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戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~

作者:黒鐡
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二十四章 幕間劇
  短刀の持ち主×藤川での茶の湯

「・・・・・・・っ!」

「・・・・・・!!!」

ん?なんだこの声はと思いながら、通りの向こうから聞こえる声の主に向かうとそこにいたのは。

「・・・・で、ですから・・・・・っ!」

「ンだとっ!」

ひよと小夜叉だったが、桐琴は館にいたから何でこんなところにいるんだ。というか、この二人が一緒というのは珍しいな。

「ひよに小夜叉、こんなとこで何してんだ?」

「あ、一真様!」

「一真か。どした?」

「どした?じゃねえよ、こんなとこで二人揃って何騒いでんだよ」

俺が気付くまでは、この辺りにいる周辺住民たちからも聞こえていたようで野次馬が来たが小夜叉の殺気が漏れ漏れだったのか近付かなくなった。何事かと思いきや、雰囲気で察しているからあまり緊急性ではなさそうだ。

「騒いでた訳じゃねーよ」

「た・・・・助けて下さい、一真様!」

「何があったんだ?ひよ。それと桐琴とは一緒じゃねえのか?」

「別に何もしてねーが、母なら館で昼間から酒を飲んでんぞ」

ああ、桐琴はやはり昼酒か。小夜叉も最近は丸くなったからか、桐琴がいなくとも見かけや振る舞いは荒っぽいが無駄な争いをしているとあとで怒られるとでも思ったのか。

「で、何があったんだ?」

「小夜叉ちゃんからお金を貸そうとして・・・・」

「こいつがオレが貸してやるっていうのに、金を受け取らねえんだよ!」

「・・・・は?」

この二人には悪いが今一言っている意味が分からない、小夜叉がカツアゲならまだしも小夜叉が貸す側とは珍しい事も起こるんだな。そんで貸そうとしているのにひよが受け取らないと、事件性ではないように見える。

「だーかーらー」

「ひよが金貸せではなく?」

「違いますよ?」

「小夜叉なら、その辺の破落戸共をぶちのめした方が早いからか」

「当たり前だろ、あとでお礼参りに来たら二度美味しいじゃねえか『それなら一葉が京にいた事にやっていたが?』何!あの公方のやつンな楽しい事してたのかよ」

俺はまあなーと言いながら、今はしてないと言ってからひよが何か買うのなら一真隊の資金から?と疑ったがどうやら違うようだ。じゃあ何なんだ?

「こいつ、これが欲しいだとよ」

これが欲しいと言う小夜叉が指を差すとそこには、店先に飾ってある一振りの短刀だった。俺らが使うナイフよりも少し長いような気がする。

「次は大きな戦ですし、ちょっとでも良い武器があれば、少しは役に立てるかなぁ・・・・って」

鞘や鍔にも綺麗な彫り物が施されているそれは、相応とはいえ結構な値段が付けられているがこいつと俺の剣では値が違うと思った。俺の剣は自由自在に変えられる聖剣エクスカリバーだからなのか、これより高い武器と考えれば安いもんだ。だけどひよの手持ち金では足りそうには思わない。

「ひよにしちゃ見上げた心掛けだと思ってな。金が足りねーっつーから、オレが貸してやるって言ったんだけどよ」

「い、いいですよ・・・・そこまでして買うものでも・・・・」

「俺にとってはいいんじゃねえの?武器は少しでも良い物を持った方がここに置いてある武器が可哀想だ、ここに置いてあると宝の持ち腐れだぞ」

「で、でも・・・・・」

「でも?なんだよ」

「・・・・あとでたくさん利子取ったりしません?」

「するかバカ。そんなの数えるのが面倒だ」

そう言うと思ったがひよは弱腰となっているので、俺からは?と来たので今は持ち合わせが無いから無理と断りを言った後に、小夜叉から借りるのか立て替えるのかどっちだという二択で来た小夜叉だった。俺にとっては二択じゃなくて一つにしか聞こえない、で、ひよはまた「でも・・・・」とか言うから今度は何だと思った。

「でもなんだ」

「・・・・おっかあが、借金だけはするなって」

「なら早く言えよ!」

「ご、ごめんなさーい!」

「・・・・母の遺言なら仕方がねえ」

そう言うとひよはまだ生きているというから、なら金はくれてやるからさっさと買って来いと言ったらそんなのもっとダメとか言ってたが正直小夜叉の金を受け取ってさっさと買ってきた方が身のためだぞと。小夜叉が買えと言ってんだから大人しくとか、小夜叉も少しは成長したなー。

