鎧虫戦記-バグレイダース-
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第20話 頑張れば中国人でもかめ○め破が撃てる
前書き
どうも蛹です。
やっぱり中国ときたら気ですよね。中国拳法か気。
ですが、私はその気を否定させて頂きます!!(信じている方すいません)
この話では発剄についての説明を冒頭に入れています。
戦いはまだ続きます!!
それでは第20話、始まります!!
気――――――というものがある。
これはよく“中国と言えばの必殺技”みたいに描かれている。
某漫画では、これで宙に浮いたり、かめ○め破を撃ったりしている。
しかし、当然ながら実際に使える者はいない。
だが、これに似たものなら存在する。
それがそう、発剄《はっけい》である。
打ち込まれたら、ボンッ!!ってなるアレだ。
イヤそれも無理だろ!と思った方、今すぐ中国へ行きましょう。
喰らって三途の川へと向かいましょう。
実際、その技は存在する。しかし、超能力的な要素はなく
それを使う人の技術面が問われるものでなのである。
彼女の発剄は、地面に踏み込んだ時に発生する反作用エネルギーを
各部位で少しずつ加速しながら最終的に手の平から突き出すことで
その衝撃により揺れた体液が、内臓にダメージを与えるというものである。
『あんまりやりすぎると中の豪さんにもダメージを
受けてしまうので、使っていいのはあと一回か二回ですね』
雨は構えたまま思った。
〖お前にこれ以上どんな方法があるんだ?〗
ディーンは雨に言った。
「まだ教えません!」
〖別に訊いたわけじゃねぇよ!こういうセリフは言わないと困るだろ!〗
ディーンは諸事情を叫んだ。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」
雨は再びカマキリ型の元へ走り出した。
〖また正面からか‥‥‥‥返り討ちにしてやる!!〗
カマキリ型は鎌を構えた。
ダンッ!
踏み込んだ雨の姿が再び消えた。
〖またか、どうせ上だろ!〗
ディーンは上を向いたが視界には雨の姿は確認できなかった。
「今度は前です!」
ドゴンッ!
雨はカマキリ型の首付近に突然現れた。
足で着地したらしく、両足が首にメリ込んでいる。
〖何のつもりか知らねぇがやらせるかァ!!〗
ドカッ!
「きゃあッ!!」
雨は鎌に弾かれて物凄いスピードで落下した。
ガシッ!
「あぶねぇ!」
アスラは雨を地面に着くギリギリでキャッチした。
「きゃああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
ドゴォォォォン!
2人はそのまま地面に激突した。
「雨ちゃん!」
「アスラァッ!」
みんなは2人の名を叫んだ。
パラパラパラ‥‥‥‥‥‥
「いてて、大丈夫か?雨ちゃん」
「は、はい。おかげさまで」
アスラは雨の下になってクッションの代わりをしたようだ。
ズキンッ!
「あだっ!ど、どこか折れたかも」
「ごめんなさい!私重いから‥‥‥‥」
「別に‥‥‥‥‥‥雨さんは重くないよ‥‥‥‥」
会話に間が空いたことから、アスラがやせ我慢をしていることがわかる。
「本当にすいません」
「いいって。オレより早く豪さんを叩き起こして来い!いだっ!」
ポンッ
アスラは自分の胸を押さえながら雨の胸を手の甲で叩いた。
「‥‥‥‥‥分かりました!」
雨はカマキリ型の方へ走って行った。
〖何度来ても無駄なんだよォ!!〗
ディーンは雨に向かって叫んだ。
キィン!
『無駄じゃありません!!』
〖!? 何だ?〗
ディーンの頭の中に雨の声が響いた。
キィン!
『私はあなたを追い出して、絶対に豪さんを取り戻してみせます!!』
彼女の声はディーンの頭の中に響き渡っている。
〖あああぁぁぁぁぁうるせェェェェェェェッ!!〗
カマキリ型は頭を抱えてもだえ苦しんだ。
『私の能力、″精神会話《メンタルトーク》″で!!』
雨はディーンの心に叫んだ。
彼女の能力、″精神会話《メンタルトーク》″は俗に言うテレパシーだ。
だが、彼女の″超技術″は心のエネルギーの消費が高く、燃費が悪い。
ゆえに、今まで使わなかったのである。
ちなみに、心のエネルギーを使いすぎると思考力が無くなり
場合によっては戦闘どころではなくなるのだ。
『体のエネルギーは″鎧人″の状態なら気にしなくて良い。
でも、心のエネルギーは消費してもすぐには回復しない。
早く豪さんを起こさないと!!』
先の戦いで雨は体力をかなり使っている。
これと今までの経験から、能力を使える限界は‥‥‥‥‥約5分。
キィン!
