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グランバニアは概ね平和……(リュカ伝その3.5えくすとらバージョン)

作者:あちゃ
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第10話:情報網は其処彼処

 
前書き
あけおめ

さぁ今年も残すところ364日ですよ。 

 
(グランバニア城・ピピン宅)
ピピンSIDE

明日は朝一で陛下に先程の事を報告するので、憶えてるうちに酒場に居た馬鹿連中の人事ファイルを執務室で用意し、そして自宅へ帰り着く。
すると夜遅くなのに客が来てるらしく、リビングからは妻の楽しげな声が聞こえてくる。

怪訝に思い慌ててリビングへ入って行くと……
「お帰りなさいアナタ」「お邪魔してるよピピン」
妻と同時にリュカ陛下が迎えてくれた!
何で!?

「へ、陛下……こんな夜分に……何かございましたか!?」
咄嗟に、何か軍事的問題が発生したのかと思い緊張してしまう。
だが陛下も妻も笑顔で、問題が発生してる様には見えない。

「いやぁ~……(リュリュ)の事で迷惑をかけたから、お詫びとお礼を言っておこうかと思ってね」
リュリュの事で……って、何で先程起きた事を知ってるんだ!?
誰がこの短時間で報告したんだ!?

「僕もさ……以前から気にはしてたんだけど、カーネルが気にかけてくれてたから、大事にならないだろうと思ってたんだ。でもピピンがリュリュやみんなを説教してくれたから、僕も気付かされてね……“こういう状態を放置するのも問題”って事にね」

カ、カーネル殿はリュカ様と通じていたのか!
だからこれ程早く情報が渡ってたんだな……
言ってくれれば良いのに中隊長殿ぉぉぉ!
私は問題を大きくしただけではないですか!

「言い訳だけど、父親として(リュリュ)には自由に生きて欲しかったんだ。仲の良い友達を作り、気の合う同僚と飲食し、大勢の仲間を作る機会を与えたかったんだ。でも男は狼って事だね(笑)」
「男心はリュカが一番解ってるだろう……」

「解る訳ないだろ。女性を泥酔させて犯す気持ちなんて……何が楽しいんだ?」
「女と正面切って向き合えないヘタレが多いんだよ、世の中には」
何時もそうだが、(ドリス)はリュカ様の従妹(いとこ)なので気さくに話しかける。
普段であれば私も気にならないのだが、今は……

「それで……リュカはどうするつもりなの?」
(ドリス)も気になるのだろう……今後の事を問いかける
「リュリュの事?」
「だけじゃないけど……」
私も気になる……彼女の事もそうだが、馬鹿な男共の事も。

「馬鹿男共はピピンの言う通り死刑で良いんじゃね?」
え、うそ!?
あ、あれは奴等を懲らしめる為に言っただけで……

「安心してピピン。“本当は家族諸共極刑にしたかったけど、ピピン大臣が『恩情を!!』と懇願してきたから、お前等の命だけで許してやる”って言っとくから(笑)」
「へ、陛下ぁ……私まで苛めないで下さいよぉ」

「あはははははっ、ゴメンゴメン。取り敢えず明日全員説教で勘弁してやるよ。でも事前に言うなよ……ギリギリまでビビらせたいから(笑)」
はぁ……良かった……

「でも問題はリュリュよね。あの()素直で良い子だけど、良い子過ぎてアホの子の類似品になりつつあるから。もっと周囲に悪人が居れば良かったんだろうけど、父親の威光が強すぎて、そんな馬鹿者が近寄れなかったからねぇ」

「そうだなぁ……みんなと仲良く出来て良かったと思ってたけど、男に対して無防備すぎるからなぁ。男の危険さも知ってほしいな」
「つーか、男の危険さを知らせるには、恋人を作るしかないんじゃないの? 純粋な思いだけじゃない色恋事を経験するしか……」

「それは難しいんじゃねーの? アイツ変態だから。我が娘ながら超弩級の変態ファザコン娘だから! 新しい下着を買う度に、穿いて僕に見せるんだ。『ムラムラする?』って真顔で聞きながら……童貞じゃねーんだ、そんなんでムラムラしてられっかっての!」
そう言う問題ではないだろう。

「あの陛下……ご不興を被る事を覚悟で言わせてもらいますが、リュリュの願いを叶えてやっては如何でしょうか?」
「はぁ? リュリュの願いを……って、お前解ってるの? アイツが何を望んでるのか、ピピン君は解って言ってるのですかぁ!?」
やっぱり怒られた。でも……

「解っております。リュリュが望んでる事も、今私が何を言ってるのかも……ですが、一番大好きな男性に、自身の初めてを捧げたいと考えてる以上、それをクリアしないと先に進めないと思うのです。何も結婚しろとか、愛人にしろとか、子供を作れと言ってるのではありません。たった一度……彼女の願いを叶えてやれば、リュリュも落ち着くと思うのです」