「これ。お主ら、何の騒ぎじゃ」

「か、一葉様っ!」

「貸すだのくれてやるだの、何とも景気の良い話が通りの向こうまで聞こえておりましたぞ?」

「俺もそう思った、ややこしい話になっているそうだ」

「別にややこしかねえだろ」

そう言ったら小夜叉だったからなのか、一葉が聞いてやると言った。で、一葉達を交えてもう一度説明をする事になった俺だった。

「・・・・なるほど。ひよはそこの短刀が欲しいと」

「み、見てただけですけど・・・・。あればいいな、って」

「少しでも一真様のお役に立ちたいとは、健気ですなぁ」

「・・・・で、その代金を小夜叉が貸してやるなり、出してやるなり言うておった訳か」

「こいつの母の遺言が『借金だけはするな』らしいから、じゃあくれてやるって言ってたんだけどよ」

そしたらひよはもう一度母は死んでないと言ったが、せっかく金を出してくれるというのならお礼の一つでも受け取ればいいというのは俺と幽の賛成意見となった。小夜叉はたまにはイイ事言うじゃねえかと幽に言うが、幽はいつもいい事しか言うてないと言うが、俺的には幽が言う事はどうでもいいとして一葉も賛成意見のようだからどうして受け取らないのかが問題だ。

「ふむ・・・・良い短刀が欲しいが、金は借りられぬ、ただ受け取るのも厳しいという訳か」

「ええ。まあ・・・・」

「よし。であれば、余の短刀をくれてやろう」

そう言うと、一葉は腰の短刀を鞘ごとするりと抜いて、ひよにひょいと差し出してきた。ん?この場面は似たような場面で見た事あったような気がする。吉音達と会った時だったかな?まああの時は八雲の時だったからか、剣術を隠していたから師となる者から剣を頂いたんだったか。

「えええええええええええええっ!?な、何でそうなるんですかっ!?」

「主様の役に立ちたいというなら、それは余のためでもあるからの。やるというのだから、金の動きはない。であれば、母の教えにも引っかからぬであろう?」

「ちょっと、公方様?」

「このくらいの物、二条に戻ればいくらでも転がっておるのじゃ。一本や二本くれてやった所で、別に痛くもなかろう」

「いやちょっとそれはいくらなんでも・・・・!」

「いいじゃねーか。公方がくれるっつってんだから、もらっときゃいいんだよ。ここにいる神の目の前でも許してんだから、もらわないとバチ当たるぞ」

神の目の前とは俺か?まあ俺は確かに神だし、公方からもらっても別に罰当たりではないから心配はないと言うのだろうな。小夜叉の奴は。あと気になるのが一点あるから幽に聞いてみた。

「・・・・幽。一葉の短刀って?」

「確か来国光だったかと・・・・」

来国光・・・・鎌倉時代末期の刀工。信長が好きだったらしい。

らいくにみつ・・・・。スマホで確認すると戦国時代よりも前である鎌倉時代末期にいた刀工だと書いてあった。それって有名なのかな?

「それって・・・・凄いの?」

「そうですな。そこの短刀程度であれば、百振り買ってもお釣りが来るでしょうな」

ああなるほど、凄いというよりかは宝剣並みとでも言おうか。

「正直、あまりほいほい下賜なさって良い品ではないのですが・・・・まあ、ひよ殿なら仕方ありますまい」

ひよはころと並ぶほどの一真隊の押さえの要と言うけど、俺にとっては一真隊より黒鮫隊の指揮の方が忙しいし。正直一真隊に黒鮫隊が数名いただけでも、十分有難い感じではあるが今まで戦ってきたし将軍の一葉達まで押さえているからなのか、これはとても凄い事らしい。小夜叉から金を貰うか、一葉から短刀を受け取るか二択の選択肢が生まれたな。ひよは困っているが、二人は楽しそうにしている。

「うぅ・・・・ぐすっ。・・・・ありがとうございます。一生大事にします」

結局のところ、小夜叉からもらっとけと言い寄られたがひよは半泣きで一葉から短刀を受け取っていた。今更だが、短刀なら金ではなく創造の力で創れたから俺が渡せば何とかなったかもと今頃思いついていた。