『豪さんッ!早く起きて!!』
ディーンはストレスで限界が来ているようだった。
〖いい加減にしろッ!!〗
ズオッ!
カマキリ型の体内から半透明のエネルギー体が出て来た。
「えッ!?」
そのエネルギー体は人の腕のように見えた。
〖お前もこっちに引きずり込んでやる!!〗
ズドッ!
「きゃあッ!」
雨の体内にその腕が入り込んだ。
スルッ
彼女の身体から半透明の彼女が出て来た。
「うわわわッ!!はみ出てる!?」
〖うるせぇ、早くこっちに来いッ!!〗
グイッ!
「きゃあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
彼女はそのままカマキリ型の体内に引きずり込まれて行った。
ガシャシャシャン!!
彼女の換装が解けてしまった。
ヒュウ~~~~~~~~ッ
雨の身体は何の抵抗もなくカマキリ型から落ちて行った。
「あああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!雨さんの身体がァァァァァァァァァァッ!!」
アスラは急いでそこへ向かおうとしたが、骨折の痛みで身体をうずめた。
「やばい!間に合わない!!」
ヒュウ~~~~~~~~ッ
「雨ちゃーーーーーーーん!」
マリーは走りながら叫んだ。
バシュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!
ガシッ!
「おっと!」
間一髪、リオさんが雨の身体をキャッチした。
ジェット噴射で移動したことで間に合ったようだ。
「ふぅ、ギリギリセーフ」
リオさんは息をついた。
「良かった~~~ッ」
全員は息をついた。
アスラは無様に地面に激突していたが
リオさんはジェット噴射で減速することで比較的少ない勢いで着地できた。
そして、彼女をゆっくりと壁に立てかけた。
「これってマジで魂抜けてるの?」
リオさんは雨の顔をつつきながら言った。
**********
『う、う~~~ん‥‥‥‥‥‥‥‥‥』
雨は目を開けた。 そこには真っ暗闇が広がっていた。
〖起きたか?〗
「ハッ、ディーン!」
雨はすぐさま起き上がり身構えた。
〖無駄だよ。お前は今、精神エネルギー体なんだからな。
俺に攻撃しても、全部通り抜けるだけさ。お互いな〗
雨は自分の換装が解けているのに気付いた。
〖″鎧骨格″は肉体の装備であって精神の装備ではない。
ここでは″鎧人″にもなれないぜ?〗
雨は左目を押さえたがやはり無駄なようだった。
彼女はディーンを睨み、叫んだ。
「それでも、私は豪さんを助けます!」
ディーンは少しオーバーリアクションをして訊いた。
〖おぉ、怖い怖いww で、どうやって?〗
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
雨には返答できなかった。
しかし‥‥‥‥‥‥それでも!
「やってみないとわかりません!」
ディーンはそれを聞いて大声で笑い出した。
〖ハハハハハハハハハハハハハ!!面白れぇ!面白れぇよお前!!〗
パチンッ!
ディーンは右手で指パッチンをした。
〖ならお前を試してやるよ!!〗
暗闇の中から何か大きなものが出て来た。
それはあえて例えるなら‥‥‥‥‥‥‥‥繭?
〖君の探してる人さww〗
「えッ!?豪さん!!?」
雨は目を見開いた。目前の物体の正体を聞いてもなお、信じられないものだった。
「一体何が‥‥‥‥‥?」
雨のつぶやいた疑問にディーンは答えた。
〖コイツの精神に入った時からこうなってたのさ。まぁ、俺には関係ないがな〗
繭が微妙にうごめいている。豪が抵抗しているのだろうか。
〖このまま少しずつ彼の意識レベルを下げて完全に俺の支配下に置かせてもらう〗
「‥‥‥‥‥‥ひどい」
雨は手に力を込めて叫んだ。
「どうしてそんな酷い事が出来るんですかッ!!」
ディーンは口を歪めて言った。
〖楽しいからさ〗
雨はあまりの衝撃に声も出なかった。
〖人間ほど簡単に操れてかつ殺すのが楽しい生物が他にいるわけないだろ?〗
ディーンの満面の笑みから雨は狂気を感じた。
「そんな‥‥‥‥‥」
雨はディーンに怒りのあまり叫んだ。
「そんな事で豪さんをあんな目にあわせるなんておかしいです!!」
彼女の目からは涙が溢れていた。
〖何だよ?文句でもあるのか?〗
ディーンは顔は笑ってはいるが目が笑っていない。
むしろ、殺気がにじみ出て来ていた。
しかし、彼女は怖気づかなかった。
「私‥‥‥‥‥‥あなたのこと、大ッ嫌いです!」
雨は涙を流しながら続けた。
「返してもらいます!豪さんを!!」
ディーンはそれを聞き、大声で笑った。
〖ハハハハハハハハハハハ!!さっきの話、聞いてたか?
