が流れました。蒼炎もしたいことをして、ゆっくりしていたらしいです。その間に剣術を習っていたようですね
変化が訪れたのは神崎凪の死期間際でした。彼女の持つ力は「運命」、全ての未来を見、操る力。勿論、人が持つ以上その力を完全に扱うには命を削る必要があります。持ち前の魔力だけで行えるのは未来視、精々が小規模な改変です。ですが、この力を持つがゆえに彼女はわかっていた、自分がいつ死ぬかを。そしてその前に、この力を蒼炎に継がせたかった
運命は継承制です。受け継ぐための条件は、いついかなる時も運命などに屈せず、自分自身で未来を切り開けるもの。証明方法は、先代の殺害
なんて酷いものだ、と感じるでしょう?ええ、まったくその通りです。でも、このままだと蒼炎は誰かに依存しなきゃ生きていられなくなる。そうなる前に、彼を勇気付けたかったのでしょう。でもそれは、蒼炎の心をボロボロしてしまった
表面上は前よりマシになったでしょう。それは未来なんて変えられることを知ったから。例えくそったれな世界でも自分の力で切り開けるとわかったから。でも奥底は悪化しました。大切な人を二回も殺し、自分だけが残る。もう大事なものを二度と失いたくない、守るためなら、本当はここにいない自分をかけてやる、と
実際、彼はその願いを叶えるだけの力を持っています。だからあなたがおかしいと思った行動も、彼にとっては別段特別なことではない。生きてる人間が怪我をするよりも、存在するはずがなかった自分が怪我をする方がいい。そうすれば、その怪我は無かったことになる。こんな暴論が彼の中では成り立ってるのです。そして、それは今も続いているというわけです
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「馬鹿げてる...」
<まあ、そう思う気持ちはわかります。ですが>
「別に蒼炎さんが馬鹿げてるってわけじゃないの」
アルティメイタムの言葉を遮って私は話す
「蒼炎さんの境遇が馬鹿げてるって話。いや、やっぱり蒼炎さんも馬鹿よ。周りに気付いた人がいなかったっていうのもあるのだろうけれど」
<?どういうことですか?>
「なんだかんだ言っても人間は単純だって話よ」
アルティメイタムは余計わけがわからないとデバイスながらうんうん唸っていた
私はまとめ終わった資料を記憶媒体に移し、オフィスを出る。窓から外を見ると雨が降ってきそうな天気だった
なんかもやもやするからなのはさんに渡したら体動かそうかな
後書き
幻想の魔法でできることの具体例は、幻術を見せたり、ないものを創り出したり、あるいは人を消したりと多岐に渡ります。まあ、もちろんそんな力に代償がないわけはないですよね....
少年は気付かされた。自分の願い、そして思いに。それを気づかせて少女を今度こそは守ると誓い、空に羽撃いたゆりかごへ向かう
立ち塞がるのも少年。二人は三度対峙する
次回 第五話 六等星の夜
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