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リリカルな世界に『パッチ』を突っ込んでみた

作者:芳奈
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第十一話

(・・・さて、問題は・・・)

 結界が張られた事を確認し、葵はヴォルケイノを注意深く見つめた。ヴォルケイノも、感情の込められていない無機質な瞳で葵を見つめている。

(奴が、俺と同じ『パッチユーザー』なのか、単純に『思念体』なのか・・・だ)

 『パッチユーザー』とは、そのままの意味だ。エヴォリミットにおいて、パッチを装着した人類や動物は、総じてこう呼ばれる。目の前の敵がパッチユーザーだという可能性は、限りなく低いと思われるが、絶対ではない。この世界に、エヴォリミットというゲームが存在するかなど、彼は調べた事がないのだ。無意識に『存在しないだろう』と思っていただけで、本当はあったのかも知れない。

 ―――現に、彼の知るヴォルケイノが、目の前に現れたのだから。

(思念体なら、そこまで問題はないけど・・・パッチユーザーなら危険だな)

 パッチユーザーと思念体の最大の違いは、『階段』の有無だ。もし、今はヴォルケイノとなっている男子が、エヴォリミットをプレイしたことがあるのなら、当然『進化の階段』の存在を知っている。それはつまり、戦っている最中に、突然進化する可能性があるということだ。

 パッチユーザーは、昇る資格さえ満たしていれば『階段』を昇る事が出来る。別に、主人公たちだけの特権ではないのだ。原作でも、高星カズナや風魔勘太郎、そして『通り魔(ファントム・キラー)』やシャノン・ワードワーズが階段を昇っている。

(出来れば、自分だけが階段を昇りたいな。敵にも昇らせると、危険度が跳ね上がる・・・)

 勿論、『階段を昇る』ということは、即ち『今の自分では勝てない』事を意味する。つまり、それだけ命の危機に陥っているということであり、そもそもそんな敵と戦うこと自体が自殺行為だ。

 だが、敵が階段を昇れるとなると、更に危険だ。

 自分が強くなると同時に敵も強くなるなら、それはイタチごっこだ。別に、ただ階段を昇るという目的しかないのなら、葵にとってはむしろ望むところだが、問題は場所である。

 なのはたち魔法使いの結界は、決して万能の代物ではない。強度を上回る攻撃を受ければ、当然破壊されるのだ。実際、原作のA'sにおいて、なのはがヴォルケンリッターの結界を破壊している。恐らく、階段を少し昇れば、この結界など砂の城のように容易く破壊する事が出来るというのが、彼の予想だった。

 自分だけでもそうなのに、ヴォルケイノまで昇れば終わりだ。結界は破壊され、二人の戦いは現実世界の街と人を巻き込むだろう。そうなる前に、決着をつけなくてはならない。

(お願いだから、パッチユーザーじゃありませんように!)

 そう天に願い(あの自称神様などには絶対に祈らない。絶対に碌でもない結果になるに決まっている)、葵は行動を開始した。見える位置にジュエルシード―――パッチ―――は見られない。そうなると、服の下がもしくは体の中か。

「オラ行くぞォ!!!」

 自身に喝を入れて、彼は地面を蹴った。一直線に向かうのではなく、左右のビルの壁を蹴りながら、ジグザグに近づいていく。葵に本気で蹴られた壁が次々と倒壊していくが、どうせ現実世界ではないのだから、気にもとめない。

『・・・!』

 凄まじい速度で近づく彼に、ヴォルケイノは拳を振るった。彼との距離は、まだ十メートル以上ある。拳が届く距離では無かったはずなのに、葵はそれを見て悪寒が走り、それに従って全力で上空へと退避した。

 ―――その瞬間、世界は真紅に染まった。

「うおおおおおおおおお!?」

 凄まじい爆風に顔を覆いながら、彼は叫ぶ。原作で見るのと、現実で見るのとでは全く違う。昔は、「おーすげえ」としか思わなかったその攻撃だが、今の彼にはただ叫ぶしか出来なかった。

