東方変形葉
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幻想変化
東方変形葉56話「真昼間のフェアリーダンス」
前書き
姫雪「おかえり~」
きらちゃん「おかえり~」
ほたるちゃん「おかえり~」
裕海「ん、ただいま。結局遅くなっちゃった」
永琳「いいのよ、結構おもしろい子たちだったしね」
輝夜「そうね。そういえば、遅くなったって魔界の異変はあなたの手に余るようなものだったの?」
裕海「いいや、それどころか異変の元凶は焼いて調理したからすぐ終わったよ」
鈴仙「えっ?調理?」
輝夜「あらあら、じゃあ宴会でも開くのかしら」
裕海「ん、明日ぐらいに開こうかと思ってるよ」
てゐ「・・・異変の元凶を調理した宴会が?」
裕海「うん。ああ、心配しないで、ちゃんと美味しいやつを作ってくるから」
永琳「それは楽しみね~」
輝夜「じゃあ、なんで遅くなったのかしら」
裕海「それは、かくかくしかじかなんだよ」
鈴仙「わかるわけないでしょ!?」
永琳「ああ、あの悪魔の妹が大暴れしたから抑えていた、と。いつかそうなるんじゃないかと思ってたわ」
鈴仙「通じてる!?」
「・・・というわけで、小麦粉などを買いに来ました~!」
人里に行き、レポーター気分で鈴奈庵へと特に用もないのに上り込むどう考えても迷惑千万で奇行な俺は、たこ焼きをつくるための材料を買いに来たぜ!タコは腐るほどあるけどね!
さて、目の前に「その報告をしにここに来たのかしら」と言わんばかりのジト目小鈴がいたり。
姫雪たちは今、永遠亭でちょっとしたことをしているらしい。いったい何をしているんだろう?
「それで、そのタコ焼きっていう食べ物をつくるためにここに来たの?」
「ん~、いや。なんとなく顔を出しておこうかなと思ってね」
あとで響希や阿求のところにも顔を出してみるかな。
・・・いや、面倒だからいっそここに萃めてみようか。
「というわけで、約二名の友人ここにあつまれ!」
「どういうわけ!?」
「阿求と、もう一人俺の友人をここに呼び寄せたよ」
「はい?」
しばらくすると、チリリンと店の扉が開く音がした。
「あら、裕海さんじゃない」
「んあ?葉川がいる?」
「・・・ほんとに来ちゃったし」
小鈴は俺の術に多少ながら驚いて呆然としているようだ。いまさら何を。
「やあ、2人とも。元気だった?」
「ええ、元気よ」
「そういや最近会ってなかったな。俺はいつも通りだぞ」
冬がもう過ぎはじめ、桜の木が徐々に変化を起こしているこの季節、当然ながら花粉が漂っている。なので、花粉症ではないのだが鼻がくすぐったい。
響希は花粉症なのかマスクを着けていたので、どう見てもいつも通りじゃないんだが。
「そういえば響希はこの二人と面識があるの?」
「ああ、あるぞ。稗田さんはこの間外来人ということを聞きつけて取材に、本居さんは店で古い本を借りるときに知り合った」
そーなのかー。・・・響希はインドア派かと思っていたけど、そうでもないのかもしれない。
「さてと、じゃあみんな解散!」
「えええええええええっ!?」
いつもの店で買い物を済ませ、家まで戻ってきた。
・・・・・・。
誰かが家の中にいるな。
わかりやすい痕がついている。
気配の変化で気配を消し、そっと窓から家の中をのぞいてみる。
「サニー、これは何?」
「わかんない」
「それよりも、選ぶ家を間違えたんじゃないの?だってここ、あの“変幻操作の人形師”の家だよ。見つかったら何されるか・・・」
「甘いわルナ。そういう家でいたずらをして成功させるのが、最強の妖精への第一歩よ!」
・・・三人組の妖精だ。
手荒なことはしたくないけど、少しだけお仕置きするか。
「重力の変化っと」
妖精のいる空間だけ重力を大きくする。結界を張り、家の物は重力の影響を受けないようにして。
「な、なに!?体が重いよ!」
「うぐぐ、何なのよ!」
「おもい~っ!」
本当はもう少しやっておきたいけど、面倒だし別にいいや。
だけど、最後にトラウマだけ植えつけておこう。
悪魔「私欲あふれる魔の瞳」
大きなスキマを開く。すると、そこから不気味で大きな目がぎょろぎょろと動いている。
「ひぃっ!」
「だ、誰か、たすけて・・・」
「こわいよ~」
重力を解き、スキマワープで目のあったスキマに移動する。
「で、妖精さんがここで何の用?」
「・・・・・・っ!」
あ、気を失った。やりすぎたかな?
