戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~
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二十四章
大評定
「鬼。その存在がなぜ発生したのか・・・・その理由や理屈は分からない。だけど一つだけ分かっている事がある。鬼が発生し始めたのは、一真が現れる少し前。・・・・じわりと浸透し、一真が田楽狭間に降臨されたあと、爆発的に活動を始めた」
そうなんだよなー。まあこの外史創ったのは我となっているが、それは一つ前の代である創造主が創ったあとに我が今代の創造主となったからだ。我がこの世界に来てからというのには少し罪悪感を感じる。
「なぜ一真が現れてからなのか。・・・・それは一真という存在に、何かしらの意味があると他ならない。一真は神の類であることは皆も承知のはず。だが、一真という神様が天から降り立たなければ、鬼は駆逐され、歴史の流れの中、絵巻物で語られる存在となっていたはず。・・・・と光璃はそう考えている」
「ふむ・・・・なかなか面白い仮説ではあるが、光璃。貴様がそう思う根拠はなんだ?」
「一真が天から降臨する前と、降臨する後からの情勢を考えれば分かる」
まあそうだろうなとは思ったけど。そしたら長尾の方から声が聞こえた、まあピンマイク付けているから聞こえるんだけど。
「・・・・松葉ぁ。考えて分かるっす?」
「武田のお屋形に一真さんが何か知っているということは分かる」
「もって回った言い方っすねー。つまりっすー?」
「よく分からない」
「わーいっす!柘榴と同じっすー♪『パシィィィィィィィィイン!』・・・・痛いっす」
「これがあるから、聞こえているから当たり前ですよ。柘榴ちゃんに松葉ちゃん」
まあ聞こえているけど、側室の皆はクスクスと笑っていたけど。
「情勢を考えれば分かる、と。・・・・・ふむ、なるほど。それがしがここまでの関係者になったことについては納得ですが、浅井と織田ですな」
「・・・・おお。なるほど。そういうことか」
「・・・・おい。数寄者二人は分かるのか?」
「なんだ、鬼柴田は分からんのか?」
「だから聞いておる」
「はぁー、愛紗ちゃんから言えば分かるんじゃないの?」
「そうですな。畿内連合の者たちよ、日の本を見下ろせば分かることだ」
愛紗=関羽が言ったが、光璃が言った事に関しては織田の家老でも理解していなかった。なので、我が言ってやったけど。
「では聞くが、尾張・清州を抑えた織田が、田楽狭間で今川を討った。・・・・となれば、次の一手はどうする?」
「今川より独立した松平を手中に収め、東の守りを盤石のものにすること・・・・」
「その通りだ、葵。そして葵に背中を任せて久遠は、豊かな伊勢、美濃に手を伸ばすということだ。ここまで合っているか、久遠?」
「合っているぞ。それに我がそうしているからな」
「はい。我ら松平も織田に後背を預け、義元公の遺領を切り取って勢力を補強していったでしょう」
「その方がより確実、より安全ですからな」
と言った悠季に答えての頷いた光璃だった。無論そこまでの話を映像にして分かりやすくして、流したのだった。というか、俺らの史実を元にしただけなんだが。
「利害が一致する同盟は、利害が一致している間は強い絆を生む。背後の安全を確保したあと、織田は美濃と伊勢に侵攻。両国とも、国力もしくは人材に関しては織田よりも大きく遅れているため、制圧は時間の問題だったと思う」
「・・・・であろう。尾張、伊勢の海運と、そこから発生する銭の掌握。そして美濃を制するものは天下を制すと言われる、畿内と東国を結ぶ要衝、美濃を手に入れた我が織田が次に考えるのは・・・・・」
「天下、ね」
光璃たちはこのために打ち合わせをしていたと聞く。それはそれで構わんけど、そしてそれを聞いての頷いた光璃。
「この場合の天下とは、上洛によって山城国を掌握し、公方と畏き所をその手に掴む事を意味する」
「うむ。日の本全土で下克上が続くとは言え、公的機関である禁裏と幕府を抑える事が出来れば、行動全てに大義名分を掲げることができる。誰もが逆らい辛く感じる、絶対正義が手に入るということだ」
「・・・・(コクッ)」