俺にはお前は触れられないんだよ!!
言ったろ?無駄だって――――――――――〗
瞬間、雨の姿が消えた。
「無駄かどうかは!!」
ズザッ!
『〖はぁ!?いつの間に前に‥‥‥‥‥‥‥〗』
彼女は拳を力強く握った。
「やってみないとわかりません!!」
ブオッ!
その拳は高速でディーンの腹部に向かっていた。
拳がディーンの服に触れる直前、彼は心の中でつぶやいた。
〖だから無駄だってのに‥‥‥‥‥‥‥前にも他のヤツで試して無駄だったんだからよ。
お前の拳は俺の身体をすり抜けて―――――――――――〗
ググッ
〖すり抜けT―――――――――――――――〗
メキメキッ!!
「″崩拳《ほうけん》″ッ!!」
ドンッ!!
〖ガハァァァァァァァァッッッ!!!〗
ドシャッ!
ディーンは彼女の発剄を受けて、膝から倒れこんだ。
――崩拳《ほうけん》――――――――
中国の拳法、形意拳の技の一つ。五行の木を表す。
これを非常に簡単に説明すると、最強の中段突きである。
殴るというより突き抜けるという感じの剄である。
形としては半歩踏み込むと同時に親指を上にした状態の拳で
相手に突き出すというものである。
この剄は劈拳《へきけん》を完全に極めてから鑚拳《さんけん》と同時に習うものである。
顔に掌を打ち込む劈拳に比べ、柔らかい腹部に打ち込む崩拳は正に地獄だろう。
この技の最大の利点は、ほぼノーモーションで打ち込めることにある。
しかし、この場合はディーンが避けるつもりがなかったので
あまり必要にされる要素ではなかった。
〖‥‥‥な‥‥‥ゲホゲホッ!‥‥‥何で‥‥‥‥‥‥〗
ディーンは腹部を押さえたまま訊いた。
〖何で俺に攻撃できるんだ‥‥‥‥‥‥〗
雨は見下ろしたまま答えた。
「私の″超技術″は精神に話しかける能力。
あなたがさっき私に憑依した時、もしかしてわかったんじゃありませんか?」
ディーンはあまりの苦しさに身を捩らせながら言った。
〖そうか‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥脳波を直接相手の脳内に発信する能力。
これを強力にして使えば、相手の精神に直接攻撃できるってわけか〗
雨は顔を変えずに言った。
「そう、あなたの身体は今、脳波と同じ電気信号で出来ています。
なので、私の脳波を直接あなたに打ち込めば多少ダメージになるかと思って
やってみたら‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥効いたというわけです」
〖う‥‥‥‥ぐ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥〗
ディーンはそのままうずくまり、動かなくなった。
「豪さん!!」
雨は大きな繭に駆け寄った。
繭はうごめいてはいるが、意志があるようには見えなかった。
「豪さん!起きてください!!」
雨は繭を必死に揺らしながら言った。しかし、返答はなかった。
「そんな‥‥‥‥‥‥‥どうして?」
雨は繭を見ながら考えていたが、このままでは豪が危ないと思い
繭を破いていくという強行手段に出ようとした。 その時―――――――――
メキッ!!
「うぐっ‥‥‥‥‥‥‥」
繭に何か異変が起き始めた。中から豪のうめき声が聞こえた。
メキメキッ!!
「い、一体何が起こってるの?」
雨には目の前で何が起きているのか理解できなかった。
後書き
彼女の能力が精神に関する能力だったから自信満々だったんですね。
そして、ついにディーンの精神に雨が一発ブチ込みました。
あーー書いててスッキリしたww。
豪の入った繭に起こった突然の異変とは?
雨は今度こそ彼を救うことが出来るのか!
戦いはついに最終局面へ!!
次回 第21話 中国に降り注ぐ豪雨 お楽しみに!
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