仕方ない、お詫びついでに布団で暖かく寝かしてやるか。
「さて、たこ焼きはこんなものかな」
あとの料理は宴会の時に作るとしよう。
「むにゃ・・・私、いったい・・・?」
三人の妖精のうちの一人、黒くて長い髪が目立つ子が起き上がった。
「目が覚めた?」
「あっ・・・やぁ、食べないでぇ!」
「食べないよ」
俺はいったいどんな目で見られているんだ。
「今回は別に痛い目をあわせるつもりはないから安心して。あ、今焼きあがったんだけど、たこ焼き食べる?」
「・・・たこ、やき?」
ものすごい量なので、10や20どうということはない。
「・・・毒とかは、入ってない・・・?」
「いれるわけない。宴会に出す料理だよ」
おそるおそる、ぱくっと口に放り込んだ。
「っ、おいしい!」
「よかった。作るの久しぶりだから心配していたんだよね」
ぱくぱくと、次々に食べていく。
「でも、次はないからね。次は、そうだな。こちょこちょ15分とか?」
「・・・えっ、痛い目じゃないの?」
「え、痛い目に遭いたいの?」
「いえいえいえいえいえ、まさか!」
それでも十分拷問な気がするけどね。
この子は他の連中からどんな目に遭ったんだ。
「なんだ、良い人じゃない!よかった、どんな怪物かと恐れていたのに」
「俺は人間だって。あ、お茶はいかが?」
「うん、飲む!」
しばらくして、もう二人も起き上がった。
「むにゃ・・・うわぁ!食べない・・・で?あれ?」
「・・・なんでスター、そんなに仲良しなのよ」
「あっ、ルナ!サニー!聞いて、この人はいい人だったわ!」
・・・うん、俺が妖精とかから恐れられていることはもう十分わかった。痛いぐらいに。
「えっと・・・状況がよくわからないんだけど」
「同じく」
「だろうね。普通は」
スターが自分の今までの武勇伝(いたずら日記という名の)を聴いていたが、けっこうおもしろい。
「まあ、次何かしようとしたら、こちょこちょ15分の刑だから」
「・・・そんなのでいいんだ」
「良心的ね」
戦場から帰ってきた兵隊が、街の小さな殺人事件を「まだマシ」みたいな眼差しで反応する人みたいだけど、この子たちもすごい目に遭っていたのか。
「なんだ、もっと恐ろしい怪物かと思っちゃったよ~」
「この家を選んで良かったわね」
・・・懲りてなさそうだな。
まあいいや。今度からセキュリティ結界でも張っておこう。
「さてと、全員起き上がったんだからそろそろお帰り。確か、神社の大木に住んでいるんだっけ?」
よくあの霊夢が許可したな。
いつもなら、人外抹殺機関銃(お札乱射)ぶっ放して殺すか追い出すかしかしないのに。
「・・・うん。だけどね、今、その大木が何者かに乗っ取られそうになっているの」
「なんだって?」
妖精の住処を乗っ取る妖怪?・・・もしかしたら、その妖怪に神社が狙われるかもしれない。
「このままじゃ、私たちの家がなくなっちゃうの~っ」
黒い髪の妖精が涙を浮かべながらそういった。
・・・なるほどね。だからこの家にいたずらして、自分の住処にしようと考えたのか。
「仕方ないな。それだったら俺がさっさと片付けてやるよ」
「「「えっ、本当!?」」」
スキマを開き、神社の大木につなげる。
・・・ん?普通の大木のように見える。あ、これは光の屈折でごまかしてるな。
「屈折変化っと」
「えっ、私の術がいともたやすく・・・?」
窓やドアが大木に現れた。
もう少しいい方法の屈折の仕方があるが、それをいたずらに使われてはちょっと困るので控えておく。
「・・・強い妖力が大木につけられている。ああ、マーキングでもされたみたいだな」
でもなんだかわざとらしくないが。
しかし、力をすりつけてくれているというのなら話は早い。なにせ、導火線をわざわざ落としながら逃げたようなものだし。
「うそっ!?まいほーむ終わりなの!?終わっちゃったの!?」
「いやいや、なめてもらっちゃ困るよ」
スキマ越しに妖力の跡を簡単な紙人形に擦り付ける。
「力の主を見つけ次第連れてきて」
そういうと、紙人形はひらりと宙を舞い、一直線に飛んで行った。
あれには、俺の能力の欠片をつけている。主にスキマ能力や通信能力、抹消能力。まあ、抹消と言っても、トラウマを植え付ける程度のものだが。
三人の妖精は、じっと何かを身構えていた。何かとは、乗っ取ろうとした妖怪のことだ。
「・・・お、見つかったか。連れてきて」
