東方変形葉
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新鮮な日常
第五章 不変知らずの幻想郷
東方変形葉57話「闇夜に微笑む王女」
前書き
雛「あら~、厄い裕海さんではありませんか」
裕海「…うん、とりあえずその挨拶だけはどうにかならない?会うたびに呪われている気がする」
雛「厄神ですので。あ、厄饅頭要りますか?」
裕海「いらない。今日は連れがいるからこの子に食べさせてあげたら?」
ルーミア「やくまんじゅうって何なの?おいしい?」
雛「ええ、それはもちろん!蜜のような味ですわ」
ルーミア「いただきまーす!」
裕海「…人の不幸は蜜の味、か。あ~あ、ルーミアが目を回して混乱してる。麓の巫女さんにあげるといいよ」
雛「そうしますわ。あら、でも。貴方、本当に厄いですねぇ」
裕海「そうかもしれんね」
文「私の新聞の時代がぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
裕海「来ない」
文「あややっ!?ちょうどいいです、裕海さんを取材しちゃいましょう」
裕海「あでゅー」
文「早速取材をいない!?」
雛「厄で今日もご飯がおいしいわ~」
「ルーミア、何が食べたいんだ?」
「人!」
「…それ以外で頼む」
俺は今、ルーミアを連れ、人里に来ている。そもそもなぜこうなったか。説明してやろう。
実は、いつもの五人メンバーが数日前にやったゲームで、ルーミアが「ゆうみとでーとに行ける券」をもらったそうで。俺の承認の有無を問わず始まったそのゲームは、リグル、チルノ、大妖精、ルーミア、ミスティアという、さっき言ったいつもの五人が争っていたのだ。
「んっと、じゃああの緑色のなにかを食べたい!」
「緑色?・・・UFO!?」
未確認飛行物体的なものがとんでいた。ああ、UFOも幻想郷にあったのか。今まで見たことなったんだけど。
「…あれは、食べられないと思うから別のにしよっか」
「うんっ!じゃあね~、あ、あの舟っぽいの食べたい!」
…宝船っぽいやつが宙に浮いていた。なぜ異常な異物ばかり食べたがるんだ。異食症か?
「あれは…異変かもしれないなぁ」
「ねーねー、たべたいー」
「はいはい、あとで舟型の飴を買ってあげるから。その前に、ルーミア。あの舟を探検してみよっか」
「うん!」
手を差し出してきたので、きゅっと柔らかくて小さな手を握り、一直線に飛ぼうとした時だった。
「うらめしやーっ!」
「………………」
「わぁ、びっくりしたー!」
何だこの子。唐傘お化け?目がオッドアイというのも珍しいな。というか、この程度でビビる人間って、子供ぐらいだろ。ルーミアを見る限りは。
「ええーっ!?驚いてない!?」
「…うん、まあ、頑張ってね。じゃ!」
「えっ?あ…どっかいっちゃった」
スキマでその場を去る。どう考えてもめんどくさいことになるに決まっているからだ。
宝船手前。
「うーん、どこに向かってるんだろ」
と、思った時だった。
「仕事は渡しません!」
早苗が、まさに襲い掛からんばかりの勢いで飛んできた。渡すって何さ。
「そういえば、裕海さんとはまだ決着をつけてませんでしたね!というわけで勝負です!」
「え?ああ、そういえばまだだったなってわお!?」
秘術 「一子相伝の弾幕」
星形を描いたいくつもの弾幕が、ぐにゃりと渦を巻くようにして崩れて襲い掛かってくる。くそう、遠目に見てて思ってたけど、面倒なスペカだよなぁ。
けど、こんなことで時間はとっていられない。一枚で終わらせよう。
「どうしました?反撃しないのですか?避けてばかりでは、私は倒せませんよ!」
「はいはい」
改変「牛に轢かれて善光寺参り」
牛をイメージした、視界を覆い尽くすほどのやけに大きな弾幕が2つある。そしてそれに続くようにして少し大きめの弾幕がいくつも続く。さらに、周りには川のようにして流れる小さめの弾幕が無数にある。
「ええっ!?弾幕がどんどんはじかれてます!?」
「神術“出雲の注連縄”」
「っ…!?」
相手を少し麻痺させる。実はこのスペカ、神術とセットで使うものなのだ。スペカだけだと、すぐに回避方法を見極められるからだ。特に霊夢なら一目だろう。
それに、多少麻痺したところで避けられないなんてことはない。しかし、麻痺したことによる動揺があると、かなり注意しなければ避けられない。
「む、なかなかしぶといなぁ」
「奇跡の力があれば、無敵なのです!」
「そっか。じゃあもう一セット使おっと」
「どんとこいです!……え?セット?」
荒涼「血塗られた月のクロニクル」
紅い弾幕が早苗を中心に渦を巻き、どんどん迫っていく。血塗られるまでの、つまり皆既月食になるまでの経緯を弾幕であらわしているのだ。そして……
QED「たった一つの冷酷な真相」
「ちょっ!?わぁあああああっ!?」
早苗付近で固まって集まっていた赤い弾幕は、それぞれ不規則に飛んでいく。当たる確率はかなり高く、ちょっと難しいのであまり使わないようにしている。
「ふぅ…あ、早苗の服装がひどいことになってる。仕事を横取りする気はないから、服だけ着替えてまた来てもいいよ。さて、ルーミア、調べようか!」
「うんっ!」
そのころ、紅魔館。
「お嬢様、紅茶が入りました」