「しかし、織田が天下を目指すために山城国を手に入れたあと、万難を排してでも確保しなければならない事が、一つある」
「街道と、その安全の確保か」
「うむ。・・・・さすが光璃の眼と呼ばれるだけあるな、武藤昌幸よ」
「光栄の至り。・・・・まあ光璃様以外に褒められても、あまり嬉しくはないんだけど」
「はっ。言うわ。だが武藤の言う通りである」
「・・・・(コクッ)そして久遠は、古渡から清州に在所を移した、初期の段階から、先を見据えてすでに手を打っていた」
「市のことだね♪」
「だね」
さすがというか、あの手を見抜くとはと久遠はそう言ったが光璃はともかくとして、俺らにとっては歴史通りだからなのか側室からのは少しつまらん話となるがしょうがないと思う。愛妾及び連合の者にとってはこれから知るであろう本来の歴史なのだから。光璃たちは歩き巫女たちのお陰とも言っていたけど、美空にとっては呆れるしかなかったようだった。
「それについても、我らについては歴史通りとなったことだ。別に今更でもないが、そこは別に褒めるところではないぞ?」
「上洛のため、上洛後の街道の確保のために、浅井に目をつけ、婚姻で懐中に抱き込む。・・・・と、ここまでは宜しいかな?御三方」
久遠と美空と光璃で、話が脱線しかけたので奏が修復させた。
「・・・・・(コクッ)時間は掛かるけれど、効果的な手を次々と打っていた織田は、遠からず山城国を手に入れたと推測できる」
「確かに光璃の推測は、的を射ているように思えるけど・・・・でもいくつか気になる点があるわ」
「・・・・・(コクッ)」
「気になる点とは?」
「五畿七道。つまり街道のことです」
五畿七道・・・・・日本各地から山城国に繋がる道の総称。東海道、東山道、北陸道、山陰道、山陽道、南海道、西海道の七つ。
「なるほどなぁー。織田は山城国を他勢力に渡さないために、尾張、伊勢、そして同盟国である三河の三国で東海道を抑えて、武田と北条などの東国勢力の上洛を阻む壁としたということかな?詩乃に雫」
「はい。そしれ美濃と、同盟国である近北は、東国と山城国を繋ぐ中山道の壁ですね」
「そう。そして畿内の西については、本願寺を抱え込めばあとは小豪族の集まりでどうとでもなる」
「事実、私の主家である小寺家も、織田を頼るか毛利を頼るかで揉めておりましたから・・・・」
「小豪族を盾にすれば西の強国、毛利、宇喜多の動きを制限できる。そしてその間に東を手当する・・・・」
「そう。山城国を守るための防衛線を構築するとするなら、あと一つ、抑えなければならない国があった」
「うむ。長尾景虎が使うであろう、北陸道だ」
「・・・・(コクッ)」
「まぁ確かに、うちが上洛するには、そこを通るしかないしね。事実、越中、加賀に手を伸ばしてたし・・・・その途中で『拾ったとは言わせねえよ』言わないわよ、側室の前で言うほど度胸はないわ。途中で一真に出会った」
とまあそう言う事だ。
「・・・・だけど懸念もあった」
「僕たち浅井の事だね」
「そう。北陸道を抑えるために越前を攻略しなければならない。でも越前・朝倉氏は江北・浅井氏の盟友」
「例え市を嫁入りさせたとしても、江北と越前の繋がりは断ち切れないだろうとは考えていた」
「だけど大義名分を掲げて勢力を拡大していくなら、山城国は絶対に抑えておかなければならない」
「そうだ。だから我は眞琴を・・・・浅井を騙し、必ずや越前を討っていただろう。我が信じる大義のためにな」
「そうなったら浅井も黙っては居られません。僕は市と離縁して姉上と戦っていた事でしょう」
「えー・・・・市、まこっちゃんと一緒に居たいよぉ」
「市よ、今の話は本来の歴史の道についてだ。歴史の通りならば、眞琴は離縁して織田と戦うはめとなるのだから。それに浅井の家中も黙っていられないであろうよ」
「・・・・一真の言う通りにそうなれば、ここぞとばかりに各勢力が浅井に荷担し、出る杭となった織田を潰していた」
「山城国を抑えられ、勅として横暴なことを突き付けられて、反抗すれば朝敵なんてことになったら最悪だものね。きっと私も反織田同盟に参加していたと思う」
ここまでは信長包囲網というところになると思う。それについても、正室と側室である黒神眷属のところには本来の歴史の本が置いてあって久遠たちが話している所を聞きながらページを進んでいる。信長包囲網というのは戦国時代末期より安土桃山時代初頭にかけて発生した反織田信長連合のことだ。