 街が、マグマで埋め尽くされた。

 今まで彼がいた場所は、全てが灼熱の世界に変わっていた。彼の後方、見渡す限り全てが、溶岩の海に沈んで行く。あるいは、原初の地球とは、このような姿だったのかも知れないと思わせるような、そんな光景だった。

「ッハ・・・!これは流石にやばくね・・・!?」

 下からは体を焦がす程の熱が襲うというのに、彼の背中に冷たい汗が流れる。彼は自覚していないが、これは敵の強さに対する恐怖というよりは、前世の死因から、炎がトラウマとして刻み込まれているのが原因であった。パッチで強化された今の肉体なら家庭用コンロくらい驚異ではないと分かっているから日常生活では恐怖を感じないが、これ程の溶岩の前では、それも意味がない。

 敵は、原作(エヴォリミット)においても、パッチで強化された超人たちを何百何千と殺した、ド級の『災害』なのだ。あの溶岩を一度でも喰らえば、骨も残るまい。

「最初からコレとか・・・反則だろ・・・。」

 葵は、目の前の現実を整理するのに手一杯で、敵への警戒を完全に忘れていた。それ程までに強烈な力を魅せられたからだったが、敵はそんなもの考慮してはくれない。

 ドン!

 地面を蹴る音が響いた時には、既にヴォルケイノは葵の目の前だった。

「やばっ・・・!」

『GAaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!』

 咄嗟に腕をクロスしてガードの姿勢に入る葵。だが敵は、そんなもの関係ないとばかりにストレートを放った。

 ジュッ・・・!

「あ、ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!?」

 ただのパンチ一発。それだけで、彼の両腕は炭化した。更に、そのまま吹き飛ばされる。

 ゴッ・・・!!!

 溶岩の海に沈み掛けながらも、辛うじて原型を留めていたビルの屋上に墜落したのは不幸中の幸いだっただろう。未だ高温を保ち続けている溶岩の海に落ちれば、それだけで勝負は決していたかも知れない。余りの痛みに、擬似空戦技能で飛ぶことさえも忘れてしまっていたのだから。

 ・・・しかし・・・

(ッッッッッ・・・・・・!!!)

 既に、痛みで思考はマトモに働かない。幸い、両腕共に骨は残っていた。焼かれていた時間が短かったからであるが、逆に言えば、拳が触れて吹き飛ばされるまでのその僅かな時間で、パッチユーザーにここまでのダメージを与える事が出来るということだ。上半身の服は全て吹き飛び、ズボンもボロボロだが、炎が燃え移ってはいないのは幸いだった。

「ア・・・アアアアアアアアアアアアア!!!」

 ダン!と、彼は足を強く屋上に叩きつけた。自分に気合を入れるための儀式のようなものだ。その衝撃で、既に限界だった屋上にビシビシとヒビが入り崩れて行くが、今の彼にそんなものを気にしている余裕はない。

『GAaaa!!!』

 そう、敵は既に、次の攻撃を始めていたのだ。彼は葵にではなく、大空に両手を向けていた。その両腕から、信じられない量の溶岩が吹き出て・・・降り注ぐ。

「少しぐらい・・・休ませろ!!!」

 神経は、今も気が狂いそうな程の痛みを脳へと与え続けているが、彼はそれを気合で無視した。何故なら、空を覆い尽くす程の溶岩の雨・・・否、『滝』が、彼目掛けて降り注いでいるから。それはさながら、『溶岩の大瀑布』であった。

「あああああああああああああ!!!」

 全力で逃げる。彼は、擬似空戦技能で空を走る。両腕が動かない為にバランスを崩しそうになりながらも、全力で走り続けた。

 ドドドドドドドドド!!!

 背後で、『大瀑布』が『海』に流れ込んだのを音で確認し、命からがら範囲から逃げれたと安心した・・・その瞬間。

 ドッ・・・!