紙人形から連絡が来たので、命令をする。
そしてスキマが家の前に開き、妖怪が吐き出される。
スキマで移動して、その妖怪のもとへと移る。
『ぐっ、何なんだ一体!?』
「消す」
『うおぉっ!?なんだこの物騒な人間は!?』
黒い影が驚いてツッコミを入れる。
・・・見知らぬ妖怪に突っ込まれたのは初めてだ。
「この妖力は、間違いないな。よし、消す」
『いやいやいやいやいや、待てや!わいがなにをしたっちゅーねん!』
・・・なんかやりにくい。なにこの、青年とも中年とも言えぬこの口調と反応。
えっと、関西弁?いや、俺は元関西人だけど、こんな口調はしてないぞ。
橙色の髪の妖精がスキマから出てきた。
「あんたね!私たちの住処を乗っ取ろうとした犯人は!三妖精の名にかけて、真実はいつも一つ!」
・・・なんか混ざってるし、使い方違うし、どこで覚えたそんなもの。
『妖精?住処?ああ、あの大木か。わいが休憩のときに使ってた睡眠場所や。なんか文句あっか?』
「文句なんて腐るほど・・・えっ、休憩?」
・・・あーうん。そうかそうか。どうりで力の付き加減が自然だと思った。
だとすると、力があふれ出すほどの大妖怪って判断になるな。紫やレミリアほどではないみたいだが。
この妖怪が嘘ついているか、能力で確かめてみるも確実に嘘はついてないようだ。悪意もなさそう。
「なるほど。まあいいや、お前釈放」
『・・・あの、そんなさらっと言われましても』
「帰れ!」
『はいいっ!』
妖怪はそそくさと走っていった。
「さてと、もうそろそろ宴会会場の準備の時間かな。場所は博麗神社。あ、君たちも来るかっていうか名前聞いてなかったな」
「サニー、行きます!」
「スター、行きます!」
「ルナ、行きます!」
・・・ア○ロ、行きます!みたいな感じで言われても。
「誕生日、おめでとー!」
「・・・はっ!?」
宴会の準備が終わり、ついでに宴会の司会になったので挨拶を一言済ませようとみんなのいる部屋に行くと、そんな声と拍手が俺を襲った。
「裕海様、ほらほらろーそくの火を消して!」
「う、うん。ふ~っ」
姫雪と人形たちに急かされ、律儀に16本立てられたロウソクの火を消すと、また拍手がおこる。
そういえば、この日が誕生日だっていつか姫雪と人形たちに言った気がする。まさか、そのために永遠亭に行っていたのか?
「・・・3人とも、もしかして」
「いい子たちよね。ケーキから人まで、何から何まで集めようと必死だったんだから」
永琳が、そう優しげな声でそう言った。
俺は、誕生日会なんてものをしたことがなかった。
親は忙しかったので亡くなる前からしたことがない。
だからなのだろう、こんなに涙があふれてくるのは。
「ありがとう、3人とも」
感動のあまりぎゅっと抱きしめて、これまで以上に褒める。
3人は、何も言わず、姫雪は正面から、人形たちは回り込んで背中から抱きついた。
「さあ!良い劇も見られたし、宴会でパーッと盛り上がろうぜ!」
本来の司会、というか幹事である魔理沙がそう言うと、いっせいにわーわーと楽しそうにはしゃぎ、飲み食いを楽しむ。
「これが、たこやきっていう食べ物なの?・・・あら、けっこういけるじゃない!」
となりにいる霊夢が、興味津々にたこ焼きにかぶりついていた。
「口の中を支配するようなとろとろの中身に加えて、このシャクシャクとも言えないコリコリとも言えない絶妙な具がなかなかいいわね」
「あれ、紫は食べたことありそうだったのに」
「外の世界のグルメにはあんまり詳しくないのよ」
酒を飲み、料理を食べ、疲れ果てるその時までその宴会は続く。
種族、力の差なんて関係なし。ただ酒をかわしたり一緒に食べるだけ。
草木も眠る丑三つ時を過ぎようとも、彼女たちは眠らない。
・・・これが、幻想郷での美しさ。
そう、人と妖怪が共存し、互いにバランスを保つことのできる、持続可能な世界。
―――世の中は三日見ぬ間の桜かな
外の世界が素早い変化を遂げようとも、幻想郷はその流れには乗らない。
この世界は、きっと変化を恐れることを知らない。
俺はこの目で、幻想郷の変化を見ていきたい、今日はそう思ったのだった。
続く
後書き
かっなり遅くなり申し訳ありません!
あと、ツイッター始めました!→@daihukuneko1871
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