| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

幸運E-のIS学園生活

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

私に投影出来ない剣は無い!!

唸るは剣撃、響くは轟音。赤き魔術師、錬鉄の英雄は白黒の双剣を構えながら大きく振るい、黒い雨、シュヴァルツェア・レーゲンの攻撃を捌いていた。ラウラは防戦一方の心に疑問を覚えながらも攻め続ける。

「ふむ、パワーもスピードも悪くない。ならこれはどうだ」

右手に持つ莫耶を消し、一本の人間の背丈を越えるほどの日本刀を展開した。

「そんな馬鹿のように長い剣で私を倒そうというのか、愚かだな」
「誰もこれで君を倒すとは言っていないのだがね、反応を見るだけだ」
「反応……っ!?」

呟いた瞬間に心は動いた、そして同時に右手の日本刀が姿を消した。突如姿を消した刀、動揺するが何か冷たいものを感じ後ろに引く。すると先程自分がいた場所、丁度自分の首があった辺りに刀が添えられていた。あのままその場に居たら首が切り落とされていたかもしれない……という考えがラウラの脳裏を過ぎった。

「反応も悪くない、だがまだ二流だな」
「なんだと………?」

ビギリとラウラの額に青筋が走った。自分が二流だと侮辱された事にあからさまな怒りと、自分を侮辱したこの男を殺すという殺意が浮かぶ。

「君の戦闘技術は(スキル)であった(アート)ではない。この違いが解るか?」
「戦闘技術に(アート)など必要ない!!ただ敵を倒す(スキル)であれば十分だ!!」

激昂したラウラの言葉にやれやれと溜息を付く心。だから二流だというのだと呟く。

「確かに一般的には技で十分かもしれんが二流の技ではただ敵を倒す事しか出来ない暴力だ。いや、口に言っても無駄か、実際に試してやろうじゃないか、君のスキルが私を倒せるかどうか」
「ほざけ!!」

再び斬りかかるラウラに対し再び莫耶を投影し攻撃を受け止める。ラウラの痛烈な攻撃を捌き、プラズマ手刀を同時に振り下ろした瞬間に両腕を交差した状態から一気に開きプラズマ手刀を弾きながら、双剣をブーメランのように投げる。

「馬鹿か!自ら武器を捨てるとは!」
投影(トレース)開始(オン)

笑うラウラの余所に心は新たな干将・莫耶を投影しラウラを斬り付けた。

「な、にぃっ!?」
「気を抜いていて良いのかね?」

更に持っていた干将・莫耶も投擲、これで心の持ち手はなくなったとラウラは考えた。だがそれを裏切るように新たな投影。干将・莫耶が現れる。そして自らの身体を切り裂かれた。

「こ、れは先程投げた剣か!?」
「その通りだ」

まるでお互いがお互いを引き合うようにラウラを中心にするように弧を描きラウラへと襲い掛かる干将・莫耶。そしてそれに惑わされているうちに迫る心。

「調子に乗るなぁあああああ!!!!」
「―――っ?身体が」

突如身体が停止した、自分は身体を止めた命令を出したつもりだなど毛頭無い。まるで見えない何かに体を束縛されているかのような物に近い物を感じる。―――これは明らかに対戦相手ラウラによる所業だと解った、その証拠にラウラは笑っている。

「成程、話には聞いていたがこれはAIC、アクティブ・イナーシャル・キャンセラーか。一対一では反則的な効果だな」
「どうだ停止結界の味は、これで貴様は私に手も足も出せん。私を侮辱した事をたっぷりと後悔させてやる!!」

殺意と怒りが混同し憎悪に近い感情を浮き彫りにさせながらレールガンを心に向けるが心はいたって冷静だった。焦る事など無い、自分はこれの攻略法を知っている。

「憑依経験、共感終了。工程(ロール)完了(アウト)全投影(バレット)待機(クリア)!」
「な、何だこれは!!?」

ラウラは突如、心の後方に多数出現した剣に驚愕した。ISにこれだけの数の武装を施す事無く不可能な筈だからだ。だがこれは施された武装ではない、作り上げられた、複製された武器の山。この程度の投影など今の心にとっては何の負担にもならない。

「これならどうかな黒兎、停止(フリーズ)解凍(アウト)全投影(ソードバレル)連続層写(フルオープン)!!!」

一気に十、いや百はくだらない数の剣がラウラへ向けて発射される。これだけの数では流石に心に停止結界をし続けているのは無理だと判断し結界を解いて回避に専念する。一対一では絶大な効果を発揮するAICだが使用には多量の集中力が必要であり、複数相手やエネルギー兵器には効果が薄い。既にその事を束に聞いていた心は対策として全投影連続層写を準備していた。

「ぐっ!これはっ!!があああ!!」

剣を攻撃しながら回避をし続けるラウラだったが、遂にそれも不能なレベルに達し防御を試みるが馬鹿げた量の剣の防御など無理に等しく大きく吹き飛ばされてしまう。一夏とシャルルはその戦闘を見て目を丸くする事しか出来ていなかった。一夏はこれまで見てきた心の戦いが本気ではなかった事に、シャルルはドイツ軍人であるラウラを圧倒している事に驚きを感じていた。

「さてと、そろそろ終わりにしよう。取って置きの投影品でな。――――投影(トレース)開始(オン)