「余がくれてやったのは床の間に飾るためではないぞ?主様を守るために使え」

「はい・・・・っ」

「良いモンがタダでもらえて良かったじゃねーか。得したな」

「そ、それはそうですけど・・・・恐れ多くてとても抜ける気がしないんですけど・・・・」

「別にそう畏まる事もあるまい。主様が創造の力で創った短刀よりも、この間は余を叱りつけた者なのじゃから。短刀一振り何を恐れる事がある」

そしたら俺の力よりも一葉に貰った方が身のためだと思っていた一葉であったが、ひよは俺が創った短刀や一葉からもらった物でも恐れる事があるそうで。刀は人を殺すもんだから、抜いて斬らなければなまくらも銘刀も変わらないと思った。小夜叉が同じことを言っていたけど、短刀をあげた本人も分かっておるではないかとな。まあ戦闘好きにとっては飾り物と銘刀であっても、抜かなければ使えない武器である。小夜叉の物言いにも、一葉は楽しそうに笑っていた。公方の正体や俺の正体を知っていたとしても、口の聞き方が変わらないのは、桐琴か小夜叉しかいないだろう。

「そんで、一葉たちはこんなとこで何してる?」

「茶の席でも一服設けようかと思いましてな」

「うむ。この間街を歩いておった時、良さそうな場所を見つけてな。幽が茶をたててくれる事になった」

「ほう・・・・」

「今日の客人は公方様だけですゆえ、お三方もいかがですかな?」

「わ、私はもう今日はちょっと・・・・」

ひよはもう十分気疲れしてるから、使い果たしている状態だ。

「オレもそういうの興味ねえからいいや。あとで一真と母で試合をする約束だったからな」

「さっき約束したもんな、でもそれはあとでいいか?」

「おういいぜ、公方と付き合った後なら構わねえよ。それに母も今じゃねえからな」

「小夜叉殿も少しは茶の湯など学んで、わびさびの良さなど身に付けてはいかがですかな?ほれ、そこの小洒落た茶壺など、大変お安くなっておりますぞ?今なら脇の茶筅に加えて、奥の茶釜も一揃えにして、何とたったの・・・・」

おい、ここは通販番組じゃねえんだぞ?そこら辺で怪しげな外国人=南蛮人とか出てきそうな雰囲気だ。それに小夜叉に茶の席は似合わない、山で狩りをした方が似合うに決まっている。で、一葉から来るか?という事で目をキラキラさせて来て来てオーラ出されても困るんだけど。まあ模擬戦はいつでもできるからな、こういう時に限って小さい子の上目使い攻撃をしてくる。

「この時代の作法なんざ知らんが、それでいいんなら出席してやってもいいけど?」

「うむ!そうこなくてはの!」

という事で桐琴と小夜叉との模擬戦は館に帰ってからにする事となり、ひよと小夜叉と別れてやってきたのは街の東側を流れる大きめの川だった。

「藤川か・・・・」

「余が見つけたのじゃ。たまには街を歩くのも役に立つであろう」

「そうですなあ」

先に使いの者達が支度を済ませていたのか、道具を載せた川舟は、幽の船頭で岸からゆっくり漕ぎ出して、やがて流れの緩やかな場所へとたどり着いた。

「ここはとても良い風は吹く・・・・」

「うむ。忙しい日々が、まるで嘘のようじゃ」

「秋になれば、ここら周辺一帯は紅葉だらけとなりそうだな。それに緑もとても喜んでいるかのように思われる

桜の時期は過ぎたからなのか、景色を眺めるのは自分で飛ぶ以来だな。太陽光を浴びてまるで喜んでいるかのような感じで、自然の精霊たちからの声が聞こえてくる。山もずっと同じ色とは違う、春の風や夏の風とも違ってくる。

「おや?さすが一真様とでも言いましょうか、緑を見ただけで違いが分かるとは」

「ここはとてもいい環境のようだ、四季によって違うというのがよく分かる」

「その通りでございます。その都度都度の良さを探す事も、遊びの醍醐味。つまらぬやら退屈とこぼすよりも、そのような小さな変化に顔をほころばせ、時の流れと幸せを感じ取る。人の世もかくありたいものですなぁ」

「・・・・幽がまともな事を言っているような気がするが、俺の気の所為か?」

「気の所為でしょ、それがしはいつもまともな事しか言うておりませぬ」

「そうか?いつも銭が足らん、銭が足らんとしか言うておらん気がするが」

そうしたら幽は、一葉には働いてくれや狼藉は働くなとしか言うた覚えがないと聞く。そういうとまるで聞かなかったように、聞き流す一葉であった。幽に確認したが、前に室内での作法を一通り教わっているが、茶道の作法は奏から教わっているが今日はそれはいいのかと。