「敵に囲まれた織田は、憎悪を滾らせながら、全方位との戦いを開始する・・・・。これが鬼が現れたとしても、一真が居なかったときの光璃の推測・・・・。ううん。一真が来なかったときに流れていたであろう歴史の、本来の流れだと考えている」
全てを語り終え、机に置かれたお茶を飲みながらであったがトレミー内の大部屋はしん、と静まり返っていた。まあ俺達はそれが本来の歴史だと思っているし、それが史実なんだとも。それに光璃が話したのは正史の事でもあると考えられている。
「推測は分かりましたが・・・・そこに一真様を絡めるのは、いささか強引ではありませんか?」
「というと?」
「鬼は一真様が来る前から密かに増えていた。・・・・この言を信じるならば、鬼は一真様が田楽狭間に現れる事を知っていたという事になりましょう?なぜ、鬼共はそれを知り得たのか?そも一真様はなぜ、どこからともなくこの世に現れたのか?そこをはっきりしない事には、物事の理非を思考する事も難しゅうございます」
やはりというか、この女狐はそこを気付いたとはさすが徳川幕府を築いた葵の側近でもあるな。いや徳川家康の重臣ともなる者だ。俺らは静かにしていたけど、美空もそう思ったのか、発言していた。
「確かにね。・・・・一真。一真は天から降臨してきたとか言われているけど、そこのところ、実際どうなの?」
「どうする、ねえ。そこのところは、久遠。もう言ってもいいよな?」」
「うむ。説明してやってくれ」
「了解した。・・・・そもそも俺はこの世界の人間じゃないことは知っているだろ?まあ全てを創った創造神とか呼ばれているけど、お前らを創造させたのは俺の前に代が創造主となってからこの世界を構築し、日の本を創った。そして今久遠たちが話していたであろう光璃は本来の歴史の流れとか言っているが、それについては俺達では史実通りの歴史となっている。これを見れば分かるが、さっきまでの会話はこの歴史の本通りとなっている事だ。俺達はこの世界の人間ではなく、俺達はこの世界から四百年後から来た未来人。この世の時代は戦国時代と呼ばれている。まあ俺は神界から降りてきた神様というのは合っているけど」
と言いながら、投影型ので久遠達が話していた事を歴史通りに地図上にしていった。そして久遠たちが思っていた歴史の流れについてもだ。
「ふむ・・・・証拠はあるのかい?例えばもし一真様がこの世界に来なかった歴史について」
「証拠ならいまさっき言ったことだが、そうだな。では葵に聞く。この戦国という戦が終わったら、キミは松平から徳川に変えるのだろう?」
「・・・・それをどうして知っておられるのですか?」
「そりゃ知っていますよ、我々はね。私たちは貴方たちでいう三国志の武将たちだ。だからあなた達が三国志の事を知っているように、ご主人様は貴方たちの歴史を知っている。織田がこのあとどうなっているのか?・・・・とかをです」
「一真様の現れた様子やこの船の技術から知識までを考えれば、驚きはしませんな」
「うむ。一真はこの先の未来を知りながらも、神というのを隠しながらであるが我の恋人であり、一葉や美空、光璃の恋人でもある」
「それと一真と私たちのこともね、あとはそこにいる護法五神を始めとした各神話の神様も、一真の妻になった者です。妻である私は半分悪魔と神という立場ですが、優斗と深雪は男神と女神としてね」
奏の言った通りとなると同時に我たちは全員大天使化をしたのだった。まあ奏の翼には片方黒い翼をしているが、それを機に各神話の神仏たちも久遠達を見ていた。
「・・・・百歩譲って。身元を引き受ける御方の素性が確かなようですなので、問題はないとみましょう。もちろん葵様の考えも丸分かりのようですから。しかし、鬼の存在と一真様の存在を結びつけるには、やはり些か強引だと考えますが?」
「まあ鬼を創ったのは、我の前の者が創造したことだ。我と鬼については、気になる点というのはある」
「気になっている?それって何よ?」
「我はこの世界に来ることは最初から分かっていたが・・・・・」
我は空間から出して聖剣エクスカリバーを擬態前の状態となって、奥にいる久遠たちにも分かるように映像を出したのだった。
