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鎧虫戦記-バグレイダース-

作者:
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第25話 中国を舞う鷹

 
前書き
どうも蛹です。
長くなりました、中国での話。ついに最終回です!!
鷹って‥‥タカって‥‥‥‥どう考えてもアイツだろ!!
お前は最後に限ってスゴイことしまくるとかそんなんすんなよホントに!!

あ、あと、二人のキスシーンは伸ばしておいて結構あっさりです!

それでは第25話、始まります!! 

 
急に2人の顔が真っ赤になった。雨は両手で顔を覆っている。

「やっぱり‥‥‥‥‥‥チューするんですか?」

雨は指の間から豪を見た。

「やる。俺だって恥ずかしいけどな」

豪も顔が真っ赤になっていたが、覚悟を決めていた。

「誓いのキスを」

迅はもう一度言うことで、2人の前から後押しした。

「や、やるぞ‥‥‥‥‥‥‥」
「はっ、はい‥‥‥‥‥‥‥」

2人の顔が少しずつ近づいて行った。

「んん‥‥‥‥‥‥やっぱり恥ずかしいです!!」

 かーーーーーッ!

雨の頭の先から煙が噴き出した。

「おいーッ!ここでやめたら俺もハズくなってできないだろうがーーッ!!」

豪も恥ずかしさで頭の先から煙が噴き出していた。

『‥‥‥‥‥‥‥‥‥仕方ないな』

 トンッ

「キャッ!」
「えっ?」

迅の文字通りの後押しによってついに2人の唇が触れ合った。

「おめでとーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッ!!!」

 パチパチパチパチパチパチパチパチ!!

全員は拍手をしながら歓声を上げた。
雨と豪はゆっくりと口を離した。

「こ、これで俺達‥‥‥‥‥‥‥夫婦になったんだな」
「私、今‥‥‥‥‥‥‥とっても幸せです♡」

雨は涙を流しながら豪に強く抱きついた。
豪は雨の胸に深く埋もれてしまった。

「ムグッ、く、苦しい‥‥‥‥‥‥ッ!!」
「あ、ご、ごめんなさい!!」

雨はすぐに体を離した。豪は大きく呼吸をした。
彼女は少しだけかがんで豪と同じ目線になった。

「これでいいですか?」

雨は早速、豪に言われた通りにしていた。
豪はそれを見て、笑顔になった。
 
「あぁ、そう。それでいいんだ」


「豪さん!乾杯しよう!!乾杯!!」

アスラはコップを持ってはしゃいでいた。

「ほら、雨ちゃんも!!」

マリーは駆け寄って2人にコップを渡した。
二人はコップを受け取ると、前を見た。

そこではみんなが笑顔で2人を歓迎していた。

「なぁ、雨」
「え、何ですか?豪さん」

やや間を開けて豪がつぶやいた。

「友達っていいよな‥‥‥‥‥‥」

雨も大きくうなずいた。

「‥‥‥‥13年前は考えもしませんでしたね‥‥‥‥‥」

2人はあの事を思い出し、涙を流した。

「嬉しくても涙って出るもんだよな」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥そうですね」

雨は豪に少しだけ寄り添った。


「それでは、豪と雨の結婚を祝いましてぇ~~~~~ッ」

迅は少しだけ溜めて叫んだ。

「乾杯ッ!!」

全員もそれに呼応した。

「乾ぱぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~いッ!!」

中国のとある村の中での結婚式は大成功だった。



    **********


「あ~~~~ん」

マリーは口を大きく開けた。

 パクッ

「うわぁ~~~~、おいしーーーーーッ!!」

マリーが頬に手を当てて叫んだ。

「ロシア料理と中国料理しかできなかったけどね」

レイラは自分の作った料理を口にしながら言った。

「クレアさんの方がスゴイのよ?ウチのレシピを全部読んですぐに覚えちゃうし
 さらにアレンジまで加えちゃうんだから。しかも美味し‥‥‥‥‥‥‥‥あ」

マリーが悲しそうな顔をしてうつむいた。

「‥‥‥‥‥‥クレアおばさんは元気にしてるの?」

マリーはうつむいたままレイラに訊いた。

「え、えぇ、元気にしてるわよ」

レイラは彼女の元気を取り戻すために少し無理をした笑顔で言った。

「‥‥‥‥‥‥‥‥嘘でしょ?」
『ギクッ!!』

レイラは焦った。なぜ嘘と分かったのだろうか?

