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IS《インフィニット・ストラトス》‐砂色の想い‐

作者:グニル
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『祭』~後夜祭~

『この通信は現在IS学園にいる全ての国家代表、代表候補生に送られている。心して聞いてほしい。現在IS学園上空から亡国機業の物と思われるISからIS学園全域への空襲が行われた。現状IS学園の教員、生徒、対空火器だけでは手が足りない。強制ではないがこれらの迎撃を依頼するものである』

 IS学園の管制室に千冬の声が響く。いつものどこか余裕のある声ではなく、珍しく多少落ち着きのない声である。

「対空迎撃システム、起動確認しました。しかし……」

「効果は出ない、か」

モニター前でコンソールを叩きデータを統合していく麻耶はこの異常事態についていくのがやっとだ。IS学園の建物には普段は分からない位置に緊急用の対空迎撃用の兵器が多数供えられている。しかしそれらはあくまで通常兵器に対してであり、ISからの攻撃には全く役に立っていない。そのことが更に麻耶に焦りを生ませる。その麻耶を安心させるように千冬は麻耶の左肩に手を置いて言葉を続けた。

「学園の教師陣はどうなっている?」

「は、はい。未だに準備が……扉が残っているならともかく物理的に破壊されているとなるとどうしようも」

「そうか」

 そもそも亡国機業のISがIS学園の警告空域に入った段階で教師陣は出撃の準備を整える。だが今回はそれもままならない。侵犯されたと分かった時にはIS格納庫の扉があるはずの通路は爆音とともに瓦礫で塞がれてしまったからだ。よって今迎撃に上がれるのは展示用に出していたものと専用機のみ。

「炎弾着弾までの時間は?」

「およそ3分です」

「そうか……」

 そして今の所反応が返ってきたのは学園の専用機持ちのみ。上空で交戦中の国家代表、訪れているはずの専用機持ちからは返事が無い。いざとなったら奥の手を発動するしかないが……千冬としてこの時期にそれは避けたいところだ。そんなことを考えていると更に別の警告音が発生する。

「だ、第4アリーナから敵性ISの反応を確認しました! 機種は……米国第2世代『アラクネ』です!」

「やはり学園内にも侵入していたか……」

「そ、それとそのISを追っているのは……『白式』と『ヴァルチャー』!? お、織斑君とジャクソンさんです!」

「あの馬鹿者が……」

 千冬は麻耶の報告に頭が痛くなり思わず右手で眉間を抑えてしまう。

「山田先生、ジャクソンにはすぐに追跡を中止して迎撃作業に当たるよう通告を。織村は止まらないと思うので上杉、江本に抑えさせてください。敵性ISについてはこちらで対処する、とも伝えてください」

「分かりました。ジャクソンさん! 聞こえますか!」

 麻耶の声を聞きながら千冬は個人の携帯電話を取り出しあるダイヤルを呼び出す。敵の手は読める。しかしそれに手を打てるかどうかは別問題だ。現状は駒も足りない。なら次に打てる最善の手を打つしかない。勝負は先を読んでこそ勝ち目が出てくる。そう……

「ああ、織斑千冬だ。認識コードは……」

 亡国機業との戦いはこれから始まるのだ。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「ジャンヌ、駄目だ! 時間だ! これ以上は炎弾の迎撃が間に合わなくなる!」

「く!」

 IS学園上空では未だに『サイレント・ゼフィルス』を相手にラリサとジャンヌが戦いを演じていた。既に1時間近い空戦にも関わらず『サイレント・ゼフィルス』に目立った傷がついていないのは国家代表の二人にとって屈辱以外の何物でもない。
 ラリサの通信でジャンヌは最後の一撃とばかりに右手のトンファーで『サイレント・ゼフィルス』のエネルギーライフルを狙う。が、それも上昇され避けられる。

「ジャンヌ! 離れろ!」

 ジャンヌと敵が離れたのを見てラリサは両肩と両足についたミサイルポッドからミサイルを全弾射出する。各25発ずつ、合計100発の対IS用小型ミサイルが3人の間を埋め尽くし、噴射口から排出される白い煙が雲のように辺りを覆い尽くす。そして、爆発。煙は爆風で全て吹き飛び、赤い爆炎が視界を埋め尽くした。

