魔法少女リリカルなのは 世界を渡りあるく者
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第五章 過去との決別 〜ミッドチルダ J・S事件〜
第三話 龍王招来
「ロングアーチ!ロングアーチ!この通信が聞こえたら応答してくれ!」
先程から本部に通信をしているが全然反応がない。嫌な汗が止まらない
俺とフェイト率いるライトニング分隊は六課を襲撃している敵を撃退するために空を翔ている
ただ俺とフェイトに掛けられたリミッター、さらにキャロとエリオはフリードに乗って移動しているため速度が遅い。仕方がない
「フェイト、俺は魔力放出を使って先にいく。お前はエリオ達を守りながら来てくれ」
「うん。了解」
フェイトが頷いたのを見て、俺は魔術回路を起動、魔力を後ろに放出し速度を上げた
嫌な想像を振り払うように右手のアルティメイタムを握りしめる。大丈夫、きっとみんな無事だ。心の中でそう繰り返しながら空を翔ける。空の色は俺の不安を写したかのような曇天だ。そして、聞きたくなかった声が響く
「少し、遊んでくれませんか?」
悪寒が走り、反射的に横に避ける。俺が駆け抜けるはずの場所には上から魔力で作られた散弾が通り過ぎていった
俺は止まり、空を見上げた
「今俺は急いでるんだ。お前と遊んでる暇はない」
そこには、俺のクローン。顔も昔の俺に、未熟な頃の俺に瓜二つで、見るたびに後悔や恥やら色々な感情が渦巻く。正直、一番会いたくなかった相手だ
「そんなこと言わずにこの前の決着、つけようよ!」
「っち!」
高速の刺突をガードする。鍔迫り合いになったことで分かったが
「前より筋力が上がってる?違う、基礎能力全般が上昇してる!?」
「僕の中にあるあれが馴染んできたってことかな。ほらほら、捌くのが間に合わなくなってきてるよ!!」
顔に笑みを浮かべながら刺突を繰り出してくる。前の時ですら限定解除を使わなければ負けていたであろう状態、さらに強くなった今の状況ではどうなるかなんてわかりきってる
未来視を使ってでもだんだん相手の剣に追いつかなくなっている。悔しいけど、このままだとこれが限界か
[蒼炎!今援護するっく!]
フェイト!?、俺は後ろを見るとフェイト達が追いついてきていた。だがその後ろから戦闘機人二体も現れ、フェイトはそいつらと睨み合っていた
「よそ見してたら死んじゃうよ?」
「があっ。いたっ」
気を逸らしたため刺突を一発右肩に食らった。バリアジャケットには穴が開き、肩も少し抉れた
「蒼炎!!」
「お前はエリオ達を守れ!あいつらだけでも、先に行かせろ!」
怪我した部分に意識を集中させ、元に戻す。幻痛が残っているが腕は普段通りに動かせる
「フェイトさん!蒼炎さん!」
「ここは俺たちに任せて先に行け!!こいつは俺たちが倒す。お前たちは六課を守るんだ!」
「.......わかりました。負けないでください」
「フリード...」
キャロの声にフリードは勇ましく応え、六課へと2人を乗せていった
「ご丁寧に待ってくれるとは優しいじゃないか」
「別にただ殺したい訳ではないからだよ。さってと、続きやろうよ」
向こうが構える。だが、俺は構えを解いて自然体を取る
「....ふざけてる?」
向こうは明らかな怒りを顔に浮かべで睨むが俺はそれを受け流し
「別にふざけちゃいないさ。このままやっても負けるのが目に見えてる。だから、少し裏技を使うことにした」
瞬間、俺は体内の魔力を活性化させる。これから喚ぶのは大食らいだ。一度に大量の魔力を使えない以上、大気中に撒くしかない
「ばかにならない魔力量だね...
こういう時は先手を取るに限る!」
真っ直ぐに突っ込み、腕に付けてある細剣で俺を突こうとする。一つはアルティメイタムで弾き、もう片方は生身の左手で掴んだ
「捕まえた。バインド!!」
四肢にチェーンバインドを掛け、俺は間合いを取った。だが、充分に間合いを取る頃にはバインドが壊されかけている。うまく行けば砲撃で落とせると思ったが、これは奥の手を使わなきゃだめか。保険としてやっておいてよかった、大気中の魔力は充分だ。いける!