「レイラさん、嘘つくとまばたきの回数が多くなるの」

ロシアで一番彼女になついていたマリーに
レイラの癖は、すでにばれているのだろう。

「クレアおばさんは元気なの?」

マリーは心配そうな顔でレイラを見た。

『‥‥‥‥‥‥このまま隠すのは少し無理そうね』

レイラは少しため息をついた後、マリーの耳元に寄った。

「実はね――――――――――」

レイラはマリーにちょっとした“秘密”を話した。



「やっぱりうめぇなぁ、レイラさんの料理」

アスラは食べながら言った。

「ん、どうしたんだ?マリちゃん。ニコニコして」

マリーは満面の笑みでアスラに教えた。

「クレアおばさん元気なんだって」

アスラも笑った。

「そっか、良かったなマリちゃん」

ホークアイが食べ物を両手に割り込んだ。

「クレアおばさんどうだって?」

マリーは少し悩んでいたが、すぐに言った。

「えっとね‥‥‥‥‥秘密!」

ホークアイは不快そうな顔をした。

「何だよーーーッ、教えてくれてもいいじゃんかよーーーーーーッ!」

ホークアイは駄々をこねた。レイラがマリーの肩を叩いて言った。

「絶対に秘密よ。本当はもう少し後にロシアで教える予定だったんだから」

マリーは大きくうなずいた。

「ちぇっ、なら仕方ないか‥‥‥‥‥」

ホークアイは不満そうだが諦めた。
そして、持っていた両手の料理を机の上に置いた。

「それより雨さん、豪さん」

ホークアイは2人に話しかけた。
彼の目つきはさっきまでとは明らかに違った。

「そろそろ教えてもらおうか。この村について」

ホークアイは地面を指さした。
別に、彼の足元に何かがあるわけではない。

「この病院は村とはわずかながら離れている。だが、歩いて5分もかからない」

雨と豪はうなずいた。彼らはすでに知っているからだ。

「それなのに誰一人来ないというのは、いくらなんでもおかしすぎないか?」

ホークアイは少しオーバーに声を出した。
とたんに、アスラとマリー以外の全員の雰囲気が変わった。

「感づいたか‥‥‥‥‥と思ったか?」

全員は応答しなかった。ホークアイの口調が少しずつ厳しいものへと変わっていった。

「前に村にいるときも表には誰もいなかった」

この場が少しずつ険悪なムードになっていった。

「一体どういうことなんだっ?説明してくれよッ!」

ホークアイは納得したかったのだ。
自分たち以外、誰も来ていない結婚式の理由を追及することで。

「‥‥‥‥‥‥‥‥ホークアイさんは意外と頭が切れるんですね」

雨は不穏な空気の中つぶやいた。

「そうです。できたら話したくなかったんですけどね」

雨はついに観念して、話し始めた。

「‥‥‥‥‥‥‥実はこの村の住人は私たち2人だけなんです」
「えッ!!?」

アスラ、マリーは驚いて声を上げた。

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥やっぱりそうか」

ホークアイはそれを可能性の1つと考えていたのだろうか。
それとも、すでにそう結論付けていたのだろうか。
彼は少なくともそのことに気付いていた。

「ある日、″鎧虫″がこの村に押し寄せてきて、住民のほとんどは死に
 残った人もこの村を捨てて大きな村に行きました」

雨は言うのも辛そうに見えた。

「だから、ここには私と豪さんしかいないんです」

雨は今にも泣きそうな表情だった。

「‥‥‥‥‥‥何で」

アスラはつぶやいた。

「何で戦わなかったんだよ!雨さん強かったじゃないか!!」

アスラの脳内には目の前で死にゆく人々の姿がイメージされていた。
その悔しさのあまり彼は怒りの声を上げた。