悪魔のメイド長、十六夜咲夜が、レミリアの純白に美しい蔓が伸びたような柄のティーカップに紅茶を注ぐ。レミリアは、その時思わず顔をしかめた。
「…咲夜、瑠璃色の紅茶なんて斬新ね」
「特別な葉っぱをご用意いたしましたので」
と、どこか満足そうに言ってみせた。おそらく自信作なのだろう。飲食物が青いのは、体に取り込むものとしてどうなのかと思ってしまう。しかし、レミリアは「いつものことよ」と自分に言い聞かすようにして、できるだけ紅茶の色を見ないようにして飲んだ。
紅茶が青いなら、きっと蒼茶である。
ちなみに、味は無味のようで、完全に飲み損するお茶である。
「…で、貴方を呼んだのはほかでもないわ」
「例の、危険な運命について、ですね」
「その通り。実はね、今日がその日なの」
レミリアは淡々と話を進めていく。料理は美味しいのにどうして紅茶だけはこんな感じなのか、というような雑念はまじっていたが、それでも真剣な顔で話を進めていく。
「…では、その運命を変えて来い、ということですか?」
「いいや、違う。たかが時を操る程度の人間に変えられるような運命じゃないわ」
解釈によってはかなり厳しい言い様なのだが、咲夜はムッとすることなく、むしろ納得したような表情をしてみせた。
「ちょうどいいところに裕海がいるじゃない。なんか人食い妖怪もいるけど。裕海に解決してもらうわ」
妖術を使い、レミリアは裕海のいるところを映像で映し出した。
「あの妙な異変の主犯が、危険な運命の鍵を握っているのですね?」
「いや、そうとは限らないわ」
咲夜は自分の予測が全く当たらないことに少し落胆したが、すぐに立ち直った。
「関係しているのは確かなはずだけどね。…いや、もしかしたら、案外あのちびっこ宵闇妖怪が鍵を握っているのかもね」
冗談交じりなことをおっしゃったと思い、咲夜は少しだけ笑いをこぼした。
―――冗談とは限らないのだが。
そして裕海は、謎の船の内部へと入って行こうと思った時だった。
「宝物庫を狙ってきた賊め!成敗!」
「ちょ、いきなりかよ!?」
フードをかぶった謎の人が謎の綿あめを従えて襲ってきた。というか、なにあれ。綿あめ?雲?よくわかんないけど、妖怪であることは間違いない。というか一目瞭然だろう。
神拳 「天海地獄突き」
二つほどの雲の拳骨が連続してこっちに向かってくる。それと同時にピンク色の弾幕が不規則に散らばって妙に動きづらい。いきなり面倒な相手と勝負することになったなぁ。
結構前に作ったスペカを久しぶりに使ってみるか。
天変「局地的大彗星豪雨」
今もそうだが、このころのネーミングセンスときたらかなりアレである。
一応説明しておくと、弾幕が束となって放たれる光線もどきなので、あたると超痛い…はずなのだが。
「そんな生ぬるい光線、雲山の敵じゃないわよ!」
「…うそぉっ!?」
あの光線を、邪魔な蜘蛛の巣を払うようにしてはじきやがった。というか雲山って誰?もしかしてこの拳骨雲?
「ふふっ、賊なんてこんな程度ね」
「…なら、これならどう?」
変光「栄枯盛衰のミラ」
くじら座の変光星で有名なミラを表現した弾幕。明るくなったり暗くなったりする弾幕は視覚を狂わせ、混乱を導く。
「な、なによこれ…!くっ、一気にはじくわよ!」
連打 「キングクラーケン殴り」
…拳骨がめちゃくちゃに飛んできた。変光する弾幕はさすがに吹き飛ばされてしまった。
よく見たら、拳骨とは別のあの雲。ごっつい男性の顔をしている。
…さすがにここでたくさんスペカと体力を消費するわけにはいかない。これらのスペカで決着をつけよう。
霊剣「一触両断波」
「そいっ!!」
刃渡りが五尺に変化した、黒曜石以上のつやを出す五行霊剣を振りかざす。すると、なんでも切ってしまうこの剣は、一回振りかざしただけですべての弾幕がスパッと切れて消えてなくなる。さすがに拳骨は切っていないが、動けない状況のはずだ。
…はずなんだけど、拳骨は普通に俺を襲ってきたのだ。
「…しまった!あの拳骨、雲だから切っても切っても切られないじゃんか!」
術者であろう、フードの人は離れたところに避難している。まずい、初歩的なミスを犯しちゃった!
「はぁ、はぁ…」
しかも体力が底をついてきたので、動きを読もうにもいつも通りに読めない。
目の前が弾幕で覆い尽くされ、大量の拳骨が構え、詰んだか、と思ったその時だった。
闇符「月夜に微笑む王女」
目の前で、漆黒の光線が弾幕や拳骨を蹴散らしていく。な、何?何が起こってるの?
「裕海~♪今助けるからね!」
「…ルーミア?」
いつもと変わらぬ容姿に加え、黒い大きな翼、かなり重そうな大きな剣を持っているルーミアが目の前にいた。え?ルーミアってそんな装備だっけ?
あれ?そういえばルーミアってリボンしてたよね?
「ルーミア、リボンは?」
「さっきとれちゃった!そしたらこうなった!」
…まさか、封印?あのリボンって封印のアレだったのか!?
禍々しいとも清々しいとも言えないが、とにかくかなり強大な妖力を感じる。それも、今まで出会った妖怪で言うなら、紫ぐらい、あるいはそれ以上の。
「…?よくわかんないけど、賊が一人増えたのね?姐さんの邪魔はさせないわよ!」
続く
後書き
更新遅れました!
さて、ついにEXルーミアが誕生しました。
そして、レミリアが言う”危険な運命”とは?
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