「嘘だろ!?」

 今も降り注ぐその『大瀑布』を突っ切って、ヴォルケイノが突撃してきた。

「あれ程の攻撃が目晦ましだっていうのかよ!?」

 もはや戦略兵器並みの威力と範囲を持つ攻撃でさえ、葵の目をそれに釘付けにするための囮であった。自身が溶岩で構成されているため、ヴォルケイノが自分の溶岩でダメージを負うことはない。彼は、自らが生み出した『大瀑布』を突っ切って、葵のすぐ後ろを追いかけていたのである。

「グッ・・・!?」

『Aaaaaaaaaaaa!!!』

 間一髪。顔面を狙ったパンチを、防御しては先の二の舞だと、首を逸らして避ける事に成功するも、敵自身が持つ圧倒的な熱量が葵を攻撃する。完全に避けたはずなのに、彼の顔の右側の皮膚が焼けただれた。

「クッソオオオオオオオオ!!!」

 顔を焼かれながらも、彼は空中を蹴って距離を取る。必死に逃げた彼が見たのは、落ちていくヴォルケイノであった。

「と、飛べないのか・・・?」

 下は溶岩の海で、足場になる場所はない。溶岩が冷えて固まるにももう少し時間が必要だ。つまり、敵は溶岩の海で泳ぎながら戦うしかないということ。それならば、制空権を奪っている葵が負けるはずもない。

 ―――そう、思った瞬間だった。

「嘘、だろ・・・?」

 ダン!と音を立てて、ヴォルケイノは溶岩に降り立った。正確には、彼が落ちた場所の溶岩が、急激に冷えて固まった(・・・・・・・・・・)。その地面に、敵は着地したのだ。

「なる程・・・。ただ熱くするだけが取り柄じゃないと・・・。アンタの本質は、溶岩を操る事(・・・・・・)なんだな。」

 溶岩を放つも、溶岩の熱を奪うのも自由自在。滝を突っ切って来たのも、足元に道を作って来たのだろう。そうじゃなければ、空を駆ける葵に追いつける訳が無い。

「希望が見つかったと思ったらコレだよ・・・!」

 弱音を吐きながらも、彼の頭脳はこの状況を打開する方法を考え続けていた。

「まずは、何よりも両腕を直さないと話にならんな・・・!!!」

 意図的に無視していたが、両腕は今にも発狂しそうな程の痛みをずっと送り続けている。それに、両足だけでは戦えない。何とかして治す必要があった。

「そう。腕を治すんだ。それだけじゃない。この状況を打開するには、強力な手札が必要だ。・・・それは、何だ?」

 彼の視界の先では、ヴォルケイノが突撃の構えをしている。また、溶岩の海を走ってくるつもりなのだろう。

 ―――猶予は、ない。

「ここで進化する。階段を昇る。考えろ。俺に必要なのは・・・何だ!?」

 ドン!!!

 ヴォルケイノが、地面を蹴る。凄まじい速度で、迫ってくる。

 距離的に考えても、あと十秒もあれば葵の場所までつくだろう。牽制として”飛弾連脚”(二発)を放ってみるも、片腕でゴミでも払うかのように散らされた。彼の今出せる最強技ですら、牽制にもならないらしい。また距離を離す事も考えたが、敵のほうが速度が早い。結局追いつかれる。

 ―――あと五秒。

「どうする・・・?」

 ―――あと四秒。

「何が必要だ・・・?」

 ―――あと三秒。

「腕を治して、アイツを倒せる手札・・・!」

 ―――あと二秒。敵が大きく跳躍する。

「それは・・・。」

 ―――あと一秒。拳が大きく振りかぶられ、葵の目の前まで来て・・・

「コレだ。」

 ――――――葵は、真っ赤なフロアに立っていた。

「・・・・・・着いた。」

 呆然と呟く。地面は見渡す限り一面の真っ赤なクリスタルだ。それが地平線の彼方まで続いており、先は見えない。空は漆黒で、明かりの一つすらも存在しないが、地面のクリスタルが仄かな光を灯しているので、暗いという印象は受けなかった。