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥グスッ」

雨は涙を流して泣きじゃくった。

「わ、私だって‥‥‥‥‥‥グスッ、助けたかったですよッ!!」

彼女はついに泣き出した。アスラはそれを見て顔をそらした。

「俺たちはその時はまだ弱かったんだ」

豪は歯を食いしばり、拳を握りしめていた。

「数えられないぐらいの″鎧虫″を目にした時
 俺たちは足はすくんでいて動けなかった」

彼はさらに強く拳を握った。

「弾き飛ばされ、潰され、貫かれて死んでいく人たちを 
 俺たちはただ見ているしかなかったんだ‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

彼の目からも涙が流れていた。アスラは椅子に座った。

「‥‥‥‥‥‥‥ごめん、大切な結婚式にこんなこと思い出させて」

アスラは2人に謝った。 

「いや、いつか話さなければならなかったからな」

豪は涙をぬぐって言った。

「雨ちゃん、泣かないで」

マリーは雨に後ろから抱きついた。
そして、頭をなでてあげた。

「あ、ありがとうございます‥‥‥‥‥‥‥」

雨はマリーの手を軽く握った。

「そうか‥‥‥‥‥‥わかったよ」

ホークアイは理由に納得し、雨と豪に礼をした。



「じゃあ、結婚式の続きをやるか!!」

ホークアイは急に笑顔になって、騒ぎ出した。
全員はそれを見て、呆然となった。

「‥‥‥‥‥‥‥ホークアイってこういう悲しいことは
 引きずらないタイプなんだよ」

マリーも笑顔になって言った。

「こういうのがムードメーカーっていうのかな?」

とぼけた顔でそう言うマリーの姿を見た全員は笑い始めた。

「ハハハ、そうだな、せっかくの結婚式だ。もっとパーーッといかないとな」
「アイツはただの変態キャラじゃなかったんだな、ハハハハハ」

迅とリオさんも笑顔でこう言った。
豪や雨からも少しずつ笑顔がこぼれて来ていた。

「そうだな、昔はもう変えられない。だが今なら。
 今から先の未来なら変えていくことが出来る」
「それをわからせるために、このタイミングで言ったんでしょうかね」

2人はホークアイを見直した。

「キャーッ、ホークアイ!!」

 もみもみっ

ホークアイはマリーの後ろに回り込んで胸を揉んでいた。
それを見た雨は少し困り顔で言った。

「やっぱり偶然でしょうかね?」

豪は苦笑しながらつぶやいた。

「アイツはなかなか読めない性格だな。頭が良いのか悪いのか‥‥‥‥‥‥‥」

 むにゅっ

「きゃーーーーーーーッ!!!」

雨がホークアイに胸を後ろから揉まれて叫んだ。

「いくらなんでもそれは夫として許さんぞッ!!」

豪は怒ってホークアイ飛びかかった。

『‥‥‥‥‥‥‥とにかく、みんなもう一回笑顔になって良かった』

 ドシャッ!

ホークアイは豪に捕まって倒れながら心の中でつぶやいた。
彼は策士なのだろうか。この様に2人が理解することをわかっていたのだ。

「こらーッ、ホークアイ!!」

レイラもそれに参戦してごちゃごちゃになってしまった。
結局、アーロンの仲裁によって喧嘩は終わり、無事に結婚式は幕を下ろした。 
 

 
後書き
結婚式をホークアイがブチ壊しにしてしまうかと思いましたが
彼らの理解力が早くて本当によかったです。下手すりゃ大参事です。

さて、次の話は合計30話記念です!!
今回から話は別の場所へと移ってしまいます。
どのような内容かは次を見てください!

次回 第01話 投獄のセキレイ お楽しみに!! 
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