鎧虫戦記-バグレイダース-
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第19話 幽霊なんかよりも中国の方がよっぽど怖いというのは 偏見ではないはずだ
前書き
どうも蛹です。
″ポゼス″とは一体どのような能力なのか?
結構早く答えがわかります。
ちなみにショーする奴=将軍=ディーンです。
全員はどうやって彼を救うのか?
戦いはまだ始まったばかり!
それでは第19話、始まります!!
「迅、オレは冗談のつもりで言ったんだぜ?」
アスラは焦って弁解した。
「いや、事実そういうことだからな」
迅は冷静に言った。
「奴は“違う世界の住人”になっているんだ」
ディーンは笑いながら言った。
〖オイオイ、いくらなんでもバラすの早くないか?〗
「バラしたところでお前の有利に変わりはないだろ」
迅はカマキリ型を睨みながら言った。
〖まぁ、そうだけどよぉww少しはバレたら困る感を出したいじゃんww〗
ディーンの余裕加減は今だ変わらなかった。
迅は全員に言った。
「ディーンの能力は‥‥‥‥‥‥“憑依《ひょうい》”だ」
「えぇッ!憑依!?」
全員は声を上げて驚いた。
「憑依ってあの、何か幽霊みたいなのに乗り移られるっていうアレか?」
アスラはジェスチャーをしながら迅に訊いた。
「そう、その憑依だ」
「つーか、逆にそれ以外の憑依ってなんだよ!!」
ホークアイはアスラに久しぶりにツッコんだ。
〖ピンポーン♪よく覚えてたな、迅〗
ディーンはまた笑いながら言った。
迅は全員に説明した。
「ディーンの能力、″強制憑依《ポゼス》″は自身の意識を電気信号として
体外へと離脱させ、他の生物の脳内へ移動、そしてその生物を乗っ取ることが出来る」
それを聞いたアスラは理解した。
「えっ、じゃあつまり今のアイツには‥‥‥‥‥!!」
「あぁ、全ての物理攻撃が効かない。しかも、今は豪の中にいる」
これでアスラは奴を“別の世界の住人”と言ったことを否定しなかった意味が分かった。
迅は拳を握りしめた。
「せめて、本体の居場所さえわかれば‥‥‥‥」
ディーンは大声で笑いながら言った。
〖そんな弱点はここから何日も走って着く距離に
本体を置くことで克服してるんだよォ!!
コイツの中に入るのは若干苦労したが、入っちまえば
もう俺がやられることはないッ!!〗
「クソッ!!」
ガンッ!
迅は拳を叩きつけた。
「奴の言う通り、豪の脳内に入り込んでいる今
俺たちが奴に攻撃をする方法は一つもない‥‥‥‥」
迅が断言した言葉を聞いて全員は絶望した。
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥いいえ」
否、一人だけ絶望していなかった。
「私なら‥‥‥‥‥豪さんを起こすことができます!!」
雨はそう断言した。
「何言ってんだ!人間のあんたじゃ無理だって!!」
ホークアイは雨にそう言った。
「‥‥‥‥‥あなただって人間でしょう?」
雨はそう言い、立ち上がった。
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥私は」
彼女はそう言いながら左目を押さえた。
ガシャシャシャン!!
「″鎧人″です!!!」
彼女の身体には翠色の″鎧骨格″が換装されていた。
「えええええェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!!!?」
全員は大声を上げて驚いた。
「雨ちゃんも″鎧人″だったの!?」
マリーは雨に訊いた。
「‥‥‥‥‥‥この前の森で助けたのも私です」
迅はそれを聞き、記憶と見比べた。
「確かに‥‥‥‥‥見えなくもない」
高い身長、長く太く発達した足。
これから繰り出される蹴りの破壊力を迅はあの時見ていた。
「雨、君はいつから″鎧人″に‥‥‥‥?」
迅は雨にこう訊いた。
「13年前です」
雨のこの一言で迅は何かを思い出したようだ。
「‥‥‥‥‥‥‥‥あの時か」
迅は少しの間黙り込み、言った。
「すまなかった」
迅は頭を下げた。雨は換装しているため
表情はわからないが、おそらく笑顔で言った。
「そんなことはもうずっと前から許してますよ」
雨はカマキリ型の方にバッと顔を向けて言った。
「それより、今から私が豪さんを助けに行ってきます!!」
ダッ!
雨はカマキリ型に向かって走り始めた。
〖あぁ~~~ん?女の子一人に何ができるってんだ?〗
ディーンはカマキリ型の鎌を振り下ろそうとした。
〖これでも喰らってろ!!〗
「喰らいませんッ!!」
雨は控えめな性格から想像できないような声で叫んだ。
ダンッ!! ビシシッ!
踏み込んだ雨の両足が地面にメリ込んだ。
「豪さん‥‥‥‥少し痛いことします!」
雨はそういうと更に両足に力を込めた。
両足は大木の様な太さまで膨張していた。
「やあっ!」
ボッ!
一瞬の内に雨の姿がそこから消えた。
〖なっ!?どこ行った!!?〗
カマキリ型は周りを見回した。しかし、どこにも見当たらない。
ディーンは鎌を振り回しながら叫んだ。
〖クソッ、隠れてないで出てこい!!〗
マリーはカマキリ型の方を見ていた。
「マリちゃん、雨さんいたか?」
アスラは雨を探しながら訊いた。
マリーはゆっくりと空を指さした。
「‥‥‥‥‥ずーーっと上の方」
ギョロッ!
〖上か!!〗
カマキリの視野は死角が無いに等しいので、すぐに見つける事が出来た。
「スゥゥゥゥゥッ‥‥‥‥」
彼女は少しずつ落下してきていた。
〖バカが!空中なら避けられないだろォが!!〗
ブオッ!