 幻想的な空間である。

「・・・これが、俺の心象世界、か?」

 原作において、進化の階段は全体的にブルーの空間であった。中央に椅子とテーブルが置いてある、落ち着いた世界だった筈だ。だが、恐らくアレは、主人公の不知火とココロの心象世界だったのだろう。彼とココロは、幼い頃からあの世界で頻繁に話し合いをしている。心象世界の住人(ココロ)という稀有な存在がいたからこそ、不知火は『階段』の存在を、パッチを装着した当初から知ることが出来たのだ。『昇る事が出来る物が存在する』と知っていたからこそ、彼は今まで火星の人類が発見することも出来なかった進化の階段を昇る事が出来た。他人とは、そもそもの出発点が違ったのである。

 だからこそ、葵は自分が階段を昇る事が出来ると信じていた。

 『階段があることを知っていて』、『階段を昇る確固たる目的と意思があり』、『それを昇るに十分たる敵がいる』。彼は、これらの条件を全て満たした(勿論、階段の存在を知らなくても、昇る事が出来る人間はいるが、非常に稀)。知っているからこそ、昇れる。それが、彼の自信の根拠だった。

 それが、証明されたのだ。

「・・・さて。」

 後ろを振り向く。そこには、フロアの床よりも深く、とてつもない威圧感を感じる螺旋階段。上も下も果てが見えず、高揚するよりも、『これを昇ったらどうなるのか』という恐怖が葵を蝕む。

 それは、生物として当然の反応だ。・・・しかし。

「ハッ・・・!これを昇ったらどうなるかだって?そんなの初めから分かってただろうがよ。」

 嗤う。この期に及んで怖気づく自分の心を、彼は嘲笑した。

「どの道、ここを乗り切らないと俺に未来はない。ヴォルケイノはなのはが倒せる相手じゃない。そしてコイツは、俺を殺したあと、全てを破壊するだろう。」

 なのはやユーノ。いるかどうかは分からないが、フェイトですら、この敵には勝てない。この敵は、それほどの『災害』だ。人類への試練だ。

 ―――だからこそ、この災害を、乗り越える。

「お前は俺の踏み台だ。大人しく超えさせろ!!!」

 叫び、一歩を踏み出した。

「ガッ・・・・・・!!!」

 焼ける。灼ける。体の奥底から、さっきのヴォルケイノの拳とは比べ物にならないほどの熱が彼を襲う。体が組み替えられる。一歩進むごとに、人間から離れていく。

「―――ハッ・・・!」

 それを。『人間じゃなくなる』という、一般人なら間違いなく恐怖し、忌避するその熱を。

「ハハ、ハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」

 彼は、笑いながら。嬉し涙を流しながら受け入れた。先ほどまで感じていた恐怖など、既に欠片も感じない。彼にあるのはただ、『歓喜』だけだ。嬉しいのだ。人間から離れることが。踊りだしたい程に、嬉しいのだ。

 人から見れば、『狂っている』と称されるだろう。そのとおり、彼は狂っている。生存するためなら、自身すら犠牲に出来る狂人。それが、伏見葵という少年なのだ。

「感謝するぜヴォルケイノ・・・!」

 ―――俺の敵となってくれて、ありがとう。

 だから・・・

「死ね。」

 ワンフロア登り切り、これ以上は今の自分では昇れないと判断した葵は、現実へと帰還した。目の前には、燃えたぎる溶岩の拳。あれから、一瞬すら経過していない。・・・だが・・・

「邪魔だ!!!」

 吹き飛ばした。

『!?』

 ヴォルケイノが驚愕しているのがわかる。何せ、葵は今、蹴り飛ばしたのだから。先程は触っただけで重症を負ったはずなのに、今は靴が燃えるだけ。火傷一つ負っていない。

「・・・まだ、服に纏わせる(・・・・)のは無理か。」

 そう呟きながら、彼はヴォルケイノの胴体にもう一方の脚で回し蹴りを喰らわせる。それだけで、面白いように吹き飛んだ。百メートルほど吹き飛び、溶岩の海をまるで水切り(小石を水面で跳ねさせる遊び)のように何度も飛び跳ねて、二百メートルほどで溶岩の海に沈んだ。