しかし……

「くっ、やはり……」

「全弾……撃墜ね」

 BT兵器によりミサイルは全てが『サイレント・ゼフィルス』に当たる直前に撃墜されており、無傷の機体が二人をあざ笑うかのように浮いている。
 二人としては千冬の命令に従って炎弾の迎撃に向かいたいところだが、目の前のこいつがいる限りやすやすとさせてくれるとは思えない。二人が再度攻撃しようと身構えたところに、急に警報が鳴り響いた。

「なんだ?」

「IS学園から上がってくる機体? 『アラクネ』?」

 二人が捉えたのは見るも無残な姿になった『アラクネ』だ。背後に本来あるはずの装甲脚はたったの2本しかなく、いたるところから煙を噴いている。
 この状況でこちらにむかってくるということは明らかに敵だ。敵でなくとも不確定要素は排除するべきと考えたラリサは、瞬時に75口径アサルトカノンを右手に展開すると眼下の『アラクネ』に向け引き金を引いた。
 撃たれた『アラクネ』は回避行動をとるが、ラリサは回避先を読みつつ左手に45口径のサブマシンガンを展開し行く手を塞ぐ。通常の『アラクネ』ならこの程度では怯みもしないだろうが、既に満身創痍の『アラクネ』は回避先が読みやすい。アサルトカノンの弾に当たらないようにするのに精一杯でサブマシンガンの弾雨には面白いほどあたってくれる。

(動かない?)

 ラリサが『アラクネ』に攻撃を開始した段階でジャンヌは『サイレント・ゼフィルス』へと全神経を集中させていたが、『サイレント・ゼフィルス』は全く動く気配がない。むしろ『アラクネ』が撃たれるのを見て唯一隠れていない口の端が釣り上がっている。

(どういうこと? 味方ではないというの?)

 ジャンヌは思考を巡らしながらもマシンピストルの弾丸を装填する。その時、『アラクネ』が装甲脚の一つを上空に向けた。しかしそれはラリサとジャンヌに向けてではなく『サイレント・ゼフィルス』に向かってだ。その先端から発射された弾丸は『サイレント・ゼフィルス』に向かい、シールド・ビットに弾かれた。

(やはり味方ではない? でもどうしてわざわざラリサじゃなくて『サイレント・ゼフィルス』を……)

 一瞬……ジャンヌが『アラクネ』に気を逸らしたほんの一瞬で『サイレント・ゼフィルス』は動いた。気づいたときにはジャンヌの体は猛烈な勢いで空中を舞っていた。

「何!?」

 ジャンヌは叫びとともに体制を立て直す。胸部装甲に瞬時加速からの蹴りを見舞われたとわかったのはその時だ。

「おい、奴ら逃げるぞ!」

 ラリサの叫びでジャンヌも気づいた。『サイレント・ゼフィルス』は『アラクネ』の装甲脚の一本を荒々しく掴むとそのまま加速して離脱していく。ジャンヌはそれを見た瞬間、すべての武装をしまうと共に一つの武装を展開した。

「逃がさない!」

 全長8mを超える長大な砲を持つ超電磁砲(レールガン)。既に亜音速飛行に入っている敵でもこの武装ならば撃ち抜ける。
 ジャンヌの右目の正面にターゲットスコープが展開され、目まぐるしく動き回る。『サイレント・ゼフィルス』の動きとターゲットスコープが重なった瞬間、ジャンヌは引き金を引いた。落雷のような轟音とともに加速された弾丸が発射される。数秒後、何も反応のない空を見つめてジャンヌは静かに超電磁砲を量子化した。

「外したわ」

「ま、そうだろうな」

 ジャンヌの隣まで上がってきたラリサは分かりきっていたという風に肩をすくめた。

「敵がいなくなったんだ。ジャンヌ、私たちも炎弾の迎撃に行くぞ」

「自信なくすわね。代表二人掛りで逃げられるなんて……亡国機業、一体どんな人材を抱えているというの」

「それを言ってくれるな。私も傷ついているんだ。その件は後回しだ」

「わかったわ」

 そう言うと二人はIS学園の上空に迫りつつある炎弾に向かって飛翔を開始した。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「なにこれ……壊れない!」

