戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~
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二十三章
奇襲失敗×鉄砲撃ちまくり
「!!一真様!鏑矢が放たれました!」
「委細承知だ。船からの情報だと長尾勢はもぬけの殻だったって」
「なるほど。鏑矢が一本で奇襲失敗とはこの事ですか」
鞠が知ってはいなさそうだったから、何となくだ。鞠は陣を抜け出した後に移動したらしいな。
「こちらの草は気付かなかったのでしょうか?」
「恐らく向こうの軒猿の警戒が厳重だったのは、長尾勢の下山を悟らせぬようにする意味もあったかと」
「あとは毘沙門天か仏の加護を使って巧妙に姿を隠したのだろうな。美空は一筋縄にはいかないとは思ったが」
幸い、トレミーが追っているが今の所本陣に向かっているようだな。もう光璃たちも気付いていると思うし。
「総員ただちに騎乗!妻女山の裏から出る!状況確認だ!」
「先行します!」
「頼む!鞠は俺の前に乗れ!」
「分かったの!」
その声と共に、鞠はひらりと俺の前に飛び乗ってくる。無論そのまま全速で走り出しても、バランスを崩さずだった。
「鞠。今の越後側の状況って分かるか?美空は川中島に兵を出して、一葉はそれを受けたのか?」
「んーとね、久遠からお手紙が来たの」
「久遠から、か。もしかして返事?」
「うん。一真が美空にお願いしたのが返事としてきたの」
「美空様に渡した手紙ですか・・・・」
内容的にはやはり三河に帰った松平衆のとかだった。越前を抜けたのは、奇跡としか言いようがないが。俺が貸し与えた神の加護で切り抜けられたのだろう。それに飛騨は武田の勢力圏だし。
「ええー!殿さんと一緒に越前突破したですか!綾那もそっちがよかったです!」
「ちょっと綾那・・・・私たちには一真様をお守りする役目があるでしょ!」
「それはそうですけど。・・・・暴れたいですー」
「なら、この戦が終わったらいくらでも相手してやるから。で、久遠の手紙で美空は川中島出陣を決めたということ・・・・?」
「うん。でもね、最初に川中島に出陣するって決めたのは、一真が光璃ちゃんと祝言挙げたっていう連絡が・・・・」
「・・・・うん。それについては予想通りかな」
このままだと衝突するまで、時間がないなー。船はまだ待機モードだし、ゲートが開いていない以上黒鮫隊出撃する訳にもいかない。
「おっ。鉄砲の音だな!」
山の向こうから聞こえてきたのは、銃の専門家じゃなくても聞き間違いがしない。これは銃声だし、しかも大所帯だな。
「しかも、こんなまとめての連発など・・・・」
「こういう撃ち方すんのは、長尾でも武田にもいない。思いつくのは俺らの部隊でもあるが出撃命令を出していないから、思いつくとしたらあいつらしかいないだろな(小波
!)」
「(ご主人様!)」
お守りを握りしめば、すぐに小波の声が聞こえてくる。
「(一応聞くけど、鉄砲音はあいつら?それとどこで撃っている?)」
「(お待ちを・・・・・・見つけました!長尾勢の最前列に、発砲の煙と二つ引き両!)」
予感的中だけど、ちょっと待て!鉄砲部隊が最前列!?