「・・・これが、進化の力・・・!」

 レベルアップ・・・などという言葉では生ぬるい。彼は今、間違いなく生物として、一段上位の存在として生まれ変わったのだ。

「こうして・・・と。」

 よく見ると、うっすらと彼の体全体を、ブルーの光が覆っているのが見える。その光を、彼は両腕へと集めた。

「おお・・・。」

 まるで、ビデオを巻き戻すかのように、急速に傷が癒えていく。先ほどまで炭化して使い物にならなかった腕は、ほんの二秒で元の姿を取り戻した。

「これが、俺の新しい力か・・・。」

 進化の方向性は、人や場合によって異なる。例えば、不知火は原作で、《火星の守護者》や《太陽の守護者》として進化した事もある。かと思えば、ヒロインの一人の一条雫は、《不知火と同じ進化の道》を選んだ。

 だから例え、葵が一条雫と同じ能力を持っていたとしても、『進化に望むもの』が違うのだから、当然その後の能力は違ってくるのだ。

 彼が選んだ進化は、『攻撃と防御や回復、全てに使える能力』であった。その結果得たのが、『パッチのエネルギーそのものを操作する』能力だ。

 元々葵の力は『エネルギー操作』だ。そして、人はパッチから与えられる無尽蔵のエネルギーによって、体を変化させている。圧倒的な身体能力や治癒能力が、『パッチのエネルギー』によってもたらされているのなら、供給されている量を増幅し、それを一箇所に集めたらどうなるのか?

 結果はコレだ。今の彼は、両腕にパッチから供給されるエネルギーを収束した。それだけで治癒能力が増大し、あれだけの重症が完治したのである。そして、これは当然攻撃にも使用出来る。

 キキキキキ・・・・・・!!!

 金属が軋むような音が、右腕から響いた。彼の右腕に、有り得ない程のエネルギーが収束されているのだ。そのエネルギーは渦を巻き、風を巻き起こしている。

 エネルギーを固めて、足場を作る。その上に立った葵は、右腕を大きく振りかぶり、やっと溶岩の海から這い出てきたヴォルケイノへと向けた。

「ありがとよ。これで俺の目的に一歩近づけたぜ。これは、そのお礼だ。」

 一歩踏み込む。

「”星屑の破壊撃(スターダスト・ブレイカー)”ァァァァァァァァ!!!」

 瞬間。

 二百メートルの距離を瞬時に喰い尽くした直径十メートル程の巨大なブルーの破壊光は、ヴォルケイノどころか周囲一体の溶岩の海すらも飲み込んだ。とてつもない破壊音と共に、溶岩が消滅していく。

「・・・終わった・・・か?」

 光が全て収まった後には、巨大な『穴』しか残っていなかった。そこにあったはずの溶岩は、全てが消滅した。今、その出来た穴に周囲の溶岩が流れ込もうとしていた。

 そして、その底。今にも溶岩の雨が降り注ぎそうな場所に、あの男子が転がっている。生きているかどうかは分からないが、どちらにしろこのままでは死ぬので、回収することにした。

「ハア・・・大変だったが・・・。」

 背負った男子に向けて、葵は言葉を発する。気絶して、聞こえていないのを分かっていながら。

「アンタ強かったぜ。この経験を覚えて・・・いや、覚えられても困るが。兎に角、今度はあんな不良共にやられるんじゃねえぞ。俺をここまで追い詰めたんだからな。」

 そう言って、まだ残っていた破壊されていないビルの屋上に向かう葵。その背の男子の顔は、何だか晴れ晴れとした顔のように見えた・・・・・・ 
 

 
後書き
相変わらずネーミングセンスないですね。あっやめてー!石を投げないで!


進化とか階段を昇る条件とか、かなり個人の解釈が入っています。ご了承ください。進化簡単すぎるだろ!戦闘もっと長くしろ!というのもやめてー。これ以上は書けない。
ってことで、十一話でした。 
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