仮面の戦士
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第五章
「黒死病か天然痘か」
「労咳か」
「どちらにしてもな」
「死病でなければいいな」
「うむ、そうでなければな」
「外に出られて欲しい」
「早いうちにな」
こうした話もした彼等だった、そして。
彼等は試合を観続けジュリオも騎士も勝ち進んだ、そうして遂にだった。
「さて、明日はな」
「はい、準決勝ですね」
「そして相手はだ」
「はい、あの騎士ですね」
「仮面の騎士だ」
宿屋の中でだ、ジュリオはレオに言った。
「あの騎士が出て来る」
「いよいよですね」
「勝つ」
絶対に、とだ。ジュリオは言い切った。
「私がな」
「はい、是非勝って下さい」
「そして決勝にも勝てばだ」
その時のこともだ、ジュリオは言った。
「祝いでだ」
「それでまた、ですか」
レオはジュリオが言いたいことを察して苦笑いになって返した。
「飲まれるんですね」
「ビールをな」
「ここのビールが本当にお気に召されたんですね」
「噂以上の味だからな」
それで、というのだ。
「飲む」
「そうされますか、やっぱり」
「一緒に飲むぞ、いいな」
「わかりましたとは言えないです」
とてもという言葉だった。
「旦那様は本当に深酒ですから」
「心配です」
「まあそう言うな」
「何度でも申し上げます」
こと主人の健康管理のことについてはだ、レオは厳しかった。それで今もジュリオに対して言うのだった。
「旦那様、お酒は程々に」
「過ぎると身体に悪い」
「はい、万病の元です」
深酒こそがというのだ。
「ですから」
「万薬の長だと思うが」
「薬も過ぎると毒になります」
逆に、というのだ。レオは主を正論で攻めた。
「ですから」
「程々にか」
「飲まない様にとは申しませんが」
それでもだというのだ。
「それは慎んで下さい」
「どうしてもか」
「出来ることなら」
「まあ許せ、優勝した時はな」
その時からと言ってだ、そして。
この日はそのジュリオも明日の試合に備えて飲まなかった。彼も明日が正念場とわかっていたからだ。それでだ。
彼はだ、レオにこうも言ったのだった。
「今日はこれで休む」
「そして、ですね」
「そうだ、明日だ」
「明日本当に頑張って下さいね」
「そうする」
ジュリオは微笑みながらも確かな声でだ、レオに答えた。
「そしてだ」
「勝たれますね」
「そうさせてもらう」
「そうですね、じゃあ」
「明日に備えて寝よう」
「では私も」
「明日は観戦を頼む」
観客席において、というのだ。
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