ソードアート・オンライン 蒼藍の剣閃 The Original Stories
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SAO編 Start my engine in Aincrad
Chapter-9 新婚生活
Story9-3 迷子?
シャオンside
しばらくして、11時前に森に到着した。
「さーて、お化け探しといきますか!」
「お、お化けとか、言わないで」
「恐いよー…………」
とアスナとフローラから猛反発を受けてしまった。
「でも、探すといってもどこを探すの?」
「ま、しらみつぶしに探すしかねーだろうな」
「そうね……せめてもの救いがこの辺りにはモンスターもあまり姿を表せないし、プレイヤーも滅多にこないからね」
「だな。索敵スキルをフルに使えばなんとかなるかもしれないな。念のために武器だけ装備しておこう」
それぞれ、愛剣をストレージからとりだし装備した。
いつなにが起こるか分からないし死んだら即ゲームオーバーなので、用心に越したことにないというのが俺たち4人の結論だ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
しばらくして
「み、みんな……あそこ…………」
フローラが掠れた声で呟いた。
その声に俺たち三人が駆け寄っていく。
少女たちは動かない。
俺たちから数m離れた場所に立ち、じっとこちらを見ていた。
すると2人の体が、ふらりとゆれる。
ネジのきれた人形のように、地面に崩れ落ちていく。それをアスナは手を延ばして受け止めた。
キリトたちが駆けて来る。
「この子たちは幽霊じゃないぞ、キリト」
「みたいだな…………」
とうやらキリトにもこの子たちが、幽霊ではないことはとっくに気づいているらしい。
「だ、大丈夫なの?」
フローラの心配する声が聞こえた。
「うーん、多分な…………」
「消滅してないってことは、命に別状はないと思うけど…………」
「でも、これはかなり妙だ」
「妙って?」
「この子たちは幽霊じゃない。こうして触れられるからな。
ただ、気づかないか?さっきからこの子たちカーソルが出てないんだよ」
「あ…………」
フローラも気付いたようで、思わず声が漏れた。
「何かのバグだと思うか?」
キリトが俺を見る。
「そうだろうな。普通ならGMを呼ばなきゃいけないだろうけど、此処にはそれが居ない。
おまけに変なのはカーソルだけじゃない。
プレイヤーにしてはこの子たちはちょっと若すぎる。ナーヴギアは13歳以下の子供の使用は制限されてるはずだからな」
アスナはそっと手を延ばし、少年の額に触れた。
「どうして、こんな小さな子がSAOの中に…………」
「とりあえず、アスナ達はこっちの女の子をお願いできるか?」
こくりと頷いたアスナに俺は片方の女の子を預け、もう一方をフローラに預けた。
「とりあえず、このまま放ってはおけない。
目を覚ませば色々判るだろうし、このまま家まで連れて帰らないかい?念のため護衛は男性陣がやる」
「そうだな…………そうしたほうがいい。
でも、その前にこの子たちの持ち物が落ちてないか探そう」
キリトは小さく頷き、辺りに子供たちの持ち物が落ちてないかを確認すると、俺たちはほとんど駆け足で来た道を戻った。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
森を抜け、家に辿り着いても子供たちの意識は戻らず、フローラとアスナは俺たちの寝室に2人を横たえ、毛布を掛けた。
4人は向かい側のソファに腰掛ける。
しばし沈黙が周囲を包み、しばらくすると、キリトがほつりと口を開いた。
「まず、1つだけ確かなのは……此処まで移動できたんだからNPCじゃないってことだよな」
「そうだな」
NPCは存在出来る範囲があらかじめ決められており、プレイヤーの意思で移動させることが出来ない。
手で触れたり、抱きついたりした場合、ほんの数秒でハラスメント警告の窓が開き、吹き飛ばされるのだ。
「それに、何らかのクエスト開始イベントでもない。
もしそうなら、接触した時点でクエストのログ窓が更新される筈だしな」
「だとすれば、この子たちはやはりプレイヤーで、迷子、ってことか」
「クリスタルを持っていない、あるいは転移の方法を知らないとしたら、ログインしてから今までずっと、はじまりの街にいたと思うのよね。
なんでこんなところまで来たのかは判らないけど、はじまりの街にならこの子たちのことを知ってるプレイヤーがいるんじゃないかな?例えば、親とか、保護者みたいな」
「確かに、俺もそう思う。こんなに小さい子供たちが1人でログインするなんて考えられないからな。家族か誰か一緒に来てるはずだ。
無事かどうかは判らないけど…………」
不安を覚えたのか、アスナがキリトを見た。
「ね、意識、戻るよね」
「ああ。まだ消えてないって事は、ナーヴギアとの間に信号のやり取りはあるってことだからな。
睡眠状態に近いと思う。
だから、きっと近い内に目を覚ます」
キリトはアスナの頭を撫でながら不安そうな彼女を諭した。
「それにしてもこの子たちは、10歳はいってないよな……8歳くらいか」
「それくらいだろうな。年齢からしてもやはり妙だな…………
ま、これ以上話しても何も分からないし、俺たちはお昼にしよう。
この子たちが目を覚ましたら事情を聞くことにして」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
昼食を食べ終わり、夕日が沈む時間になっても、子供たちは目を覚まさなかった。
リビングのカーテンを引き、俺は壁にかけられたランプを灯していると、村まで出かけていたフローラが戻ってきた。フローラは無言で首を振り、子供たちに関する手がかりはなかったことを告げる。
仕方がないので俺たちは夕食を取ることにした。普段なら賑やかで楽しいはずの夕食が今日はそうではなかった。
俺たちは手早く食事を終え、キリトが買ってきた情報誌に目を通した。
この子たちに関する情報がないか探したのである。
もしかしたら、この子たちの親や兄弟が子どもたちの行方を探すために……というのもある。
しかし、手がかりはなに一つ見つからなかった。
しばらくして何度も見返したが……見つからなかった。
夜も更けてきた。
俺たちは今日はここまでにして、就寝することにした。
「フローラ、そのベットに2人はキツイでしょ?こっちの子のほうは、私たちのほうで預かるわ」
「うん。お願い」
フローラは……子どもたちが目を覚まさないのが心配なのか、声にいつもの元気がない。
「シャオン君…………」
「大丈夫。明日になればきっと目を覚ますさ」
そういって、俺は女の子を抱えフローラとともに寝室に入っていった。
Story9-3 END
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