 迫り来る炎弾に『ハディント』を撃ち込んだ私は思わずそう叫んだ。直撃した弾丸は全て炎に飲まれ、肝心の塊には一切影響が出ていない。
 
『その炎弾に小口径の実弾はほぼ無意味。威力のある炸裂弾、エネルギー兵器、近接武器で対応して! ただし近接武器を使う人は爆発に巻き込まれないように!』

 公開チャンネルから楯無会長の声が響く。

『そういうことなら話は早い!』

 その言葉を聞いて隣で両手のシールドに内蔵された30mm機関砲を使っていたエリスさんが急上昇する。両手のシールドを翼のように広げるとその表面が光り始め、すれ違いざまに炎弾を切りつけた。エリスさんが上に抜けると同時に炎弾が大爆発を起こす。
 私は『コジアスコ』を展開。威力ならグレネードの『ミューレイ』だけど弾速と貫通力ならこちらが上回る。迫ってくる炎弾に4発ほど撃ち込むとそれが爆発した。時間はかかるが地道にやるしかない。

『こういう時は私の独壇場ですわね!』

『ほざいていろ。私が全て落とす』

『あんたら邪魔よ!』

 聞き覚えのある声に顔を向けるとセシリアさん、鈴さん、ラウラさんが炎弾を迎撃しているのが目に入った。3人の武装的に今回の迎撃はお手の物といったところなのでしょう。

『ユリア、取りこぼしお願い!』

『は、はい!』

 地面近くではシャルロットさんは両手にアサルトカノンを、ユリアさんがロングレールライフルを構えている。地面近くまで降ってきた炎弾をシャルロットさんが迎撃、それでも迎撃できなかったものはユリアさんが見事な精密射撃で撃ち抜いていた。それでも広範囲すぎる、手が足りない。被害の少ない、人のいない地域の防衛が間に合っていない。
 そう思った瞬間赤い光が線となって空を走ったのが見え。次の瞬間にはその線上にあった炎弾が全て吹き飛んでしまった。

『手の足りないところは私がカバーする!』

 通信から箒さんの声が聞こえる。ということはあれは『紅椿』の攻撃、ってこと。改めて格の違いを思い知らされる。私たち候補生が数名掛りで処理している炎弾を一瞬で、一人で消滅させているのだから。そう思いながらも手は休めない。弾切れした瞬間にマガジンをリロードし、迫る炎弾を撃ち抜く。ようやく半分ほどになったとき、海側から高速で近づいてくる2機のISの反応が現れた。これは……

『よーし、よくもたせたな候補生!』

『あとは私たちに任せてください』

 『ヴォールク』と『ゼル・ゼム』、ラリサ代表とジャンヌ代表の機体だった。

『合わせろジャンヌ』

『了解』

 二人は加速し、何度も交差しながら炎弾の集団に真横から飛び込んだ。
 数秒語、二人が飛び込んだ一の真反対から現れると同時に、全ての炎弾が飛び込んだ場所から爆発していった。

「すごい……」

 それを呟いたのは私だったが、その場にいたほぼ全員の感想だろう。残りの小さい炎はもう害はないほどのものだ。それこそ花火の時に落ちてくるようなものと変わらない。少しは花壇や焦げ跡の残るところは出るかもしれないがその程度だろう。

『よーし、後始末はお任せあれー』

「え、何!?」

 急に聞こえた声に私は思わず驚いてしまう。

『さてさて本日お目にかけますは私が考えた来客プレゼント!』

 第1アリーナ付近? 確かあそこって展示会が行なわれていたところ……
 そう思って顔を向けると第1アリーナにISの反応が現れ、何かが空中に向かって発射される。
ピュ~、と気の抜けた音と共に発射されたそれは一定の高さまで来ると豪快な音を出して破裂し、綺麗な緑色の花を咲かせた。