「我が持っているこの神剣のことだ」
「その剣は一真が田楽狭間のときにはなかったが、後々持っていた刀だな」
「そうだ。これは元々俺の世界から持ってきたモノ。一真隊の者たちは知っているが、この世界に来たら力が追加されていたのだ。鬼を引き寄せる力をな」
「鬼を?どういうことよ?」
「金ヶ崎の退き口のとき、鬼に奇襲された私たちは、戦いの中、本陣からはぐれ、久遠様が落ちられたのとは逆の方向に逃げていたのです」
「戦とは極論すれば敵の大将の頸を取るのが目的。まして組織的な戦を行うようになっていた鬼たちです」
「奇襲して浮き足だった我らの混乱に乗じ、久遠様の頸を取るのも容易かったはず。でも・・・・・」
「うむ。我ら一真隊の方に、より多くの鬼が襲いかかってきておったな」
と一葉や一真隊が進言するので、我は剣を持ち光輝きをさせた。それは青白く、そして神秘的な事となった。
「とまあ、我の剣はこういう風に光を輝いておってな。その光に誘われるように鬼は我たちを襲ってきたりと追ってきた、まあそうさせたのは我自身。金ヶ崎の退き口以前からこの剣は光を放っていた。三好衆による二条館襲撃の際にも、まあ我がそうさせたのだからな。我の使命は鬼を駆逐することも、一つの使命ではある」
「あのときも一真の方に鬼が寄ってきたの」
「そういうことだ。そういえばその映像はあったから、これでも見ろや」
そう言って今まで撮影してきたデータの中にある剣が光出すところで鬼が寄ってくる事を。まあ我たちの使命は別にあるが、今は鬼を倒すのも使命だと思っている。この剣は鬼を引き寄せる力・・・・・。
「何かおかしいとは思わんか?」
「何がおかしいのだ、一真」
「あ、確かにおかしいですね」
「ひよが気付いたけど、そうなんだ。この剣は俺が元々持っていたけど、その時は鬼を倒すための力なんてのはなかった。我が田楽狭間に落ちてきたときに追加された力でもある。それについては我がそうさせてはいない、前代の創造主がそうさせたのだ。まあこの剣が元々そういう力をついていたのなら、四百年後にあった剣とされる」
「・・・・あ」
「理解したかな?」
「うむ。・・・・なるほど。光璃の言の裏付けになるな」
「ちょっと、どういうことよ?今いち、分からないんだけど?」
『お兄ちゃんの代わりに言うけどさ、お兄ちゃんの剣は四百年後にあった剣がなぜ過去であるこの世界の鬼を倒せる力があるかという事なのよ』
『その通りです。我らを創った御方はここにいる主様だと仰いましたが、我々を創ったあとに消滅してしまった後に今代の創造主が来られたのです』
「・・・・あっ!」
「ふむ・・・・確かに姉上の言説の裏付けになりやがりですね・・・・」
「現実を見れば、一真様が出現した事によって本来の流れとは別の流れとなったのですね。織田、武田、長尾などの勢力がこうして一堂に会したのも、一真様が出現前の歴史とは逆らった歴史となったでしょうし、無関係というのは強引な論でしょうね」
「なるほどなるほど。・・・・それは武田のお屋形様の推測はほぼ正確な推測であるかもしれない、と、私も認めましょう」
「・・・・ありがとう」
「しかしながら、その推測が、一真様と鬼共の発生に関連があるとする根拠ならば。そもそも鬼共の目的は何なのですかな?」
「それは明確であろう」
「ほう。織田殿は分かると?」
「うむ。鬼と鬼を操る者が目指すものは、一真を使って何らかの、我らが望まない不埒を行うこと」
「明確、という割には至極漠然としておりますねぇ」
「そも、漠然としておらん未来などあるか」
「それはまぁ・・・・そうでしょうけど」
「目的はまだ不明確。だけどそれも、そろそろ分かる頃だと思っている・・・・。それについても、一真たちはもう知っているようだけど」
「鍵である一真に対し、動き出すってこと?それもそうね、一真は全てを知っていそうだったし」
「・・・・(コクッ)」
「なるほど。・・・・では、百歩譲って武田のお屋形様の言を信じるならば、ですよ?今、ここで一真様を刺し殺せば、鬼を操る者は不埒な行いは出来ない。あとは鬼を駆逐するだけで、全て事は丸く収まるのではないですかな?」
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