「落ち着くかねぇ……?」
何を言いたいか解ってもらえたらしく、一瞬だけ語気を荒げただけで何時もの陛下に戻られた。
(すげ)ービビった(涙)

「逆効果になったら最悪だよ。自惚れに聞こえるだろうけど、僕アッチの方には自信があるんだ。ビアンカは兎も角、その他の愛人は他に彼氏を作らないだろ……何でだと思う? 僕以外の男に魅力を感じないからだ! だって暴れん坊将軍の将軍っぷりからして違うモン! しかも暴れっぷりは桃源郷さ!」

「はぁ……」
それはそうなんだろうけど、そんな事を言われても“はぁ”としか言いようがない。
親しい友人になら『馬鹿言ってんじゃねーよ』と笑いながらツッコめるんだけど……

「そんな僕と1回ヤったら、絶対に1回じゃ済まなくなると思うんだ。その後に他の男とヤっても『やっぱりお父さんが一番良い♥』とか言って、余計に男への興味が変態的になると思うんだ」
(すげ)ー自信だな。どっから湧いてくるんだ?

「お前今“その自信はどこから湧いてくるんだ?”って思ったろ!」
「そ、そんなありません!」
何で解るんだ!!

「僕は一発で真面目なアルルを虜にする事が出来るゾ!」
「ええ、そうだと思います! 陛下のテクニックは人知を越えてますから!」
そうさ、絶対そうさ! 思考を読まれるから、肯定意見しか考えない様にしよう。

「でも何とかしないと、リュリュだけじゃなく周囲の男共まで不幸になる。何時までも独り身だと“オレにもチャンスはあるかも?”と勘違いした馬鹿が、同じように何時までも狙い続けて出産率低下に繋がるかもしれないでしょ! リュカとの一発をエサに、一見するとフェアに見える交換条件を提示して、実は一方的に諦めさせるべきでしょ。得意でしょ、そうやって人を陥れるのはリュカ」

「最終的には僕に対する暴言にしか聞こえなかったけど、ドリスの言う事は尤もかもしれない。口の悪い妻を持った旦那さんの意見はどう?」
「“どう?”と言われましても……若い兵士を誑かすのさえ収まってくれれば、私はリュリュが誰と契りを交わそうが気にしません。今思えば、いっその事殿下との仲を認めて戴ければ面倒が無くて良かったなと思います」

「他人事だなぁ……そんな事したら遺伝子的にダメな事になるんだぞ! よく解んねーけど、(なん)かダメな事になるって聞いたんだぞ! 生まれを選べない子供に、親の勝手で不幸を押し付けるのは良くないんだ……」

「それは大丈夫よ。あの真面目っ子が、兄妹と判っててリュリュと子作りすると思えないわ。最近やっと冗談が通じる様になってきたけど、それでも真面目ぶりはグランバニア王家の歴史の中でダントツだから」

「ふっふっふっ……御先祖の中にはティミーを上回る真面目が居たぞ。ピンクの鎧を着込んだ一見奇抜なヒゲだったけど、あの真面目っぷりは父さん(パパス)以上だった」
陛下達がマスタードラゴン様に仕組まれて、過去に度だった時の事だろうか?

「じゃぁアンタが突然変異なんじゃない、リュカ。アンタからよ奇人が続出してるのは」
「おいおい……何自分の事を棚上げしてるんだ?」
私としては、奇人の中心核なのだから他の奇人を取り締まってほしいよ。

「ピピン……自分は常人って面してっけど、奇人の国じゃ常人は生き辛いんだぞ、解ってんのか?」
「解ってますよ、勿論。職場も家庭も気の休まる場所など無い……唯一の安らぎは息子(ピパン)の顔を見てる時だけです」

「ムカつくわね……私に惚れて告白したのは貴方でしょ!」
「気の迷いだったのだろう……出逢いがシマシマパンチラからだったから、アレに惚れてたんだろう(笑)」
笑いながら睨んでくる(ドリス)に、肩を竦めて言い返す。

「あぁ、あのパンツね。可愛かったよね」
そしてリュカ様が懐かしそうに呟いた。
「アンタ等ねぇ……パンツの事しか記憶に無いの?」
そう(ドリス)の嘆きに、私も陛下も大笑い。

取り敢えず今夜のところはこれでお開きになりました。
帰り際に陛下が「リュリュの事は何とかするよ。面倒をかけて悪かったね」と労ってくれました。
何にせよ、私の様な常人には考えつかない事を思い付くんだろうなぁ……

ピピンSIDE END



 
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