息を整え、俺は句を紡ぐ
「無より生まれし翼、全ての龍を束ねる大空の覇者よ、我が名のもとに馳せ参じ給え。竜王招来!こい、バハムート!!」
俺の中にある魔力を起点として周囲にある魔力が活性化する。それは束となり空に奔り、雲が吹き飛ぶほどの密度となっていた
「 !!」
声として認識できない叫び声が辺り一面に響き渡る。それに内包されている威圧感により、少し離れた場所で闘っていたフェイトと戦闘機人は動きを止めていた
黒く輝く肌と鱗、翼を持った龍の王はゆっくりと降りてくる。翼が空気を叩く音がするたびにその振動か周囲に伝わり、体の中まで響いてくる
龍王にして、俺の戦友、バハムートは俺の隣で止まる
「久しぶりだな、バハムート。今日は小さいな」
“このサイズでなければ維持にかかる魔力と、お前の出力が合わないであろう?”
声が聞こえるというよりは頭の中に響く。だからと言って俺だけにしか聞こえないというわけではないがな
「全長10mって所か。確かにその位が今の出力限界だな。悪い、気を使わせて」
バハムートは俺の言葉を鼻で笑い
“この程度、俺とお前の仲なら当然のこと。だが、俺には一つだけ文句がある。それはな.....なんで俺をこんなことに呼び出したんだ!!”
バハムートの咆哮により、また周囲にいる人間全員の動きが止まる
“共に死力を尽くして闘うというのであれば構わん、この身が滅びそうであっても駆けつけよう。それ程の借りがお前にはある。だがな、だかな!足止めって........。久しぶりに暴れられると思ったのに....”
がっくりとうな垂れていた。確かに呼び出したのはかなり久しぶりだけどな
「そう言わないでくれ。これはお前にしか頼めないことなんだ。少し考えてみてくれ?俺が呼び出せる中であいつを足止めできるのはお前か神精くらいだ。そして空中戦である以上、フルスペックを発揮できるのはガルーダしかいない。だがガルーダを呼び出すだろ?あいつなら誰彼構わず、五臓六腑を引きずり出してやる!ってな感じで皆殺しにしそうだろ?だからお前にしか頼めないんだ...」
ガルーダは風を司る神精、そのため空中戦なら無類の強さを誇る。だが欠点というか、性格に何がある
それは残忍であるということ。身内である(と認識している)俺や四大神精、本気で闘ったら勝てないバハムートなどには多少きつく接する程度であるが、相手が格下とわかった瞬間に性格が変わる、スイッチするといってもいいくらいだ
気性は荒く、殺すとしても限りなく苦しむように嬲る。そんな情景をみんなに見せるのは少し、というかかなり気がひける。それにこいつらは殺さずに捕まえなきゃいけないからな
“...確かにその通りだな。仕方がない。行け、蒼炎。この場は俺が持とう”
バハムートはそう言い、敵に向かって突進をする
そのスピードは早いとは言えないが、いままで呆気に取られていたあいつの隙を突くには十分すぎる速さだ
「ありがとう」
俺はバハムートが時間を稼いでいる間に六課隊舎に向かう。まだ間に合うと信じて
「くっ!召喚獣なんて直ぐに元いた場所に還してあげるよ!」
“悪いがこれでも子達の、龍の王を名乗らさせてもらっているのでな。そう容易く負けるわけにはいかん。もっとも、貴様のその細すぎる剣では俺に傷一つつけられやしないがな。ああ、それからもう一つ。運がいいな、今の俺じゃ伝説級魔法攻撃は撃てないから瞬殺ってことはないぞ?”
後書き
「.......どうして、いつも遅いんだろうな」
崩壊した六課隊舎を見ながら、幻想の魔術師は後悔を呟く
守ると決めた者の哀しみを拭うこともできない
だが、今は思考停止していい時ではない
敵の狙いは明らかになった。蒼炎は一人、無限図書に籠り、最終決戦に向けて奥の手の調整に入る
そんな中、一人の少女は一つの真実へと近づいてゆく
「やっぱりおかしい。蒼炎さんは壊れてるとしか思えない...。このこと、なのは隊長達は気がついているのかな...」
それは、未だ誰も触れることの叶わなかった、少年の在り方だった
次回 第4話 幻想体系
いやー、本当はヒロイン作る気は無かったんですけど...ここから先の展開を考えるうちにティアナなら蒼炎のことを理解できそうだなぁ、って思って(観察眼があり、かつ長い付き合いではないので蒼炎の規格外に慣れておらず違和感を違和感として認識できる)ティアナがヒロインになりましたー。わーい
元々ティアナは割と好きなキャラでしたので問題ないのですが、長い間ともに歩んでいるなのはや、明らかな思わせぶりをしているはやて達とは友達、あるいは戦友の域を超えません。さらにここではハーレムにする気もないので、容赦なくふっていきますw
というわけで、ヒロインはティアナに正式決定しましたー!!
今後ともよろしくお願いします!!
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