『このリース・マッケンジー主催! 花火大会をご覧あれ!』

 リース先輩の声と共にISから次々と花火が発射されて空を綺麗に彩っていく。そのISの反応は『デザート・ウルフ』……ってクロエ!?
 私は慌てて倍率を上げて確認する。そこには第1アリーナの中央でクロエの『デザート・ウルフ』が立っていた。ただし背中にあるのはいつものブースターではない。巨大な花火の発射筒だった。それも数十……
 確かにISのPICを使えばある程度の重さまでは自由に動くことができる。でもあれは……明らかに重量超過だった。クロエは半ばヤケになっているようで、花火をあちこちに乱射しながら笑っていた。なんか、色々ごめん。
 これで騒ぎが収まればいいんだけど……
 あれ、そういえば一夏さんは? いつもなら真っ先に炎弾に突っ込んでいきそうな人がいない?


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 その日の夜。ほとんどの生徒が自室待機、その上で現在関係者への事情聴取が行われている。特に私、エリスさん、一夏さんは某国機業と戦闘を行ったということで織斑先生直々に事情聴取をされていた。
 呼び出された部屋に入った途端、一夏さんの怒鳴り声が聞こえてきた。

「なんで追わせてくれなかったんだ千冬姉! あいつらは俺のことを……」

「黙れ」

 机越しに一夏さんは織斑先生にの方に身を乗り出し、織斑先生は腕組みをし、目を閉じて静かにそう言った。
 ぱっと見た感じで一夏さんは目立った外傷はない。所々包帯を巻いていたりしているが怒鳴るくらいには元気があるみたいだ。

「2年前俺のことを誘拐したのはあいつらだって言ってたんだ! それさえなければ千冬姉も大会で優勝できて……」

「黙れと言っている。織斑」

「あ……」

 織斑先生は腕組みを解き静かに私の方を向き、一夏さんはそれに釣られて私の方を向いた。本当に今気づいたのだろう。一夏さんは一瞬呆然とすると大人しく席についた。どうやらマズイ時に入ってしまったようだった。
 でも、誘拐? 2年前? 大会? ということはモンド・グロッソ……織斑先生が棄権したのは一夏さんが誘拐されて脅された、ということなの? そんなことを考えていると織斑先生がこちらを向いた。

「今聴いたことは絶対他言するな、いいな」

 有無を言わせない迫力に私は返事もできず頷くしかなかった。あの棄権についてはそれこそ様々な噂があったがどれも説明不足だった。なにせあの時点で織斑先生が棄権する理由などなかった。でもこれで合点が行く。私が席に着くと同時にエリスさんが入ってきた。既に自分以外の人が揃っているのを見てエリスさんが軽い調子で尋ねる。

「あっれ、もう始まっちゃってます?」

「いや、時間丁度だ。席に付け」

 エリスさんは少しホッとすると私の隣の席に座った。
 そのあとは2時間ほど詳細を詳しく説明し、映像記録を提出。最後に改めて他言無用の約束をして解散となった。

「あー、終わったー! ほんじゃねー」

 部屋から出ると真っ先にエリスさんは自室へと戻っていった。自由奔放というかなんというか。でもこういう時はあの人の明るさが助かります。まあ、結局一夏さんと私は残されて気まずい空気なわけですが……

「も、戻りましょうか……」

「ああ……」

 それだけ言葉を交わすと寮の部屋までほぼ無言で廊下を歩く。カツンカツンと足音が以上に大きく響いていた。いつもこの時間は賑やかな廊下も自室待機によって今は誰もいない。そして誰にも会うことなく一夏さんの部屋の前についた。

「じゃあ……」

「は、はい。おやすみなさい」

 そう言って私は背を向け……

「あのさ!」

「はい?」

 その私の背中に一夏さんが声をかけてきた。私はなんとなく振り返らないで声だけ返した。

「さっきのこと……今は無理だけど……ちゃんと話すから。皆に。だから今は……」

 ……はあ。少しだけ心の中でため息をついてしまう。一夏さんからみたら女性は噂話好きということなのだろうか。まあ噂話が好きというのは否定しません。それとも私はそこまで信用できない、というなのだとしたら少しへこんでしまう。