そう言い双剣が消え、代わりに一本の剣が握られた。それは一夏にとって見覚えがある剣だった。自分のIS、白式に搭載されている雪片弐型に似ているのだから。だが弐型よりも洗礼されたそのフォルム、刀身、明らかに弐型ではなかった。それは

「ゆ、雪片、壱型……だと!?」

嘗て織斑 千冬が世界最強の座を手にしたときに使われていた最強の剣。雪のように淡く、されど烈火の如く燃え上がる剣。

「な、ぜ、貴様がそれを持っている!!!!それは、教官が持ってこそ輝くものだ!!!」
「それは君自身の意見だろう、だがこれ以上に君を斬るのに皮肉で相応しい剣は無いだろう。君が尊敬して止まない教官である織斑 千冬の剣、そして私」

雪片壱型の形状が変化していく、それは一夏も相手をしとめる切り札として使用するものと同じだった。

「れ、零落白夜まで………それにあの構え………」

実の弟である一夏は知っている、あれは、千冬の構えだと!

「君を斬る」

零落白夜で切り裂かれた結果、みるみるシールドエネルギーが減少するラウラのシュヴァルツァ・レーゲン。

「(こんな奴に私は負けるのか?教官の言うようにこいつに私は負けるのか?)」

ラウラは朦朧としてきた意識の中で敗北を感じ取った。その時、ラウラに声が聞こえた。

(力が欲しいか?絶対的な力が)

漆黒の影のような、ドロドロとした不快感を与えるような嫌な声だった。

(欲しい…)
(敵を圧倒的な力で倒せる力が)
(よこせ!奴を完膚なきまで倒す力を!)

だが、ラウラはその声のままに手を取ってしまった。欲望に、心に勝ちたいという欲望に負けてしまったのだ。

「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

ラウラの絶叫がアリーナに木霊する。

「何が起きた!?」
「なっなに!?」

狼狽えるシャルと一夏、心はすぐさま距離を取り雪片を構える。そして来てしまったかっと毒づく。黒い泥のような物は見る見るうちに絶叫を上げるラウラを覆って行き、ISも形状を大きく変化させていき全身装甲(フルスキン)の物へと変化していった。そしてそれは嘗ての世界最強、織斑 千冬とに酷く酷似していた。そして手には雪片。

「矢張り、VT(ヴァルキリー・トレース)システムか」

過去のモンド・グロッソの部門受賞者(ヴァルキリー)の動きをトレースするシステムで、アラスカ条約で現在どの国家・組織・企業においても研究、開発、使用全てが禁止されているシステムである。それが何故ドイツの軍人であるラウラのISの搭載されているのかは謎だが、面倒な事は変わりない。

『緊急事態発生!生徒と観客は速やかに避難して下さい!』

この事態を危険と判断した学園は避難指示を出した。中々良い判断だと思うが、心は動こうとしない、恐らくこのシステムの目標は自分だと解っているからだ。なら下手に動けば被害は拡大する。だが

「うおおおおおおおおおお!!!!」

突如一夏は加速しラウラへと向かおうとした。それを心は前に立ち塞がりなんとかそれを止めるが一夏は暴れながら千冬を象ったラウラへと向かおうとしている。

「この糞野郎おおおおお!!!千冬姉の、真似してんじゃ、ねぇえええよぉおおおお!!!」
「落ち着け一夏、返り討ちになるぞ」
「うるせぇ!俺を邪魔をするならお前からっ!!?」

倒すと言おうした時、一夏の全身が震え始め言う事を聞かなくなった。歯はガチガチと音を鳴らしながら顔は恐怖に染まっている。

「粋がるなよ小僧、私以下の実力しかない分際の貴様が私を倒すだと?随分と生意気な口を利くようになったな。では私を殺して先に進んで死んでみるか?」
「ぁ、ぁぁぁぁ」
「落ち着け一夏、お前の気持ちは解った」

殺気を解くと一夏の身体から震えが抜けていった。一夏は手を貸してもらって立ち上がり、模造品を見つめる。

「私が隙を作ってやる、その間に零落白夜で斬れ。チャンスは一度だ」
「解った!やってやるぜ!!」

雪片弐型を展開し意識を集中させる、零落白夜の為の準備に入った。そして心は弓を出し捻れきった奇妙な剣を投影した。そしてそれは矢としてつがえると更に細く鋭利なものへと変化した。

「一夏、私は一つ宣言しておいてやろう」
「えっ?」

心は大きく息を吸い込み口を開いた。

「私は宣言しよう。我が主人マスターである篠ノ之 束の為に私は世界最強となる。まず私はこの学園最強を下しその座に君臨する。そして、私は世界最強へとなると!!!!」

その場で聞いているものは凍っただろう。この男は世界最強になると言った、言い方を変えてしまえば全世界の国家代表を敵に回したという事になるのだ。だが一夏だけは笑っていた。

「お前らしいぜ心!!男なら目標はでっかくだ!!なら俺も宣言してやる、俺は絶対にお前を倒して千冬姉の後を継ぐ!!」
「フッお前らしい宣言だ、さて行くか。我が骨子は捩れ狂う!偽・螺旋剣(カラドボルグII)!!」

放たれた螺旋剣は空間を捩じ切りながら進んで行き、VTシステムが出した雪片ごと肩の一部をねじ切るようにズタズタにしながら貫通していった。

「いまだ!」
「おおおおおおおおおおおお!!!!」


それによって出来た隙を一夏が突き、零落百夜にてVTシステムを唐竹割りに切り裂いた。  
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