「おいおい。一真隊が最前列ってどういうことだよ?」
一方最前列で戦っていた一真隊。まあここだけの話、念話で鉄砲の隠れた撃ち方について伝授している。弾を撃つだけが鉄砲隊の役目ではない事を。
「ほらほら、雀さん、烏さん、じゃんじゃかじゃんじゃか撃ちまくって、好きなだけ名をお上げなさーい!」
「ひゃっほーい!八咫烏隊、うっちまっくれー♪」
「・・・・・・」
「たった二百丁の鉄砲で数千の部隊を足止め出来ているって、雀たちすごいよねー!気持ちいーっ!」
「・・・・・・」
「ちょ、梅ちゃんってば!いくらなんでもそんなに撃ちまくったら玉薬がもたないよ!」
「まだ戦も始まったばっかりなのに、撃ち過ぎだよ!」
「これで良いのですわ」
「いや良くないしー!」
「いいったらいいんですの!」
「だからー!」
「ではお二人は、ハニーに会いたくありませんの?」
「・・・・・・・へっ?」
「そりゃ、会いたいけど・・・・鉄砲を撃ちまくると一真様に会える・・・・?」
「まったくもう。まだお気付きになりませんの?」
「ええとー・・・・・ころちゃん分かる?」
「ごめん、私も梅ちゃんが何言っているのか分かんない」
「だよねだよね!頭の中が牡丹の花で満開の人の考えなんて分かんないよね!」
「全く・・・・一真隊愛妾連合の筆頭であるあなた方二人がそんな調子で、どうするんですの」
「え、えへへ・・・・」
「いや、そこ照れるところじゃないから」
「え、でも、筆頭って響きが何か良くない?」
「それはちょっといいけど・・・・」
「撃て撃てー!パパーン!」
「・・・・・・・・」
「って、ホントに遠慮なく撃ってるし!」
「だって、撃ちまくれっていう作戦だしー!ね、お姉ちゃん!」
「・・・・・・・・」
「烏ちゃんも頷いているってことは、雀ちゃんと梅ちゃんの悪ノリってだけじゃないんだ・・・・」
「はぁ~。で、一体何が言いたいの?」
「鞠さんですわ」
「鞠ちゃん?・・・・あっ!?」
「下山の命令が出た少し前から姿が見えませんの。あの方のことですもの。きっとハニーのところに行ったのですわ。ということは・・・・・?」
「どこかで私たちのことを狙っている!?」
「狙っている訳じゃないでしょ!・・・・・なるほどね」
ひよは相変わらずだったが、やっと梅がなぜそこまで撃っている理由が判明したようだ。というか、少し遅いような。
「さすがころさんですわね。お気付きになりましたの?」
「え、ころちゃんずるい!」
「お頭はきっとこの戦を止めたいと考えていると思う。武田について行ったのは、詩乃ちゃんと雫、綾那ちゃんに歌夜ちゃん、小波ちゃんだけ。・・・・ということは?」
「戦力が欲しいって思う・・・・ってこと?」
「ご明察。今は一葉様の指示でこうして先陣に立っていますけれど、ハニーがお戻りになれば副長の指示など聞く必要はありませんわ!」
「え、それって、公方様に逆らうってこと?」
「え・・・・そ、それは・・・・」
「それは・・・・・」
「わ、私は愛に生きる女ですもの!公方様直々のご命令であろうとも、愛しい御方の頼みとあらばいくらでも反故にしてみせますわ!それにお忘れではありますが、ハニーは全てを創ったと言われる創造神様ですわよ?いくら公方様でもハニーの指示が飛べば、指示に従うと思いますの!」
「おお、かっこいいー!パパーン!お兄ちゃんが神様なのはもう知っているよー!パパーン!」
「・・・・・・・・」
「まあそういうわけですから、さっさと玉薬を空っぽにしたことにして、補給に下がりますわよ」
「すごい!梅ちゃんにしてはまともな考え!」
「きっと、一緒に考えてくれた人がいるんだよ。例えばお頭とか」
「・・・・何かおっしゃいまして!?」
「ううん」
「お分かりになったのなら、ころさんは右の指揮をお願い致しますわ。ひよさんは、余分な弾と玉薬をさっさと片してくださいまし」
「え?弾って・・・・!?」
「あーあ。空砲だけじゃ物足りないよねー。パパーン!」
「・・・・・・・・」
ひよよ。気付くの遅いぞ。
「しかも玉薬も少なめだから、撃った感じも今一つなんだよねー。パパーン!」
「・・・・・・・・」
「貴重なハニーのお昼代ですもの。本当に使い切る必要なんかありませんわ。そんな猪武者のような真似、この私がするとお思いですの?」
「「「えっ」」」
俺もそう思ったが、まさか梅からそれを聞くとはな。梅が猪武者だってこと。
「・・・・・・・・」
烏が顔を暗くしているな。
「な、なんですのその反応は!」
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