「大丈夫です。誰にも言いません」

「ありがとう。じゃあ、おやすみ」

「おやすみなさい」

 後ろのドアが開く音、閉まる音を聞いて私も部屋に入った。部屋の中では既に事情聴取を終えた箒さんが寝間着姿でベッドに座っていた。

「おかえり。どうだった?」

「ただいま帰りました。どう、と言われましても……」

 私は一夏さんの話だけを省いて箒さんにこれまであったことを話した。

「亡国機業…ニュースでは知っていたが本当にそんな組織が襲ってくるとは、まるで映画のようだな」

「そうですね。にわかには信じられません」

「そいつらが『白式』を?」

「正確には『白式』のコアを、ですね。今のところは希少なISの強奪が目的とも思われます」

「ふむ……しかし奴らの真の目的というのがイマイチわからんな」

「というと?」

「ISというのは……言ってしまえば切れすぎる刀だ。そういうのは得てして使用者も傷つける。ISの強奪などそれこそ国家の問題だ。それが複数国に対して行われれば当然その国々は対策を考え、最終的には組織を潰しにかかるだろう。IS3機といえば小国家並みの力。強すぎる力は禍しか呼ばない。そんな力を手に入れてどうするのかと、ふと思ってな」

 何か思うところがあるのか箒さんは一瞬だけ自虐的な笑みを浮かべた
 その笑みの意味は分からないが、言われてみれば箒さんの言葉は確かにそうだ。ISが3機もある時点で戦力としては十分。それに操縦者は誰もが国家代表並みかそれ以上の実力者だ。確かに意味がわからない。

「世界制服とかか?」

「ふふ、それこそ映画の話でしょう?」

「確かにな。まあ考えてもわからんものはしょうがない。今日はもう寝よう。明日は片付けもあるしな」

「はい」

 そういうと箒さんはベッドに潜り込んだ。私も着替えて眠ろう。そう思ってボタンを外し、ハンカチを洗おうとポケットに手を入れて……なにか硬いものが入っているのに気がついた。

「これは……名刺?」

 あ、そういえばデュノア社の名刺だけ抜いちゃったんだけっけ。あとで一夏さんに渡しておかないと……そう思い机の上に置こうとしたとき、気づいた。
 これ、重なってる?
 多分静電気か何かでくっついてしまったのだろう。少しだけずれて二枚目の白紙部分が見える。
 ペリペリと軽くはがすとやはりもう一枚名刺がくっついていた。結局2枚名刺を隠してしまっていたことになる。……うん。明日返そう。
 そう思いなんとなくその名刺を確認したとき……私の目が止まった。

「『IS装備開発企業『みつるぎ』渉外担当、巻紙礼子』……」

 さっきの事情聴取で一夏さん言っていた、亡国機業の一人が接触してきた時に使った名前だった。
 私は箒さんに見つからないようにその名刺を机の引き出しの奥にそっとしまい込むと、ISの秘匿通信でクロエに呼びかけた。

「クロエ? 今大丈夫?」

『なんだよ……こちとら今も花火筒取り外してる最中なんだぞ。全くなんであんな重いもんを……そもそもカルラが断らなければこっちに話が回ってきたりは……』

「ごめん、その話はまた今度埋め合わせする。今は大事な話があるの」

『……おっけ、聞くよ』

 愚痴っていたクロエも私の様子に声が真面目になる。

「今度の週末行きたい場所があるの。日本に残れる?」

『多分大丈夫だと思うけど……場所は?』


「IS装備開発企業……




『みつるぎ』」
 
 

 
後書き
あけまして!おめでとうございます!(2月!)
お久しぶりです。大丈夫、まだ2月1日だから……
まーた7ヶ月かかってしまいましたね。何やってんだか……申し訳ありませんでした。

まだ読んでくれてる人がいると信じつつ、今回で学園祭編は終わりです。長くなっちゃったなあ……

誤字脱字、表現の矛盾、原作流用部分の指摘、感想、評価等などお待ちしてます 。 
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