「茶道・・・・?」

「ははは。京や堺では茶の湯にもそういった道を付けようとする輩がおるようですが、一真様は茶道の心得があると?今日はそのような事は気にせずともよろしいかと存じます」

「まあな、奏から学んであるが今日はいらないのならそれでいい」

「なるほど。奏様から学んでおるようだと、それがしたちも必要な知識だと思いますな」

「だが、皆で茶を囲みながら楽しく時を過ごせば十分であろ。ここは三人しかおらぬゆえ、堅苦しい事は必要あるまい」

・・・・船ではたまに和服を着て、茶道をしているけど。俺は普段着を着ているが、ちゃんと正座してやっている。奏も元々和の心得があるからなのか、まあ今は普段通りでいいと言う幽。席を楽しみ、寛ぎこそが今回亭主としての幽が一番の喜びとも言うべきだ。この舟の上は三人しかいないからか、一葉もそれでいいと言うけど。

「さて。湯も沸いたようです。そろそろ茶の支度も致しましょうか」

幽の傍らにあった小さな茶釜は、下の小さな炉の熱を受けて、ゆっくりと沸き立っているようだった。小さな壺からお茶を茶碗に出して、茶釜で沸いたお湯を注ぐ。竹製の茶筅はお茶を点てるのに使う道具であり、抹茶にお湯を加え茶碗の中でかき回して均一に分散させる茶道具の一つだ。それをかき回している幽の動きは茶道そのものだと思ったから、茶道の心得有りだな。

「ほう。さすが幽だな、手慣れた様子だ」

「茶道を心得ている一真様に褒められるとは、さすがのそれがしでも驚きは致します。嗜み程度ではあります」

「あまり幽を褒めるでない。つけあがるぞ」

「亭主はつけあがらせてなんぼでしょうに。機嫌を良くすれば、次の菓子はもっと美味しい物になるやもしれませんぞ?その時は一真様お手製の菓子かもしれませぬ」

「そうか。では、褒めておくか。・・・・見事なり、幽」

「とってつけたような褒め言葉、恐悦至極」

そうは言うけど、船上なのに揺れもしない。まあ小さな舟だからなのか、流れが緩やかなのかそれとも水の精霊が揺らさないようにしてもらっているのか。幽の動きは、床の上と変わらずな乱れもない動きでもある。馬の上で茶を立てた事あるのか?と聞くと一葉はあるようだったらしいが、馬上にどこに茶釜を置くのだろう。

「さて。茶が練れましたぞ」

幽は話をしながらであったが、手を止めてから茶碗を差し出す。

「ではまず、一真様から」

「ん?一葉からじゃねえのか?」

「構わぬ。先に呑め、主様」

「うむ・・・・では頂こう」

茶碗を右手でとり、左手にのせ、右手を添えて軽くおしいただき、茶碗の正面を避けるために、ふところ回し(時計の針の方向と同じ)に二度まわして、向きを変えてから飲み始めた。そして一口飲んでから、茶碗を置いたのだった。

「これはこれで上手い」

「一真様は茶道の心得有りなのか、自然とそうなりますか。それにそれは二人分である事を分かっていた上で、半分残すとはさすがとも言いましょうか」

回して飲むから、半分飲んでから置いたけど。

「・・・・ふむ」

俺は濃い茶を半分飲み干した後だったが、何やら一葉から漏れた声が聞こえたような。

「久々に苦いがこれはこれで良い」

「だったら茶菓子を食うと良い。・・・・食べさせたやろうか?主様」

「そうか?まあ亭主である幽は景色を見ているから、これが気遣いという奴なんだろうな。ならば、あーん」

「あーんじゃ、主様」

自然的にあーんをした後は、口の中に甘い物が入ってきたがこれは何の菓子かな。美味しいと言ってから、次は一葉の番。

「では、次は余の番じゃな」

中身が半分となった茶碗を受け取って、俺は回したが一葉は回さずに口元に運ぶのだった。一葉は作法いらないと言いながらも、少し回してから口に運ぶ作法であった。やはり自然的になるようなもんだなと思いながらだった。

