ソードアート・オンライン 蒼藍の剣閃 The Original Stories
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SAO編 Start my engine in Aincrad
Chapter-9 新婚生活
Story9-4 パパ、ママ
シャオンside
朝の日差しがシャオンの顔に差し込んできて、艶やかなメロディーが流れる。
起床のアラームだ。
そして、そのメロディーに合わせて、微かなハミングが聞こえてきた。
俺は意識を覚醒させて、そのハミングの聞こえるほうを見てみると、俺とフローラのあいだで寝ていた女の子が目を覚まし、俺の目覚ましにあわせて一拍のズレもないハミングを奏でていた。
「え?」
一応フローラにも伝えたほうがいいと思い、珍しくまだ寝ているフローラを起こした。
「フローラ、ちょっと起きて」
フローラを揺らしながら起こすと眠そうなまぶたをこすった。
「おはよ〜……どうしたの…………?」
「いや、だって見てみろよ」
フローラが横を見ると昨日連れてきた女の子が目を覚ましなにやらハミングを奏でているのが分かる。
「これって、いったい?」
「俺にもよくわからない。それにさ、このハミングは驚くことに俺のアラームに一拍のズレもないんだ」
「うそ…………普通アラームって人には聞こえないはずじゃ……」
「だから、なおさら不思議なんだよ」
2人が夢中になって会話をしていると女の子が不思議そうにこっちを見つめていて、始めてに気がついた。
「あ、ごめん。君、自分の名前、言える?」
「な……まえ……レイ…………」
「レイちゃん、どこから来たの?お父さん、お母さんは?」
「わから、ない」
「そっか。とにかく、レイ、って呼んでもいいか?」
「うん……」
「よし!レイ、俺はシャオン。こっちはフローラだ。分かるか?」
「ちゃ、お、ん、ふ、ろー、りゃ……」
「う〜ん、なんか言いにくそうだね」
「じゃあ、俺たちの呼び方は俺がパパ、でフローラがママ」
「ちゃおんは、パパ。ふろーりゃはママ」
それを聞いた瞬間、フローラは涙を堪えながらレイに抱きついた。
「そうだよ! ママだよ!」
なんか、いいな……
と思っているとフローラが部屋を出て行こうとしていた。
「フローラ、どうするんだ?」
「どうって、とりあえずこの子にご飯作ってあげるのよ」
「んじゃ、リビングに行くか」
リビングに行くと、キリトたちも起きてきた。どうやらそっちの女の子の方もレイと同じことらしい。
その女の子の名前はユイ。
今日の朝食はフローラとアスナが作ってくれた。
ちなみにメニューは大人組はサンドイッチ。
子どもたちにはフルーツタルトを焼いたのだが…………
「ユイも、パパと、同じが、いい」
「レイも…………」
「これな、とてもから〜いんだぞ?」
「それでもいいんなら、俺は止めない」
そういって、俺たちはユイとレイにマスタードたっぷりのサンドイッチを渡した。
2人は一個ずつ受け取って、じっくり見てからかぶりついた。
一口飲み込んで、
「おい、しい」
「か、からい、パパ、お水……」
ユイは笑顔に、レイは涙目になった。
俺はレイをだいてやり、『そいじゃあ、フルーツタルトを一緒に食べよーな』と言ってやると、笑顔になった。
ユイのほうはキリトに『根性のあるやつだ』と頭を撫でられていた。
調子に乗って夜は激辛フルコースにとか言ってたらアスナに『そんなのつくんないからね』と釘をさされていた。
6人でいつより賑やかな朝食を取り、すこしの間だが本当の家族のようになった。
食事を終えて、肝心の話題に入った。
「これからどうする?」
「そーだな…………
とりあえず第一層はじまりの町に行って、この子のことを知っている人を探そっか。あてはないけど、なにもしないよりはいいだろうし」
「そうね。そうしましょう」
「私もそれでいいわ」
全員一致で決まった。
「あ、今あそこは、軍のテリトリーだから、全員念のため武器を頼む」
「「「わかった((わ))」」」
俺たちは装備を整えた。
といってもアイテムストレージに格納しただけなのだが…………
「さて、2人ともお出かけするわよ」
「おで、かけ?」
「そうよ、ユイとレイのお友達を探しに行こうね!」
「と、もだち?」
「ユイとレイを助けてくれる人のことね。
あ、お着替えするから、こうやって、手を振ってごらん」
アスナはお手本を見せるように、右手を振った。
しかし、2人のウィンドウは開かない。
「やっぱり、何かシステムがバグってるね」
「けど、ステータスを開けないってのは致命的過ぎるって。これじゃ、何もできない。
あ、そうだ、今度はさ、左手でやってごらん」
「シャオン、ウィンドウは右手でだすんだぞ。そんなことも覚えてないのか?」
「物は試しよう、って言うだろ?」
キリトが若干馬鹿にしながら言うが俺はそれを華麗に流して子供たちにうながした。
すると、途端に手の下に紫に光るウインドウが表示される。
「でた!」
「でたよ、ママ!」
「なっ?だから言ったろ?」
俺はしてやったりといった顔でキリトをみながら言った。
そして、俺はウィンドウが表示されて、喜んでいる子どもたちの頭を撫でてやる。
「えらいぞ!悪いけど2人のウィンドウみせてくれないかな?」
そういって俺は子供たちに可視化ボタンの場所を教えてウィンドウを覗き込んだ。
「な、なにこれ!?」
アスナが驚きの声をあげて、キリトも驚きの表情を隠せないようだ。
もちろん、俺とフローラもそう。
2人のウインドウにはHPバーもEXPバーも、レベル表示すら存在せず、僅かに存在するのは(アイテム)と(オプション)と名前だけだった。
ユイの方には(Yui-MHCP001)
レイの方には(Rei-MHCP001)
とウインドウの最上部に書いてある。
装備フィギュアはあるものの、コマンドボタンは通常に比べて大幅に少なかった。
子供たちはウインドウの異常など居に介していないようで、不思議そうに大人組を見上げている。
「これも、システムのバグなのかな?」
「何だか、バグというよりは、元々こういうデザインのようにも見えるけど」
「くそっ、今日くらいGMが居ないのを歯がゆく思ったことはないぜ」
「ま、ないものを今考えてもしょうがないだろ。
優先すべきはまず、この子たちに服を着させること、だろ?」
女性陣は外出のために子供たちに服を着せようとしていた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
20分後
子供達は女性陣によって着替えさせられて、すっかり装いを改めていた。
「さて、行こうか」
「パパ、抱っこ…………」
屈託のない眩しい笑顔でユイはキリトにお願いした。
キリトは少し照れながらもユイを持ち上げて抱っこした。
レイがその様子を羨ましそうな瞳で見ていたのに気づき、俺もレイに声をかけた。
「レイ、おいで」
レイは顔は花が咲いたように明るくなり、駆け寄って来た。
「パパと一緒に、歩く!」
「歩きたがるところ、シャオン君そっくりね」
「そうだな」
その姿に女性陣は思わず顔をほころばせた。
そして、転移門に到着し、俺たちは久しぶりにアインクラッド第1層始まりの町におりたったのであった。
Story9-4 END
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