カマキリ型は両鎌を振り上げた。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
バキッ!!
雨は片鎌を蹴り飛ばした。
あまりの威力に鎌が少し変形していた。
〖そんな馬鹿な!能力使ってんだぞ!?〗
″防刃堅鋼《ソリッドメタル》″は対斬撃に特化している。
更に単純な硬度も高く、かなりの防御力も兼ね備えている。
雨はバッタの″鎧人″である。
脚力の特化したその昆虫の一蹴りは
人間大であれば数階のビルをゆうに飛び越すらしい。
ここでは力を使う者の覚悟の差が、戦いに大きく影響する。
〖クソッ、だがもう片方あるぜ!!〗
もう片方の鎌を雨に向かい、振りかざそうとした。しかし――――――
「遅いです」
スタンッ
雨はすでに鎌の上に着地していた。
〖何ッ!?こんの‥‥‥‥‥降りやがれ!!〗
カマキリ型は鎌が壊れているので足で雨を掴もうとした。しかし、足は全く動かなかった。
〖何でだクソッ! ハッ!〗
カマキリ型の両足は凍りついた地面に完全に張り付いていた。
「バレない程度にゆっくりと凍らせてたのさ。
芯まで完全に凍ってるから、どうしようもないぜ?」
リオさんはこういうときにカッコイイのだ。
「さすがリオさん!ただの寝坊男じゃねぇな!」
「それって褒めてる?」
〖このクソ野郎ォ共がァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!〗
ディーンは怒りのあまり叫んだ。
「クソ野郎はあなたです!!」
雨は不安定なカマキリ型の腕の上を走って来ていた。
「私たちの知ってる豪さんを‥‥‥‥‥‥‥返してくださいッ!!」
雨はカマキリ型の胸付近で立ち止まった。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
彼女は掌をカマキリ型の胸に向かって突き出した。
パンッ!!
「劈拳《へきけん》ッッ!!!!」
ビキキッッ!!
カマキリ型の身体に亀裂が走った。
「ゴブッ!!」
〖ガハッ!!〗
カマキリ型はあまりの衝撃に口から体液を吐き出した。
ディーンは豪の中から苦しそうな声を上げた。
――劈拳《へきけん》――――――――
中国の拳法、形意拳の技の一つ。五行の金を表す。
習うときは五行の内の最初に行う技である。
素人でも分かるように簡潔に説明すると
少し腰を落として、右足を出し、素早く右掌を突き出す。これだけだ。
しかし、彼ら中国人はこれを死ぬほど繰り返す。
完全に使いこなせるまでずっとだ。
『一番最初に教えてくれましたよね‥‥‥‥‥‥豪さん』
雨は打ち込んだ余韻に浸りながら心の中でつぶやいた。
ビリビリビリビリッ!!
カマキリ型の体内に謎のエネルギーが響き渡っていた。
「ギ‥‥‥ギィッ‥‥‥ギィィィッッ!」
カマキリ型はもだえ苦しんでいた。
〖グッ‥‥‥何だこりゃ‥‥‥‥‥〗
ディーンの声にはもう余裕は無くなっていた。
「あ‥‥あれは確か‥‥‥‥‥」
迅は剄を打ち込む雨の姿を思い出しながらつぶやいた。
「発剄《はっけい》‥‥‥‥‥‥‥だったか」
そう言った迅にマリーは訊いた。
「はっけいってなぁに?」
迅はマリーに笑顔を向けた。
「実はオレも詳しいことはよく知らない。だが、一つだけ言えること。それは―――――――」
迅はキリッとした顔で言った。
「発剄は魔法じゃない。あくまで技術ということだ」
マリーは理解できていないようだ。彼女にこれを察しろというのは難しすぎた。
「ギィ‥‥‥ぐッ‥‥‥こノ剄ハ‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
カマキリ型は不自然な言葉を発した。
ズザッ!
雨はカマキリ型の腕から降りて、地面に着地した。
「豪さん!私です!雨です!!」
雨は必死に豪に叫んだ。
「あァ‥‥‥‥うグっ‥‥‥‥おォ‥‥‥‥‥」
〖無駄なんだよォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッッ!!!!〗
ディーンは憤怒の叫びを上げた。
「うゥ‥‥‥‥ギ‥‥‥‥‥ギィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィッ!!」
豪はディーンの呪縛から抜けられずにいた。
〖剄で無理矢理コイツを起こそうとは考えたな!!だが無駄だァ!!〗
ディーンはカマキリ型の動きを完全に支配していた。
〖俺がここにいる限りコイツの意識を取り戻させるのは不可能なんだよォ!!〗
「そう‥‥‥‥みたいですね」
雨はつぶやいた。ディーンはその言葉は予想外だったらしく、やや戸惑っていた。
〖なんだお前、やけに素直だな〗
ディーンは微妙な声で言った。
「今のはあくまで強行手段であって、まだ方法はあります!!」
雨は再びカマキリ型の前で構えた。
後書き
バッタの″鎧人″、雨の劈拳《へきけん》がカマキリ型に炸裂ッ!!
しかし、ディーンの能力であと一歩及ばず再び呑み込まれた豪。
頑張れ雨!!負けるな豪!!
″ポゼス″とは“憑依”の事を表していました。
伏線は上手く張れてたでしょうか?
果たして、彼女に残された方法とは?
まだ、ディーンは無駄と言い続けることが出来るのか?(これは関係ない)
戦いはまだ続いていく。
次回 第20話 頑張れば中国人でもかめ○め破が撃てる お楽しみに!
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