「・・・・ふむ、苦いの」

「あまり良い茶が手に入りませんで。とはいえ、苦いこそ、それを素直に口に出せば肩の力の一つも抜ける。菓子も甘く感じられる。そう思うのも一興かと」

まあ確かに苦かったが、これはこれでいい。俺達の船に行けば高級茶葉を使ったお茶や紅茶が飲めるが、今は秘密にしておこうか。俺らの世界では次元の狭間本家ではルシファーの趣味で作っているからな。とそう考えながらだったが、幽は懐から小さな壺を取り出した。

「では、二服目はそれがし秘蔵のものでいかがですかな?」

二杯目か、まあいいけど。

「ふむ。ではそれももらおうか」

答えるのは俺ではなく一葉だったけど、俺も大人だから苦さも知っている。そう答えるのも礼儀だと思っちまえばいい事だからなのか、一葉の答えで静かに頷き、幽は茶碗を軽くすすぐと二杯目の準備をし始めるのだった。

「主様」

「ん?」

「・・・・苦い」

「はいはい分かってるよ、菓子だろ。口を開けろ開けろ。あーん」

「さすが主様じゃ、あーん・・・・むぐむぐ。美味いの」

まあホントは色々と作法があるが、今回は最低限のマナーがあればいいらしい。

「一真様がいらした世界では、茶の席は堅苦しい席となっていますかな?」

「まああるにはあるが、俺はたまにしか参加はしない。茶碗の拝見をしたり、作法やら座り方にも順序があるくらいだ」

「ふむ・・・・今の流行りもそうですからな」

「まあな、身内ならどうこう言うつもりはないさ、高価な器を褒めようが妾のおねだりに応じた菓子を食べさせようが好きにすればいい。と幽の心の声ではそう言っている」

「それがしの心を読むとは、まあ連歌も茶の湯も、元々はそれを題材にして、皆で楽しく集まる事が目的だったはずなのですがなぁ・・・・」

「京の貴族共もしておるが、今は歌を詠む事や茶の席そのものが目的になっておるからの」

幽の作法はそれなりにしっかりしているし、茶を美味く点てるための手段に過ぎんし剣術を上手く扱うための修練とあまり変わらないと俺は思う。剣の使い方にもそれなりにあるからな、茶の練り方も手段であり目的ではない。刀も同じように上手く使うには稽古が必要。

「さて。二服目が練れましたぞ。一真様、どうぞ」

「頂こう」

さっきと同じようにして茶碗を回してから飲むが、幽秘蔵というのはとても美味しいと思った。本来正面は不作法であるから回しているし、回さなかったら間接キスだ。

「・・・・先ほどのよりも美味いな」

「秘蔵と申し上げたでしょう?」

「まあこれはこれで秘蔵になるな・・・・」

残り半分を一葉に渡してから、俺は感想を口にした。スッキリ差と甘さがあるのは、現代で言うならグリーンティーかな?あれは牛乳に抹茶にグラニュー糖が入っているから甘いのかもしれない。茶の値段もあるが、作法にも作法なりの理由がありそうだ。先程のを後にすると味が分からなくなる、だから最初苦い方を飲ませてから秘蔵と言われる物を飲ました。

「空が青いから、緑が美しいからそれを詠む。集まって楽しいから茶を点てる。作法はその間を滑らかにする道具であって、身を縛る呪いではありませぬ」

「まあそうだな・・・・。お茶に合う菓子を選ぶのもそうかもしれんが、まあそれはまあいいとしよう。今度は俺特製和菓子でも提供した方が豪華にはなろうか」

そして菓子を食ってから一礼をすると、亭主としての幽は喜びを持っていた。この舟の上だけは、俺らが知っている作法ではなく、幽の世界となっている。幽がルールブックとなっている。

「主様、次は桂川じゃぞ」

「桂川。確か京にあったとこだな」

京は荒屋ばかりではない、美しい川も存在する。そこに舟を浮かべて今日のような感じで、茶を飲み岸辺で席を設けてもいいと言うがそれは最終決戦後にはない未来だな。俺らの未来予知では10割がこの世界から脱出する運命となっている。俺の考えを無視するかのように、今度は夏か秋でそん時はひよや小夜叉も招きたいと言っていた。そん時は拠点にある家でソファーに座りながらお茶やら紅茶を飲みながら菓子を食っているだろうと思いながらもう一杯飲むのであった。そんで二人と別れた後に桐琴と小夜叉での模擬戦をしてやったけど、やっぱり俺が勝ったけどね。 
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